飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

女性記者殺害事件の被告全員無罪は「司法の敗北」か

2009年02月22日 18時22分31秒 | Weblog
 プーチン政権を批判した女性記者のアンナ・ポリトコフスカヤさんが殺害された事件で、モスクワ管区軍事裁判所は20日、被告全員を無罪とする判決を出したが、これに対しロシアでは「司法の敗北」との見方が出ている。メドベージェフ大統領は司法改革に取り組んでいるが、司法が国民に信頼されるようになるまでには時間がかかりそうだ。

 この事件は06年10月に起きたもので、当時のプーチン政権そのものが殺人に関与しているのではないかとの疑惑も出ており、検察当局は総力を挙げて犯人逮捕に取り組んだ。ところが、拘束した10人を次々釈放したうえ、実行犯とされる人物は国外逃亡し、殺害を依頼した黒幕の存在も明らかにされなかった。このため、この事件も闇に葬られるのかとの見方も出ていた。

 ところが、裁判が始まると兄弟で被告のおじが「殺人を依頼した人物が大金を支払ったと聞いた」と証言するなど、意外な展開となり、真実が明らかになる可能性も出ていた。その一方、裁判が途中で非公開になるなど不可解な面もあった。

 結局、陪審団は全員一致で「証拠不十分」として被告3人に無罪の評決を出し、裁判所は無罪を言い渡した。これに対し、検察側は控訴することを言明し、今後さらに上級審で争われる見通しだ。

 ロシアの有力紙「独立新聞」には、無罪判決について様々な談話や反応が掲載されている。それによると、ポリトコフスカヤさんが勤務していた「ノーバヤ・ガゼータ」紙のレベジェフ・オーナーは「ロシアの検察・司法制度が不完全な結果だ」とコメントしている。また、ジャーナリスト同盟のバクダーノフ委員長は「90年代始めは表現の自由がもてはやされ、マスコミは『第四権力』といわれたが、今は昔の話だ。今回の事件は権力の恥だ」と批判している。

 ソ連崩壊後、司法制度は民主主義国家並みになったものの、国民はまだ本当に司法を信頼していないのではないか。だから、裁判で真実を述べても、いつ自分に不利な結果が跳ね返ってくるかわからないというのが本音だろう。こういう状況では、いくら裁判をしても真実が明らかにならない。メドベージェフ大統領が進めている司法改革は、司法への信頼感を高めることができるのだろうか。

麻生首相はロシアの国威発揚式典に付き合わされただけ!?

2009年02月19日 11時37分14秒 | Weblog
 麻生首相は18日、サハリンで行われたロシア初の液化天然ガス(LNG)製造工場稼動式典に出席、メドベージェフ大統領と会談したが、ロシアの新聞、テレビは式典の模様を大々的に報じただけで首脳会談の内容にはほとんど言及していない。首相はロシアの国威発揚の式典につき合わされただけという印象が強い。

 ロシアで最も影響力のある全国ネットの三大テレビの18日夜のニュースを見たが、いづれもトップあるいは二番手で式典の模様を伝えた。大統領に就任する前、天然ガス独占企業「ガスプロム」会長を務めていたメドベージェフ氏が誇らしげに工場完成の意義を強調する場面が大写しにされた。その半面、日露首脳会談への言及はほとんどなく、麻生首相は工場完成のお祝いに駆けつけたという役回りを演じさせられた形だ。

 また、ロシア国営テレビのキャスターは、日本の首相が戦後初めてサハリンを訪問したことを指摘し「北方領土問題より経済協力のほうが大事だということを示している」とコメントしていた。テレビを見たロシア国民からすれば、日本が領土問題より経済を重視していると映ることは間違いない。

 ロシアの有力紙の中で独立新聞は、日露首脳会談を真正面から取り上げている数少ない新聞だ。「北方領土問題で伝統的でない決定」との見出しで両首脳が領土問題解決の新たな手法で合意したと伝えている。日本語ではこれを「独創的手法」と訳しているが、ロシア語では「新たなアプローチを基にした、独創的でこれまでと違った手法」と書いている。具体的にどうするのかはっきりしないが、2島か4島かという、これまでのような二者択一の考え方はとらないということだろう。いずれにしろ、日本側に譲歩を迫っていることに違いはない。独立新聞も、今回の式典への麻生首相出席で、両国は領土問題が解決しないにもかかわらず、経済関係を発展させているとまとめている。

 今回の首相訪露の政治的意義は、ロシアで一番影響力のあるプーチン首相の5月訪日を取り付けたことだ。この会談で領土問題解決への糸口がつかめるかどうかにかかっている。今回はそれに向けての準備段階であり、日本側はだれがプーチン首相を受けて立つかも含めて十分検討すべきだろう。

ロシアの億万長者が金融危機で半減!?

