飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシア連邦保安庁、中国人のロシア極東への大量進出で異例の警告!

2011年10月30日 11時19分50秒 | Weblog
 ロシアは中国人の極東への大量進出に脅威を感じているが、連邦保安庁(KGBの後身)はこのほど、「中国がロシア侵略に着手した」とのセンセーショナルな見出しの警告を発令した。

 ロシアのインタファクス通信によると、中国人はロシアの運転免許証の偽造を大々的に行っており、中国当局はこれを黙認している。このため、ロシア情報当局は中国が自国民のロシアへの移民を放任しているとの結論を下している。

 こうした免許証偽造には多くの中国企業が携わっていて、中国人がロシア人の偽造免許証をほしいと思えば、ネットを通じて簡単に注文することができるという。偽造免許証は本物とは明らかに違い、こうした免許証を保有している中国人は、摘発されればロシア刑法で処罰を受ける。連邦保安庁は、偽造免許証を所有している中国人はロシア産木材など、中国への密輸出に悪用していると指摘している。
 の
 ロシアと中国は第二次大戦後、社会主義の兄弟国として一時“蜜月関係”だったが、主導権争いで対立。最近は中国が経済成長するのに伴って緊張が高まり、現在はロシア側の中国への警戒感が高まっている。ロシアで先月面会した中立系ラジオ局「モスクワのこだま」のベネジクトフ編集長は「(中国は)経済力・人口・シベリア極東への進出、すべての面で脅威である」と率直に語っていた。

 今回の連邦保安庁の警告も、中国への脅威をアピールしており、とくに極東地域に対しては「中国に乗っ取られる」との恐怖感を増幅する効果を狙っているようだ。中露は陸続きだけに緊張感が伝わりやすいが、日中は海を隔てているので、なんとなく緊張感が足りない感じがする。日本人も中国の台頭に対し、もっと緊迫感を持つべきではないだろうか。                                
                                  

 
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ソ連崩壊から20年、当時崩壊を予測できなかった日本のロシア東欧専門家がその理由を分析した貴重な報告!

2011年10月24日 09時18分29秒 | Weblog
 1991年のソ連崩壊から20年目の今年、これに関する様々な催しが行われているが、ロシア.東欧の研究者が一堂に会した研究会が22,23の両日、埼玉県川越市の東京国際大学で開かれた。ロシア・東欧学会が中心になり、初日は「ソ連崩壊20年とその後の世界」をテーマに2つのセッションが行われ、歴史的な体制変動をどう受け止めたか、体制転換後、何が変わったかなどについて討議された。

 なかでも注目されたのは、伊東孝之・早稲田大学教授が報告した「体制変動と地域研究ーー比較政治学徒として考える」だった。ひとことでいうと、ソ連崩壊前後に発表された論文や単行本をもとに、伊東教授を含め、当時研究者は社会主義を、そしてソ連をどうみていたか、を検証しようという、学者にとっては自己批判を伴う厳しい内容だった。

 報告によると、当時日本の専門家の間で支配的だったのは「社会主義国には一定のユートピアを目指す、多分に統一的な、良かれ悪しかれ機能する社会体制が存在している」という考えで、これに「冷戦的二極構造を自明視する国際政治観が裏打ちしていた」と分析している。さらに専門家は多かれ少なかれ、社会主義に好意的で、社会主義体制が資本主義と同等で、実現可能なモデルとして存在するかのように考えていたと指摘している。

 続けて報告では、研究の関心が社会体制に集中して政治体制にほとんど向かず、党の性格を把握し切れていなかったため、独ソ不可侵条約議定書の中身が明らかにされるなど、党の権威が低下する事態が相次いだのに大半の専門家はソ連崩壊を信じなかった。とくに東欧諸国で社会主義政権が次々崩壊したのに、ソビエト・ブロックの崩壊や二極的な国際システムの変更を予測できなかった、と論じている。

