飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

大震災後の日露首脳会談、「雨降って地固まる」のたとえの通り!?

2011年05月28日 23時11分01秒 | Weblog
 G8首脳会合に出席中の日露首脳は27日午後、仏ドービルで会談を行い、北方領土問題をきっかけに「冷戦後、最悪のレベル」といわれた関係をなんとか立て直すことに成功した。東日本大震災で「雨降って地固まる」(変事があってかえって前よりよく基礎が固まることのたとえ)「広辞苑」の効用のお陰か。

 日本外務省ホームページの日露首脳会談(概要)によると、領土問題のような大きなテーマではそれほど進展がなかったものの、今後の日露関係にとって着実な一歩となるような事業でいくつかの合意がなされた。それをいくつか拾ってみよう。

 まず、福島原発事故の対策に関しては「ロシアがチェルノブイリ原発事故から得た知見及び経験を活かした専門家間の協議などの協力を進めていくことを確認」した。これまで日本政府が「史上最悪の原発事故」を経験したロシア側の支援申し入れを無視してきたことからすれば、大きな前進である。どうしてもっと早く実現出来なかったかと悔やまれるくらいだ。

 2つ目は、メドベージェフ大統領夫人が提案していた、被災地の青少年のロシア招待を日本側が受け入れ、被災地に限らず日本の青少年のロシア訪問を促進していくことで合意した点だ。日本側も大統領夫人の提案を受けるだけでなく、ロシア人の日本の観光地訪問を一層促進することを提案しており、両国民の交流拡大につながりそうだ。お互いに意見を交換することで気持ちが通じ合い、両国民の信頼感が高まっていくことが期待される。

 3つ目は、ロシア経済の近代化(または現代化)や極東・シベリア開発などの互恵的な協力を進めていくことで一致した点だ。メドベージェフ大統領が再選後の最大の目玉事業に挙げているロシアの近代化に日本が協力することを明確にうたったもので、今後エネルギー分野の協力拡大につながる大きな事業となり得る。

 ロシアは現在、欧米からアジア・太平洋に軸足を移しつつあり、その大きな転換点になるのが12年にウラジオストクで開催されるAPEC首脳会議だ。大統領はこの会議に関し、日本側に全面的な協力を求めた。ロシアはアジア経済に不案内であるので、日本側は出来るだけ協力してロシア側に「貸し」を作るチャンスだ。

 日本国民の希望する北方領土返還問題での具体的な進展はなかったものの、今は地味でも協力関係を着実に広げていくことが大事である。とくに日露の青年交流は次の時代を担う人々を育てていく重要な事業である。被災地の青少年ができるだけ多数参加できるよう、関係各方面の協力をお願いしたい。
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東北の被災地の子供たちにロシアの大地で思いっきり遊んでもらおう!

2011年05月23日 11時44分55秒 | Weblog
 ロシア政府は東日本大震災で被災した子供たち約8百人を夏のキャンプに招待したいと日本政府に申し出ている。日本側はこの申し出を検討中とされるが、原発への不安からこの夏、屋外で遊べない子供たちが多い状況の中で、なんとか実現できないだろうか。


 この招待は、メドベージェフ大統領のスベトラーナ夫人が震災の記帳のためモスクワの日本大使館を訪問した際、申し出があった。広大な領土を持つロシアには、ソ連時代からピオネール(10-15歳の少年少女対象の児童組織)のサマーキャンプ用に保養施設がたくさんある。このうち、極東や黒海沿岸の保養施設に今夏、被災地の子供たちを招待し、思い切り遊んでもらおうというものだ。ロシア政府は09年にも中国の地震被災地の子供たちを招待した経験があり、「受け入れ準備は万全だ」(ロシア側関係者)と話している。


 ところが、日本側の窓口になっている外務省は慎重で、「今年は間に合わないかもしれない」と話しているという。子供たちは大震災でショックを受けていて、外国で過ごすことに不安があるから、ともいわれている。


