飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

露中央選管の選挙法改正案;犯罪者は生涯立候補できず!?

2013年02月27日 16時26分23秒 | Weblog

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 ロシア中央選管(チュロフ委員長)は、下院の選挙法改正案をまとめ大統領府に送った。11年暮れの下院選で批判が強かった比例区一本を改め、比例区と小選挙区の半分ずつの制度に戻すというのが大原則だ。だが、重い刑法犯を科せられると生涯立候補できないとの厳しい条項が含まれていて、早くも野党側はこの改正案への批判を強めている。

 27日付けのイズベスチア紙(電子版)に掲載された中央選管の改正案は、プーチン大統領の指示を受けて作成された。その柱は①下院450議席のうち、225議席を比例区、残りを小選挙区から選出する②小選挙区の候補者は一定数の署名を集めなければならない(最低必要数は未定)③複数政党が選挙ブロックをつくる場合は議席獲得に必要な得票率を5%から7-10%に上げる、などとなっている。

 早くも問題になっているのは、過去に重い刑法犯に問われ、有罪になった場合、生涯立候補できないとされている条項だ。一定期間立候補できない場合は公民権一時停止となるが、改正案だと公民権剥奪となる。共産党と公正ロシアは「この条項は憲法に違反する」と批判している。

 この条項が含まれた経緯について中央選管は説明していないが、イズベスチア紙は政権与党「統一ロシア」のイニシアチブによるとみている。つまり、政権側がこの条項を入れたことになり、反プーチン派の立候補を抑えようとの狙いが透けて見える。政権側はウダリツォフ左派戦線代表ら指導者を次々に逮捕・起訴しており、この条項に引っかかる可能性がある。

 一方、改革派のクドリン元財務相が主宰する「市民主導委員会」もすでに選挙法改正案を作成、下院に提案する方針を決めている。こちらの案は比例区の議席獲得基準を大幅に下げるなど、少数野党にも議席が得られるよう配慮した法案だ。

 プーチン政権は中央選管作成の改正案を元に、下院に提案する法案をまとめる方針だ。その際、野党や改革派の改正案を参考にするとみられるが、どこまで野党側の意見を反映できるかが鍵となろう。下院の3分の2を占める政権与党を基盤とするプーチン政権が、野党側の批判を無視してゴリ押しすれば、再び与野党の対立が深まる可能性がある。(この項終わり)



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プーチン大統領、森元首相に経済協力の拡大を要請!

2013年02月22日 10時51分31秒 | Weblog
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 プーチン大統領は21日、クレムリンで森喜朗元首相と会談し、北方領土問題の解決に意欲を示すとともに、日本側に農業などでさらなる経済協力を要請した。今春にも予定される安倍晋三首相の訪露の際、領土を交渉材料に経済協力を拡大させる戦略を改めて示したといえよう。

 森元首相の訪問は、安倍首相訪露の“地ならし”ということもあり、この会談を取り上げたロシアのメディアは少なかった。ロシースカヤ・ガゼータ紙(ロシア新聞)の電子版によると、会談では大統領が森氏を親密な関係を示す「トゥイ(君)」で呼び掛け、「我々は古くからの友人だ」と強調した。

 さらに、大統領は森氏とのイルクーツク首脳会談(01年)以来の日露関係について「この間、日露関係には重要な変化があった。もちろん、人生は常に複雑で多様なので、停滞がなかったわけではない」と山あり、谷ありの10年を振り返った。とくに、ロシアが生産するLNG(液化天然ガス)の10%を日本が受け取っていることを指摘しつつ、「農業での協力の発展も考えられる」と語った。

 ここで大統領が、農業面での協力拡大に触れたことに注目したい。この点に言及した日本メディアは少ないが、今後の日露関係を考える上で無視できないファクターだろう。その半面、ロシースカヤ・ガゼータ紙が領土問題を巡る2人の発言を載せていないのが気になる。政府系の新聞だけに、安倍首相訪露への期待を経済協力に集中させたいロシア側の意向が紙面から透けて見えるようだ。

 日経新聞によると、大統領は北方領土交渉を柔道になぞらえ、ペンと紙を使って説明。柔道場を模した四角を描き、「両国をもう少し真ん中に引っ張ってきて(改めて)始めるということだ」と、仕切り直しの意味を語ったという。これは4島と2島で争っている現状を改め、その中間で交渉しようということで、ロシア側も「2島プラスアルファー」を検討することを示唆しているように受け取れる。

