飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

北方領土交渉は3月のロシア大統領選で仕切り直しに!

2012年01月29日 13時51分04秒 | Weblog
 東京で28日、日露外相会談が行われ、3月にロシア大統領選が実施されることから、新大統領が就任する5月まで北方領土交渉は事実上、棚上げされることが決まった。新大統領にはプーチン首相が復帰することが確実とみられており、タフなネゴシエイターのプーチン氏をどう説得するかが今後の焦点となる。

 今回の外相会談は定期的なものだが、メドベージェフ大統領の北方領土初訪問(2010年11月)で冷え込んだ日露関係が好転したことを再確認し、今後の北方領土交渉の方針を確定する意義があった。その意味では、双方とも領土問題を先送りせず、交渉を継続することで合意し、初期の目的を達成した。領土交渉に絡んでロシア側が提案した北方領土の共同経済開発についても、日本側は前向きの回答を行い、前進する方向となった。これで今後の交渉の基盤は出来つつあると言えよう。

 外相会談をめぐるロシア側の報道を見ても、領土問題については「日露間の平和条約交渉を継続することで合意した」(インタファクス通信)と述べるにとどまり、ビザ発給手続きの簡素化合意をメインに取り上げていた。以前のように領土問題をセンセーショナルに取り上げたメディアはなく、日露関係そのものが落ち着いてきた印象を与える。

 そもそも日露の基本条約締結交渉は大統領の専権事項である。とくにプーチン氏は2000年から2期8年間、大統領を務めた際、積極的に交渉を進めた経緯があり、「ロシアで事情を一番知っている」(ロシア高官)人物である。だが、日本政府が領土交渉の基本方針をめぐり、「2島先行返還」から従来の4島返還に大きくブレたことから、その後、解決意欲を失った印象がある。それだけに、ロシア外務省も4年ぶりに復帰するプーチン氏が今後どういう方針を打ち出すか、しばらくは様子見の状態ともいえそうだ。

 一方、日本側は野田首相の政権基盤が固まり、領土交渉をやり遂げられるかどうかにかかっている。だが、民主党政権は消費税をはじめ、重要な内政案件を多数抱えており、政権を維持できるかどうかの正念場を迎えている。この状態では、とても北方領土交渉に取り組める状況にないことは明白だ。ロシア側もそれを見越して、日本の政局の行方を見守っている状況である。

 双方とも、実質的な交渉に入るのは無理であり、当面先送りしようというのが本音だろう。日本の政権はこの数年、毎年首相が変わっていて、不安定な状態が続いている。野田政権も今現実に迫っている危機を切り抜けなければ、これまでの首相同様、短命政権になってしまう。民主党政権としては早く今の事態を解決し、政権基盤を固めてロシア側とじっくり交渉したいところだろう。
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プーチン首相、大統領選の1回目投票で当選決めるか微妙な情勢!

2012年01月23日 11時13分01秒 | Weblog
 3月に行われるロシア大統領選まであと1ヵ月余りとなったが、プーチン首相が1回目の投票で当選に必要な過半数の得票を得られるかどうか、微妙な情勢だ。これまでにロシア大手の3世論調査機関の調査結果が出揃ったが、支持率が過半数を超えたのは1つで、他の2調査機関は過半数に達しなかった。

 最新の調査結果は、世論基金が今月14、15日に全国で3000人を対象に行なったもの。それによると、プーチン首相に投票すると答えた人が45%で、3週間前の調査より1%アップした。2位は共産党のジュガーノフ委員長で11%、3位は極右・自由民主党のジリノフスキー党首で10%だった。あとは官製野党「公正ロシア」のミロノフ党首3%、リベラル政党「ヤブロコ」のヤブリンスキー元党首1%の順。回答を保留した人が13%いた。