 結論として報告は、ロシア東欧専門家も「時代の子」であり、後進国として先進国へのユートピア的な憧れがあったうえ、敗戦国として戦勝国へのポジティブなイメージがあったという制約を認めている。そのうえで、異なった知的背景を持つ人々との交流や現地のアクターとの交流を通じて今後克服していくよう提案している。

 この報告に対し、同僚の学者から「現地で暮らしていながら国家や党の研究をしなかったことが悔やまれる」などの意見が出された。だが、内心忸怩たる思いがあるせいか、議論はあまり深まらなかった。とはいえ、当時の学者たちの認識の枠組みが明らかにされ、不十分な点がいくつか指摘されたことは大きな前進だ。日本の学者だけの問題ではないが、今後議論を深め、ロシア・東欧研究のさらなる発展につながることを期待したい。
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プーチン首相、三大テレビとの会見でブレジネフ政権当時の「停滞の時代」再現を否定!

2011年10月19日 09時33分26秒 | Weblog
 ロシアのプーチン首相は先週末、与党の大会で来年3月の大統領選への立候補が決まって以来、初の合同テレビ会見に臨んだ。今後プーチン大統領による長期政権が予想され、ブレジネフ政権の“停滞の時代”が再現されるとの懸念が出ているが、「根拠のない批判だ」と強く否定した。

 テレビ会見はロシアの三大全国ネットワークが合同で行ったもので、約1時間半の会見の模様は17日夜に放映された。与党「統一ロシア」の党大会は9月下旬に開かれ、メドベージェフ大統領がプーチン首相を大統領候補に推薦、拍手で決定された。これを受けてプーチン氏は首相にメドベージェフ氏を指名すると約束、双頭政権が来年以降も続くことがほぼ確定した。

 次期大統領から任期が6年に延長され、憲法の規定で連続2期12年間、大統領を務めることができる。このためプーチン氏はこれまでの2期8年間に加え、さらに12年間最高指導者の地位に就くと、ソ連・ロシア時代を通じて最長の政権だったブレジネフ時代の18年間を越えることになる。このため国民の間から「ブレジネフ時代と同じような社会の停滞が続くのではないか」との懸念が起きている。

 この懸念について質問されると、プーチン首相は「第一に、(ブレジネフ政権は)旧ソ連の時代であり、根拠のない批判である」と述べ、停滞の時代再現を強く否定した。また、西側から「タカ派」とみられていることについても「いかなる決まり文句にも反対だ」と一蹴。「すべてのパートナーと善隣友好関係を持つことが国益を積極的に守ることにつながる」と、西側諸国との友好関係を強調した。

 また、メドベージェフ大統領との双頭政権を今後も維持することについて「新しい形で政権を維持することは4年前に話し合い、いろいろ経験を積めば可能だということで合意した。今後4年間、(役割の入れ替えが)うまくいけば正当性が認められるだろう」と述べ、国民に理解を求めた。

 さらに、プーチン首相はメドベージェフ大統領について「革命的なことは一切なかった。大統領にふさわしく是々非々で行動した」と語り、大統領の仕事ぶりを評価した。大統領としての業績がないため交代するとの見方を否定し、メドベージェフ氏を擁護する立場を示した。

 この会見では、国民や西側諸国からの懸念を打ち消す内容が多く、今後に向けての積極的な抱負や計画はきかれなかった。今後、12月の下院総選挙、そして来年3月の大統領選で国民の審判を仰ぐことになるが、プーチン氏の大統領復帰が国民にスンナリ受け入れられるかどうかは不透明だ。2度目のプーチン時代は国民が懸念する通り、「停滞の時代」を招きそうな予感がする。
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メドベージェフ・ロシア大統領の息子は俳優だった!?