 森氏が最近テレビで3島返還論に触れたのも、2と4の中間で交渉しようと日本政府にアピールしたのだろう。プーチン大統領の意欲が領土問題解決の始まりであり、この時期を外しては解決のチャンスがないことを日本政府も肝に命じているはずだ。そのため、政府は解決可能な提案づくりに全力をあげるとともに、経済協力など幅広い日露関係の発展策を練り上げるべきだ。(この項終わり)
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ロシアで厳しい“たばこ制限法”が施行されるが、喫煙者は減らない?!

2013年02月20日 17時04分46秒 | Weblog

 
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 「喫煙天国」と言われるロシアで、今年6月から喫煙場所を大幅に制限する法律が施行される。この法律への賛否を問う世論調査で、4人に3人は法律を支持すると答えているが、この法律で喫煙者が減ると見ている人は2人に1人という結果が出た。

 たばこ制限法は2月12日、下院で採択され、6月1日から順次実施される。たばこの害から市民の健康を守るための法律とうたわれ、国家施設、病院、学校、ホテル、食堂、船内など公共施設での喫煙を禁止している。さらに、たばこの販売価格を事実上政府が決めるほか、たばこの宣伝が全面禁止され、売店での販売もできなくなる。

 この法律についての世論調査は、全ロシア世論調査センターが138カ所で1600人を対象に行ったもので、その結果は20日付けのコメルサント紙に掲載された。4人に3人が公共の場所での禁煙と価格決定権を政府に委ねることを支持しているほか、79%がたばこの宣伝禁止を容認している。売店でのたばこ販売禁止も約6割が賛成している。

 その一方、この法律が喫煙者の減少につながると考えている人は、全体の49%にとどまった(このうち、非喫煙者が61%という)。また、「禁止措置は喫煙者減少に効果がない」とみなす人も49%いた(このうち4人に3人は喫煙者)。つまり、喫煙者の大半は「効果なし」とみていることになる。

 この調査結果について同センターのフョードロフ所長は「喫煙者自身は喫煙が有害と認めているが、自分自身では禁煙できないことが問題だ。そこで、実施段階で二つの方法が考えられる。法律に違反しても喫煙するか、それとも取り締まり機関が汚職を行うために利用するかだ。いずれにしろ、この法律に反対があっても、街頭行動にまでは発展しないだろう」とみている。

 ロシアのたばこ消費量は中国、米国に次ぐ世界3位で、男性の約7割、女性の約3割が喫煙している。たばこを吸わないプーチン氏が大統領になってから、禁煙の動きが強まっているという。今回の制限法は厳しい内容で、最終的に自宅か道路でしか喫煙できなくなるといわれている。この法律が、プーチン離れをさらに加速することになるかも。(この項終わり)


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改革派のクドリン元財務相、下院の選挙法改正に動く!

2013年02月14日 14時34分34秒 | Weblog
 
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 ロシア改革派のクドリン元財務相が主宰する「市民主導委員会」は13日、下院の選挙法改正案を作成し、下院に提案する方針を決めた。比例代表制の議席獲得基準を大幅に下げるなど、少数野党の議席獲得を狙った法案だが、議会を牛耳る政権与党が提案に反対するのは必至で、ロシア政界は再び与野党対立が深まりそうだ。

 13日付けのコメルサント紙(電子版)によると、この法案は改革派の専門家集団「ゴーラス(声)」が準備し、市民主導委員会が円卓会議を開いて討議の上、作成した。法案の骨子は①比例代表制の議席獲得に必要な政党得票率を7%から3%に下げる②候補登録に必要な署名数を現行の半分に削減する③無所属候補が立候補できるよう、小選挙区制を復活し、地方自治体がどちらかを選択できるようにする、などだ。

 クドリン氏はこの法案を下院に提案する考えを示し、「選挙法改正は国の政治的発展に重要で、不正のない選挙だけが権力の信認を保証する」と述べた。さらに「この法案が下院で採択される可能性はあるが、政権与党も別の案を提案するかもしれない」と語り、基本的な立場を貫くよう求めた。

