飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

北方領土問題の解決は「極めて不透明だ」とロシア紙報道!

2013年04月30日 07時59分45秒 | Weblog
国際政治・外交 ブログランキングへ

安倍晋三首相は29日、クレムリンでプーチン大統領と会談、10年ぶりに日露共同声明を発表したが、肝心の北方領土問題に関しては“仕切り直し”以上の成果がなかった。このためロシアの有力紙は「領土問題解決の先行きは極めて不透明だ」と指摘している。

今回の安倍首相訪露に関するロシア側の報道は、日本側の大々的な報道に比べ、極めてクールな扱いにとどまっている。日本の首相が財界人120人を同行して“鳴り物入り”でロシアを訪問した割には、具体的な成果が少なかったからだろう。

ロシアの高級経済紙コメルサント(29日電子版)は日露首脳会談を「平和条約の加速を指示」との見出しで報道。「楽観的な評価にもかかわらず、領土問題解決の展望はこれまで同様、極めて不透明だ」と明記し、その理由として共同声明の中に「北方領土問題」の記載がないことを指摘している。

政府系のロシースカヤ・ガゼータ紙は「日本の首相がプーチン大統領にスキーをプレゼント」の見出しで贈り物の交換を大きく扱っている。安倍首相はソチ冬季五輪の成功を祈り、日本製のスキーウエアとスキー板を贈り、大統領は昼食会で年代物の1855年製ワインでもてなした。プーチン大統領は「このワインは非常に象徴的な贈り物だ。なぜなら1855年は日露通好条約(下田条約ともいう)が調印された年だからだ」と解説したという。

大統領は、この条約こそ日本側が返還を要求している北方四島を日本領と定めた条約であることを知っていて、このワインを振舞ったのだろうか。日本側はその事実を十分認識していただけに、「大統領はどういう意図でそのワインを振舞ったのか」と戸惑ったようだ。

確かに29日発表の共同声明には、首脳・外相の相互訪問から外務・防衛閣僚の定期協議、官民による日露投資プラットホーム設置など、協力推進のための仕掛けが多数列記されているが、具体的な取り決めは少ない。とりあえず仕組みを“てんこ盛り”にした感は否めない。

とりわけ領土問題で、解決の方向性や工程などが共同声明に盛り込まれなかったのは残念だ。声明では「これまでに採択されたすべての諸文書と諸合意に基づいて進める」としか明記されておらず、両国の外務省に事実上、丸投げしたといっても過言ではない。これでは今後も大きな前進は望めそうもない。

プーチン大統領は「引き分け」解決を主張していたはずだが、今回は具体的な提案はなかった。日本政府としては、今後は“プーチン頼み”ではなく、自ら具体的な解決案を提案するなど、積極的に打って出なくてはいけない。まさにこれから安倍首相の指導力が問われることになろう。(この項終わり)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍首相のGW訪露は期待できるのか?

2013年04月24日 07時23分32秒 | Weblog
国際政治・外交 ブログランキングへ

 安倍晋三首相のロシア訪問が近づき、アベノミクス同様、北方領土問題解決への期待感が高まりつつある。中国や韓国との領土紛争が緊迫化している中で、唯一話し合いのルールができているからである。だが、戦後68年たっても解決しなかった難問が、そう簡単に解決するわけはない。首脳交渉が今後どう進むか、じっくり見守りたい。

安倍首相とプーチン大統領との首脳会談は29日に予定されている。日本の首相の訪露は実に10年ぶりで、それだけ日露関係が疎遠だったといえる。外交問題、とりわけ領土問題は首脳同士の個人的関係が重要なだけに、まず安倍首相とプーチン大統領との間で信頼関係を築くことが肝心である。

次いで、両国とも問題解決を強く望んでいるかどうかだが、ロシアはユーロ危機とシェールガス革命で経済の軸足をアジアに求めざるを得ない状況にある。日本もエネルギー資源の分散化・多角化を図らなければならず、両国の関係強化を阻んでいる領土問題の解決が急務となっている。

さらに、両国の期待感を高めているのは中国の台頭とそれを巡る国際情勢の変化である。米国中心の“中国包囲網”が狭まる中で中国はロシアとの関係強化を望んでいるが、3月に行われた習近平国家主席の訪露で分かったように、ロシア側は意外にクールで、日本が中露の間に入り込める余地は十分ある。

とりわけ領土問題では、ロシア国内でも解決に向けた具体案が出始めており、「2島返還でおしまい」との強硬姿勢に変化が出てきている。プーチン大統領は早くから「引き分け」を主張していて、2島と4島の中間での解決を目指しているとみられる。日本側がきちんとした提案をすれば受け入れられる可能性はある。