2009年02月16日 13時47分48秒 | Weblog
 ロシアでも金融危機の深刻さが広がっているが、ロシアの好景気のシンボル的存在だった億万長者の数がこの1年間に半減したことがロシアの金融誌「フィナンス」の調べでわかった。

 モスコー・タイムズ紙が16日付けで伝えたもので、今年のロシアの金持ち400人ランキングのうち、億万長者は49人で、昨年の101人から半分に減った。ランキングから落ちた有名な金持ちは、超高級ビル建設グループ・オーナー、ポロンスキー氏、シベリア石油のチギリンスキー氏、投資会社トロイカ・ダイアローグ・オーナー、バルダニアン氏らだ。原油価格の暴落や金融市場、ルーブル価値の下落の直撃を受けたひとたちだ。

 一番落ち込んだのは昨年、ランキング・トップで「アルミ王」とも呼ばれていたデリパスカ氏。資産総額は400億ドルで、世界でも有数の大富豪だったが、今年は40億ドルに落ち込み、ランキングも8位にダウンした。

 この記事を配信したモスコー・タイムズ紙は「今日、ロシアでは10億ドル作るよりも、それを持ち続けることのほうが難しい」と、皮肉っぽく結論付けている。



オバマ新政権でロシアとの関係改善が進むのか?

2009年02月12日 23時14分16秒 | Weblog
 米国のオバマ新政権が動き出し、ブッシュ前政権とは異なった国際協調路線を明確に打ち出した。「新冷戦」とまでいわれた米露関係も、今後は融和に向かう可能性が出てきた。といっても、米国は東欧のミサイル防衛計画継続を言明するなど、これまでの安保政策を当面引き継ぐ方針と見られる。ロシアも当面は米国の動きを見守る構えで、両者の腹の探りあいが続くことになろう。

 米国の新政権がロシア側と初めて顔を合わせた2月上旬のミュンヘン安保政策会議。まず、バイデン米副大統領が、緊張した対露関係の「リセットボタンを押すときだ」と述べ、仕切り直しを明言した。だが、個々の問題ではミサイル防衛計画の継続を明言するなど、強硬姿勢を変えず、「協議には応じる」という姿勢を示すにとどまった。これまでの一方的な行動から、話し合い路線に変更したものの、強硬姿勢を変えるかどうかは不明だ。

 これに対して、バイデン副大統領と会談したロシアのイワノフ副首相も米国の対話路線を歓迎しながらも、「すぐ反応しなければならないものではない」と述べ、米国の出方を当分見守る考えを示した。いわば双方ともジャブの応酬に終わったということだ。

 最初の「接近戦」を踏まえて双方とも初の首脳会談の日取りを調整しているが、4月2日のロンドン・サミット前の日程は決まらず、結局このサミット期間中に首脳会談が行われることになりそうだ。というのも、首脳会談を急いで行っても目に見える結果の出そうなものはないことが分かったからだ。両国間の重要案件は①アフガニスタンへの増派問題②年末に失効する核軍縮条約問題③東欧ミサイル防衛計画などだが、いづれも長期交渉が見込まれている。

 ロシアの有力紙コメルサントによると、困った米国の外交担当者は、メドベージェフ大統領がしきりに強調している汚職対策を取り上げ、汚職防止で共同コミュニケを作成しようという動きもあると伝えている。とりあえず合意できそうなものを集めて両国の関係改善をアピールしようという作戦らしい。

 だが、そんなことで関係改善を取り繕っても意味はない。両国の新政権とも始まったばかりだ。今は姑息な手段を考えるより、じっくり腰を落ち着けて関係改善を探ることを考えるべき時だ。

「期待」と「失望」が混在の北方領土返還要求全国大会

2009年02月08日 23時33分24秒 | Weblog
 北方領土の日の制定から28年目を迎えた2月7日、東京・九段で恒例の北方領土返還要求全国大会が開かれた。今年はプーチン首相の訪日が予定されるなど、いつになく領土問題解決への機運が高まっているので、盛り上がり状況を肌で感じようと出かけてみた。だが、麻生首相ら政府要人は相変わらず官僚の書いた文章を棒読みしており、国会議員ら有力政治家の姿も少なく、出席者からも「風化」や「熱気のなさ」を嘆く声が目立った。