 文科省は先月、福島県などの幼稚園や学校での子供の屋外活動を放射線量で制限する通達を出しており、親たちの不安を広げている。こういう状況では、子供たちは夏休みになっても屋外で思いっきり運動したり、遊んだりするのは難しいだろう。この際、ロシア側の好意を受けいれ、子供たちに思い切り遊んでもらうようにすべきではないだろうか。


 渡航費用や環境の違いを心配する余り、招待を断るようなことがあっては、せっかくのロシアの善意を無にすることにもなりかねない。子供たちの貴重な経験はずっと思い出に残り、日露両国の交流拡大にもつながるに違いない。日本政府の積極的な判断に期待したい。


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メドベージェフ露大統領、来春の大統領選に事実上の立候補宣言!

2011年05月19日 09時24分06秒 | Weblog
 来年春の大統領選に立候補するかどうか注目されていたロシアのメドベージェフ大統領は20日、内外の記者団800人を招いて会見を開き、明言を避けながらも事実上再出馬を宣言した。プーチン首相との間で亀裂が生じているとの見方については、基本戦略では一致しているが、戦術面では違いがあると認め、対立軸を示した。

 大統領がこれほど大々的に記者会見を開くのは08年の就任以来初めて。しかも、慣例だったクレムリンでの会見を避け、大統領の最重要課題としている国家の「現代化」のシンボルであるモスクワ郊外のスコルコボ建設予定地で行った。庇護者プーチン首相からの「独り立ち」を内外に示す意図がありありと感じられた。

 ロシアのマスコミは次期大統領選を巡る大統領と首相の確執を様々な憶測を交えて伝えていて、最近は首相が下院選対策用に創設した「全露国民戦線」を連日取り上げ、大統領を押しのけて首相が再登板する可能性を強く示唆していた。それだけに、「再立候補の意思は今もあるのか」との質問に大統領は「ついにその問題が出てきたか」と、うれしそうに言い、答え始めたとコメルサント紙は伝えている。

 大統領はその中で、政治はショーのようなものではなく、順守すべき決められた手続きがあり、かなり複雑な仕事であると前置きし、「我々は成功するために政治に従事している。だから最終的に政治的効果を持ち、すべての前提条件が熟した時に決定しなければならない」と述べ、まだその時期ではないことをにじませた。

 大統領はそう言いながらも4月12日、中国メディアのインタビューに「大統領選に再出馬する意思があり、その決定は近い時期に行う」と答えたことを念頭に置きながら「(再出馬するとの)声明を行うと決めたら実行する。その時期はそれほど遠くない」と明言した。そして、大統領を支持する政党の推薦を受けてから出馬声明を行う意向を明らかにした。

 さらに、コメルサント紙は大統領が再選後の抱負をこれまで以上に自信たっぷりに語ったと指摘している。とくに大統領が力を入れている「現代化」について「現代化は続けなければならないし、IT通信、医療など5つの優先分野は非常に重要な事業だと確信している」と強調した。

 また、色々憶測を呼んでいるプーチン首相との関係について聞かれると、戦略的な見解は一致しているとしながらも「戦術についてまで完全に一致しているわけではない」と述べた。その具体例として現代化を取り上げ、首相がゆっくりと段階的に行うべきだとしているのに対し、大統領は「早く実行するためのチャンスも力もある」と、早期実施を主張した。

 大統領は内閣改造についても言及し、「大統領に与えられている内閣の総辞職や改造の権限を変更するつもりはない」と述べ、大統領選後に内閣の大幅改造を行う可能性を示した。これはプーチン首相へのけん制球と受け取れる発言である。

 この会見についてメドベージェフ大統領の“指南役”といわれるユルゲンス現代発展研究所長はインタファクス通信のインタビューに「大統領は近く、違った形で大統領選に再立候補することを宣言するだろう」と答え、再出馬を強く示唆した。