 また、ほぼ同時期に行われた全露世論調査センターの調査結果では、プーチン首相に投票すると答えた人が52%に上った。この数字が投票に反映されれば首相は第1回投票でゆうゆう当選できることになる。一方、レバダ・センターが昨年12月16-20日に行なった調査結果では、プーチン首相に投票するという人は36%にとどまった。この時期は下院選の不正選挙に抗議する大規模集会がモスクワで行われた直後で、首相に厳しい結果が出た。

 3つの調査結果を比べると、昨年暮れの不正選挙抗議集会から日が経つにつれてプーチン首相の支持率が回復していることがわかる。集会後、メドベージェフ大統領が選挙改革案を提案したほか、プーチン首相も野党に対し柔軟な姿勢を打ち出しているため、有権者の姿勢も段々にプーチン支持に戻りつつあるといえる。だが、プーチン首相が目指す1回目での当選はまだ微妙な情勢だ。

 今後の選挙運動の鍵を握るのは、遅れて立候補した新興財閥ミハイル・プロホロフ氏の動向だ。46歳のイケメンで長身、そのうえ大富豪とあってダークホースとなる可能性がある。もともとプーチン首相に近く、一時は第2与党といわれた右派政党「正義」の党首を務めていた。政策も政権与党「統一ロシア」寄りで、プーチン首相が大統領に復帰したら首相になると公言している。

 もう一つ注目すべきは、選挙不正糾弾運動で盛り上がった若者や中間層が今後どういう行動をとるかだ。リベラル派や野党は来月初めに再びモスクワで大規模集会を予定しているが、「クリスマス・正月休戦」後も多数の参加者を集めることができるかどうか。プーチン首相は抗議集会を組織している指導者たちと会談してもいいと述べているが、この話し合いが行われるかどうかも見どころだ。こうした動きが大統領選の結果に直結することは間違いない。

 
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モスクワで盗まれる外車ナンバー・ワンは日本車!?

2012年01月19日 15時51分11秒 | Weblog
日本の自動車メーカーが相次いでロシアに進出、現地生産を始めているが、首都モスクワで盗まれる外車ナンバー・ワンは日本車であることがモスクワ市犯罪調査本部の調べで分かった。乗用車ばかりでなく、クレーン車など大型車両の盗難も急増しているという。

18日のモスコー・ニューズ紙によると、昨年モスクワ市で盗難に遭った車は1万3000台に上り、前年より7%増えている。ロシアの法律では、ビジネス目的の盗難と使用目的の盗難とに分かれているが、使用目的の方が前年より20%も増えている。使用目的の盗難では、ティーンエイジャーの犯行も少なくないという。

ブランド別の盗難では、国産車で人気のラーダが最も多いが、外車では日本車が一番多いという。その中でも多かったのはトヨタで1063台、次いで三菱の992台、第3位はマツダで904台、4位はホンダで847台、5位は日産で482台だった。ちなみに最も少ないのは現代(韓国)で384台、次いでBMWの389台だった。

昨年、車の窃盗犯700人が逮捕されたが、そのうちの半数以上が首都以外から入り込んだ泥棒だった。最近は大型車両の盗難が増えていて、大型トラック、タンクローリー車、はてはクレーン車まで盗難に遭っている。大型車への需要が市場で高まっているからだという。

 犯罪調査本部の話では、近年メカニックに強い泥棒が多くなり、90年代には人気があったトヨタのランドクルーザー80を盗むのに40分くらいかかったが、今では流行のランドクルーザー200でも5分位で盗めるようになったという。

専門家は「慣れていない車泥棒でも、遠隔操作の施錠をはずすことができるようになった。盗難を防ぐには、あらゆる方法を使って複雑な予防措置を講じたほうがいい」と警告している。モスクワでブランド車を持つには、窃盗犯に負けない知恵と覚悟が問われる時代になったということか。
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プーチン露首相、大統領選のテレビ討論会に出席せず!?