 会場の九段会館には、各地で返還運動を続けている民間人約1000人と、麻生首相や各政党の代表、それに元島民の家族・遺族らが出席した。まず北方四島の現状や人々の暮らしが「ビザなし交流」訪問団が撮影した写真で紹介された。これまでは道路状況の悪さや壊れそうな公共施設が主流で、貧しさとインフラのひどさが強調されていたが、今回は港湾が整備され、公共の建物が新築同様に生まれ変わり、人々の生活が一新した様子が映し出された。ロシア政府が一昨年あたりから多額の予算を投入してインフラ整備を進めている成果が現れてきたのだ。

 続いて政府要人、政党代表、民間運動家、元島民らが舞台に上がり、あいさつや意見を表明した。初めて祖父と一緒に北方四島を訪れた小学生の体験談や、京都で教育者会議を立ち上げた元校長の話、「国は無策すぎる。いつまでこういう運動を続けないといけないのか」と声を張り上げた青年会議所代表の話が印象に残った。

 これに引き換え、政治家の発言では、自分たちの努力不足を棚に上げて運動の風化を嘆く元自民党幹事長、政府の取り組みに熱気が感じられないとやたら大声を張り上げる野党議員らが目立ち、次世代に委ねずに領土問題を解決しようという「覚悟」が伝わってこなかった。

 麻生政権は今月18日にサハリンで行われる日露首脳会談で領土問題を取り上げ、「四島の帰属問題を解決し、最終的解決への進展を目指す」(麻生首相)としているが、1回や2回の会談で長年の懸案が解決するわけがない。本気で取り組むなら、政府・与党できちんと態勢をつくり、じっくり腰をすえてやらなければ無理だ。この日の政府・与党要人の話を聞いても「麻生政権の人気回復に役立てば」という、その場限りの「意気込み」しか感じられなかった。

本当にあった、うそのような怖いお話!

2009年02月03日 18時13分14秒 | Weblog
 こんなことってあるのかな、というような話をロシアの英字新聞「モスコー・タイムズ」で見つけました。日本ではありえない(?)、ロシアらしい話です。

 ロシア最大の航空会社「アエロフロート」の機内で、パイロットの出発前のアナウンスが聞こえてきました。でも、最初は何を言っているかわからず、乗客は何かの間違いかなと思ったそうです。始めはロシア語で、次に英語に切り替えたものの意味不明だった。そのうちに「この男は酔っている!」と気付き、乗員たちに「パイロットを替えてくれ」と頼みました。ところが、乗員たちは「パイロットが酔っているなんてありえない」と言って取り合わなかったそうです。

 機内はパニック状態になり、乗客は思い思いに乗員や会社幹部に訴え始めました。アエロフロート側はなかなか乗客の言うことを聞こうとしませんでしたが、乗客の中に有名人が乗っていて、彼女が訴えると会社側もしぶしぶ言うことを聞き、パイロットを交代させることになったといいます。

 その後、コックピットから出てきたパイロットは顔が赤く、目がしょぼしょぼしていて、足元もふらついていたそうです。酔っ払っていることは明らかでした。ところが、会社側はその後も、パイロットが酔っていたことは認めず「パイロットを替えたのは乗客が集団ヒステリー状態になっていたからだ。交代による出発遅れの損害が大きい場合は乗客に対し、損害賠償請求訴訟を起こす」と開き直ったといいます。

 その後、くだんのパイロットは事件前夜、誕生日で酒をしこたま飲んだことが分かりました。そのときの酔いがコックピットに入っても残っていたことは間違いありません。だが、アエロフロート側はその事実が明らかになると、今度は「パイロットがたとえ酔っていたとしても、そんなにたいした問題ではない」と開き直っているそうです。ちなみに、そのパイロットは今も病気治療中とかで、仕事に戻れるかどうかは不明という。

 この事件は昨年暮れに起きたもので、酔ったパイロットがそのまま操縦していたらどうなっていたかと考えると、空恐ろしい話です。みなさんはどう思われましたか。ロシアの官僚主義のひどさに驚きましたか、それともウオツカの国・ロシアではよくある話と思われましたか。