飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ジスカールデスタン元仏大統領、ロシアのクリミア半島編入を「擁護」!

2015年05月30日 11時43分28秒 | Weblog
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フランスの第3代大統領、ジスカールデスタン氏(89)は訪露中の29日、モスクワ大学で講演し、「クリミア半島は一度もウクライナ領だったことはない」と述べ、ロシアのクリミア編入を事実上擁護する発言をした。ただし、ロシア一国で決める問題ではないとし、国際会議を開いて討議すべきだと提案した。

ジスカールデスタン氏は独立共和派の政治家で、1974年の大統領選で左派統一候補を僅差で破って当選した。大統領として欧州通貨制度の創設など、欧州統一を推進したが、81年の大統領選で社会党のミッテラン候補に敗れた。

29日付けのロシア経済紙コメルサント(電子版)によると、ジスカールデスタン氏はモスクワ大学で学生を前に約30分間、欧州連合(EU)の外交政策をテーマに講演した。この中で、ロシアをEUのメンバーにするかどうかを議論したことは一度もないと述べ、「ロシアはEUの最も重要なパートナーである」と強調した。

さらに、ジスカールデスタン氏はこれまでロシアと西側の間で経済制裁を行うような対立を避けてきたことを指摘し、「EUはロシアに対する厳しい制裁を科す試みに反対すべきだ」と訴えた。また、同氏は欧州とウクライナとの関係について「われわれはウクライナを欧州の一員にするという問題を討議したことはない。ウクライナは欧州の軍事同盟に入るべきではない」と指摘。ウクライナ危機の解決策として完全な停戦を実現し、ウクライナを非中央集権国家にすべきだと提案した。

ジスカールデスタン氏は講演で、28日にプーチン大統領と会談したことを明らかにし、「大統領は私に『ロシアはウクライナの国境を変更するつもりはないが、世界中で誰もこのことを知らない』と話していた」と語った。

最後に同氏はクリミア編入問題について「歴史を学ばなければいけない。クリミアは一度もウクライナ領だったことはない」と指摘し、この問題で国際会議を開いて討議するよう世界に向けて呼びかけた。

ジスカールデスタン氏は欧州統一に向けて尽力した政治家として知られているが、ロシアのクリミア編入を擁護するような発言を行うとは思わなかった。もちろん、歴史的な観点からの意見で、これを国際社会が承認するためには関係各国が参加する国際会議で討議する必要があるとしている。事態の打開案として検討すべき意見ではないだろうか。(この項おわり)



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プーチン大統領の訪日問題で見えてきた日本側の課題!

2015年05月24日 08時49分44秒 | Weblog
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21日に東京で行われた「日本・ロシアフォーラム」(毎日新聞社、ロシア新聞社主催)で日露の要人や専門家が意見を交換し、日露双方の課題が浮き彫りになった。日本側には、プーチン大統領の訪日が実現すれば北方領土問題などが前進するとの楽観論が感じられるが、ロシア側には厳しい見方が多く、安倍晋三首相にどれだけ問題解決への覚悟があるかが問われそうだ。

今回のフォーラムに出席のため来日したナルイシキン下院議長はプーチン大統領の側近で、対日政策を事実上仕切っているといっても過言ではない。その下院議長が再三懸念を表明していたのは、安倍政権が米国政府の影響力からどれだけ距離を置けるか、だった。

下院議長はまずフォーラムでの講演で「日露両国から数千㌔離れた国が妨害しようとしている」と、米国が日露の接近にくぎを刺している現状を批判した。今回のフォーラム開会中もラッセル米国務次官補が会見で「我々はロシアに平常通りの対応はしていない」と述べ、日露の政府高官の相互訪問などに慎重な対応を求めた。

さらに下院議長は別の会見で広島・長崎への原爆投下から70年たつことを指摘し、「(原爆使用の当否は)今に至るまで国際法上の評価を得られていない」と述べ、間接的ながら米国を批判した。ロシア側は日米同盟に基づき、米国との関係を緊密化する日本への警戒感を強め、日米の協調にくさびを打とうという狙いがあるのは明らかだ。

最近のプーチン大統領の発言で気になるのは4月下旬、北方領土問題で記者団に「歴史を深堀すればロシアも異なる態度を取れる」と語ったことだ。この意味するところは、北方領土は日露どちらにとっても固有の領土ではない、という意味だと日本通のストレリツォフ・モスクワ国際関係大学教授が解説している。そうなると、アイヌ民族固有の領土とも理解でき、北方領土は日本固有の領土という日本側の主張が通用しなくなる恐れがある。

同教授によると、プーチン大統領は日本がウクライナ紛争で強硬な西側との関係正常化の窓口になり、ロシアへの経済制裁緩和に一役買ってくれると期待していただけに、最近の安倍首相の態度に「少し失望している」という。

さらに、安倍政権がエネルギー源として再び原発を重視する政策を進めているため、石油とガスの需要が減り、ロシアのエネルギーを売り込む余地が狭まることを心配しているようだ。そうなると、石油とガスの供給で日本との関係改善をもくろんでいたプーチン政権の狙いが外れるからだ。

要は安倍政権に、米国の圧力をはねのけてもロシアと関係を強化しようという覚悟があるかどうかである。それがなければ、日露の新時代は開けず、北方領土問題の解決もおぼつかない。安倍首相の対露政策への意気込みの本気度が今こそ問われている。(この項おわり)

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ロシア国民の過半数、ウクライナ紛争長期化の責任は欧米指導者にあると回答!

