飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアと北朝鮮が事実上の軍事同盟を結んだ意味は?

2024年07月08日 09時32分21秒 | Weblog

ロシアのプーチン大統領は6月下旬、北朝鮮の平壌を訪問し、金正恩・朝鮮労働党総書記と「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。条約では、ロシアと北朝鮮のどちらか一方の国が武力侵攻を受けた場合、他方は「遅滞なく全ての手段で軍事などの援助を提供する」と定めている。事実上の軍事同盟である。

旧ソ連と北朝鮮は冷戦時代の1961年に同様の条約を結んだが、1991年にソ連が崩壊したことから旧条約は失効していた。新条約は「覇権主義的な企てと、一極の世界秩序を強要しようとする策動から守る」と表明。一方が他方の核心的利益を侵害する協定を結ばないことを義務付けている。さらに、食料やエネルギーの分野でも共同して対処すると定めている。

この条約は、1961年に結ばれた条約同様、どちらかが外部の攻撃を受けた際に自動介入する条約の復活を意味している。ただ、両国の間には温度差があり、条約発表後の記者会見では、金総書記が「同盟」と言う言葉を3回使ったが、プーチン氏は一度も使わなかったことから、必ずしも一枚岩とは言えないようだ。

一方、中国外務省は定例会見で新条約について「ニ国間の協力問題だ」として論評しなかった。中国としては、北東アジアや西太平洋などの国家間の対立が激化する恐れがあることから、当面は静観するとみられている。日本の防衛研究者も、日米韓とロシア・北朝鮮という新しい対立構図ができたことから、地域の緊張がさらに高まる恐れがあると警戒している。(この項終わり)