飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ウクライナ国会、ドネツク州に非常事態を宣言、軍政を敷くことを決議!

2015年01月28日 11時16分19秒 | Weblog
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ウクライナ国会は27日、親露派武装力が攻勢を再開したドネツク州に非常事態を宣言、紛争地帯に軍政を敷くことを決議した。これにより、ドネツク州は戦時体制となり、軍部が地方自治体に代わってすべてを統括することになる。また、国会はロシアを「侵略国」と宣言しており、両国の対立は一層深刻さを増してきた。

28日付けの独立新聞(電子版)などによると、ウクライナ国会は27日、ドネツク州南部の港湾都市マリウポリへの大規模攻撃で子ども2人を含む30人が死亡、数百人が負傷したことを受け、対応策を審議した。その結果、攻撃は親露派武装勢力によるものと断定、同州に非常事態を宣言した。

さらに国会は、国家安保軍事会議の報告を受けて同州の紛争地域に軍政を敷くことを決議。ポロシェンコ大統領は「これにより、地方議会議員全員が事実上逃亡した地域で、地方自治体に代わってすべての問題を決定することができる」と説明した。

この軍政は地方自治体の代表が新たに選挙で選ばれるまで続けられる。ネトカチェフ陸軍中将は「今回の措置は、ウクライナ東部の戦闘が大規模な戦争に変わったことを意味する。軍政の決定はもっと早くすべきだった」と語っている。

さらに、国会はロシアを「侵略国」と宣言し、外国議会と国際機関に対し、ロシアに圧力をかけるよう呼びかけた。また、親露派武装勢力による「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」をテロリスト組織と認定した。

  ウクライナ政府は、ウクライナ領に現在、ロシア軍人1万3千人、戦車235両、装甲車263両、大砲類263門が侵入していると指摘しているが、ロシア側はドネツクにはロシア軍は一切入っていないと否定している。

昨年春から続いているウクライナ東部の戦闘が、戦争状態にエスカレートしたことは明らかだ。プーチン大統領はあくまで親露派勢力を支持し、強硬路線を維持する構えだが、ロシアに対する国際社会の批判は今後さらに厳しくなるだろう。ロシアはこのまま国際的孤立を続けるのか、それとも和解の道を選ぶのか。決断すべき時が近づいている。(この項おわり)

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ウクライナ、東部のドネツクで戦争状態を宣言か?

2015年01月26日 14時18分47秒 | Weblog
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ウクライナ情勢が再び緊迫してきた。東部のドネツク州で親露派武装勢力の攻勢が始まり、ウクライナ軍は守勢に回っているからだ。ウクライナ国会はドネツク州の戦争状態を宣言するかどうか協議する構えで、ロシア対米欧の対立が一気に高まる可能性が出てきた。

26日付けの独立新聞(電子版)によると、24日にドネツク州南部の港湾都市マリウーポリでロケット砲による大規模攻撃があり、民家数十戸が破壊され、子ども2人を含む30人が死亡、数百人が負傷した。ウクライナ側によると、親露派武装勢力「ドネツク人民共和国」が支配する地区から攻撃されたという。この都市はアゾフ海に面した重工業地帯で、ここまで戦線が拡大したことはなかったという。

この後、ドネツクの親露派集会で指導者らがドネツクをウクライナ軍から解放することを宣言した。だが、夜になって指導者たちはロシアの通信社に対し、マリウーポリ攻撃を否定、今後も攻撃しないと明言した。一方、ロシア政府も今回の攻撃については沈黙を守っている。

ポロシェンコ・ウクライナ大統領は25日、国家安保軍事会議を開いて対応を協議。大統領は「ウクライナ当局はマリウーポリへの攻撃を確認した。住民数十人を殺害した責任者は明らかだ」と述べ、ロシアへの経済制裁を強化するよう国際社会に呼びかけることを明らかにした。米国もNATOもこの問題でウクライナを支持し、ロシアに対し、軍事行動を中止し、政治的、経済的支援も停止するよう呼びかけた。


