飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン露大統領、ベラルーシ大統領選の正当性を容認、混乱長期化へ!  

2020年08月30日 16時19分27秒 | Weblog
8月9日の大統領選後、混乱が続く旧ソ連・ベラルーシで29日、新たな動きがあった。一つは首都ミンスクで女性たちが参加するデモがあり、約1万人が参加、これまでに拘束された人々を釈放するよう求めたこと。もう一つは、大統領選後、沈黙を守っていたプーチン・ロシア大統領が選挙の正当性を明確に認め、ルカシェンコ大統領の当選を支持したことだ。このためプーチン氏は不正選挙と認定した欧州連合(EU)と対立することになり、ベラルーシの混乱は長期化する見通しとなった。

ミンスクでのデモは「女性の行進」と命名され、首都中心部を女性達がプラカードや花束を持参して行進した。そして警備する多数の治安部隊の隊員に対し、花束を手渡し、拘束されたり暴行を受けたりした人々への支援を訴えた。治安部隊員は花束を受け取らなかったが、現地で取材していたロシア人特派員は「デモ参加者はミンスクの有能な女性達で、彼らの平和を求める行動は見ている人たちに大きな印象を与えた」と書いている。

一方、プーチン大統領は親密なルカシェンコ大統領の6回目の当選を認めることで、今後も積極的に支援していく決意を固めたと見られる。プーチン氏は旧ソ連の崩壊で失われた国家連合を再構築しようと努力しており、その第一弾としてベラルーシとの連合を強く呼びかけている。ルカシェンコ大統領はこれまで趣旨には賛成しながら、自国の事情を考慮して積極的には動かなかった。だが、今回の事態を受けてロシアとの関係を強化しつつ、自らの大統領権限を維持する考えと見られる。

これに対し、ルカシェンコ大統領を「欧州最後の独裁者」とみなす欧米諸国は、今回の事態を「ベラルーシを民主化するチャンス」ととらえている。このため、大統領選で善戦した主婦候補のチハノフスカヤ氏をリトアニアに脱出させ、ルカシェンコ大統領を追放する方針と見られる。だが、双方とも決定的な打開策を持っておらず、混乱は長期化する可能性が高い。今後、米国など大国が解決に乗り出さない限り、泥沼化する恐れもある。(この項終わり)
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ベラルーシで選挙不正への抗議行動が全国に拡大!

2020年08月20日 10時32分29秒 | Weblog
8月9日に旧ソ連・ベラルーシで行われた大統領選で不正があったとして、6選したとされるルカシェンコ大統領の退陣を求める抗議行動が全国的な広がりを見せている。抗議行動の主役をつとめているのは選挙で2位と見られる主婦のチハノフスカヤ氏で、政権側に経済的圧力を加えるため、全国的なストを呼びかけている。これを受けて欧州連合(E U)は選挙結果に改ざんがあったと認定、選挙結果や抗議行動への暴力に関わった責任者への制裁を行う方針を決めた。

今回の選挙もこれまで同様、ルカシェンコ大統領の圧勝と見られていたが、逮捕され選挙に出られなくなった著名ブロガーの夫に代わって立候補した妻のチハノフスカヤ氏が得票を伸ばし、自身の得票が6、7割に上ったと語っている。反大統領派への弾圧が激しくなったため、いったんリトアニアに脱出したが、市民代表らが参加する政権移行のための「調整評議会」をベラルーシに設置する準備を進めている。こうした動きを受けて、国営の車両生産や金属加工の大工場が相次いでストに参加している。また、国営放送の従業員の間でもストが始まっていて、一部の放送が再放送の番組に差し替えられる動きも出ている。

一方、ルカシェンコ大統領は憲法改正後に大統領権限を移譲する可能性に言及したが、即時辞任や再選挙は拒否している。その陰で、大統領と親しいロシアのプーチン大統領に連日電話をかけ、支援を求めている模様だ。プーチン氏はこれまで、ベラルーシとの連合国家構想を推進するため、ルカシェンコ大統領に働きかけていたが、当面積極的な支援は行わず、E U諸国の首脳らと連絡を取り合い、事態の収拾を目指す考えと見られる。

ベラルーシはロシア、ウクライナとともにスラブ系住民が多数を占めている。プーチン氏はこの三カ国を基盤に、旧ソ連のような連合国家を建設したい考えだが、ウクライナとはクリミヤ半島の強制編入問題で依然対立が続いていて、解決の見通しは立っていない。このためプーチン氏は、一番親近感のあるベラルーシをまず連合に加えたいとしており、今後も様々な手を使ってベラルーシの取り込みに動くものと見られる。これに対し、米国やEU諸国はベラルーシを親欧米国家にしようと狙っており、ポスト・ルカシェンコ政権を巡ってロシアと米国、EUとの間の綱引きが活発化する可能性が強い。(この項終わり)


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