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プーチン・ロシア大統領を政治家に育てた恩人、サプチャク元サンクトペテルブルク市長の娘が今月初め、反プーチン集会に参加、拘束された。罰金ですんだものの、その後、ロシアの有名な音楽賞の授賞式への出席を拒否されたことが分かり、波紋が広がっている。
話題の人は、テレビの司会や社交界のセレブとして有名なクセニア・サプチャクさん。ソ連崩壊期にサンクトペテルブルク市長を務めたアナトーリ・サプチャク氏(故人)の娘で、昨年暮れからの反プーチン派の集会・デモでは、リーダー格の活動家として頭角を現している。
今月7日のプーチン大統領就任式前夜、モスクワで行われた反プーチン派大規模集会でデモ隊が治安部隊と衝突、450人以上が拘束された際、クセニアさんも拘束され、モスクワの地区裁判所で1000ルーブルの罰金を言い渡された。その後、6月1日に予定されている音楽賞の授賞式に授賞者として出席が決まっていたが、急きょ出席が取り消された。さらに、優秀記者賞の授賞式への出席も取りやめになったという。
こうした措置に対し、クセニアさんは「主催者側は理由を説明してくれないが、国営テレビ局が私の出演する番組を整理しているのは間違いない」と、当局側によるテレビ界からの「締め出し」を示唆している。これを受けて、クセニアさんと一緒にキャスターを務めているアンドレイ・マラホフ氏は音楽賞授賞式をボイコットすると語っている。
こうした事態に、一番頭を痛めているのはプーチン大統領に違いない。大統領は1985年から90年までKGB中佐として東ドイツ・ドレスデンに駐在していたが、ドイツ統一を目の当たりにしてKGBを辞め、郷里に帰った。その後、大学の恩師のサプチャク市長に拾われ、同市第一副市長に任命され、中央に進出するきっかけになったからだ。市長に相当の恩義を感じている半面、その娘が自分の追い落とし運動を積極的に進めていることに苛立ちも感じているだろう。
メディアの中でも、テレビの影響力を重要視するプーチン大統領は、テレビの怖さも熟知している。美人で若者のファッション・リーダーとして人気のあるクセニアさんをテレビ界から締め出せば、逆に若者の間で人気が高まることが分かっている。といって、このまま放っておくと反プーチン派の強力な指導者になる可能性もある。老獪な政治家であるプーチン氏は、どんな手をうってくるだろうか。(この項おわり)