2011年10月15日 18時31分20秒 | Weblog
 小泉純一郎元首相の長男、孝太郎さんは俳優として知られているが、メドベージェフ・ロシア大統領の息子、イリヤ君(16)も俳優であることが分かった。モスクワで若者に人気のコムソモリスカヤ・プラウダ紙に先週、記事が掲載された。政治家の息子は役者好きが多いのだろうか。

 イリヤ君が出演したのは国民に人気の寸劇で、父親が第一副首相をしていた07年と08年の2度上演された。このうち07年にイリヤ君が出たシーンは、映画を見てヒーロー気分になって映画館から出てきたところ、2人の男に追われる少女に遭遇し、助けを求められる。2人をやっつけた瞬間、映画監督のような恰好をした男が出てきて「何をしているんだ。君のようなヒーローのために、もう7回も撮影を取り直しているんだ」と怒鳴られる、という筋書き。

 この時のシェグロフ監督は「才能が豊かで面白い若者だ」とイリヤ君を高く評価している。そういえば、告発サイト「ウイキリークス」で暴露された米外交公電で、プーチン首相が米アクション映画でヒーロー役のバットマンになぞらえられたのに対し、メドベージェフ大統領はその若い友人のロビン役に回されていた。ひょっとすると息子よりも存在感がなかったのかも。

 ところで、イリヤ君の俳優業を報じた日の夕方、コムソモリスカヤ・プラウダ紙の電子版からこの記事が消えるという怪事件(?)が起こった。その理由について新聞社側は沈黙を守っていて、その記事へのアクセスが多すぎたため新聞社側が自主的に撤去したのか、それとも大統領側から何らかの圧力があったのか、定かではない。


 メドベージェフ、プーチン両氏は双頭体制を組んでロシアを統治しているが、性格はかなり違う。子供に対する対応でも、メドベージェフ氏が息子の写真をクレムリンのサイトで公表しているのに対し、プーチン氏は2人の娘を世間の目から隠そうとしている。プーチン氏は「家族に普通の生活をさせたいからだ」と話しているそうだが、来春再び大統領になれば今後少なくとも6年間は家族に不自由な生活を強いることになる。それにもかかわらず、大統領に復帰するのは国家への使命感からか、それとも個人の保身あるいは名誉欲からだろうか。
  
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ロシア国民の大半がプーチン首相の大統領復帰を「当然」と受け止め!

2011年10月07日 09時58分02秒 | Weblog
 来春のロシア大統領選でプーチン首相が大統領に復帰することが確実となったが、この決定をロシア国民の大半が「適法であり、当然」と冷静に受け止めていることが10月1ー3日に行われた世論調査で明らかになった。

 7日付の有力紙コメルサント(電子版)が伝えた世論調査機関レバダ・センターの調査結果によると、プーチン首相が次期大統領選に立候補するとの与党大会決定について42%が「メドベージェフ大統領の提案によるプーチン首相の大統領への復帰」とみなし、当然と受け止めている。また、24%が「正常な政治的手続き」とみており、さらに24%の人が「2人の政治家間の取り決めによるもの」と冷静に受け止めている。一方、「与党がメドベージェフ氏を大統領職から引きずり下ろした証拠」と否定的にとらえている人は4%にとどまった。

 また、今回の決定に関する反応で最も多かったのは「賢明な決定で違和感はない」と答えた人で、41%だった。次いで「プーチン首相の立候補に賛成する」が31%、「ホッとした」「安心した」が各6%だった。逆に「イライラする」が8%、「残念だ」は6%という結果だった。 

 一方、メドベージェフ大統領が12月の下院選挙でプーチン首相に代わって与党党首として陣頭指揮をとることについては「党への態度は今後も変わらない」と答えた人が54%で過半数を超えた。また、この決定を肯定的に受け止めた人が28%で、否定的な人は12%だった。

 今回の結果についてレバダ・センターのグラジダンキン副社長は「ロシア社会での画期的な変化は見られなかった。国民が期待し、予想していた通りの結果だったからだ」と総括。さらに、大統領選立候補をめぐってプーチン首相と争っているとみられていたメドベージェフ大統領について「大半の国民は自立した政治家とみておらず、一時的な大統領とみなしていたことが明らかになった」と分析している。

