飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン大統領は「恩人」の娘の過激な行動に頭を痛めている!?

2012年05月29日 15時49分27秒 | Weblog
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 プーチン・ロシア大統領を政治家に育てた恩人、サプチャク元サンクトペテルブルク市長の娘が今月初め、反プーチン集会に参加、拘束された。罰金ですんだものの、その後、ロシアの有名な音楽賞の授賞式への出席を拒否されたことが分かり、波紋が広がっている。

 話題の人は、テレビの司会や社交界のセレブとして有名なクセニア・サプチャクさん。ソ連崩壊期にサンクトペテルブルク市長を務めたアナトーリ・サプチャク氏(故人)の娘で、昨年暮れからの反プーチン派の集会・デモでは、リーダー格の活動家として頭角を現している。

 今月7日のプーチン大統領就任式前夜、モスクワで行われた反プーチン派大規模集会でデモ隊が治安部隊と衝突、450人以上が拘束された際、クセニアさんも拘束され、モスクワの地区裁判所で1000ルーブルの罰金を言い渡された。その後、6月1日に予定されている音楽賞の授賞式に授賞者として出席が決まっていたが、急きょ出席が取り消された。さらに、優秀記者賞の授賞式への出席も取りやめになったという。

 こうした措置に対し、クセニアさんは「主催者側は理由を説明してくれないが、国営テレビ局が私の出演する番組を整理しているのは間違いない」と、当局側によるテレビ界からの「締め出し」を示唆している。これを受けて、クセニアさんと一緒にキャスターを務めているアンドレイ・マラホフ氏は音楽賞授賞式をボイコットすると語っている。

 こうした事態に、一番頭を痛めているのはプーチン大統領に違いない。大統領は1985年から90年までKGB中佐として東ドイツ・ドレスデンに駐在していたが、ドイツ統一を目の当たりにしてKGBを辞め、郷里に帰った。その後、大学の恩師のサプチャク市長に拾われ、同市第一副市長に任命され、中央に進出するきっかけになったからだ。市長に相当の恩義を感じている半面、その娘が自分の追い落とし運動を積極的に進めていることに苛立ちも感じているだろう。

 メディアの中でも、テレビの影響力を重要視するプーチン大統領は、テレビの怖さも熟知している。美人で若者のファッション・リーダーとして人気のあるクセニアさんをテレビ界から締め出せば、逆に若者の間で人気が高まることが分かっている。といって、このまま放っておくと反プーチン派の強力な指導者になる可能性もある。老獪な政治家であるプーチン氏は、どんな手をうってくるだろうか。(この項おわり)






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ロシア国民の不満は「政治」から「暮らし」に移っている!!

2012年05月25日 11時26分07秒 | Weblog
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ロシアの「政治の季節」が一段落し、国民の不満が「政治」から「暮らし」に移っていることが、最新の世論調査結果から浮き彫りになった。プーチン政権への反発は消えつつあるが、暮らしへの不満から抗議行動に参加しようという国民は増えつつあることも分かった。

 この世論調査は有力な調査機関「世論基金」が今月13日から20日まで全国で実施した。25日付けのコメルサント紙(電子版)に掲載された調査結果によると、「近く現政権への抗議集会やデモが行われた場合、参加しますか」との質問に対し、一番多かったのは「現政権を支持も反対もしていない」で63%だった。これは昨年同期の調査に比べ、21ポイント増えている。「現政権に反対なので抗議行動に参加する」と答えた人は6%で、昨年同期より10ポイント下がっている。「現政権には反対だが、抗議行動には参加しない」は7%、「現政権を支持しているので参加しない」は10%だった。

 また、抗議行動に参加したくなるような不満を感じているか、との質問に、37%の人が「感じている」と答えた。この数字は調査開始の1週間前に比べ、7ポイント増えている。これに対し、「感じていない」と答えた人は59%で、逆に5ポイント減っている。

 一方、「抗議運動が増加する前提条件は何か」との質問に対し、最も多かったのは「生活水準の低さと貧しさ」と答えた人で11%。次いで「物価上昇とインフレ」と答えた人が10%だった。プーチン政権への不満を上げた人は6%、不正選挙を指摘した人は2%にとどまった。

 この結果について同紙は何人かの専門家の分析を掲載している。最近、抗議行動への参加意向が増えている点についてオスロン世論基金代表は「ロシア人は伝統的に不満を積極的に示さない傾向があるが、大統領選後の抗議デモに対し、政権側が治安部隊を出動させ、多数の参加者を拘束したため、反発する人が増えている」と見ている。

