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プーチン大統領の12月訪日を控え、日露間の最大の懸案である北方領土問題の解決案についての報道が熱気を帯びてきた。北方領土の2島引き渡しなどを取り決めた「日ソ共同宣言」から満60年を迎えた10月19日前後の各紙の報道から、解決の行方を探ってみた。
この間の日本政府の解決案をリードしたのは、読売の9月23日付1面トップを飾った「北方領 2島返還が最低限」の記事である。北方四島のうち、歯舞、色丹の2島が返還されれば日本政府はロシア政府と合意することを示唆したもので、安倍首相寄りとされる読売の記事だけにインパクトは大きかった。安倍首相はこれまで「日露双方が受け入れられる解決案を探る」と言ってきたので、ある意味では当然の帰結といえる。
この方針に疑義を唱えたのは、佐藤優・元外務省主任分析官の10月16日付産経コラム「世界裏舞台」だ。政府は「四島に対する日本の主権が認められることが解決の基本方針」と主張してきたのに、勝手に「四島の帰属に関する問題を解決する」に変更したとして「国民を欺く秘密外交」と指摘している。つまり、主権と帰属は全く違うのに、それをきちんと国民に説明しないのは、国民軽視の外交だと主張しているのである。
こうした報道に対し、朝日はクールな姿勢を保っている。10月19日付の記事「北方領土交渉 動くか」では、プーチン大統領が日ソ共同宣言に ついて「島を引き渡すが、主権を引き渡すとは書いてない」と解釈しているとし、返還は4島でも2島でもなく、0島にとどまっているとの見方をしている。また、毎日は安倍首相が柔軟な判断を下すのでは、との見方が強まる一方、「ロシアが2島返還で合意しても、直ちに返還されることはあり得ない」とのロシアの学者の意見を載せている。
興味深いのは、19日付読売「論点スペシャル」で紹介しているロシア専門家2人の対照的な見方だ。下斗米伸夫法政大教授は、日露双方の歩み寄りを可能とする条件がようやく整ったと指摘し、「四つの島の行方は首脳会談後、明らかになるだろう」と、言い切っている。
それに対し、袴田茂樹新潟県立大教授は「日露平和条約は日本という馬の前にぶら下げたニンジンだ」との喩えを示し、首脳会談で領土問題が動くことはないと断言している。
いずれにしろ、12月の首脳会談は学者2人の楽観論と悲観論の間を激しく揺れ動くことになるに違いない。日露のどちらが笑うかは神のみぞ知るだろう。(この項おわり)
プーチン大統領の12月訪日を控え、日露間の最大の懸案である北方領土問題の解決案についての報道が熱気を帯びてきた。北方領土の2島引き渡しなどを取り決めた「日ソ共同宣言」から満60年を迎えた10月19日前後の各紙の報道から、解決の行方を探ってみた。
この間の日本政府の解決案をリードしたのは、読売の9月23日付1面トップを飾った「北方領 2島返還が最低限」の記事である。北方四島のうち、歯舞、色丹の2島が返還されれば日本政府はロシア政府と合意することを示唆したもので、安倍首相寄りとされる読売の記事だけにインパクトは大きかった。安倍首相はこれまで「日露双方が受け入れられる解決案を探る」と言ってきたので、ある意味では当然の帰結といえる。
この方針に疑義を唱えたのは、佐藤優・元外務省主任分析官の10月16日付産経コラム「世界裏舞台」だ。政府は「四島に対する日本の主権が認められることが解決の基本方針」と主張してきたのに、勝手に「四島の帰属に関する問題を解決する」に変更したとして「国民を欺く秘密外交」と指摘している。つまり、主権と帰属は全く違うのに、それをきちんと国民に説明しないのは、国民軽視の外交だと主張しているのである。
こうした報道に対し、朝日はクールな姿勢を保っている。10月19日付の記事「北方領土交渉 動くか」では、プーチン大統領が日ソ共同宣言に ついて「島を引き渡すが、主権を引き渡すとは書いてない」と解釈しているとし、返還は4島でも2島でもなく、0島にとどまっているとの見方をしている。また、毎日は安倍首相が柔軟な判断を下すのでは、との見方が強まる一方、「ロシアが2島返還で合意しても、直ちに返還されることはあり得ない」とのロシアの学者の意見を載せている。
興味深いのは、19日付読売「論点スペシャル」で紹介しているロシア専門家2人の対照的な見方だ。下斗米伸夫法政大教授は、日露双方の歩み寄りを可能とする条件がようやく整ったと指摘し、「四つの島の行方は首脳会談後、明らかになるだろう」と、言い切っている。
それに対し、袴田茂樹新潟県立大教授は「日露平和条約は日本という馬の前にぶら下げたニンジンだ」との喩えを示し、首脳会談で領土問題が動くことはないと断言している。
いずれにしろ、12月の首脳会談は学者2人の楽観論と悲観論の間を激しく揺れ動くことになるに違いない。日露のどちらが笑うかは神のみぞ知るだろう。(この項おわり)