飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン首相、大統領選候補選びで「第三の候補」指名もあり得る!?

2011年04月28日 17時30分22秒 | Weblog
 来春のロシア大統領選を巡り、候補者選定の決定権を事実上握っているプーチン首相の一挙手一投足に注目が集まっている。焦点は首相自身が立候補するかどうかだが、その首相は27日の記者会見で「ジャーナリストが気に入る決定をする」と述べた。これは一体何を意味するのか?

 インタファクス通信によると、記者会見は首相の訪問先、スウェーデンの首都ストックホルムで行われた。記者団から「次期大統領選には首相が立候補するのか、しないのか?それともメドベージェフ大統領とともに、別の候補者を指名する可能性があるのか」との質問が出た。これに対し、首相は「この問題について話すのはまだ早すぎる。時間はまだある。我々は妥当な決定をする。あなた方は(その決定を)気に入り、満足するだろう」と答えたのだ。

 この答えは大筋では先々週、メドベージェフ大統領が再選への意欲を示したときの答えと同じだが、後半部分は新しい内容だ。つまり、ジャーナリストに対して「あなた方が気に入るような決定を行う」と答えている部分である。素直に取ればいわゆる「リップサービス」かもしれないが、一歩踏み込んで考えると今名前の挙がっているプーチン首相でもメドベージェフ大統領でもない、第三の候補を示唆していると受け取れないだろうか。

 さらに、プーチン首相はデンマークの首都コペンハーゲンでの会見でも「英フィナンシャルタイムズが首相に立候補せず、メドベージェフ大統領を再選させるよう求めているが、何かコメントがありますか」と聞かれた。首相は「大統領選の候補者は外国からの支持ではなく、ロシア国民からの支持が必要だ」と短く答えた。さすがにこの種の質問に辟易したのだろう。

 プーチン首相が第三の候補を指名するのをほのめかすような発言をしているのは、野党のカシヤノフ元首相である。これもインタファクス通信の記事だが、元首相はプーチン首相自身が次期大統領選に出馬すると見ているものの、情勢が変化すればプーチンは立候補を取りやめ、後継者に譲る可能性があるという。ただし、その譲る相手は「いかなる場合でもメドベージェフ大統領ではない」と言い切っている。それだけプーチンとメドベージェフの関係が悪化しているということなのだろうか。

 一方、大統領府顧問を解任されたばかりの政治評論家パブロフスキー氏は「プーチン陣営とメドベージェフ陣営はお互いに疑心暗鬼になっていて、もはやまともな話し合いができる状態ではない」と述べている。とはいえ、同氏はプーチンとの双頭体制を維持できるのはメドベージェフだけだとし、最終的にはメドベージェフが次期大統領選の候補になるとの見方をしている。

 以上のように政治家や政治評論家の話を聞いていると、一枚岩を誇った双頭体制も両陣営に分かれて角つき合わせているのは間違いないらしい。そうなると、これまで首相と大統領が語っていたような、話し合いによる大統領候補の一本化が出来ない可能性もある。その場合、まったく新しい第三の候補が登場することになるかもしれない。ロシアの次期大統領選びは、いよいよ面白くなってきた。

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プーチン・ロシア首相の経済大国目指す発言が憶測を呼んでいる!?

2011年04月24日 13時37分41秒 | Weblog
 メドベージェフ大統領が来春の大統領選への立候補を強く示唆すれば、今度はプーチン首相が大統領選を目指すマニフェストとも受け取られる「国民総生産倍増」計画を発表、ロシア政界は一気に「選挙の季節」に向けて動き出した。

 プーチン首相のびっくり発言は、先週下院で開かれた決算報告会で飛び出した。首相は年末に改選を迎える議員を前に演説し、「ロシアは不適切なリベラリズムと社会的なデマゴギーを元に実験をすべきではない」と改革派をけん制した。その上で「国家は今後十年間、確固とした、安定した発展が必要だ」と述べ、20年までにGDP(国民総生産)を倍増し、世界5大国の仲間入りを目指すことを宣言した。

 この計画に対し、多くのマスメディアは「次期大統領選へのマニュフェスト」と受け止め、首相がいよいよ大統領選への出馬を決意したとの見方をしている。メドベージェフ大統領の立候補示唆発言には「時期尚早だ」と抑えにかかった首相だが、自分はちゃっかり出馬に向けた準備を始めたというのだ。

 これに対し、「いや、そうではない。そんなことをすればプーチン出馬に不利になる」との冷静な見方をしているメディアもある。プーチンとすれば今秋くらいまで出馬の意思を明らかにせず、メドベージェフを抑えておけば、出馬宣言をしてもプーチンに対抗できないとの読みがあるというのだ。