 この法案は、少数野党に落ち込んだ改革派から下院議員を出す狙いがある。11年暮れの下院選の時も得票率7%のハードルがあったため、リベラル派や共産党左派などの政党は得票率が届かなかった。3%に下がれば議席獲得の可能性が高まるからだ。

 一方、プーチン大統領も選挙法の改正を検討しており、大統領府と中央選管に対し、比例代表制と小選挙区制の混合システムへの復帰の是非を検討するよう指示している。このため、今回の法案を大統領案に反映させるよう働きかけるべき、との意見も出されたが、少数野党の要求を受け入れる可能性は少ない。

 ただ、プーチン大統領と親しく、国民にも人気のあるクドリン氏が選挙法改正の具体化に動き出したことから、プーチン政権も無視は出来ないだろう。また、集会・デモを規制され、動きを封じられている反プーチン派が、再び息を吹き返すきっかけになる可能性もある。選挙法改正問題が今後の政界の台風の目になるかもしれない。(この項終わり)






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プーチン政権の“リベラル派包囲作戦”が拡大する!?

2013年02月12日 11時28分14秒 | Weblog

 ロシア下院は先月下旬、青少年に対し同性愛の宣伝を禁止する法案を基本採択した。これは同性愛そのものを禁止するものではないが、道徳的に批判している内容で、間接的にリベラル派を締め出そうというプーチン政権の作戦とみられている。

 リベラル派のルシコフ元下院議員が英字紙モスコー・タイムズ(12日付け電子版)に寄稿した論文によると、この法案は、プーチン氏が大統領に復帰した昨年5月以来、続いている「異議を唱える人」に対する、保守反動勢力の攻撃の一環だという。

 この攻撃は、プーチン政権がロシア正教と協力して行なっているもので、モスクワやサンクトペテルブルクの大都市住民を対象にしている。とくに、リベラル派、アーティスト、無神論者、政治漫画家、ブロガーなど、行動的で創造的な市民を迫害し、保守反動派に忠実な国家を作ろうとしているというのだ。

 ルシコフ元下院議員によると、権力側はこうした攻撃で、最も活動的で自由を愛するロシア人が住むのに耐えられない環境を創出していて、その結果、将来に絶望し、海外に流出する有能な専門家が驚くべきペースで増えている。近年は年間約10万人が国外に脱出しており、海外に住むロシア人は常に200万人を超えているという。

 今問題になっている同性愛は、ソ連時代には犯罪とみなされ、数千人が刑務所に入れられていた。1990年代初期にこの法律は廃止されたが、同性愛に否定的な旧ソ連当時の思考法が今戻りつつあり、それを背景にプーチン政権が同性愛を危険な考えだと決めつけ、限定的に禁止する法案を考案したとされる。

 このように、インターネットや非営利団体そのものは禁止できないため、プーチン政権はその使用や活動を制限する法律を制定することで、事実上使用を不可能にする方法で、市民の行動の自由を制限しているのだという。今回の同性愛“取締り法案”もその延長線上にあるのだ。

 ルシコフ元下院議員は、プーチン政権のこうした手法を厳しく批判しているが、保守派が下院の3分の2以上の議席を占めている状況では、こうした政権側の手法を止めようもないのが現実である。有能な人々が次々国外に出ていくような社会は、いったいいつまで続くだろうか。(この項終わり)
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サプライズのなかった北方領土返還要求全国大会!

2013年02月07日 14時50分23秒 | Weblog


  (北方領土返還要求全国大会で挨拶する安倍首相)

 今年も7日の「北方領土の日」に合わせて、北方領土返還要求全国大会が東京で開かれた。民主党から自民党に政権が代わり初めての大会だったが、安倍晋三首相の挨拶は「作文」を棒読みしただけに終わり、領土解決への強い意気込みは感じられなかった。

 私はここ数年、必ずこの大会の取材に出かけているが、首相挨拶がこれほど期待はずれに終わったことはない。それも、国会開会中とのことで、全国からの参加者を20分以上待たせたあげく、挨拶だけしてさっさと引き揚げた。会場の滞在時間は、わずか2,3分だった。それまで高まっていた運動関係者の安倍政権への期待が、ガラガラと崩れたといっても言い過ぎではないだろう。

