飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン大統領の再選は、それほど盤石か?

2018年02月17日 11時02分10秒 | Weblog
ロシアの大統領選は3月18日の投票日まであと1ヶ月に迫った。日本のメディアも、ロシアの体制派メディアの尻馬に乗って「プーチン氏 盤石」などと圧勝ムードを煽っているところが多いが、それほど安泰といえるだろうか。ロシアの反プーチン派メディアの報道などを元に考えてみたい。

ロシアの反プーチン派メディア、モスコー・タイムズ紙によると、ロシア議会は2月16日、国内の最低賃金を最大43%も引き上げる法案を可決した。5月までに最低賃金を1万1,163ルーブル(日本円で2万1,041円)に上げるという内容。この法案は、プーチン大統領の要請によるもので、何が何でも再選を確実にしようという、大統領の“手段を選ばない手口”と言える。

大統領がこういう手段に出たのも、ロシア経済が原油価格の低下とウクライナ問題に絡む西側の経済制裁により、今だに大きなダメージから回復していないことを示している。地方によっては最低賃金アップの元手がないところも少なくないため、ロシア財政省は法案可決後、そうした地方自治体に財政補助を行うと言明した。ロシア政府は表向き、2017年に不況を脱出したと発表しているが、それも地域差があることを認めたといえよう。

プーチン大統領の不安材料は、経済に止まらない。プーチン氏の強権支配は首相時代も含め2,000年から20年近く続いており、若者や民主派の我慢も限界に近づいていると言っても過言ではない。そうした不満が爆発したのが1月28日、ロシアの約100都市で行われた大統領選の投票ボイコットを呼びかける反体制派デモだった。中央選管に大統領選の立候補申請を却下された野党指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が呼びかけたもので、モスクワでは数千人規模の参加者がデモ行進した。これに対し、首都警察は支援者らを事前拘束した上、デモ行進でもナワリヌイ氏ら多数を拘束・逮捕した。

ナワリヌイ氏の立候補申請却下にしても、過去に有罪判決を受けたため、という、民主社会ではありえない理由での却下である。これは明らかな民主派潰しのやり方と言っていい。こうした強権政治が、プーチン氏の再選でさらに6年間も続くことになる。「もうこれ以上、我慢できない」という国民が増えるのも当然である。現在もプーチン氏の支持率は60〜70%を上回る高率とされているが、投開票段階で不穏な事態が起きないという保障はない。前回の大統領選でも、投票直後から不正選挙を疑う市民によるデモ行進が激しく行われた経緯がある。今回も投開票が終わるまで、ロシアの動きを注視したい。「一寸先は闇」というのが、ロシアの現状ではないだろうか。(この項終わり)






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ロシア政府、北方領土・択捉島飛行場の軍事化を容認!

2018年02月02日 10時21分47秒 | Weblog
ロシア政府は1月30日付けで、北方領土の択捉島にある旅客用飛行場をロシア空軍が使用することを認める政令を出した。この措置は、北方領土の軍事化を一層進めるもので、日本政府が反発することは間違いない。ロシアの有力紙コメルサントもこの問題を2月2日付けで取り上げており、日露関係への波及を懸念している。

コメルサント紙などの報道によると、この政令はメドベージェフ首相が発令したもので、択捉島の飛行場を軍民共用空港とするよう命じている。ロシア空軍は詳細を明らかにしていないが、消息筋によると、今回の政令は空軍を常駐させるものではなく、国境を警戒する戦闘機の一時的な使用を認めるものだという。

北方領土には現在、ロシア軍東部軍管区の第18砲兵師団が配備されている。その上、2016年秋からは択捉島と国後島に最新鋭の地対艦ミサイル「バル」と「バスチオン」が置かれている。さらに、ショイグ国防相は昨年2月、「年末までに北方四島の軍事力が強化される」と発言している。その上に、今回、択捉島の飛行場が軍事基地として使用されることになり、北方領土の軍事化が一層進むことは明らかだ。

これに対し、ロシア軍の消息筋は日本側には現在、イージス・システムを搭載した護衛艦や地対空ミサイル「パトリオット」が配備されているほか、陸上配備型の弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」が導入されることになっており、「ロシア側の懸念を招いている」と指摘している。

注目すべきは、今回のロシア政府の決定が2月6日から東京で行われる日露次官級協議の直前に発表されたことだ。この会議では、日露間の安保問題や北方領土問題も協議されることになっており、当然今回のロシア政府決定も議題にのぼるだろう。日本側としては、ロシア側の措置を批判することになろうが、ロシアの消息筋は「北方四島の軍事化はずっと前から始まっており、新しい現象ではない」と反論している。

こうしたことから考えて、今回のロシア側の決定は、むしろ日本側の反発を想定した上で安保問題を表に出して討議し、日本側に弾道ミサイル防衛システムの導入を再検討させる狙いがあるとみられる。さらに、ロシア側としては日米同盟の強化につながる軍事的対応を問題化し、北方領土交渉へのマイナス効果をアピールするものとみられる。

日露間のこうした対立が進めば、北方領土交渉が停滞し、安倍首相の任期中の解決は望み薄となるのは必至だ。北方領土の解決を優先させるのか、それとも日米同盟を優先させるのか。ロシア側は今回の決定を通じて、暗にその選択を迫っていると見るのが順当だろう。今こそ、安倍政権は長期的な見地からの賢明な選択を求められているといえよう。(この項終わり)
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