飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

今年こそプーチン大統領来日で北方領土問題は解決するのか

2015年12月31日 21時16分41秒 | Weblog

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昨年はプーチン大統領の訪日を巡って色々な動きがあったものの、訪日には至らなかった。今年こそ訪日が実現すると期待する声が強いが、アファナーシェフ駐日ロシア大使は「準備には時間がかかる」として今年の早い時期での訪日は難しいとの見方を示している。

西側諸国がロシアに経済制裁を加えている間は訪日は難しいとの見方が強く、訪日はウクライナ紛争の解決が見えてから、との観測が大勢を占めているようだ。となれば今年前半はもちろん、後半に入っても訪日が実現するかどうかは定かではない。このため日露双方は現在、安倍首相がロシアの地方都市を訪れ、そこでプーチン大統領と会談する方向で調整しているという。

訪日の時期以上に重要なのは、領土問題をどういう形で解決させるかという大方針を日本政府自身が協議し、与党さらには野党とも調整してコンセンサスを形成することだろう。一説によると、安倍首相は歯舞、色丹の2島返還で解決する腹だと言われる。そうだとすると、日ソ共同宣言をベースにした解決を示唆しているプーチン大統領との会談で解決する可能性があるが、それで与党や世論が納得するだろうか。それこそ戦後70年の与党の路線を覆す大問題に発展する恐れもある。

いずれにしろ、安倍首相がこの問題の決着を急ぐなら、何らかの形で自分の考えを国民に説明し、事前に了解を得ておく必要がある。このところ、安倍首相はかなり独善的に重要問題を決めるケースが目立っているだけに心配である。

と言っても、私は今さら四島返還でなければいけないと言うつもりはない。これだけこじれた問題を話し合いで解決するには、双方が譲歩しなければ永久に解決しない。ただ、後世に禍根を残さないためにも、国民の意見をよく聞いて、一定の理解を得た上で交渉すべきだと言いたいのである。

一方で、領土交渉は政府の専権事項であり、交渉の中身を事前に漏らすわけにはいかないという理屈もわからないわけではない。だが、韓国との戦争慰安婦問題での解決の仕方を見ていると、現政権が政権維持のために拙速な解決をする危惧を感じざるをえないからである。

領土問題は百年の計で決めるべきもので、ゆめゆめ拙速に決めてもらっては困る。その意味でも、メディアがきちんと政権側の動きをフォローし、正しく報道することが肝心である。昨今の消費税軽減税率問題をみていると、一片の不安がよぎるのは私だけだろうか。(この項終わり)
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トルコがロシア軍機を撃墜した事件の深層を探る!

2015年12月01日 11時23分30秒 | Weblog

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シリアへの空爆に絡み、トルコ軍機がロシア軍機を撃墜したことで両国の対立が深まり、一触即発の危険性が高まっている。この背景には、19世紀後半のクリミア戦争以来の両国の憎悪の歴史があり、簡単には仲直りできそうもない。

ロシアはシリア紛争で一貫してアサド大統領を支持し、9月からはイスラム国(IS)への空爆に踏み切った。表向きはイスラム過激派対策だが、実際はアサド政権に対抗する反体制派を主に空爆、欧米から批判を浴びていた。

一方のトルコはイスラム教徒が大半を占める国家であり、アサド政権の反体制派組織を支援していて、ロシア軍と戦闘を交わすことも少なくない。さらに、シリアの石油の利権を巡ってロシア側は、「トルコのエルドアン大統領がISの石油売買に関与している」と批判している。その理由として大統領の娘婿がトルコのエネルギー相に就任したことを上げている。これを受け、シリアのアサド政権は「トルコがロシア軍機を撃墜したのはエルドアン氏の娘婿の石油利権を守るためだ」と糾弾している。

こうした事情に加えて、トルコ人には過去の戦争でロシアに痛めつけられてきた、積年の恨みが根強く残っている。両国は前身のロシア帝国とオスマン帝国時代に国境を接し、不凍港を強く求めるロシアが隙あらばトルコの港を奪おうと戦争を仕掛けてきた。トルコはクリミア戦争ではロシアを破ったが、1977年におきた露土戦争では破れ、バルカン半島諸国の独立につながった苦い経験がある。

そんな歴史から、トルコ人は1904年の日露戦争でロシアを破った日本に敬意を表し、日本びいきの人が多い。いわば、ロシアはトルコと日本の共通の敵ともいえるからである。

だが、現在ではロシアとトルコの関係も好転し、経済協力が進んでいた。その矢先のロシア軍機撃墜事件だけに、プーチン大統領はその直後、「背後から刺された」「トルコはテロリストの共犯者だ」などと激しい言葉をぶつけていた。さらに、ロシアは経済制裁をいち早く決めるなど、トルコ側が謝罪するまで許さないという、厳しい姿勢をとり続けている。このロシアの剣幕にエルドアン大統領も「(領空侵犯が)起きなければよかった」などと後悔の念を示しているという。

米国など欧州諸国はロシアと協力してISを叩かなければならない大事なときだけに、トルコとロシアのとんだ“私闘”に苦りきっている。いまこそ、両国はISに漁夫の利を与えず、一致協力してイスラム過激派の暴挙を叩かなければいけない。(この項終わり)
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