ロシアのプーチン大統領はロシア・メディアの編集長との会見で「ロシアは日本との関係を発展させるが、ロシア憲法の範囲内に限定される」と述べ、日本側の北方領土返還要求を受け入れない姿勢を強調した。ロシアのテレビが14日、流したもので、菅政権に対し、領土問題で厳しい姿勢で臨む方針を改めて示したと言える。
プーチン大統領は昨年7月、ロシアの憲法を改正し、領土の割譲を禁止する修正を行う一方、隣国との「国境画定交渉」については認めるとの例外規定を盛り込んだ。タス通信によると、憲法改正と日本との関係についての質問に対し、プーチン大統領は「憲法に対立する手段は一切取らない。北方領土の主権と日本との関係については、ラブロフ外相の担当だ。日本との境界線がどこにあるかは彼に聞いてくれ」と答えた。
ロシア外務省は、北方領土はあくまでロシア領であり、日本と領土交渉はしないとの立場を明言している。つまり、ロシア側は第二次世界大戦の結果、南クリル諸島(日本側の北方領土)が合法的にロシアに帰属したとの立場をとっていて、変更はありえないというのだ。これに対し、日本側は平和条約締結後に2島(歯舞諸島と色丹島)を日本に引き渡すと定めた「日ソ共同宣言」(1956年に日本と旧ソ連が締結)を交渉の基礎としている。
プーチン大統領の今回の発言は、日本側に北方領土を返還する考えのないことを改めて述べるとともに、この件を外相に丸投げしたとも取られかねないものだ。安倍前政権との北方領土交渉で、一時はロシアに北方領土の一部を返還する考えがあるのでは、との見方もあったが、絵に描いた餅に終わっている。菅首相は就任後の昨年9月、プーチン大統領と初めて電話で協議した際、「北方領土問題を次の世代に先送りせず終止符を打ちたい」と呼びかけたが、大統領は菅首相に冷水を浴びせた格好だ。
菅首相は現在、コロナ対策や東京五輪問題に手一杯で、ロシアとの領土交渉に取り組んでいる余裕はない。そうした状況を見越した大統領発言と思われるが、プーチン氏も今秋の下院選挙を控え、反体制派などへの対応に苦慮している。いずれにしろ、コロナ禍が収束するまで両者は動けないことから、菅首相の任期中に北方領土問題が動く可能性は消えたとみていいだろう。(この項終わり)
プーチン大統領は昨年7月、ロシアの憲法を改正し、領土の割譲を禁止する修正を行う一方、隣国との「国境画定交渉」については認めるとの例外規定を盛り込んだ。タス通信によると、憲法改正と日本との関係についての質問に対し、プーチン大統領は「憲法に対立する手段は一切取らない。北方領土の主権と日本との関係については、ラブロフ外相の担当だ。日本との境界線がどこにあるかは彼に聞いてくれ」と答えた。
ロシア外務省は、北方領土はあくまでロシア領であり、日本と領土交渉はしないとの立場を明言している。つまり、ロシア側は第二次世界大戦の結果、南クリル諸島(日本側の北方領土)が合法的にロシアに帰属したとの立場をとっていて、変更はありえないというのだ。これに対し、日本側は平和条約締結後に2島(歯舞諸島と色丹島)を日本に引き渡すと定めた「日ソ共同宣言」(1956年に日本と旧ソ連が締結)を交渉の基礎としている。
プーチン大統領の今回の発言は、日本側に北方領土を返還する考えのないことを改めて述べるとともに、この件を外相に丸投げしたとも取られかねないものだ。安倍前政権との北方領土交渉で、一時はロシアに北方領土の一部を返還する考えがあるのでは、との見方もあったが、絵に描いた餅に終わっている。菅首相は就任後の昨年9月、プーチン大統領と初めて電話で協議した際、「北方領土問題を次の世代に先送りせず終止符を打ちたい」と呼びかけたが、大統領は菅首相に冷水を浴びせた格好だ。
菅首相は現在、コロナ対策や東京五輪問題に手一杯で、ロシアとの領土交渉に取り組んでいる余裕はない。そうした状況を見越した大統領発言と思われるが、プーチン氏も今秋の下院選挙を控え、反体制派などへの対応に苦慮している。いずれにしろ、コロナ禍が収束するまで両者は動けないことから、菅首相の任期中に北方領土問題が動く可能性は消えたとみていいだろう。(この項終わり)