 一方では、メドベージェフ政権の柱とも言うべきクドリン財政相が「経済戦略を深めるには政治的競争が必要だ」と発言し、一枚岩の双頭政権体制を公然と批判している。政権与党「統一ロシア」に次ぐ官製政党といわれる「公正ロシア」内部には、クドリン氏を同党の党首に担ぎ上げようとの動きもあり、政権内の亀裂が徐々に広がりつつある。

 いまロシアでは、次のようなアネクドート(小話)が国民の間でささやかれていると聞いた。それによると、ロシアの政界にはメドベージェフ派とプーチン派の二大派閥があり、互いに争っている。ところが、メドベージェフ大統領自身、自分がどちらの派閥に属しているのか分からないのだという。

 つまり、ロシア国家の実権は依然としてプーチン首相が握っていて、大統領といえどもプーチンの意向に反して行動を起こせない。その意味では大統領もプーチン派といえるが、側近たちはメドベージェフ派を結成して反プーチンの行動を取っている。その異常な事態を庶民はこのアネクドートであざ笑っているというのだ。さて、この宙ぶらりんの状態はいつまで続くのだろうか。
 

 
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ロシアのメドベージェフ大統領、次期大統領選に向けアピールしたが!

2011年04月14日 11時22分17秒 | Weblog
 日本は東日本大震災からようやく復興に向けて動き出したが、ロシアでは来年春の大統領選を1年後に控え、政界が事実上動き出した。その先陣を切ったのは、メドベージェフ大統領自身で、それに対し、プーチン首相は「まだ早すぎる」と抑えにかかっている。

 メドベージェフ大統領は昨年秋ごろから大統領選を意識した言動を続けてきた。それは最大のライバルであり、庇護者つまりパトロンでもあるプーチン首相に向けて自分の存在感を示すことだった。具体的には、首相から大統領再選への「お墨付き」をもらうことである。

 ところが、首相は「大統領選が近づいたら話し合って決める」といい続け、はっきりした態度を示していない。次期大統領選は来年3月に予定されており、すでに1年を切ったのに未だに首相の態度は煮え切らない。そこでBRICS首脳会議出席のため訪中するのを機に中国マスコミのインタビューに応じて、改めて再選への意思を示して首相の決断を促したという構図だろう。

 これに対し、プーチン首相は自分も大統領選に立候補することを排除しないとしつつ、「まだ選挙まで1年ある。もし我々が変なシグナルを出せば、行政機構の半分が変化を期待して止まってしまう」と時期尚早だと答えたのだ。裏を返すと、大統領選を巡って政界はメドベージェフ派とプーチン派に二分されている状態にあるということになる。

 メドベージェフ大統領は、あと1年弱しか残っていないとあせっている感じがするが、プーチン首相はまだ1年あると余裕しゃくしゃくの状態といえる。つまり、首相は結論を先送りにすれするほど、自分にとって有利だと踏んでいるからだ。それだけ国民の支持率が高いし、3分の2の議席を占める最大与党を握っているという自信もあるからだ。

 ところが、大統領は早く立候補を宣言して選挙運動を進めなければプーチン首相に勝てないという状況にある。最新の世論調査でも首相が27%の支持を得ているのに対し、大統領は18%と9%の開きがある。ただ、最近首相の支持率が下がり気味なのに対し、大統領の支持率が上昇傾向にあるのが救いである。

 では、大統領は首相の意思表示に関係なく、立候補を打ち出せばいいではないかという意見もあるが、首相の支持なくそうすれば潰されるのは目に見えている。軍や情報機関を握っているプーチン首相の恐ろしさは、身近でいやというほど目にしている。とてもそんなことは出来ない、というジレンマ状態にある。

 ロシアの新聞を見ても、識者の意見は様々だが、メドベージェフ大統領がプーチン首相と話し合って決めざるを得ないという点では一致している。憲法上の権限では大統領の方が圧倒的に優位なのに、実際は首相が実権を握っていて、この件でも決定権を持っているからだ。

 さて、これから二人はどうするのか。順当に行けばプーチン首相が影響力を行使しつつ、今年秋くらいまで結論を引き延ばして、メドベージェフ大統領に立候補を認めることになると思うが、ぎりぎりの段階で首相がメドベージェフ大統領に引導を渡し、自分自身が立候補するか、あるいは第三者を候補者に選ぶかも知れない。結局、民主主義とは言うものの、実際には双頭体制の二人に決定権が委ねられているのが、ロシア国民の最大の不幸といえないだろうか。
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福島原発事故はやはりチェルノブイリ並みの史上最悪の事故だった!!

