飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ウクライナ大統領、政権内部の引き締めに窮余の一策?

2022年07月19日 09時55分09秒 | Weblog
ロシア軍がウクライナへの侵攻を開始してからまもなく5カ月目に入るが、主戦場のドンバス地域ではロシア系住民が多いうえ、重要なポストを抑えているため、ウクライナ側は思うように制圧できず、難航している。こうした状況下で、ウクライナのゼレンスキー大統領は7月17日、同国の検察庁と情報機関(保安局)のトップを更迭する強硬策に打って出た。

更迭されたのは、ウクライナ検察庁のベネディクトワ検事総長と、保安局のバカノフ長官の2人。その理由としてゼレンスキー大統領は、ロシア軍に制圧された東部ハリコフ州や南部へルソン州で、今も検察と内務局の職員らが職務を続けていることを「ロシアへの協力」とみなし、検察庁と保安局のトップに対し、国家反逆罪として責任を取らせたといえる。

この背景には、ロシアは自分たちが制圧した地域に親露的な「軍民行政府」を一方的に設置し、将来のロシア編入を先取りしてロシア化政策を進めていることがある。一方、ベネディクトワ検事総長はロシア軍による戦争犯罪の捜査を指揮しているが、ゼレンスキー大統領は検察庁による戦争犯罪の立件が遅いことなどに不満を抱いていたとされる。捜査・情報機関のトップ2人がそろって更迭された背景には、対ロシア対策を急がせようという狙いが込められている。

ウクライナは欧米からの軍事援助を背景に、反転攻勢に向けた動きを強めているが、時間が経過する度にロシアの軍事力や経済力が回復し、ウクライナとの差はどんどん広がっているのが実情だ。このためウクライナは起死回生の対応策を探っているが、米国をはじめとする西側諸国の支援も尻すぼみになりつつある。ゼレンスキー大統領による捜査・情報機関のトップ解任は、ウクライナの窮状を国内に伝え、政権内部を引き締めようという、窮余の一策といえそうだ。(この項終わり)

ロシア軍、ウクライナ東部のルガンスク州を制圧したが・・・!

2022年07月06日 13時43分07秒 | Weblog
ロシア軍とウクライナ軍との戦闘は4カ月目に入り、ウクライナ東部のドネツク州をロシア軍が制圧できるかどうかが焦点になってきた。ドネツク州は、ルガンスク州と並んで、ウクライナ東部の中でロシア系住民が最も多い地域である。この州を制圧すれば、ドンバス地方全体を抑えることになるため、ロシア軍は残る部隊を大量動員して戦いを仕掛けて来ると見られる。

プーチン大統領は一時、今秋にも開かれる予定の第二次大戦の終戦記念日に絡んで、対ウクライナ戦での勝利を宣言する考えではないかと見られていた。そのため、ウクライナ東部のルガンスク州に続いてドネツク州も制圧し、その成果を大々的に発表し、対ウクライナ戦争の幕引きを狙っているとの見方が出ていた。だが、その見方も、ウクライナ東部の戦闘が長引いたため、今やすっかり消えている状況だ。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、プーチン大統領の目論見をぶち壊そうと、自軍の部隊にハッパをかけると同時に、米国などの欧州諸国に対し、最新兵器や資金援助を要請している。だが、同じ欧州諸国でもロシアから石油・天然ガス類を購入しているドイツなどと、輸入に頼っていない米国などとの温度差が広がりつつあり、一枚岩にはなっていない。今後、欧州諸国の足並みをどう揃えて行くのかが焦点になってくるだろう。

日本も西側諸国の一員として、米国などと足並みを揃えているものの、ドイツと同様、ロシア産の石油・天然ガスを購入している身である。特に緊急課題になっているのは、極東サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の権益・資産をロシアの管理下に置くプーチン大統領令への対応である。このまま日本企業がこの事業から撤退することになれば、その影響は計り知れない。この問題をうまくまとめないと、岸田内閣の命取りにもなりかねない。

ロシアとウクライナの争いは、最終的にはプーチン大統領がどの段階で停戦協議に乗って来るかだ。笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は毎日新聞とのインタビューで「プーチン氏の戦略目標が『ウクライナを取り戻す』ということならば、ウクライナの中立化を軸にした停戦協議は恐らく成立しない」と、今後の見通しを語っている。そうなれば戦闘は先が見えない長期戦になる。関係各国は今こそ、ロシア、ウクライナ双方が歩み寄れる手立てを早急に探って行く必要がある。(この項終わり)