飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

日露首脳の信頼関係で何度会談を開いても「領土」進展の見通しなし!

2018年05月27日 22時28分51秒 | Weblog
安倍晋三首相とプーチン大統領による日露首脳会談は5月26日深夜、モスクワのクレムリンで行われたが、北方領土交渉での進展ばかりか、共同経済活動の具体化も進展がなく、無駄骨になったと言っても過言ではない。安倍首相にとってはプーチン氏と21回目の会談になるが、平和条約交渉の先行きは全く見通せないのが偽らざる現実といえよう。

安倍政権はプーチン氏との個人的な信頼関係を足場に、プーチン氏が領土問題解決に踏み切ることを期待して首脳会談を重ねてきた。特に今回は、プーチン氏が大統領選で通算4選を果たした直後だけに、領土問題で思い切った政治決断を行うのではという甘い期待があったが、見事期待を裏切られた。世界を相手に強面外交を演じているロシアが、そんな甘い考えに乗るわけがなく、政権内部からも「前のめりになりすぎた」との声が出ているという。

こうした結末は、5月25日に外国通信社代表団と会見したプーチン大統領の発言から十分予想できたはずだ。日露平和条約締結の見通しを質問した記者に対し、最初は「我々は相互に受け入れ可能な譲歩を見つけられるよう試みてゆく」と切り出しながら、具体的な解決策に触れると「どのようになるかは現時点では述べられない。それを話せるのなら、もう(平和条約に)署名しているだろう」と突き放した言い方をした。もはや、問題解決への意欲も期待も持っていないことを暗示した発言とも受け取れる。

現に安倍政権が平和条約締結の突破口と位置付けている、北方領土での経済共同活動の前提になる「特別な制度」導入問題が一歩も進んでいないことからも明らかだ。このため、活動の重点5項目に挙げられたウニ養殖やイチゴ栽培の事業化も具体化までには至らなかった。記者会見で安倍首相はこの問題について「新しいアプローチのもと、平和条約に向け着実に前進する決意をした」と述べたが、単なる日本側の期待にすぎない。こうした期待をいつまでも国民の前にぶら下げて、世論をミスリードしていく手法はもうやめたほうがいいだろう。

むしろ、いま日露の首脳が真剣に討議すべきは北朝鮮を中心とするアジア・太平洋の安全保障をどうするかだろう。こちらの問題についても両首脳は話し合ったというが、これまでの双方の立場を述べ合っただけといえなくもない。

今安倍首相が問われているのは、誠実な言葉で政治・経済などの状況を国民に説明することだ。それをせずに、口先だけで誤魔化す発言をしているから、森友・加計問題などが沈静化するどころか、国民の不満が高まるばかりなのではないか。少なくとも「(我々は)一点の曇りもない」「政治を捻じ曲げるようなことは一切していない」などという無責任な発言は、今後一切して欲しくない。(この項終わり)

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プーチン露大統領の最後(?)の任期がスタート!

2018年05月05日 00時23分29秒 | Weblog

3月のロシア大統領選で圧勝したプーチン氏の4期目の任期が7日からスタートした。任期は6年で、任期満了時には71歳の大台を迎える。憲法では任期は連続2期までとされているが、本当に最後の任期となるのだろうか?

大統領就任式は7日、クレムリンで約1,500人の招待客を迎えて行われた。宣誓後の就任演説でプーチン大統領は「ロシアは国際社会で強く活発で影響力のある国であり、国家の安全は保障される」と強調する一方、「今は国内の重要課題に対応するため、経済と技術の躍進に全ての能力を注力しなければならない」と、内政重視の方針を示した。その上で、去就が注目されたメドベージェフ首相の続投を提案した。下院は8日にもこの提案を承認する見通しだ。

プーチン氏は初めて大統領に就任した2000年以来、大学の後輩、メドベージェフ氏を首相に任命。プーチン氏の大統領任期である2期8年が切れると、今度は自分が首相に、メドベージェフ氏が大統領に就任、二頭立ての政治体制を続けてきた。この政治体制は縦列の二人乗り自転車を指す「タンデム」と呼ばれている。今回はメドベージェフ氏の蓄財ぶりが世論の反感を買っているため、首相を交替させるのではとの見方もあったが、タンデム体制を維持した。首相交代に伴う政治権力の不安定化を嫌ったためだろう。

プーチン氏は首相時代を含め、大国の指導者をすでに18年間務めている。さらに今回の任期6年加えると、四半世紀近くの長期政権となる。いかに国民に人気があると言っても、飽きられ、不満を持つ人が増えてくるのは避けられない。そこは本人自身も十分認識していて、若手やリベラル系を多数起用するとみられている。特に、閣僚や州知事など、政権の中枢には実務能力のあるリベラル系を抜擢するとの見方が有力だ。4月にモスクワ支局長に赴任した大前仁・毎日新聞特派員のルポ企画「プーチンのロシア〜4期目始動」(上)によると、昨秋イワノボ州知事代行に就いたバスクレセンスキー氏がその典型だという。

プーチン氏は、任期満了の2024年以降について「今のところ憲法を改正する、いかなる考えもない」と発言している。モスクワ大学法学部出身だけに、表立った法律破りはしないだろうが、大統領と権限を二分するような、憲法裁判所長官のようなポストに就くことは考えているかもしれない。今後、プーチン氏の権力への執着ぶりをじっくりみていきたい。
(この項終わり)



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