今の状況では、今回の首相訪露で具体的な解決案まで協議される可能性は少ない。双方の解決への意欲を確認し、解決への方法あるいは工程を議論するところまで進めば成功と言えるだろう。具体的な解決案協議は今夏の参院選で自民党が勝利し、安倍政権が後顧の憂いなく領土問題に取り組めるようになってからだ。

早ければ来年にも領土解決のヤマ場が来るかもしれない。それまでに日本の世論が一定の方向にまとまることが肝心だ。依然として4島一括主権確認や4島返還論が大手を振っているような状況では真の解決はおぼつかない。まず政府・自民党が日露双方で受け入れ可能な解決案を作成し、国民に示すべきだ。(この項終わり)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハルピン学院卒業生の生存者わずか1割に!

2013年04月17日 08時56分54秒 | Weblog
国際政治・外交 ブログランキングへ

 (ハルピン学院記念碑祭で卒業生の現状報告する麻田平蔵さん)

ロシア語のスペシャリスト養成学校として旧満州(中国東北部)のハルピンに創立されたハルピン学院の記念碑祭が16日、東京・八王子の高尾霊園で開かれ、卒業生や遺族多数が出席した。終戦で廃校になってからすでに68年たち、卒業した生徒のうち生存者は全体の1割に減ったことが報告された。

 都内の桜はすっかり葉桜になったが、ここ高尾霊園ではまだ八重桜などが咲いていて、春爛漫といったところ。陽気もめっきり暖かくなる中、高齢の卒業生や遺族らが三々五々、霊園内の特設テントに集まった。11時すぎ、全員が学院記念碑前に集まり、昨年亡くなった物故者14人に1分間黙祷を捧げた。

 このあと、学院24期生の麻田平蔵さん(89)が卒業生の現況を報告した。学院生は1期から26期までで、合計1412人の卒業生のうち連絡の取れている人は144人で、いずれも85歳以上という。生存者は現在、ちょうど1割ということになる。麻田さんは昨年、急性肺炎で3カ月入院したが、今ではすっかり回復したと語った。

 記念碑祭の進行役の神代喜雄さんは25期生。卒業後、旧日本陸軍で通訳をしていて終戦を迎え、戦後は通信社記者などを務めた。神代さんは「ハルピン学院は1920年に創立されており、7年後に100周年を迎えます。それまで皆さん、頑張ってください」と呼びかけた。

 このあと姉妹校の富士高等女学校の卒業生が校歌を合唱、続いてハルピン学院寮歌「松花の流れ」を合唱し閉会した。桜の花の下で写真撮影をしたあと、テントの中でお弁当を開き、思い出話に花を咲かせた。ハルピン学院の卒業生は戦後、全体で同窓会を開いていたが、1999年を最後に幕引きし、それ以降は毎年4月16日に高尾霊園で記念碑祭を開いている。

 ハルピン学院は、元南満州鉄道総裁の後藤新平の肝いりで専門学校としてスタートした。1932年、ハルピン学院に改称し、満州国建国後は国立大学としてロシア語のできる官僚や商社マンを育てた。卒業生には翻訳家の工藤精一郎さん、ロシア文学者の内村剛介さんがいるが、2人とも故人になっている。

 麻田平蔵さんは高尾霊園の一角を購入して記念碑を建立、記念碑祭を主宰している。「私がいなくなっても息子や孫に引き継いでもらう」と宣言している。生存者が減っても、“ハルピン学院精神”は今後も遺族に引き継がれていくことは間違いない。(この項終わり)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プーチン大統領の資産は第1副首相の1%足らず?!

2013年04月14日 11時37分17秒 | Weblog
 国際政治・外交 ブログランキングへ

 ロシアの大統領府、政府は12日、昨年の高官の資産を公表したが、プーチン大統領の資産はメドベージェフ首相よりやや少なめの579万㍔(約1840万円)にとどまった。最高額のシュワロフ第1副首相に比べると1%足らずで、国民からも「これを信じろというのか。きちんと調査してくれ!」という声が上がっている。

 13日付けのロシア各紙(電子版)によると、今回の資産公開は、昨年相次いだ閣僚らの汚職発覚を受け、プーチン大統領のツルの一声で行われた。とくに外国での不正蓄財や不動産所有を厳しく戒め、近くそれらを禁止する法案を議会で採択する方針である。

