飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン大統領の任期延長改憲案が急きょ決まった背景は?

2020年03月24日 10時19分55秒 | Weblog
 プーチン大統領の2024年の再出馬を可能とする憲法改正案がロシア憲法裁判所で承認され、4月22日の全国投票にかけられることになった(その後、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、延期された)。投票により、改正案が可決されるのは確実で、プーチン氏は4期目の任期が切れる24年以降も大統領職を務めることが事実上決まった。プーチン氏自身、任期満了後は大統領以外の公職に就く考えを示していただけに、急きょ考えが変わったのは何故なのか、探ってみた。

 プーチン氏は大統領を24年の任期満了で退任し、国家評議会議長などの要職に就いて院政を敷くとの見方が大勢で、プーチン氏自身、それをほのめかしていた。その流れが変わったのは、元宇宙飛行士のテレシコワ下院議員が3月10日、下院の審議中に歴代大統領の任期を「セロ」に戻すという奇想天外な提案をしてからだ。それを受け、プーチン氏が下院で演説し、新型コロナウイルスの感染拡大やルーブル暴落など、ロシアを取り巻く状況が厳しくなっていると強調。憲法裁判所や国民の支持を得られれば大統領の任期制限の撤廃に反対しない考えを示した。

 「プーチン氏が心変わりしたのはなぜなのか?」
 これを巡ってロシア国内では様々な憶測が流れているが、本人はその辺の事情について詳しく説明していない。そこで、ロシアの新聞などからプーチン氏の本心を突いた記事を探った。目を引いたのは、22日付けの独立新聞電子版に掲載された「なぜプーチン氏に24年の選挙で選出される権利が与えられたのか」の記事だった。この記事は、ソーシャル・マーケッティング研究所が実施した世論調査で、57%の人たちが24年の大統領選でプーチン氏に投票するとの結果を示し、プーチン氏がなぜこういう選択をしたかを分析している。

 記事では、「何のために大統領のこれまでの任期数をゼロにする工作をする必要があったのか」と問いかけ、プーチン氏も任期満了時の24年の政治状況がわからず、エリートや国民が退任後も自分に忠誠を尽くしてくれるかどうか、不安だったのではないかと指摘している。さらに、これまで20年間、権力を握ってきて、指導者の個人的な権威は自力で強化できるものではなく、退任すればエリートたちの対応が変わることを体験的に感じ取ったためではないかと推測している。最後に著者は「政治的予言は、21世紀のロシアで起きた主な事件よりも、様々な事実の組み合わせで生まれるのかも知れない」と書いている。

 プーチン氏は2000年に大統領に初当選し、2期8年務め、4年間、首相に転じた。その後、12年に大統領に返り咲き、現在は連続2期目。通算すると4期、20年間、指導者の地位にある。ソ連時代のスターリン書記長の過去最長記録、29年に次ぐ長期政権を維持している。それでもまだトップの座に座り続けたいのか。それとも、退任後の自らの安全に不安を感じているからなのだろうか。(この項終わり)

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プーチン大統領、北方領土返還を事実上封じる憲法改正案提案!

2020年03月03日 22時38分54秒 | Weblog
ロシアのプーチン大統領は、政治機構の抜本的改革を柱とした憲法改正を行う方針だが、3月2日に下院議会に提案した憲法改正の改訂版では、隣接国との国境画定交渉は認めるものの、領土の割譲を目指した行為は禁止する内容となっていることが分かった。この改訂案は、北方領土問題をめぐる日本への譲歩や交渉自体を禁止することを狙ったもので、この改正案が成立すると、北方領土の日本への返還は事実上不可能になりかねない。

プーチン大統領は2024年に大統領の任期が満了となり、退任する意向を固めている。そのため、任期満了前に政治機構を改革し、実質的な院政を敷くとの見方が強い。こうした流れの中で、プーチン氏は北方領土返還に向けた行為や呼びかけを禁止する方針を打ち出したものと見られる。その一方、国境画定については認めるとしており、日本との北方領土返還交渉を国境画定に限定する狙いとも言える。

こうした考え方は、憲法改正に関する政府主催の会議に出席した俳優のマシュコフ氏が提案したもので、プーチン氏の後継者の時代になっても、北方領土返還を封じる狙いがあるとみられる。この提案についてプーチン氏は会議の場で賛成する意向を示し、専門家に具体案を検討させていた。この条項が新憲法に盛り込まれても、日本との領土交渉を「国境画定のための交渉」と言い逃れることはできる。

その半面、この条項が盛り込まれた場合、議会などを中心に北方領土交渉に反対する機運が一層高まる恐れがある。プーチン政権は現在も日本側に対し、日露の国境は第二次大戦の結果、決まったものだと主張し、交渉の前提としてそれを認めるよう求めており、交渉が進展しない大きな理由になっている。

プーチン氏は憲法改正を急いでおり、改正案をできるだけ早く国民投票などに付して成立させる意向と見られる。これに対し、安倍首相は後手後手になった新型肺炎コロナウイルス対策に専念せざるを得ず、有効な手が打てない状況だ。このままでは、外交の重点事項に掲げた北方領土返還も水泡に帰す可能性が高い。(この項おわり)
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