 また、マルコフ政治調査研究所長は「大統領はプーチン首相との間で個別の問題では見解の相違があると認めながら、戦略的アプローチは同じだと強調している。大統領にとっては立候補の問題よりも双頭政権体制を維持するほうが重要なのだろう」と分析している。

 この日の会見で大統領が再立候補への意欲をこれまで以上に強く示したことは明らかで、大統領の再出馬の可能性が低くなったとの最近のメディアの見方を否定して見せた。これだけ大々的な会見がプーチン首相の了解を得ずに行ったとは考えにくく、発言の内容についても打ち合わせが行われているに違いない。これで大統領の考えははっきりしたが、首相の本心は依然定かではない。

  
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メドベージェフ露大統領、プーチン首相と「水面下の戦い」に突入!?

2011年05月14日 13時58分39秒 | Weblog
 プーチン首相が年末の下院選を目指して幅広く国民を結集する「全露国民戦線」を設立したのに対し、メドベージェフ大統領は13日、反対はしなかったものの、その組織とは距離を置く考えを示した。これにより大統領は来春の大統領選を巡り、プーチン首相と「水面下の戦い」に突入したとの見方が強まっている。

 首相が設立した「国民戦線」は、首相が党首を務める与党「統一ロシア」の周辺に労組、ビジネスマンの団体、青年組織を結集し、与党の支持率を上げようというものだ。下院選では与党の候補者名簿のうち25%を非党員グループに振り分ける方針だ。首相はすでに非党員グループの代表を集めて調整会議を開き、組織拡大に動き出した。

 これに対し、メドベージェフ大統領がどういう態度をとるかが注目されていたが、13日の国営メディア職員との会合で「この組織(国民戦線)は選挙に関する法律に適合しており、正常な選挙の手法として納得がいく」と容認した。その一方で「他の政党も選挙運動への参加を目指して努力していて、今のところどの政党が有利かはいえない状況だ」と述べ、いかなる政党にも所属していないことを示唆した。

 有力紙コメルサントによると、政治評論家のマカレンコ氏は大統領の発言について「メドベージェフ大統領は次期大統領選への立候補を巡る水面下の戦いに事実上参戦した。今後2人の競争が激しくなるだろうが、たとえプーチンが立候補しなくても誰が出馬するかを決めるのはプーチンだ」と述べ、大統領候補の決定権はあくまでプーチン首相が握っていることを強調した。

 また、グドゥコフ世論調査機関レバダ・センター代表はモスコー・タイムズ紙とのインタビューで「国民戦線」が国家の垂直型権力機構を強化することにつながるとの見方を示し、「プーチン大統領(当時)による00年のテレビの統制強化、04年の州知事選廃止に続く第3段階にあたり、ソ連時代に実行された非政府組織を中央の統制下に組み込むやり方だ」と語っている。

 「国民戦線」を巡る2人の応酬は、下院選を直接のターゲットにしながら実際は大統領選に向けてどちらの陣営が主導権を握るかの争いである。大統領はいち早く大統領選に出馬する意向を打ち出したが、首相は「(候補者を決めるのは)時期尚早」といいながら、下院選対策で一歩リードした形。大統領はこれからどういう対抗策に出るのか。次の一手に注目したいが、絶対多数の与党を抑えている首相に本当に対抗できるのだろうか。
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プーチン露首相が提案した「全露国民戦線」はメドベージェフ潰しか!?