2012年01月13日 11時08分14秒 | Weblog
 ロシア大統領選まであと2ヵ月余り。候補者がほぼ出揃い、事実上選挙戦が始まっているが、最有力視されるプーチン首相は候補者によるテレビ討論会への出席を拒否する可能性が強まった。民主選挙の原点とも言うべき討論会を拒否するようでは、もはや良識ある有権者の支持は得られないのではないだろうか。

 インタファクス通信が12日伝えたところによると、首相のスポークスマンが同通信に語ったもので、その理由として首相の業務に影響が出ることをあげている。その一方で、スポークスマンは首相の代理を出席させてもいいとしている。

 これに対し、テレビ討論会の開催を要求している共産党のジュガーノフ委員長は「出席を拒否する理由が分からない。民主主義国家では候補者による討論会を拒否することは不可能だ」と首相を批判している。さらに委員長は首相が年末に国民とのテレビ対話を4時間以上も行なったことを指摘し「公平で清潔な選挙を支持するなら、2時間でいいから候補者が首相に会う機会を作って欲しい」と要求している。

 ジュガーノフ委員長は大統領選に立候補を表明しており、現時点では首相の最大のライバルだ。野党第Ⅰ党の共産党は、昨年暮れの下院選挙では約20%の得票率を獲得、議席を大幅に増やしている。3月の大統領選でも1回目の投票でプーチン首相が過半数の得票を得られなかった場合、決選投票に残る対立候補はジュガーノフ委員長とみられている。それだけに、プーチン首相と討論会で渡り合い、有権者の支持を増やしたいところだ。

 では、なぜプーチン首相はテレビ討論会を拒否するのだろうか。過去の大統領選でも、プーチン氏は2000年と2004年に立候補しているが、いずれも出席を拒否している。記者団や国民との対話では長時間の質疑に応じていて、どんな問題にも丁寧に答えているので討論が苦手なはずはない。やはり戦術として自分にとってマイナスだと判断しているのだろう。

 今プーチン氏が精力を注いでいるのは、2月12日に発表される予定の「大統領プログラム」の作成だ。選挙に向けての公約で、大統領復帰後の政策を網羅するものとみられている。これまでに明らかになっているプログラム案によると、経済の近代化と法による統治の強化を重点に掲げ、治安当局の高圧的傾向を改め、地域に経済的自由を与える内容とされる。いわば強権政治を弱めようという戦略といえる。

 だが、国民の多くがプーチン流強権政治に飽き飽きしていて、「プーチン無きロシア」を望んでいることが、下院選後の不正選挙抗議集会で明確になっている。そういう状況下で、プーチン首相がいくらきれい事を並べても有権者を納得させられるだろうか。とりわけ民主国家の選挙で必須の公開討論会をこれまでと同じように拒否するようでは「本来の民主主義」を実行しようという意志があるとは思えない。(終わり)


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今年の世界はどうなるのか;辰年も波乱含みの日本と米中露との関係!

2012年01月01日 11時08分16秒 | Weblog
 新年あけましておめでとうございます。今年も「飯島一孝ブログ」をよろしくお願いします。
 
 さて、日本を取り巻く国際関係は今年どう動くでしょうか。今年は日本周辺の大国である米国、中国、ロシアとも指導者の交代があり、大きく揺れ動く可能性があります。しかも、北朝鮮の指導者交代も始まっているので、変数が大きく、予測は難しいと思います。でも、難しければ難しいほどやりがいがあるというものです。当たらずとも遠からず、の気持ちで占ってみようと思います。
 
 まず、日本に対して最も影響力がある米国です。4年に1度の大統領選が11月に行われるので、早くも今月3日から共和党のアイオワ州党員集会を皮切りに予備選が始まります。注目はもちろん、オバマ大統領の再選が成るかどうかですが、よほど米国経済が悪化しない限り、オバマ大統領の再選は間違いないでしょう。

