飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン大統領、圧勝だが投票率70%に届かず!

2018年03月20日 09時22分22秒 | Weblog


ロシアの大統領選は3月18日、投開票が行われ、プーチン大統領の4期目の当選が決まった。得票率は開票率99%の段階で76%に上ったが、投票率は67%と、70%の目標には達しなかった。反プーチン派の投票ボイコット運動の成果ともいえ、これが今後、プーチン政権崩壊の「蟻の一穴」となるかもしれない。

プーチン大統領は選挙前から「投票率、得票率とも7割以上」の目標を掲げていた。プーチン氏の唯一のライバルともいえる反プーチン派のナワリヌイ氏が立候補を中央選管から拒否され、選挙ボイコットを訴えていたのが大きな理由だろう。それとともに、今後任期6年間を無事乗り切るには、国民、とりわけ若者の支持が必要と考えていたからに違いない。その意味では、今回の勝利はプーチン氏にとって5分5分といっても過言ではない。

ロシア紙ノーバヤ・ガゼータによると、投票率は地方より都市部に低いところが多く、最大票田のモスクワ市は59・86%と6割を切っている。これは都市部に反プーチン派が多いことを裏付けており、中でも若者の政治不信・政治離れが進んでいることの証しだろう。今後、こうした政治不信を払拭できるかどうかが、安定政権を目指すプーチン大統領の大きな課題になる。

もう一つの課題は、プーチン氏の年齢にあるといってもいいかもしれない。現在65歳のプーチン氏も6年後には71歳になるからである。ロシアの平均寿命は男性66歳、女性77歳。とくに男性の平均寿命はウオツカの飲み過ぎもあってソ連崩壊前後、ぐんと下がった。徐々に回復しつつあるものの、男性の平均寿命は依然、女性に比べかなり低い。プーチン氏にとっても健康問題は他人事ではない。

それ以上に、プーチン氏にとって大きな問題は、これがプーチン氏の最後の任期になるという点だ。憲法上、大統領任期は連続2期までと定められ、本人自身、「この問題で憲法改正はしない」と断言している。そうなると、一時は支持率8割の高率を誇ったプーチン氏でも「レームダック」になる可能性は低くない。

そうなった場合、プーチン氏がどう出るかが焦点になろう。彼の性格からすると、強硬策を打ち出して人気回復を図る可能性が高い。今の政治状況からすると、トランプ米大統領とのツバぜり合いが激化する恐れが高い。つまり、米露の軍拡競争が今後さらにエスカレートする危険性があるのだ。

ロシアとの北方領土問題を抱える日本にとって、この問題を解決できるロシアの指導者はプーチン氏以外考えられない。それだけに、これからの6年間は、プーチン政治24年間の集大成を行うためにも、穏健な政治路線を歩んで欲しいと願わずにはいられない。(この項おわり)


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英国のロシア人父娘毒殺未遂、ロシアの犯行との見方も!

2018年03月10日 15時47分59秒 | Weblog

英イングランド西南部のソールズベリー市で3月4日、ロシア人父娘が意識不明の重体で発見された事件は、神経剤による毒殺未遂事件と判明、ロシアによる犯行との見方も浮上している。ロシア大統領選を1週間後に控え、再選を狙うプーチン政権は捜査の行方に神経を尖らせている。

現地などの報道によると、意識不明で発見されたのは、英国在住の元二重スパイのロシア人男性、セルゲイ・マクリパリ氏(66)と娘のマリアさん(33)。同市内の公園にいるところを保護され、病院に運ばれた。ロンドン警視庁が調べた結果、7日、神経剤(神経伝達を阻害する作用を持つ化合物)によるものと分かり、毒殺未遂事件として本格的な捜査を開始した。

英当局は9日、化学物質の除染を行う専門部隊約180人を同市に派遣した。神経剤は、マリアさんがロシアから持参したお土産の中に混入されていたとの報道もあり、英当局はロシア側が2人を殺害するため神経剤を混入させたとの見方を強めているという。これに対し、ロシアのラブロフ外相は「英国側のプロパガンダだ」と批判する談話を発表、けん制している。

この事件で思い浮かぶのは2006年11 月、元ロシア連邦保安庁(旧KGB)幹部、アレクサンドル・リトビネンコ氏(当時44才)がロンドンで毒殺された事件だ。同氏はロンドン市内のホテルで、お茶に放射性物質ポロニウムを入れられ、毒殺された。英国当局は独自捜査でロシア政府関係者の犯行と断定、ロシア政府に容疑者の取り調べを要請したが、プーチン政権が拒否したため、犯人を特定できずに終わっている。犯人と目された人物はその後、ロシアの国会議員を務めた。こうした経緯もあって、英国当局は今度こそ真犯人を上げようと全力投球している模様だ。

一方、ロシア側からすると、プーチン大統領の再選がかかった選挙を18日に控え、できるだけ穏便に済ませたいところだ。英国だけでなく、西側全体がこの事件に注目、ロシアへの警戒感を持つと、ロシア国内の民主派勢力を刺激し、選挙にも影響を与えかねないからだ。

リトビネンコ事件でも、旧KGB出身のプーチン大統領の関与が注目され、ロシア民主派内部では大統領が指示したとの見方も出ていた。今度の事件でも、プーチン政権が非協力的な態度をとれば、痛くない腹を探られることになりそうだ。大統領選で圧勝を狙っているプーチン大統領にとって、厄介な事件が起きたと言える。
(終わり)

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