2011年04月12日 13時22分38秒 | Weblog
 政府は12日、東電福島第1原発の事故について原子力施設事故の深刻度を示す国際評価尺度で最も深刻なレベル7に相当することを認めた。ロシアなど欧米の専門家は早くからチェルノブイリ並みの最悪事故とみていたが、政府はレベル5と評価するにとどめ、なかなか現実を認めようとしなかった。

 レベル7と判断した根拠について政府は、福島原発事故で放出された放射性物質の量が経産省原子力安全・保安院の推定で37万テラベクレル(テラは1兆倍)、内閣府原子力安全委員会が63万テラベクレルと推定したことをあげた。国際尺度では、この数値が数万テラベクレル以上の場合をレベル7と定めている。

 一方、これまで史上最悪とされてきたチェルノブイリ原発事故では、520万テラベクレルの放出があったとされ、福島原発より十倍以上多いことになる。だが、東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「放射性物質の放出量から見てチェルノブイリ事故に匹敵する、あるいは超えるかもしれない事故になったことを重く受け止めている」とコメント、今後も放射線の放出が続けばチェルノブイリを超える可能性を認めている。

 また、12日付けのロシア独立新聞によると、ドイツの放射線防止団体代表で物理学者のセバスチャン・プフリューバイリ氏は「情報を総合してみると、福島原発事故はチェルノブイリ事故よりさらに深刻な事態になるだろう」と予測している。事故の影響がどこまで広がるのか、まだ予測がつかないということだろう。

 さらに、日本の原発全体にとって由々しき問題が独立新聞で指摘されている。それは世界の原子力の元締めともいえる国際原子力機関(IAEA)に属する作業安全評価チーム(OSART)が独自の調査を元に日本の原発会社にいくつかの勧告を行ったが、日本側はそれを無視したという。詳細は不明だが、事実とすれば大問題である。

 筆者はこれまで何度もチェルノブイリ事故に学び、その教訓を今回の事故対策に生かすべきだと主張してきた。だが、日本政府は事故の大きさをなんとか抑えようとする余り、現実を直視してこなかった嫌いがある。事故から1ヵ月たち、ようやく日本政府も現実とのギャップを埋めざるを得なくなったといえよう。

 我々は今やっと事故を認識する原点に立ったといっても過言ではない。震災から1カ月たっても余震はむしろ激しさを増しているが、現実から目をそらさず、百年先、千年先を見据えた真の復興に向かって進んでいかなければならない。よく「朝の来ない夜はない」というが、未曾有の事態にも希望を忘れず、前向きに取り組んでいきたい。
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ロシア専門家「福島原発事故の規模はチェルノブイリと同じレベル」!!

2011年04月06日 11時20分02秒 | Weblog
 福島第一原発の事故処理は事故から3週間たっても難航しているが、ロシアの原子力専門家は「福島原発の事故の規模は原子力施設事故の国際評価尺度でチェルノブイリ事故と同じレベル7に達した」と語った。インタファクス通信が6日、伝えた。

 日本の経産省原子力安全・保安院は3月18日、福島原発事故を米スリーマイル島原発事故と同じレベル5とする暫定結果を発表した。これに対し、国内でも状況はさらに悪化して、チェルノブイリ事故より一つ下のレベル6に達したとの見方が出ている。今回のロシア専門家の意見はさらに一つ上の史上最悪のチェルノブイリ事故と同じレベルと明言している。 

 同通信のインタビューに答えたのは、元ソ連(現ウクライナ)チェルノブイリ原発副所長で同事故処理政府委員会情報国際関係局長のアレクサンドル・コワレンコ氏。チェルノブイリ事故の処理に当たったほか、1988年にアルメニアで起きた大規模地震で被害を受けた原発の事故処理にも関与している。

 インタビューに答えてコワレンコ氏は、福島原発事故で日本政府も東京電力も情報開示を軽視しただけでなく、組織的な面でもチェルノブイリ事故の教訓を軽視していると述べた。とくに事故直後に従業員らを大量動員して原子炉の冷却作業に当たるべきだったと指摘し、初動の遅れを手厳しく批判した。さらに、事故後、原発から少なくとも半径30キロ以内の地域は長期間立ち入り禁止にすべきだったと述べ、日本政府の対応の甘さを強調した。

 また、国際原子力機関(IAEA)が福島原発から40キロ離れた地域で高濃度の放射線が検出されたことを憂慮していると述べたうえ、「福島原発事故の規模はすでにチェルノブイリ事故と同じレベル7に達している。この点で私は多くの専門家の意見と同意見だ」と語った。

コワレンコ氏は結論として今回の事故を「チェルノブイリ事故と同様、人災だ」と決め付け、「東電指導部が茫然自失状態になり、きちんと行動しなかったことが、中規模の事故を現状のようなカタストロフィー(悲惨な結末)にした」と言い切った。

 一連の事故処理に当たって日本政府と東京電力の対応の遅れと、それ以上に事故の深刻さについての認識の甘さが気になっていた。このインタビューで疑問が解けた感じだ。この溝を埋めるには、チェルノブイリ事故を経験したロシアの原発専門家を招いて率直な意見を聞き、今後の事故処理に生かすしかない。我々には余り時間は残されていない。菅政権はいまこそ過去の行きがかりを捨て、ロシアの支援を受けるべきだ。
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