 一方、抗議行動の参加条件に政治への不満よりも暮らしへの不安が多かったことについて、グドコフ・レバダセンター代表は「社会への不満は、貧しい地方と豊かな都市部で異なる。地方は政権寄りなので経済的な要求を出す傾向があるが、逆に都市部は経済的要求をしない傾向が強い。インフレは昨年初めに目立ったが、すでに人々はこれを乗り切り、慣れてきつつあるのではないか」と分析している。

 今回の世論調査から、ロシア国民の大勢は3期目のプーチン政権がどうなるか、様子を見ているようにみえる。新内閣の組閣が終わり、いよいよ始動するが、これまでの政権と変わらないと分かれば国民は動き出すだろう。新内閣が金太郎飴と同じように、切っても切ってもプーチンの顔が出てくるようでは、国民も我慢できなくなるのではないだろうか。(この項おわり)





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プーチン2.0政権の新内閣は「たらい回し内閣」!

2012年05月22日 10時32分33秒 | Weblog
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プーチン露大統領は21日、新内閣の閣僚名簿を決定した。21の閣僚ポストのうち15ポストを交代させたが、中心となる副首相7人のうち新任は2人だけで、大統領と首相のように「たらい回し」している形だ。また、旧KGB出身幹部らの「シロビキ」を代表するセーチン副首相は内閣から外れるものの、大統領府の一員として残る予定で、チーム・プーチンの陣容に大きな変動はなさそうだ。

今回は、これまでになくプーチン大統領が力をいれて組閣したとされる。通常、首相のメドベージェフ氏が組閣名簿を作成して大統領がそれをチェックする形だが、今回は大統領が自ら閣僚候補を面接して最終決定したという。3期目にかけるプーチン氏の意気込みが伝わってくる感じだが、米国での主要国サミット(G8)に欠席する理由として「新内閣の組閣」を上げたため、つじつまを合わせたとの見方も出ている。

 新内閣の特徴を上げると、第1に、セーチン副首相らプーチン流強権政治の担い手とされてきたシロビキ出身者がほとんど姿を消したことだ。それに代わってリベラル派のドボルコビッチ大統領補佐官を第一副首相(経済担当)に任命するなど、経済関係の閣僚に実務官僚を多く登用した。これは、昨年暮れ以来の反プーチン旋風に配慮した人事とも言える。

 第2に、交代するとみられていたセルジュコフ国防相、ラブロフ外相、ロゴジン副首相(軍需産業担当)ら外交・安保関係の閣僚を留任させたことがあげられる。今後も欧米に対し、「強いロシア」を主張していく方針に変更がないことを示したものとみられる。

 第3に、第1次プーチン政権時代からクレムリンの「イデオロギー担当」としてプーチン氏を支えてきたスルコフ大統領府副長官を昨年暮れ、副首相に抜擢し今回、内閣官房長官を兼務させたことだ。西側からロシア民主主義の異質性を指摘された際、国益を重視した「主権民主主義」を打ち出した“切れ者”で、メドベージェフ首相の監視役も務めることになりそうだ。

 プーチン氏は2000年に初めて大統領に就任した時から、地元のサンクトペテルブルクや旧KGBから友人、後輩などを多数登用し、チーム・プーチンを形成してきた。その中核メンバーは約50人といわれ、仲間内で重要なポストを回している。今回もこのチームのメンバー多数が閣僚ポストを占めている。

 さらに、プーチン氏は更迭したセーチン副首相、ワイノ内閣官房長官、レビチン運輸相らチームのメンバーを大統領府に集め、補佐官や顧問に起用する方針だ。大統領府長官はKGB時代の同僚であるイワノフ氏が務めており、ここをプーチン政権の「司令部」にする意向かもしれない。

 今回の組閣からプーチン大統領は、これまで以上に経済発展と富国強兵を推進し、「大国復活路線」の総仕上げを目指していることが明確になった。だが、反プーチン勢力が増える状況の中で、エネルギー資源依存から脱却し、経済を現代化する道は険しい。柔道で鍛えた心身を最大限発揮して難局を乗り切れるかどうか、注目していきたい。        (この項おわり)
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「3期目のプーチン政権はもっと民主的に」と迫る世論調査結果!

2012年05月17日 11時46分40秒 | Weblog
 
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プーチン露大統領は3期目に入り、これまでプーチン氏の強みと言われてきた、実務的で教養があり、男らしいプロフェッショナルという面が以前より弱まってきたとの見方が強まっている。ロシアの有力な世論調査機関レバダ・センターが4月に行なった調査結果から浮かび上がった。専門家は「往年の高支持率を取り戻すには、もっと公平で民主的になる必要がある」と、3期目のプーチン政権に注文をつけている。

 この調査は「プーチン大統領の強みはなんだと思いますか」との質問を行い、それを大統領1期目の2000年1月、2期目の08年2月の調査結果と比較して分析したものだ。それによると、今回の調査では「実務的で活動的性格」と答えた人が一番多く39%だった。2番目は「政治的、行政的経験が豊富」で31%。3番目は「円熟した経験」「教養あるプロフェッショナル」「指導性」の3つで、いずれも28%だった。

 今回の結果を過去2回と比べると、どの回答も08年の前回調査よりも10ポイント前後下がっている。とくに前回の調査で62%の人が評価した「実務的で活動的」とされる面が13ポイント下がり、ほぼ1回目の調査結果に戻っている。また、「教養あるプロフェッショナル」との評価も前回の52%から14ポイント下がっている。さらに、「強く、男らしい」というプーチン氏のイメージも前回の34%から18%に低下しているのが目立っている。

 この結果についてレバダ・センターのグドゥコフ社長は「プーチン氏の支持率は依然高いが、堅固で揺るがないという大衆の持つ彼のイメージが減退している。強力な独裁的指導者像は徐々に消えつつあり、絶対的な大統領という見方はもうなくなった」と分析している。また、ビノグラードフ・ペテルブルク政治基金理事長は「プーチン大統領の下で今と同じ状況が続き、もしかすると悪くなるかもしれないが、良くなることはありえないと人々は思っている」と話している。

 では、国民のプーチン人気を今以上にアップさせるにはどうしたらいいのだろうか。ミンチェンコ国際政治評価研究所長は「もっと公平で民主主義的な政治を行うべきだ。そのためには側近の汚職をやめさせ、新興財閥を撲滅し、大規模な司法改革を実行すべきだ」と提言している。

 プーチン大統領の3期目がスタートしても、反プーチン派の活動は収まっていない。今はモスクワなど大都市に限られているが、こうした動きが地方に広がるとプーチン政権は不安定になってくる。プーチン大統領が6年間の任期をまっとうするためには、国家主義的な強権政治を改め、もっと民主的な政治を推進するしかないことが、今回の世論調査でより明確になったといえよう。(この項おわり)





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プーチン大統領がG8サミット欠席を決めた本当の理由は?

2012年05月11日 10時37分57秒 | Weblog
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米ホワイトハウスが9日、ワシントン郊外で18、19日に開催するG8サミットにプーチン露大統領が欠席すると発表、様々な憶測が飛んでいる。ロシア側は新政権の組閣を理由に上げているが、事情を探るともっと深い理由があることが分かってきた。

 ロシア各紙の記事を総合すると、プーチン大統領のG8欠席を決めた時期が「ここ数日中」という説と「大統領就任式の前から」という説との2種類ある。「数日中」という説によると、大統領が組閣にあたって自ら大臣候補のクビ実検を行なうので18、19日のサミットには行けないというものだ。これは公式発表の通りである。

 ところが、就任式が行われる7日以前から決まっていたという説は、プーチン大統領の就任後の初外遊をどこにするかという発想からだという。米国へはここ数年、メドベージェフ首相が大統領の任期中に何度も訪問しているが、オバマ大統領は1度しかモスクワに来ていない。そのため、プーチン大統領の初外遊地としてはふさわしくないというものだ。「大国の尊厳」を重視するプーチン氏らしい発想といえる。

 一方、アメリカサイドからの情報によると、欠席理由に3つの説がある。1つ目は、メドベージェフ首相の方がオバマ大統領だけでなく、西側の首脳と個人的に良い関係を持っているので首相を派遣するという説だ。2つ目は、プーチン大統領は西側のメディアに強権的とのイメージがあるので批判を避けるため、というもの。3つ目は、プーチン政権の新たな「リセット」ではないかとの推測である。米国としては、これが一番気がかりなところだ。というのも、ミサイル防衛など、米露で協議しなければならない様々な問題を抱えているからだ。