こうした状況を受け、ウクライナ国会は26日、総会を開いて対応策を審議する。ウクライナの軍事力を強化する法案を審議するほか、ドネツク州に戦争状態を宣言するかどうかを協議する。先週までの協議では、戦争状態宣言は時期尚早との意見が多かったが、事態の急変で宣言を採択する可能性もある。

ウクライナ東部の戦闘をめぐり米欧、ロシア、ウクライナは昨年秋、いったんは停戦で合意したが、すでにその合意は事実上破棄されている。この新事態に米欧、ロシアはどう対応するのか。ウクライナ紛争は新たなヤマ場を迎えている。(この項おわり)

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リトアニア国防省、ロシア軍侵攻に備え国民向けのマニュアル作成!!

2015年01月16日 16時45分10秒 | Weblog
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リトアニア国防省はこのほど、ロシア軍侵攻を想定した国民向けのマニュアルを作成した。外国軍隊にデモやストライキで抵抗するなど、具体的な対策をまとめたもので、近く各地の図書館などに配布する方針。ウクライナ危機により旧ソ連・バルト三国などでロシア軍侵攻のシナリオが現実味を帯びているが、国民向けに緊急時の対応策を作成したのは異例である。

15日付けの英字紙モスコー・タイムズ(電子版)によると、マニュアルではまず国民に対し、健全な精神を保ち、パニックにならないよう求め、「窓の外で銃砲を聞いても世界の終わりではない」と、落ち着いて行動するよう呼びかけている。

さらに、マニュアルでは国民に対し、外国軍の占領にはデモとストライキで抵抗し、少なくとも職場ではサボタージュ活動を行うよう指示。侵攻の際には国民同士でツイッターやフェイスブックを活用し、敵にサイバー攻撃を試みるよう求めている。

リトアニアはラトビアやエストニアと同様、第二次大戦直前にドイツと旧ソ連が結んだ密約により旧ソ連に併合され、1991年のソ連崩壊後に独立を勝ち取った歴史を持つ。中でもリトアニアは、ロシアの飛び地であるカリーニングラードと接している。昨年暮れにも、ロシア軍はカリーニングラードで軍人9000人、艦艇55隻を動員した軍事訓練を実施している。

リトアニアのオレカス国防相は「領土の一部を事実上、ロシアに占領されたグルジアとウクライナのケースは、我々も例外でないことを示しており、それに備えなければならない」と警告。さらに「ロシアが今回の紛争でウクライナへの侵攻を始めた時、リトアニアの国民は我々の隣人は友好的ではないことを理解した」と明言、ロシアを敵視していることを認めた。

ウクライナ危機後、リトアニア軍は新兵の徴募者を増やし、政府は敷地内にシェルターを備えた建物の建設を検討しているという。国民向けのマニュアルといい、新兵増募といい、旧ソ連軍による占領で苦しめられたリトアニア国民の恐怖感がそうさせるのだろう。ロシア人はどんな思いでこの話を聞いているのだろうか。(この項おわり)

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「西側の批判を聞くつもりはない」ロシア人が約6割に増える!

2015年01月13日 19時14分29秒 | Weblog

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ウクライナ紛争で米欧などの西側諸国はロシアに対し、経済制裁を強めているが、ロシア国民の57%が「西側の批判に注意を払うつもりはない」と考えていることが最近の世論調査で分かった。ロシアの中立系世論調査機関レバダ・センターが昨年暮れ、ロシア国民1600人を対象に行ったもので、この数字は7年前に比べ19ポイント増えている。

13日付けの経済紙ベドモスチ(電子版)によると、「あなたはロシアに対する西側の批判に注意を払うべきだと思いますか」との質問に「いいえ」と答えた人が57%、「はい」と答えた人は27%、「答えられない」とした人が16%だった。同センターは07年から同様の調査を行っているが、7年前に比べ、「いいえ」という回答が19ポイント増えた半面、「はい」との回答が19ポイント減っている。

また、西側の批判に注意を払うつもりはないと答えた人にその理由を尋ねたところ、「西側は概してロシアに悪意のある態度を取っている」と答えた人が43%、「西側は競争相手のロシアを弱体化させようとしている」と答えた人が40%だった。