 その理由は、第一に共和党の候補者の中に強敵がいないからです。最新の世論調査では、ロムニー前マサチューセッツ州知事がリードしていますが、共和党の中では穏健派でインパクトに欠けます。過去の共和党候補者のように、よくも悪くも強烈な個性と指導力を持っていないと国民の心をつかむまでには至らないでしょう。逆にオバマ大統領の弱点は経済です。その意味で不安要素は欧州経済危機がどこまで進むかです。まだ安心はできませんが、フランスやドイツに飛び火しなければなんとかなるでしょう。

 今年1年は大統領選に忙殺されるでしょうから、米国の対外政策もそれほど大きな変化はないでしょう。日米関係では、沖縄の普天間基地移設問題が最大の懸案ですが、日本国内の状況も動く要素がなく、米国も動きにくいでしょうから、さざ波は立っても大波は来ないでしょう。概ねこれまで通りの関係が維持されるでしょう。

 次いで中国ですが、5年に1度の中国共産党大会が今年後半に開かれ、習近平国家副主席が胡錦涛国家主席の後継者に決まる見通しです。それまでは事実上の交代期にあたり、大きな政策転換などはないでしょう。ただ、中国国内で労働者や農民の反乱が多発していて、それらが手の付けられない状態になったときは大変です。でも、いまにところ全国的なネットワークができていないようですから、そこまで深刻化する恐れはないようです。

 とはいえ、中国は昨年、GNP世界2位に躍り出て、大国主義的なナショナリズムが高揚しているので日本周辺で何が起きるかわかりません。とくに尖閣諸島や南沙諸島周辺で領土をめぐる紛争が起きる恐れは十分にあります。日本は2010年のようなトラブルを起こさないよう、早めの対応が必要です。この面では米国とだけではなく、ベトナムなど東南アジア諸国との連携が欠かせません。

 さて、ロシアですが、4年に1度の大統領選が3月に行われ、プーチン首相が再び大統領に復帰する見通しです。だが、過去2回の選挙と違って1回目の投票で当選が決まらず、決選投票に持ち込まれる可能性が強まっています。昨年暮れの下院選不正抗議集会で示されたように、国民の「プーチン離れ」が予想以上に高まっていて、支持率は50%を切りそうな状態になっているからです。いまのところ、有力な対抗馬は現れていませんが、決選投票になると2,3位連合どころか、反プーチン派が大同団結し、思わぬ結果にならないとも限りません。

 プーチン体制が脆弱になってくると、国内の引き締めのため、対外政策ではますます強硬な政策が打ち出される可能性が高まります。そうなると米国との関係が悪化するだけでなく、日本との関係でも、懸案の北方領土問題の解決がますます遠のきそうです。ロシアを内向きにさせないためにも、日本側の対応が重要になってきます。日本政府はロシア側を孤立させるのではなく、仲間に引き込む知恵が欲しいところです。

 一番心配なのは北朝鮮の動向です。金正日総書記の後継者・金正恩氏の指導力や指導体制がまだはっきりせず、権力闘争の可能性も指摘されています。これまでのような武力を使った「瀬戸際外交」が今後も引き継がれる恐れがあるうちは安心できません。我々は諸外国と連携をとりながら、北朝鮮の動向を注視していかなければなりません。

 ところで、肝心な日本の政治ですが、発足以来順調に進むかにみえた野田政権ですが、ここにきて内政問題で八方塞がりの状態に陥りつつあります。とくに消費税などの増税に断固として取り組む姿勢をみせたことで党内外から反発が出ていますが、これは日本として避けて通れない問題です。ぶれることなく国民にきちんと説明すれば、解決できない問題ではないと思います。それと同時に、外交でもしっかりした政策を打ち出し、諸外国の首脳と渡り合って欲しいものです。そうすれば自ずと解決案が浮かび上がってくると思います。野田首相はいつまでもドジョウにとどまっていては困ります。今年こそ龍に変身して頑張って欲しいものです。(終わり)


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