飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアはソ連時代の一党独裁状態に戻るのか?

2016年09月20日 14時52分01秒 | Weblog

ロシアの下院選(9月18日投開票)の開票結果が判明し、プーチン大統領の与党「統一ロシア」が下院(450議席)の4分の3を占め、単独で憲法を改正出来る権限を取得した。このため、一党独裁のソ連時代を思い起こすような強権的政権が出現しかねない。

ロシアの新聞報道によると、下院選の結果、与党は比例区(225議席)の54%を得票、203議席を獲得した。また、小選挙区(225議席)では105議席を得た。合わせると、343議席となり、単独で憲法を改正出来る3分の2の議席を越えた。

一方、第2党の共産党は92議席から42議席に、第3党の自由民主党も56議席から39議席に、それぞれ減少した。こうした政党も親プーチン派で、いわば「政権内野党」という存在である。いざとなると、プーチン大統領支持に回るのである。

確信的な反プーチン派は唯一人、グドコフ氏しかいなかったが、その人物が落選したため、議席ゼロになってしまった。リベラル派が議席を獲得出来ない最大の理由は、比例区では全体の5%を超す得票率がないと、政党は当選者を出せないという規則があるからだ。こうした政党は小選挙区でも当選者を出せないのは言うまでもない。与党はこうした規則を多用して少数派を締め出しているのだ。

プーチン大統領はこの選挙結果について「人々は無条件で安定を選び、指導的勢力を支持した」と、誇らしげに勝利宣言した。2年後の次期大統領選に立候補を目指している大統領は再選への自信を深めたに違いない。次期選挙で再選されれば、それ以前に大統領を2期4年間務めているので、20年間も指導者として君臨することになる。プーチン大統領の強権的政権が一層強まるのではと危惧される。

だが、今回の選挙で一番問題なのは、投票率が48%という下院選の史上最低を記録したことかも知れない。特に首都モスクワで35%に下がったほか、地方の主要都市でも投票率が30-40%にとどまった。この最大の理由は、都市住民の政治不信が極限に達しつつあるからではないだろうか。前回の下院選では、不正選挙の疑惑が強まり、都市住民が抗議の大規模デモを行ったものの、政権側が実力で排除、ウヤムヤに終わった経緯がある。

現在、ロシア経済は原油価格の低下に加え、西側の経済制裁が続き、プーチン政権になって初めて年金の支給額が実質減となっている。これに対し、国民の不満は強く、いつ爆発してもおかしくない状況である。ロシア人は我慢強い半面、忍耐が限界に達すると直接行動を惜しまない民族である。プーチン政権が今回の大勝で気を許していると、いつ国民の反撃を食らうか分からない。(この頃終わり)

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パラリンピックで日本選手のメダル獲得が少ないのはなぜか?

2016年09月17日 17時36分05秒 | Weblog

パラリンピック・リオ大会は18日に閉会し、日本のメダル獲得数は金ゼロ、銀10、銅14の計24個となった。総数では前回のロンドン大会の16個を上回ったが、金メダル数では5個からゼロに減っており、参加国の24位から一気に64位に落ち込んだ格好だ。確かに中国のメダル獲得数239個(うち金は107)に比べると「なんで日本はこんなに少ないのだろう」と思う人も多いと思う。だが、批判を恐れずに言えば、日本が障害者スポーツをないがしろにしてきた結果の表れとは言えないだろうか。

パラリンピックの歴史をひもとけば、日本の金メダルの最高は2004年のアテネ大会での17個で、それ以降、減り続けている。その理由として、世界各国が障害者スポーツの育成に力を入れてきたのに対し、日本は有効な手を打ってこなかったためとみられている。

具体的に何が遅れているのかというと、まずハード面で、障害者スポーツの練習場が極めて少ないことが挙げられる。たとえば、世界的に人気のあるパワーリフティングの練習場は全国に3箇所しかない。ウエイトリフティングと違って、仰向けに寝てバーベルを上げるので、その器具一式が必要となる。ところが、その器具が揃っている場所は全国に3箇所しかないのである。