 だが、その言いだしっぺの大統領の公開資産は、所得こそ前年より273万㍔(約865万円)増えたものの、家屋などの不動産、車などは前年と変わらなかった。メルセデスなどの高級外車を4台所有しているとの説もあるが、本人の申告では国産車のみ4台だった。

 公開資産が最高額だったシュワロフ第1副首相は、4億4800万㍔(約14億円)にのぼる。これは英国などで所有している土地や家屋を合わせたもので、妻と折半した形になっている。他の高官からも外国での資産に関して何件かの申告があったが、それほど大きなものはなかった。

 以前から、プーチン大統領自身が外国に不正蓄財しているとの疑惑があるが、今回の大統領の申告ではゼロだった。コメルサント紙のホームページには、記事に関して読者が感想などを書き込む欄があるが、この中で大統領や政府高官への怒りの書き込みが目立った。

 今回の資産公開について、政治評論家のミンチェンコ氏は「政府高官に対して資産の申告を厳しくするよう求めても、正直に申告するとは限らない。むしろ、より慎重に、ずる賢くなるだけだろう」と効果を疑問視している。

 国防省関連企業の巨額詐欺事件で大統領側近のセルジュコフ国防相が解任されたほか、APECの関連工事を巡る横領事件で地域発展省の前次官が逮捕されるなど、政府高官による汚職疑惑が相次いでいる。汚職で失った国民の信頼を取り戻すには、トップ自らがエリを正すしか道はないだろう。(この項おわり)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プーチン大統領、秋田犬「ゆめ」と戯れ、何を思うのか?

2013年04月11日 09時11分52秒 | Weblog
Прогулка Путина с собаками
 
 
国際政治・外交 ブログランキングへ

 昨年7月、秋田県からプーチン大統領に贈られた秋田犬のメス「ゆめ」は、ロシアでどうしているのだろうか。そんなことを考えていたら、プーチン大統領と雪の中で遊んでいる「ゆめ」の写真が10日、ロシア大統領府から公開された。「ゆめ」がプーチン大統領に贈られてから、写真が公表されたのは初めて。

 写真説明によると、この写真は3月24日、プーチン大統領がモスクワ郊外で犬2頭と散歩中に撮影された。「ゆめ」はもう1頭の大型犬に負けず劣らず、大統領と一緒に雪の中で戯れていて、とても元気そうに見える。日本を離れ、単身ロシアにわたって寂しい思いをしているのかと思っていただけに、ホッとさせる写真だ。

 犬好きのプーチン大統領には、ロシアの犬の他に外国から何頭か贈られたと伝えられるが、今回秋田犬を連れ出して写真を撮させたのには何か理由があるはずだ。「ゆめ」がかわいいから、だけではないだろう。策略家の大統領だけに、安倍晋三首相とのモスクワ会談が29日にほぼ確定したことから、首相を歓迎するシグナルを発信しているのかもしれない。

 大統領は極東・シベリア開発に向け着々と手を打っているが、対日政策では何を考えているのか。やはり北方領土問題は避けて通れないと、解決策を模索しているのだろうか。それとも、領土を餌にどんな経済協力を取り付けようかと画策しているのだろうか。この写真からは、無心に犬と遊ぶ愛犬家のイメージしか思い浮かばないが・・・(この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

反プーチン派のナバリヌイ弁護士、早々と次期大統領選に出馬表明!

2013年04月06日 11時44分19秒 | Weblog

国際政治・外交 ブログランキングへ

 プーチン政権に反対する野党指導者のアレクセイ・ナバリヌイ弁護士(36)は4日夜のロシア民間テレビ「ドーシチ」に出演し、次期大統領選に立候補する意向を表明した。次期選挙は5年後だが、横領罪に問われて裁判中のため、早めに意向を示して世論の支持を得たい作戦とみられる。

 モスコー・タイムズ紙の5日付け電子版によると、ナバリヌイ弁護士はテレビを通じて大統領選出馬の意思を示し、「もし当選したら、ロシアの天然資源を使って国民の生活レベルを飛躍的に改善したい」と抱負を語った。同氏が大統領選への出馬の意向を明らかにしたのは初めてとみられる。

 ナバリヌイ弁護士は、当選後の大統領の使命として国民の生活レベルの向上を掲げ、「エネルギー資源の豊富な国の国民が、ヨーロッパ諸国の国民よりも貧しく、希望のない状態で生活しているのはおかしい」と強調した。

 ナバリヌイ弁護士は、11年暮れに行われた下院選挙での不正に抗議する集会・デモで指導者のひとりとして活躍。その後も反プーチン運動を指導していたが、プーチン氏が大統領に復帰後、政権側から目の敵にされ、昨年、横領罪で起訴された。