さらに、「西側があらゆるレベルでロシアに敵対する政策を取っている」と考えている人が全体の87%にのぼり、そのうち46%が「西側はロシアの天然資源を自分の支配下に置きたがっている」と答え、43%は「西側はただロシアを恐れているのだ」と答えている。

今回の調査結果について同センターのレフ・グドコフ所長は「クリミア半島のロシア編入が国民の団結をもたらした。国際法は侵害されたが、人々はそれを受け入れたくないのだ。旧ソ連時代の意識と失った大国の地位への郷愁が働き、西側の批判を受け付けない気持ちを形成している」と分析している。

さらに、世論調査では今後のプーチン政権の動向について質問している。「今後、プーチン政権は中国との関係を強化する」と答えた人は47%で、「独立国家共同体(旧ソ連諸国で構成)との関係を発展させる」と答えた人は12%にとどまった。グドコフ所長は、ロシアが主導している関税同盟がウクライナ抜きでは成功しないことが国民に理解されつつあるからだとみている。

一方、政治学者のアレクセイ・マカルキン氏は「もし強力な敵がいれば、われわれも強力な国家として対応する。だが、これまでのところ、人々は制裁の結果をわかっておらず、それほど悲劇的なことにならないと考えている」と結論付けている。

ロシア国民は西側への期待感を失うどころか、不信感を募らせていることがこの調査結果からうかがえる。その一方で、西側の制裁をそれほど深刻に受け止めていないことも示している。ロシアが西側への不信感を強めれば強めるほど、孤立化を深めることになる。その結果、プーチン政権がさらなる強硬策に出ないとも限らない。西側がロシアをこれ以上追い込むことは国際社会にとって得策ではないだろう。(この項おわり)
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プーチン政権、反体制派組織への締め付けを強める!

2015年01月08日 00時57分46秒 | Weblog
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プーチン政権はウクライナ紛争で米欧との対立を深める一方、国内では議会に議席を持たない反体制派組織への締め付けを一層強めている。直接行動に走りがちな反プーチン勢力を封じ込め、挙国一致体制で米欧に立ち向かうためとみられる。

プーチン政権が反体制派締め付けの最大のターゲットとしているのは、11年暮れから12年春の大統領選まで続いた反プーチン運動の立役者、アレクセイ・ナバリヌイ弁護士(38)だ。ブログで汚職追放運動を呼びかけ、13年のモスクワ市長選では次点となり、プーチン大統領の側近のソビャーニン市長を脅かした人物である。その後、新党「国民同盟」を立ち上げ、大統領権限の縮小などを盛り込んだ憲法改正を訴えている。

プーチン政権は、反体制運動を扇動したとしてナバリヌイ弁護士を逮捕した。その後、横領罪で逮捕・起訴したが、モスクワ市長選ではいったん釈放して市長選への立候補を認めた。だが、選挙で大方の予想を上回る30%近い得票を獲得したため、プーチン大統領の「政敵」とみなされ、ことあるごとに迫害を受けている。昨年暮れには、取引のあった企業から約840万円を着服したとして有罪判決を受けた。

 さらに、経済紙「ベドモスチ」によると、政権側はナバリヌイ弁護士の実弟や側近を絵画の窃盗や横領容疑で逮捕・起訴するなど、ナバリヌイ氏らの政治活動を封じる動きを強めている。このため支持者約1500人が昨年暮れ、クレムリン近くの広場で抗議集会を開いたのに対し、当局は無許可集会だとして約100人を拘束した。

 また、法務省や検察当局は外国とつながりがあるNGO(非政府組織)に対し、外国から資金援助を受けているかどうかを調査している。これまでに21のNGOが外国から資金を受け取ったとしてリストアップされている。その中には自然環境保護団体、人権保護団体などが含まれているという。

 プーチン政権は上院、下院で議席のない反体制派を徹底的に痛めつけ、市民の間に反体制運動が広がらない方針を取っている。このため、最もリベラル派が多いモスクワ市議会でも、「ヤブロコ」や「市民綱領」などの野党は議席を持てないでいる。また、第2の都市ペテルブルグでも州知事選で野党は有力候補を擁立できない状態が続いている。

 こうした政権側の方針がロシアの民主主義を押さえつけ、市民の声を政治に反映できないようにしていることは明らかだ。この状態が長く続けば、再び11年秋のような反プーチン勢力による大規模な集会・デモが起きないという保証はない。プーチン政権はウクライナ紛争と同様、相手を力でねじ伏せる強引な政策が自分たちにはね返ってくることを肝に銘じるべきだ。(この項おわり)


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プーチン大統領は逆境をはねのけられるか?

