飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

「日本政府はロシアとの平和条約締結を期待せず」との露紙報道に一言!

2020年05月20日 09時38分51秒 | Weblog
日本外務省は19日、2020年版外交青書の中で北方領土の主権を明記し、2019年版で削除した法的立場の記述を復活させたが、ロシア紙「独立新聞」は同日付の電子版で「日本政府はもはやロシアとの平和条約締結を期待せず」との見出しで伝えた。この報道は何を意味するのだろうか。

独立新聞の電子版によると、日本外務省は毎年報告する外交青書の中で、北方領土の主権明記を定式化していたが、昨年の報告では「北方領土は日本に帰属する」との表現が削除され、ロシアとの平和条約締結への期待を含ませていた。ところが、今年の報告では北方領土の主権明記が復活したことから「日本政府の平和条約締結への期待が消えたのだろう」と書いている。独立新聞はロシアの中でも政府寄りではない、中立的な新聞とみられている。

独立新聞によると、ロシアとの領土問題が日本側に有利な条件で解決するという期待が日本で浮上したのは、2014年のウクライナ危機後である。そこで安倍首相はロシアから譲歩を引き出せると判断してプーチン大統領と会談を重ねた。そして2018年11月、安倍首相は大統領との会談で「われわれはこの問題を次世代に引き継がないことを確認した」と述べ、ロシアとの平和条約締結を誓った。これを受け、日本メディアは2019年1月、ロシアが日本側に2島返還を提案したと報じた。

だが、ロシア極東日本研究センターのキスターノフ代表は、ロシア側の現在のスタンスについて「プーチン大統領が2019年6月に述べているように、クリル諸島(北方4島)には日本に引き渡す島はない。日本側が第二次大戦の結果を認めるのが先決だ。こうした条件では日本側が平和条約締結を受け入れないだろう」と指摘した。その上で、同代表は「日本側は北方領土交渉はまだ終わったわけではないと思っているが、安倍首相自身は任期中の解決は無理だと思っているに違いない」と述べた。

安倍政権としては、2019年の外交青書で北方領土の主権明記を削ったため、保守層の反発を食らったことから今回、復活させたのだろう。だが、ロシア側が、この変更には裏があると深読みするのも無理はない。このところ、日本は韓国や中国との関係が良好ではないうえ、新型コロナウイルスが猛威を振るっているだけに、ロシア側は日本政府の平和条約締結への熱意が冷めたと理解したに違いない。だが、その理解は間違っているとロシア側にあえて言いたい。日本はすでに75年間も待っているのだから。(この項終わり)

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カザフスタン・ナザルバエフ終身大統領の長女、上院議長解任!

2020年05月03日 13時40分38秒 | Weblog
中央アジアのカザフスタンで5月2日、ナザルバエフ終身大統領の後継者とみられていたダリガ・ナザルバエワ上院議長が突然解任された。上院議長は終身大統領の長女で、昨年3月、ナザルバエフ氏の大統領辞任後に選出されていた。解任された理由は不明だが、事実上の任命権はナザルバエフ氏にあり、後継者争いが再燃化するのでは、との見方も出ている。

ナザルバエフ終身大統領は、ソ連時代からカザフスタンの指導者として君臨し、独裁的権力を握っていた。だが、78歳になる直前の昨年3月、大統領職を辞任し、トカエフ上院議長を後任に任命した。ダリガ氏はナザルバエフ終身大統領の3人姉妹の長女で56歳。3女のアリヤ氏はキルギスの元大統領の息子と結婚している。ナザルバエフ氏は現在も大統領代行を務め、国家安保会議議長、さらに与党党首も兼務して院政を敷いている。

3日付けのロシアのコメルサント紙電子版によると、ダリガ上院議長解任の第一報は2日朝、カザフスタン大統領府のサイトから流された。「大統領の命令により、ダリガ上院議員の権限が停止された」という内容で、解任の理由などの説明は一切なかった。上院議員を解任されると、自動的に上院議長職から外される。一方、トカエフ大統領は自分のツイッターで「ダリガ氏の活発で実り多い仕事ぶりに感謝する」とのコメントを発表した。

元老院とも呼ばれる上院は定員49人で、このうち15人はナザルバエフ終身大統領が指名し、残り34人は地方機関から選出される。このため、今回の上院議長の解任はナザルバエフ終身大統領の同意を得て行われたか、あるいは終身大統領の意に反して行われたかのどちらか、との見方が出ている。ナザルバエフ氏の後継者には、長女のダリガ氏、マシモフ国家保安委員会議長、次女ディナラ氏の娘婿で富豪のクリバエフ氏らの名前が上がっている。

トカエフ氏は外交官出身で、後継者決定までのつなぎの大統領と見られている。このため、長女ダリガ氏が本命とされていたが、今回の上院議長解任でその目は消えたとの見方が強い。残る後継候補の中から本命が選ばれる可能性が高い。カザフスタンは石油・天然ガスに依存しているが、ロシア同様、資源価格の伸び悩みで限界が見えてきている。このため本格的な経済立て直しが求められており、思い切った人事が行われるのではとの見方も出ている。(この項終わり)
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