 起訴状によると、09年、ロシア中部のキーロフ州の知事顧問をしていた際、公的企業からの木材の横流しに関与し、州政府に約3880万円の損害を与えたとされる。今月17日にキーロフ市で裁判が行われるが、有罪と判断されれば、最高10年間の禁錮形が言い渡される。そうなると、18年の大統領選に立候補できなくなる。この起訴について同弁護士は「政権側は厄介な人物を収監しようとしている」と反発している。

 プーチン大統領の政敵とみなされ、収監されて政治活動の芽を潰された有力な人物に、かつて「石油王」と言われたホドルコフスキー元ユコス石油社長がいる。ナバリヌイ弁護士は、彼の二の舞を恐れているに違いない。このため早めに次期大統領選への出馬意思を明らかにし、メディアなどを通じて世論に訴え、有罪―収監の事態を回避する作戦とみられる。

 一方、プーチン大統領は2日に行ったドイツ・メディアとのインタビューで、民主主義における強力な野党の存在を認め、「今日の世界では、経済でも政治でも、競争がなければ発展しない。だが、もちろん法律の範囲内でのことだ」と述べている。

ナバリヌイ弁護士はリベラル派の政治家として知名度が高く、今後民主勢力をまとめればプーチン大統領の強力なライバルになりうる。大統領としても、同弁護士の去就に無関心ではいられないだろう。今回の作戦が吉と出るか、裏目になるか、じっくりと見守りたい。(この項終わり)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アンナ・カレーニナ」の“舞台”に感動したが・・・

2013年04月03日 09時44分33秒 | Weblog
 
国際政治・外交 ブログランキングへ

 ロシアの文豪トルストイの名作「アンナ・カレーニナ」を新宿の映画館で見た。前評判通り、劇場型セットをふんだんに使い、舞台での“絵空事”と浮世の“現実”を分けて観客に見せた演出は素晴らしいと思った。その半面、原作を読み終えたばかりの私には、主役級の俳優の選択にちょっぴり違和感を覚えたことも指摘したい。

 ロシアの小説を映画化した作品はできるだけ見るようにしているが、今回の「アンナ・カレーニナ」は原作を読んだばかりだったので、どのように描かれているか楽しみにしていた。今更「初めて読んだ」というのも恥ずかしいほど有名な作品だが、この年になってから読んだが故に内容が理解できた気がした。

 ロシア文学者の沼野充義さんが映画のパンフレットに書いているとおり、この作品は一言で言うと「極め付きの不倫小説」だ。だが、140年も前に書かれた小説が、未だに「海外の長編ベスト100」(雑誌「考える人」掲載、新潮社)のアンケート調査で8位に付けているという事実を考えると、原作の内容の深さや、人間心理の描写の的確さに感嘆せざるを得ない。

 そういう観点から今回の映画をみると、アンナ役のキーラ・ナイトレイ、夫カレーニン役のジュード・ロウ、アンナの愛人ブロンスキー役のアーロン・テイラー=ジョンソンの3人の俳優のバランスに違和感を抱かざるを得ないのである。

 キーラは『パイレーツ・オブ・カリビアン』などで好演しているが、帝政ロシア時代の貴族の人妻役としては必ずしもマッチしていないのではないか。また、その相手のブロンスキー役のアーロン・テイラー=ジョンソンは22歳と若く、アンナを射止めた愛人役としてはちょっと物足りない。一方、夫カレーニン役のジュード・ロウは俳優としての経験も実績も豊富で、貫禄がありすぎる感じがする。

 俳優には私なりの不満が残るが、ロシアの大地の大きさ、自然の厳しさ、ロシア人の繊細さはよく描かれていたと思う。とくに、キティに振られた地方貴族のリョービンが“舞台”から大自然に戻るシーン、彼が農民に混じって広大な畑でカマで草を刈るシーンが目に焼きついている。

 トルストイは、アンナたちが住む絵空事の世界と、リョービンたちが住む現実を対比して、ロシアの大地に生きる生活の気高さや純粋さを強調したかったのではないか。これまであまり取り上げられなかったリョービンとその新妻キティが、映画の中でそれなりに描かれていたのは、監督や脚本家が原作者の意図をよく理解していたからだろう。

 私としては、この原作を読み、トルストイを再発見した思いである。ドストエフスキーもいいが、トルストイもいい。今はトルストイの世界にもっと浸りたい気分である。(この項終わり)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする