飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ウクライナは新大統領の就任でどう変わるのか?

2019年05月18日 10時05分49秒 | Weblog
ウクライナで4月21日に行われた大統領選の決選投票で、7割の得票率で圧勝した人気コメディアン、ウラジーミル・ゼレンスキー氏(41)が5月20日、新大統領に就任する。軍事的対立が続くロシアとの関係正常化が最大の課題だが、プーチン大統領は依然として様子見の状態だ。

大統領の就任式を前に、ポロシェンコ前大統領の閣僚や政府高官は辞任する動きを見せている。タス通信によると、クリムキン外相は17日、SNSを通じて辞任する考えを表明し、欧州連合(EU)外相会議への出席をキャンセルした。そのほか、ポルトラーク国防相やルツェンコ検事総長も辞任するとの見方が流れている。こうした動きは政権交代に伴うもので、クリムキン外相は最高会議(国会)選挙に立候補する意向を表明している。

問題は、新大統領が最高会議を解散するかどうかだ。ゼレンスキー氏の側近は解散する方針だと述べているが、最高会議幹部は解散に反対しているという。次回の最高会議選挙は今年10月に予定されているが、憲法の規定によると、予定の半年以前なら解散できるとされている。タイムリミットは5月下旬と見られる。

ゼレンスキー新大統領とすれば、解散して与党議員を増やし、政権運営をスムーズにしたいところだ。決選投票では投票した有権者の7割の支持を得たものの、最高会議ではポロシェンコ前大統領の支持者が依然多数派である。新大統領は今後、早急に支持母体を固める必要があるが、最高会議選挙までに間に合うかどうか。

一方、2014年のクリミア半島のロシア編入以来、対立が続くロシアとの関係をどうするかも重要な課題だ。そのカギを握るプーチン大統領の意向がいまだにはっきりしない。ゼレンスキー氏は真っ向からロシアと対立するポロシェンコ政権とは異なり、ロシアとの対話路線を打ち出しているが、プーチン氏は対話に応じるかどうかなどについて沈黙を守っている。

EU側には、ロシアとの対話を促す空気も出ているとされる。当面、ウクライナと独仏露の4カ国による和平協議の再開が待たれるが、それを推進するリーダーシップがはっきりしない。ゼレンスキー氏の大統領当選こそ、紛争に飽き飽きしているウクライナ国民の声を反映しているといえるのだが。

ロシアにとっても、欧米側の経済制裁が重荷になり、ロシア経済が下降状態にある現実を変えたいのはヤマヤマだろう。そのためには、影響力のあるプーチン大統領が動くのが一番だ。今こそ、独仏などの欧米諸国がロシアを後押しして紛争収拾に乗り出す好機ではないだろうか。(この項終わり)