 一方、野党・共産党のオブホフ書記は「大半の人は現政権に対し否定的だが、表立って批判できないため、こういう結果になった」と語っている。リベラル派野党のヤブロコ幹部も「人々は現政権に不満を抱いているが、今はまだ政権を変える時ではないと思っている」と述べている。2人以外に選択肢がないという現状に、国民の不満が募っていることを示唆するコメントといえる。

 この世論調査結果が示しているのは、プーチン首相が名実ともに最高指導者として返り咲くことへの安心感、安堵感だろう。その半面、大統領再選への意欲を示していたメドベージェフ氏に国民がほとんど期待していなかったことを浮き彫りにした。政権側は双頭体制の継続を強調するが、双頭体制は事実上瓦解し、プーチン単独支配体制になるとの見方が強まりそうだ。

 

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ロシアの大統領職「譲る」メドベージェフ、首相務め第2のプーチンに?

2011年10月01日 11時13分42秒 | Weblog
 ロシアの次期大統領選をめぐる権力闘争は、プーチン首相の立候補が政権与党大会で決まり、「メドベージェフ大統領が敗れた」との見方が強いが、本当にそうなのだろうか。9月24日の党大会から1週間たち、プーチン候補擁立劇の真相が垣間見えてきた。

 党大会のシナリオは以下の通りだった。まずプーチン氏がメドベージェフ氏を12月下院選・比例代表制名簿の第1位に据えると提案。続いて、メドベージェフ氏が登壇し、与党が下院選に勝てば首相を引き受ける用意があると述べ、大統領候補にはプーチン氏を推薦した。プーチン氏は「大変名誉なこと」と応じてこれを受けた。

 つまり、大統領と首相の2人で最高指導者とナンバー2を入れ替わり、次の大統領の任期6年を乗り切ろうという「双頭政権維持計画」である。メドベージェフ氏は以前から再選を匂わせていたので「メドベージェフ氏がプーチン氏に敗れた」というように見えるが、実際はそう単純ではなさそうだ。

 党大会後、初めてメディアの会見に登場したメドベージェフ氏は、なぜ立候補を自ら辞退したのかと聞かれ、「国家と国民の利益のためだ」と答え、プーチン氏を推薦した理由として①ロシアで今最も権威のある政治家②支持率も私より少し高い、の2点を挙げた。さらに、プーチン氏とポストを交換する合意があったことを認め、何度か立候補を示唆したことについては「不測の事態に備えて保険をかけるためだった」などと述べ、「誰も騙してはいない」と弁明した。

 つまり、2人は大統領職と首相職を入れ替えることで合意していたが、プーチン首相の身に何かあった場合、メドベージェフ氏が大統領選に立候補しなければならないため、出馬するフリをしていたということだ。いずれにしろ、プーチン氏が以前から述べていたように「話し合い決着」ということらしい。

 メドベージェフ氏の説明に対し、「支持率の差は2%程度で、大きな差ではない。権威があるかどうかも大きな問題ではない」として、再出馬しない理由にはならないと見る政治評論家が少なくない。むしろ、メドベージェフ氏が大統領職を譲って首相になることで、真の実力者に近づくことができるとの思惑があるとの見方が強まっている。

 第一に、メドベージェフ氏はプーチン氏に代わって与党党首の座に就くことになり、大統領への解任権を行使できる立場に立てるからだ。憲法では上院、下院それぞれの3分の2の賛成で大統領を解任できるとされている。第二に、首相は政府を統括する職務なので法案づくりや予算案作成に関与できるうえ、官僚の人事権を握ることができるからだ。これまで介入できなかったシロビキ(軍や情報機関の幹部集団)にも口を出せるようになるとみられる。

 もちろん、憲法で定められた権限は大統領の方が圧倒的に強いが、メドベージェフ氏が与党党首や首相を務めることによって実権を握る道が開けることは間違いない。プーチン大統領の下で力を蓄え、うまくいけば6年後にはプーチン氏を凌ぐ権力を手に入れられるかもしれない。負けたフリをして、実は影でほくそ笑んでいるのかも。
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