2015年01月01日 09時46分41秒 | Weblog

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プーチン大統領は今年、3期目の就任から4年目を迎え、任期6年の後半期に突入する。ロシアはウクライナ紛争で米国と対立、冷戦中のキューバ危機以来の重大事に直面している。さらに、西側の経済制裁に加え、思わぬ原油安でロシア経済は窮地に陥っている。ロシアはこの逆境をはねのけ、多極化世界のプレイヤーとして生き残ることができるだろうか。

大統領は昨年暮れの定例会見で、国際社会から強い批判を浴びているクリミア半島の編入などについて「ウクライナの危機の過程で我々は正しかったと思う」と述べた。また、経済制裁による影響についても「(ロシアの現状は)国民、文明、国家として自己を保全したいという当然の希望に対する代償だろう」と自らを正当化し、米欧の攻勢に一歩も引かない姿勢を見せた。

一方、オバマ米大統領は年末のラジオ・インタビューで「(ウクライナの主権侵害などで)ロシアは戦略ミスを犯した」と指摘し、「ロシア国外の人々は今やプーチン大統領のしたことを賢いとは思わないだろう」とこき下ろした。オバマ氏はプーチン氏について「3、4か月前は誰もが天才と思った」とも語り、苦境に陥っているロシアを皮肉った。

プーチン氏もロシアが経済的に苦境に陥っていることを認め、「苦境を抜け出すには最悪で2年程度必要」と語り、国民に忍耐を呼びかけている。新年の国民へのメッセージでも「一人ひとりが効果的、創造的に取り組めば自力で課題を成し遂げられる」と、国民の愛国心に訴えた。

プーチン大統領が自国経済を苦境に追い込んでもウクライナにこだわるのは、同国をロシアの勢力圏に留めておくことがロシアにとって死活的に重要と考えているからだ。ロシアの安全保障を維持するには、ロシアの飛び地カリーニングラードからベラルーシ、ウクライナ、グルジアを結ぶラインをロシアの防衛線とみなし、何が何でも維持するつもりでいる。

このため、プーチン大統領はEUよりもNATOを重視しており、ウクライナのNATO加盟は絶対認められないとの立場をとっている。08年にグルジアとの戦闘行動に出たのも、親米派のサーカシビリ大統領を放置すると、グルジアがNATO加盟を急ぐ恐れがあったからだ。今回もウクライナが同様の態度を示せば、ロシアは強硬策を取り、ウクライナ危機はさらに深刻になるだろう。

プーチン大統領は当面、ウクライナ東部をウクライナとモルドバの間にある沿ドニエストルと同じような「凍結された紛争地域」とし近い将来、ロシア軍を駐留させ、ウクライナの実効支配が及ばないようにする腹だろう。しかし、ウクライナ政府はこれを認めないだろうから戦闘は新年明けから再び活発化するのは避けられない情勢だ。

こうした状況になったとき、問題は米国や欧州がどう出るかだ。オバマ大統領がこれまでのようにロシアの言い分を聞かず、あくまで「封じ込め」の姿勢を続ければ事態はさらに悪化するだろう。この際、プーチン大統領と胸襟を開いて話し合い、事態の打開策を真摯に模索する以外に解決の道はない。

ロシア人は、ナポレオン軍の猛攻を耐え、ヒットラーの急襲にも負けず、じっと耐え忍んで敵を撃退してきた経験を持っている。今もプーチン大統領の下で一致団結して難局に立ち向かおうとしている。西側は冷戦の「敗戦国扱い」を改め、ロシアを仲間に引き込んで対応する方向に頭を切り換えるべきではないだろうか。(この項おわり)

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