飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアのウクライナ侵攻は、ロシア周辺国のNATO加盟で終わるのか?

2022年05月20日 16時12分35秒 | Weblog
ロシアによるウクライナ侵攻から3カ月経過するが、戦闘は依然ウクライナ優勢で進んでいて、このままだとウクライナが勝利する可能性が強まっている。こうした情勢を受けて、ロシアの周辺2カ国が相次いでNATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請した。これが認められると、ロシアは事実上敗北する形になりかねない。だが、ロシアはあくまで戦闘を続ける構えで、いつになったら世界に平和が戻ってくるのだろうか。

ロシアのプーチン大統領は、数カ月以内にウクライナ軍を破って勝利するとみてウクライナへ攻め込んだが、ウクライナ軍の思わぬ善戦でロシア軍の敗色が濃くなっている。こうした動きを受けて、西欧とロシアの間で非同盟・中立政策を維持してきたフィンランドとスウェーデンが、米欧の軍事同盟であるNATOへの正式加盟を申請した。申請が認められると、NATOはバルト海沿岸をほぼ勢力圏に収めることになり、ロシアは出口をふさがれることになる。

両国の中でも、約1300キロに渡ってロシアと国境を接するフィンランドは、1917年に帝政ロシアから独立したものの、第二次大戦中にソ連の侵攻を受け、国土の約1割を奪われた。戦後、東西両陣営の間で中立を維持し、その後、ソ連と友好協力相互援助条約を結ぶ一方、欧州連合(EU)に加盟して独自の中立外交を守ってきた。スウェーデンも同じように中立外交を維持し、昨年までNATOへの加盟を否定してきた。だが、ロシアのウクライナ侵攻で加盟にかじを切った。

ロシアはウクライナへの侵攻の最大の口実としてNATOの拡大阻止を上げてきたが、2カ国の加盟申請で逆効果となったわけだ。ただし、新規加盟にはNATOの全加盟国(30カ国)の承認が必要だ。加盟国の中で両国の加盟に難色を示しているのはトルコだけだが、その理由として両国がクルド独立派を受け入れていることを挙げており、厄介な問題が残されている。それ以上にロシアは両国の加盟に強く反発し、核兵器使用を含む対抗措置を取ると警告しており、これをきっかけに軍事的緊張がさらに高まる恐れもある。

一方で、ウクライナの善戦は米国の巨額の軍事支援によって支えられており、親ロシアの国などから「米国の独り勝ち」との批判も出ている。とりわけ、中国はロシア・ウクライナ戦争に乗じて米国が国際政治力の拡大と軍事産業の膨張を狙っているとして警戒を強めている。今後、バイデン米大統領への批判が高まることも予想され、この紛争がすんなり決着するかどうかは依然、予断を許さない状況だ。(この項終わり)




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ロシアを追い詰める米欧の対応は本当に正しいのか?

2022年05月02日 08時01分32秒 | Weblog
ロシアがウクライナへ軍事侵攻してから2カ月以上経過しているが、ロシア側の作戦は思うように進んでいない。それどころか、ロシア軍の非人道的対応に対し、プーチン大統領への批判が強まっている。その一方、米国や欧州諸国の対応にも疑問の声が上がっていて「ロシアは悪、米欧は善」との見方に懐疑的な論調も出てきている。最近の報道を参考にしながら、双方の主張を検討してみた。

まず第一に、欧州の安全保障の枠組みであるNATO(北大西洋条約機構)への加盟問題である。ソ連時代は旧ソ連と東欧諸国による「ワルシャワ条約機構」があったが、1991年のソ連崩壊で後者の枠組みがなくなり、ソ連を継承したロシアはNATOも解体されるものと期待していた。ところが、旧東欧諸国などが「ロシアは信用ならないから、我々もNATOに入れてくれ」と言い出し、NATOは解体されるどころか、ウクライナとジョージアの加盟を原則OKとするなど、拡大に向かって動き出した。これにロシアが強く反発、ウクライナを緩衝地帯として中立化するよう要求している。

第二に、ウクライナの保養地、クリミア半島の帰属問題である。ウクライナで2014年、親露派のヤヌコビッチ大統領が欧州連合(EU)への加盟にマッタをかけたことに市民が反発、大統領を追放する挙にでた。これが「マイダン革命」と呼ばれる親露派政権打倒である。これに対し、プーチン大統領はウクライナの反対を押し切ってクリミア半島をロシアに編入した。この時、マイダン革命を裏でサポートしたのが当時、米国副大統領だったバイデン氏である。

バイデン氏とウクライナとの関係はその後も続いた。ゼレンスキー大統領が昨年、「クリミア奪還」を公言したのを受け、積極的に協力したのも米大統領に就任したバイデン氏だった。バイデン氏は自伝の中で、もっとも心血を注いだ仕事はウクライナ問題だとし、「プーチンは悪、親欧州のウクライナが正義」という自らの立場を明らかにしている。ロシア外交が専門の東郷和彦氏は毎日新聞のインタビューで「クリミア奪還をバイデン氏の後ろ盾なしにゼレンスキー氏が発言するとは考えにくい。プーチン氏とすれば、2人が1年かけて挑発し、あらゆるオプションをロシアから奪い去ったと見えたはずです」と指摘している。

今回の軍事侵攻では、プーチン大統領の対応への批判が高まっているが、米国や欧州諸国がそこまでロシアを追い込んだとの見方もできる。その結果、プーチン大統領は核兵器の使用をも辞さない強硬な姿勢を示している。東郷和彦氏はこうした経緯を説明し、「日本はまず米国と話し合い、頭を冷やせというべきです」と指摘している。岸田文雄首相は、米国との関係を緊密にするためにもバイデン大統領に対し、こうした考えをきちんと伝えるべきではないだろうか。(この項終わり)









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