2011年05月10日 15時44分53秒 | Weblog
 ロシアのプーチン首相(58)は6日、ボルゴグラードで開催された与党「統一ロシア」地域間会議で、非党員グループを年末の下院選挙に結集する「全ロシア国民戦線」を樹立すると発表した。劣勢の与党を立て直す作戦というが、メドベージェフ大統領(45)の再選を潰す策略との見方も出ている。

 プーチン首相が党首を務める与党は下院の3分の2の議席を持つ絶対的多数派だが、今年春の地方選挙では得票率が50%以下と振るわなかった。このため首相は下院選の起死回生策として国民戦線方式を考え出した。国民戦線に結集した非党員グループに与党の候補者名簿のうちから25%を割り振る方針で、労組員、ビジネスマンの団体や青年組織をターゲットにしている。

 プーチン首相は早くも7日には非党員グループの代表を集め、最初の調整会議を開いた。この席で首相は「国民戦線が有益な理由は、与党に新しい考え、新しいヒント、新しい顔が必要なためだ」と語り、新しいリーダーを組織に引き入れて自由な発想で支持者を獲得するようはっぱをかけた。

 プーチン首相が提案した新組織は、与党の周辺にいる少数政党や団体の有権者を組織化して政権与党の支持者を拡大しようというもので、下院選だけでなく来年春の大統領選でも巨大な「集票マシーン」になる可能性がある。
  
 これに対して野党のネムツォフ氏は「この戦線の狙いは、個人的な権力と詐欺師と泥棒の党の権力を維持するためだ。プーチンは与党の人気が落ちているだけでなく、自分の支持率も落ちているので、あせっているのだ」と批判している。

 一方、10日付けの英字紙モスコー・タイムズ(電子版)は社説で「プーチン首相は国民戦線設立を発表することで国家の究極の権力ブローカーであることを示した。これによってメドベージェフ大統領が彼の庇護のもとから脱し、独立した指導者として登場するという本人の希望を押しつぶした」と論評している。つまり、来春の大統領選に立候補するのはメドベージェフではなく、プーチンであることを示唆しているのだ。

 前回の08年の下院選でもプーチン氏は与党の先頭にたって選挙運動を引っ張り、圧勝した。その勢いで09年の大統領選で後輩のメドベージェフ氏を後継者に立て、二人三脚で国政を運営する双頭体制を樹立した。今回もその手法を踏襲しようとしているが、その最終的な狙いは何なのか。メドベージェフ大統領を押しのけて自ら大統領選に立候補するのか、それとも第3の候補を立てるのか。老獪なプーチン氏の腹の内はまだ見えてこない。
 
 
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ミハルコフ監督の映画「戦火のナージャ」の続編が完成、お披露目!!

2011年05月06日 10時59分44秒 | Weblog
 ロシアの巨匠ミハルコフ監督の映画「戦火のナージャ」は今、東京や神奈川で上映中だが、その続編の「要塞」がこのほど完成し5日、モスクワでお披露目された。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画「太陽にやかれて」の3部作の完結編である。

 今回の「要塞」は2作目の「戦火のナージャ」で起きた事態の結末を描いていて、5日付けのロシア有力紙コメルサント(電子版)によると、「監督の8年間にわたる労作で、絡み合ったシナリオのすべてを一気に解決してくれる」(映画評論家)と評している。

 「戦火のナージャ」は第二次世界大戦で最大の激戦といわれる独ソ戦を描いており、その戦争に巻き込まれた父と娘の深い愛がメーンテーマになっている。それとともに、ミハルコフ監督は欧米とは違った視点から第二次大戦を描こうとしていて、その結論が最終作品で明らかにされる。

 ミハルコフ監督の作品は、アネクドート(小話)に代表されるロシア的ユーモアにあふれており、完結編でもそうしたユーモアが見どころの一つとなりそうだ。また、独裁者スターリンは大戦中、最大の犠牲者を出しながらも、ソ連を勝利に導いた立役者だが、自分にたて突いたミハルコフ監督演じるコトフ大佐をしつように追跡していて、この2人の“からみ”が、もう一つの見どころである。

 この映画は今月中にモスクワで一般公開されることになっており、モスクワっ子の共感をどれだけ得られるかが注目される。その後、外国での公開となるが、ミハルコフ監督は日本で今秋にも公開されることを希望しているという。どんな映画に仕上がったのか、日本での公開が待たれる作品だ。
 
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