 安倍首相の挨拶は官僚か秘書の「作文」なので、サプライズはまったくなく、「北方領土問題の最終的解決に向け、進展が得られるよう強い意志を持ってロシア側と交渉する」と述べただけ。10年秋のメドベージェフ大統領(当時)による国後島訪問に対し「許されざる暴挙」と発言、ロシア側の猛反発を受けた菅直人首相(当時)のケースに懲りたのか、それとも「参院選までは安全運転」が染み付いているせいか、“不規則発言”はなかった。

 これまで大会はずっと九段下の九段会館で開かれていたが、11年3月の東日本大震災で会館の建物が崩壊してから代々木、そして今回は新宿と会場が毎年変わっている。今回の新宿文化センター大ホールは耐久性では安心できそうな会場だが、日本政府の、そして政治家の意気込みが聞かれなかったのが残念だ。これまであった各政党代表によるメッセージも多党化現象のためか、取りやめになった。

 そんな中で、主催者側の工夫が感じられたのは、第一部で行われた「元島民とのトーク」だ。司会者が元島民3人に、北方領土の思い出や今の四島への思いを聞く形式で、元島民の本音を引き出していた。元島民の平均年齢はまもなく80歳になるといい、「なんとか死ぬ前に故郷に帰りたい」との切実な思いは参加者の胸を打ったことだろう。

 北方四島が旧ソ連軍に占領されてから今年は68年目、「北方領土の日」が制定されてからでもはや33年目を迎える。元島民にとっては、もう待つのは限界だろうし、国民にとっても、これ以上解決を引き延ばせない気持ちになるのも当然だろう。この際、政府は現実的な解決法を決断し、ロシア側と果敢に交渉して欲しい。(この項終わり)

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プーチン大統領の指導力は著しく低下している!?

2013年02月04日 09時35分32秒 | Weblog

 プーチン大統領のイメージは「国家安定の保証人」から「経験豊富な大統領」に変わってきたことが世論調査機関レバダ・センターの調査で明らかになった。大統領の指導力が、前回2期8年間務めた頃より著しく弱まってきたことを如実に示していると言えないだろうか。

 ロシアの有力紙コメルサント(電子版)に掲載されたレバダ・センターの調査結果によると、プーチン大統領の魅力について「答えることができかねる」と回答保留にした人が26%、つまり4人に1人にのぼっている。11年1月の調査では、この数字は16%だったので、この2年間に10ポイント増えたことになる。

 さらに、2年前の調査では、プーチン氏の魅力について「決断力があり、意志の強い人物」と答えた人が34%と一番多かったが、今回の調査で一番多かったのは「経験豊富な政治家」で、30%にのぼった。また、今の大統領を「国家安定の保証人」と見る人は16%足らずで、2期目の大統領だった07年の23%に比べ、7ポイントも下がった。

 今回の調査で目立ったのは、プーチン氏の指導力を評価する人が前回の大統領時に比べてかなり減ったことだ。07年には指導力を認める人が22%だったのに、今回は14%と8ポイント下がっている。グラジダンキン・レバダ・センター副所長は「今後、大統領の指導力が前回の大統領時のレベルにまでアップするとは予測できない」と悲観的だ。

 一方、大統領のマイナス・イメージとして「大資本家と関係がある」と見る人が17%、「贈賄政治家と関係がある」とみなす人も16%いるとの調査結果が出ている。さらに、大統領が幹部を“始末”できないと見る人も12%いて、「汚職・腐敗に弱い」というイメージが浮かび上がった。

 この調査結果について、オブホフ下院議員(共産党)は「大統領の最も価値ある資質が経験だというのでは年金生活者と同じで、驚くべきことだ」と皮肉っている。また、改革派のミトローヒン・ヤブロコ代表は「大統領のイメージと人気は突然崩れる可能性がある。というのは、プーチン自身が作ったこの体制は突然死する運命にあるからだ」と批判している。

 プーチン大統領は依然としてロシアで一番人気のある政治家だが、その人気の中身が大きく変わり、今や「経験豊富」が一番の魅力だと国民はみていることになる。これでロシアという大国を指導していけるのだろうか。大統領の3期目の前途はますます多難になってきたと言わざるを得ない。(この項終わり)
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