 別の情報源によると、先週、モスクワを訪問した米国の外交官がプーチン氏と会談、今後の日程を打ち合わせた際、オバマ大統領は自らの大統領選の都合で、9月にウラジオストクで開催されるAPEC首脳会議に出席できない旨を伝えたという。このことがG8欠席に関係している可能性は十分ある。

 以上の情報から分かることは、プーチン大統領がいかに初外遊にこだわっているかだ。大国外交を目指すプーチン氏からすれば、国際舞台への再デビューを華々しく飾りたいという強い願望がある。とくに、APEC首脳会議は自ら招致した会議で、プーチン大統領が政治生命をかけて進めているともいえる重要な会議である。当然オバマ大統領も出席すると期待していたプーチン氏が、がっかりして「しっぺ返し」をしたのかも知れない。いずれにしろ、プーチン2・0政権は、これまで以上に一筋縄ではいかない政権になることは間違いない。(この項おわり)
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「喫煙大国」ロシアの首都モスクワでタバコ規制が一段と進む!?

2012年05月10日 11時50分58秒 | Weblog

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 タバコ消費量世界3位のロシアで喫煙を規制する動きが強まっているが、首都モスクワではレストランやバーでの喫煙が2年以内に全面禁止になる見通しだという。

筆者がモスクワに駐在していた90年代には、モスクワのどのレストランに入っても、タバコのけむりがもうもうとしていた。その中で人々はニコチンたっぷりのタバコを吸っていて、とても我慢できずに外へ飛び出した記憶がある。

ところが、2000年にタバコを吸わないプーチン大統領が登場してから、タバコ規制が進み、08年には世界保健機関(WHO)のタバコの規制に関する枠組み条約に加盟した。これにより、タバコの広告などが禁止された。さらに政府は禁煙場所を増やすほか、タバコ販売への規制を強め、価格も値上げして喫煙者を大幅に減らす政策を進めている。

 モスコー・タイムズ紙の10日電子版によると、モスクワ市では独自のタバコ規制案を作成し、国よりも厳しい規制でタバコ喫煙者を締め出す方針だ。とくにレストラン、バー、仕事場では2年以内に全面禁煙に踏み切る計画だという。

 さらに、市の規制案によると、アルコール類の販売箇所を大幅に減らすほか、酒類販売業者の数を制限する計画。これらに違反した業者に対しては、罰金額を増やして対応する方針だ。嗜好品であるタバコとアルコールの消費量を制限して、市民の健康増進を図る考えだという。

 ところで、WHOの調査によると、ロシア国民全体では40%が喫煙している。男性の喫煙率は60%、13歳から15歳の少年も4人に1人が吸っているという。
 
 こうした規制の推進論者であるプーチン氏が大統領に返り咲いたことから、さらにタバコや酒類の規制が強まるのではないかとの見方がでている。だが、ゴルバチョフ共産党書記長が始めた禁酒法が悪評を買い、国民の人気が急速に下がった苦い経験もある。それでなくても人気が下がり気味のプーチン大統領だけに、「行政があまり過激にやりすぎないで」と、モスクワ市の動きを心配しているかも。(この項おわり)
              
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反プーチン派と治安部隊が衝突、プーチン2・0政権はやはり強権的!?

2012年05月07日 11時21分49秒 | Weblog
7日のプーチン大統領就任式前夜、モスクワの中心部で反プーチン派と治安部隊が衝突し、450人が拘束された。当局公認の集会・デモで治安部隊が武力行使したのは昨年暮れの不正選挙抗議集会以来、初めて。プーチン新政権がこれまでの柔軟戦術から、力で押さえ込む強硬姿勢に転じたといえ、収束に向かっていた反プーチン勢力が再び攻勢に出るのは必至の情勢だ。

 今回の反プーチン派の行動は、プーチン氏の3期目の大統領就任に抗議、「百万人行進」と銘打って多数の市民の参加を目指したものだ。当初、市当局には参加者数を5千人と届け出たが、カルーガ広場からボロトナヤ広場に行進する間に参加者が増え、4万人規模に膨れ上がった。

 ロシア各紙の6日付け電子版によると、ボロトナヤ広場での集会中に武装した治安部隊と集会参加者との間で小競り合いが起き、治安部隊が催涙ガスを発射した。これに対し、デモ隊側が座り込みを始めたところ、治安部隊が集会参加者をゴボウ抜きにし、拘束を開始したという。