2015年05月11日 02時08分12秒 | Weblog
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ウクライナ紛争は昨年2月の政変から1年3カ月続いているが、長期化の原因は米欧の指導者のせいと考えている人がロシア国民の過半数に上ることが世論調査の結果から明らかになった。また、ウクライナ東部で起きているウクライナ軍と親露派武装勢力との戦闘が戦争に発展する可能性があると心配しているロシア国民も49%いることが分かった。

この調査は、ロシアの中立系世論調査機関、レバダ・センターが4月中旬、全国で1600人を対象に行ったもの。その結果によると、東部ウクライナの戦闘が長期化している理由を尋ねたところ、「米国と西側の指導者がこの戦闘の責任をロシアに負わせ、世界での影響力を抑え、価値観を押し付けるために利用している」と回答した人が56%にのぼった。

2番目に多かった回答は、ウクライナの指導者が経済的問題から国民の目をそらし、自己の権力を守るために戦争気分を必要としているというもので、27%だった。「ロシアの指導者がドネツクとルガンスク両州の軍人を支持するため、紛争に干渉しているからだ」と答えた人は6%だった。11%は回答を保留した。

また、ウクライナ東部で親露派武装勢力とウクライナ軍との軍事衝突が戦争に発展することを恐れている人は49%、ロシアと西側諸国との軍事衝突が戦争に発展する可能性があるとみる人は47%にのぼっている。戦争になる可能性がないとみる人は40%台だった。

さらに、ロシアはウクライナとの関係でまずどんな目的を実現すべきかとの質問に「ウクライナとの友好関係を回復する」と答えた人が一番多く、40%だった。次いで「クリミア半島を強化する」と回答した人が26%。以下は「ロシアとウクライナとの経済協力の強化」「ウクライナのNATO加盟禁止」「ウクライナ向け天然ガスの価格強化」などの順だった。

この調査結果は、概ねプーチン政権が述べていることを受けた内容で、政権側の反欧米キャンペーンが浸透しているともいえる。その一方で、ウクライナとの関係改善を強く求めていて、同じスラブ民族として共存していきたいという願いがうかがえる。米欧の反露キャンペーンが強まるなかにあっても、冷静に対応しようという気持ちは失われていないようだ。

ウクライナ紛争で米国政府が米軍空挺部隊をウクライナに派遣したことで、ロシアと米国の代理戦争になるとの見方が強まっている。その一方、ロシアは米国の介入を抑えようと中国との連携を強めている。このため新冷戦、あるいは再冷戦が起きるとの見方もあり、和平に向けて国際社会の真剣な取り組みが求められている。(この項おわり)


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ウクライナ紛争は長期戦となる見通しが濃厚に!

2015年05月03日 09時22分30秒 | Weblog
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ウクライナ紛争を巡りポロシェンコ・ウクライナ大統領は先月末、東部のドンバス地方とクリミア半島を奪還するまで戦争は終わらないと明言した。ロシア側もウクライナ東部の国境沿いに軍部隊を集結させ、戦闘を継続する構えを見せており、長期戦になるのは必至とみられている。

ポロシェンコ大統領は4月30日のテレビ・インタビューで、「戦争はウクライナがドンバス地方とクリミア半島を取り戻すまで終わらない」と語り、朝鮮半島やイスラエルのように戦闘が長期化するとの見通しを示した。また、大統領は「我々は妥協しない」と付け加えた。

ウクライナ紛争は今年2月にロシア、親露派武装勢力、ウクライナ、EU(欧州連合)の4者会談で停戦に合意したが、ロシア側はその後もウクライナとの国境にロシア軍部隊を集結させ、親露派に重火器を供給しているとされる。このためウクライナも戦闘継続の腹を固めたものとみられる。

ロシア軍に詳しい軍事専門家は、プーチン大統領がウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟を断固阻止するため、クリミア半島と東部ウクライナを死守するとみている。紛争地があるとNATO加盟は事実上認められないからだ。そうなると、ウクライナ紛争を話し合いで解決する余地はないことになる。

一方、米国は米軍の訓練部隊をウクライナ西部に派遣、ウクライナ軍の訓練を開始している。ロシアは米国のウクライナ軍事支援の第一歩とみなしており、今後ロシアと米国の代理戦争の様相が強まる可能性が高い。そうなると、ますます和平の道は遠のくことになる。

ソ連崩壊で終止符を打ったはずの東西冷戦は、ウクライナ紛争でよみがえり、新冷戦、あるいは再冷戦の状況が生まれつつあるといえよう。この動きを止めるにはどうしたらいいのだろうか。国際社会が世界戦争の危険性を認識して早めに手を打たないと、大変なことになりかねない。(この項おわり)
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