また、車いすを使う団体競技がバレーボールやラグビーなどたくさんあるが、学校や自治体の体育館で車いすを使わせないところが少なくない。その理由として「床が傷つく」とか、「事故や怪我に対応できない」ことを上げるところが多い。こうした理由でスポーツのできる場所が制限されてしまうのである。

さらに、国際競争力をつけるには海外の大会に数多く出場する必要があるが、こうした場合、選手個人の負担が重くのしかかっている。東京パラリンピックが決まってから国からの補助が増えたり、選手とアスリート雇用の契約をして経費を負担してくれる企業も増えている。それでも選手の個人負担は減っていないとの調査結果もある。その上、企業との契約は東京パラリンピックまで、と期限を切られている場合が少なくない。

政府も2014年から障害者スポーツの所管官庁を厚労省から文科省に移し、国立の施設を使った強化合宿が行われるようにするなど、便宜を図るようになってきている。だが、競技人口の裾野を広げなければ、本当に強化することにはつながらない。そのためには、スポーツの予算を増やすと共に、指導者の育成や若手の発掘に力を入れるなど、総合的な施策を急ぐ必要がある。

私もこの半年間、障害者スポーツの現場を回ってみて、選手たちは厳しい条件の中で、こんなに頑張っているんだとつくづく感心した。それでも勝つこともあれば負けることもある。彼らの努力に報いるためにも、素直に拍手を送りたい。金メダルだけがメダルではないのだから。
            (この項終わり)


     
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日露の北方領土をめぐる本格的“戦い”が始まる!

2016年09月03日 10時09分18秒 | Weblog
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安倍晋三首相とプーチン大統領の9月2日の首脳会談で、プーチン大統領の12月訪日が正式に決まり、北方領土をめぐる本格交渉がいよいよ開始されることになった。大統領は今後の交渉について「(領土の)交換でも売買でもない。日露双方が損をしたと思わないような解決策を探ることが肝心だ」と述べているが、ロシア紙は今後の交渉を「領土をめぐる戦い」と表現している。

任期内の解決を目指す安倍首相は、大統領と2人だけのサシの会談で1時間近く話し込んだことから「突っ込んだ議論ができた。手応えを強く感じ取る会談だった」と自画自賛しているものの、中身については一切言及していない。

サシの会談で何が話合われたかは不明だが、共同通信は消息筋の話として安倍首相が首脳会談で2島返還論を提起すると伝えている。同通信は日本政府が返還すべき島として歯舞、色丹島をあげ、その交換条件としてロシアとの経済協力を拡大する戦略を提案すると報道している。

一方、ラブロフ露外相は記者会見で、ロシアが以前から提案している北方領土の共同開発について「日本は共同経済活動や人的交流にについて協議する用意があると感じた」と述べている。日本側はこれを否定したが、ロシア側は「交渉の重要な側面」として共同開発について今後、日本側と協議する意向を示している。

プーチン大統領はもともと日ソ共同宣言(1956年)に基づいて歯舞、色丹島返還による解決を模索しているとされる。安倍政権もこの方針に基づいて解決策を模索する考えとみられるが、ロシア側は極東・シベリア開発に日本側を巻き込む思惑があり、今後とも共同開発を提案してくる可能性が高い。

ロシア政府は外貨獲得源の原油価格が低下し、経済状況が悪化しているうえ、ウクライナ紛争を巡って西側の経済制裁を受けている。このため日本との経済協力に活路を見出そうとしているだけに、領土解決を優先する日本側と経済優先のロシア側との攻防は今後激しくなるだろう。

ロシアのバザール(青空市場)的な交渉術に負けないためには、日本側のタフな対応が求められる。その一方、日本の世論も考慮して「落としどころ」を探らなければならない。まさに日本外交の正念場である。(この項おわり)

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