飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアとウクライナの戦争は帝国崩壊につきまとう悲劇?

2023年02月24日 08時30分18秒 | Weblog

ロシアがウクライナに攻め込んでからちょうど1年たった。戦争はいまも止むことなく続き、さらに続くとみる識者が多い。いったいなぜそうなるのか、われわれ島国の民族にはわかりにくいことだが、世界ではこうした帝国の崩壊後にほぼ必然的に起こる現象らしい。

こうした現象をわかりやすくまとめた記事が、24日付けの毎日新聞の2面に掲載された。「帝国の崩壊 復讐の紛争」という見出しで紹介されている英国ケンブリッジ大学名誉フォローのドミニク・リーベン氏のインタビュー記事だ。これを読んで納得することが多かった。読んでない人に、この概略を紹介したい。

ソ連はレーニンという思想家が指導して建国されたイデオロギー国家だった。世界一広い地域から構成され、高度な文化も持っていた帝国だった。その国家が崩壊して30年以上経ってから戦闘が起きたのは、ソ連という帝国の解体に伴い起きた事象だと考えると、より適切に理解できると、強調している。

では、帝国が崩壊するとなぜ紛争が避けられなくなるのか。リーベン氏は、その理由として第一に、国際情勢に力の空白が生じて紛争を招きやすくすることをあげる。二番目に、帝国の崩壊に伴い、新たな国境線を引かなければならないが、もともと多くの民族が暮らしてきたため対立が起こりやすくなると指摘する。

特にソ連の場合、ロシアやウクライナなど15の共和国の境界があらかじめ決められていて、ソ連崩壊と同時に境界がそのまま国境となった。この際、ロシア国外にロシア系市民2500万人が取り残された。とりわけウクライナは、ロシア系が多い南部と東部を領土に組み込んだため高いリスクを抱えることになった。

だが、しばらくは新生ロシアの力が弱かったため国境がそのまま放置されたが、2000年にプーチン氏が大統領に就任すると、ソ連崩壊を「ロシアにとっての悲劇」と強調するようになった。そしてロシアが政治、経済で安定したことから、ウクライナの国境を変えられると自信を深めたとリーベン氏は指摘する。

つまり、今回のウクライナへの侵攻は、プーチン政権の中核を占めるソ連時代の情報機関構成員による「遅れてきた復讐」であると言い切る。そして今回の侵攻は、30年に及ぶ屈辱、後退、敗北への恨みを晴らそうとしたと結論付けている。そしてこれは第二次大戦後のドイツとの共通点が多いと述べている。

今後の見通しについてリーベン氏は、ロシアとウクライナの戦闘はこれからも続くと見ている。停戦が成立しても、戦闘が再発するような状態が10年、20年と続いていくという。インドやパキスタンの対立など、根本から解決されずにいる紛争は少なくなく、これが世界の現実だと思うしかないようだ。(終わり)

 

 

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