 同日深夜までに拘束されたのは、集会主催者でブロガーのナバルヌイ弁護士、ネムツォフ元第1副首相、ウダリツォフ左派戦線指導者ら450人にのぼった。また、この衝突で、治安部隊員4人が負傷したという。

 治安当局はこれまで集会・デモの参加者との衝突を極力回避してきたが、3月の大統領選を無事乗り切り、就任式にこぎつけたことから強硬姿勢に転じたとみられる。もともとプーチン氏の側近には、旧KGBなど「シロビキ」と呼ばれる実力部隊幹部が多く、反対派を力で押さえつける強権的統治が主流である。メドベージェフ大統領時代は多少、そういう面が弱まっていたが、プーチン大統領の復帰と共に、強権主義が復活したといえそうだ。

 これによって勢いづくとみられるのが反プーチン派勢力だ。もともと右から左まで様々な傾向の人々が寄り集まった運動体で、大統領選でも統一した方針を打ち出せなかった。まして組織を一本化するのは難しいが、中流階層を基盤に「強権政治はウンザリ」という人々が多く、政権側の締め付けが強まれば強まるほど団結力が強まっていくだろう。

 新政権は当面、メドベージェフ大統領が始めた政党の登録緩和や選挙改革の実現に取り組むことになる。だが、有権者の権利を抑えようとすれば反プーチン派の抵抗を招くのは明らかで、対応を誤ると新政権はとんでもないしっぺ返しを受けることになる。第2次プーチン政権の行方を占う試金石といえよう。     (この項おわり)

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民主党の前原誠司政調会長、プーチン大統領就任後の日露首脳会談をお膳立て!

2012年05月04日 11時46分54秒 | Weblog
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7日のプーチン大統領の就任式を前に訪露した民主党の前原誠司政調会長は、ロシア政府の要人らと次々に会談し、今月中旬の日露首脳会談に向け、“露払い役”を務めた。民主党政権として初めて公式な米国訪問を実現した野田佳彦首相は、今度はプーチン大統領と会談し、長年の懸案である北方領土問題に本気で取り組む姿勢を示すべきだ。

第1次プーチン政権(00―08年)時代から対日政策を指揮してきたプーチン氏の再登場は、日本にとって懸案解決の大きなチャンスである。そのためにも、事前の準備が重要である。前原政調会長は、ラブロフ外相、ナルイシキン下院議長ら要人と会い、野田首相の意向を伝えてプーチン氏が西側記者らとの会見で提案した「始め!」の合図と同時に動ける態勢作りを推進した。

とりわけ2日のラブロフ外相との会談で、前原政調会長は「領土問題の解決がお互いの経済協力や貿易量の飛躍的な増大につながる」との見方を示し、プーチン氏の要望に応えるとの野田首相のメッセージを伝えた。これを受け、ラブロフ外相も改めて野田首相と玄葉外相の年内のロシア訪問を要請したのである。

前原氏は昨年2月、外相としてロシアを訪問し、ラブロフ外相と会談したが、当時はメドベージェフ大統領の国後島訪問とそれを「暴挙」と批判した菅直人首相発言の直後で、会談は文字通りトゲトゲしい雰囲気の中で行われた。ところが、今回はガラリと変わり、友好ムードの中で互いに率直に語り合ったようだ。

2人が領土問題でどのような意見を交わしたかはわからないが、前原氏は会談前、ロシアのテレビ・インタビューで「北方領土問題については56年間議論を尽くし、同じことを繰り返しても仕方がない」と語っており、ラブロフ外相とも現実的な解決方法を巡って腹の探りあいを行なったとみられる。

折しも前原氏の訪露中の3日、国営ロシア通信が北方領土問題に関し「(日本にとっての)歴史的機会は二度とない」とする匿名の大統領高官による発言を伝えた。日本が90年代に領土問題解決の歴史的機会を逃したとする見解だが、このタイミングでロシア・メディアから流されたのは、プーチン大統領復帰への日本側の期待感を一蹴しようという狙いもあるが、むしろ日本側の期待値を下げて交渉をロシア側に有利に運ぼうという目論見ではないかと思われる。

逆に言えば、それだけプーチン新政権が本気で領土問題の解決と日露関係の改善に努めようとしていると受け取れる。そうしたロシア側の意気込みに応えるためには、野田政権は足元を固めてロシアとの懸案解決に全力で取り組む決意が必要だ。対米関係が一段落した今こそ、その絶好のチャンスではないだろうか。(この項おわり)


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