飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン首相因縁の急行列車で、またしても爆弾テロ!

2009年11月28日 11時24分32秒 | Weblog
 27日夜、モスクワとサンクトペテルブルクを結ぶ急行列車「ネフスキー急行」が爆弾テロで脱線し、少なくとも25人が死亡、130人が負傷した。この列車は2年前の夏にも爆弾テロで脱線、59人が負傷する事件が起きている。いったい誰が、何のために起こしたのか。

 この急行列車は、今も実権を握るプーチン首相と因縁が深い。ロシアの首都モスクワと、プーチン氏の故郷サンクトペテルブルクを結ぶ鉄道というだけでなく、プーチン氏が大統領に就任した翌年、導入された急行列車であるからだ。この列車は首都と郷里を4時間半で結んでいて、それまでの列車に比べ大幅に走行時間を短縮した。

 この列車が導入された時期が、プーチン大統領就任1年後というのも偶然ではない。彼はサンクトペテルブルクの副市長からクレムリンに登用され、あっという間に大統領に登り詰めたこともあって、中央政官界には信頼できる友人が少なかった。現大統領のメドベージェフ氏ら、郷里の友人、大学の後輩を次々にモスクワに呼んで要職に就けた。部下の大半が郷里の人脈で、その人たちが首都と郷里を行き来するため、この急行列車を導入したといってもいいだろう。

 この列車は、ほぼ毎日1便づつ運行され、モスクワを午後7時に出発し、11時半にはサンクトペテルブルクに到着する。通常は10両編成の半分がビジネスクラスになっていて、高級レストランのような食堂車が付いている。さらに、ビジネスクラスでは、テレビや映画も鑑賞できる設備がある。ビジネスクラスの料金は日本円にして約1万4千円もするので、庶民には高根の花だ。

 こうした列車を狙う犯人とは、どういう人物なのだろうか。2年前の事件では、カフカス系のイングーシ人2人が逮捕され、1人が逃走中だ。裁判は今年6月に始まったが、判決はまだ出ていない。今回も頻繁にテロ活動を展開しているカフカス系グループの仕業なのか、それともプーチン首相らサンクトペテルブルク人脈に恨みを持つ人物か。捕らえてみたら○○だったという可能性も...。
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モスクワ市の“汚職市長”をそのままにしておいていいのか!

2009年11月26日 14時43分42秒 | Weblog
 17年間にわたってモスクワ市長の座に居座っているルシコフ氏と、エリツィン初代ロシア大統領時代に第一副首相を務めた改革派のネムツォフ氏が全面対決!!そんな大見出しが新聞紙上をにぎわす民事訴訟が25日、モスクワ地区裁判所で始まった。

 二人の対決となったのは、ネムツォフ氏がルシコフ市長とその妻で実業家のエレーナ・バトゥーリナさんの“汚職”を調べ上げ、その調査報告書「ルシコフ・総括」を刊行したのがきっかけ。同氏はこの報告書を元に記者会見を開き、市長の辞任を要求している。

 対するルシコフ市長も黙ってはいない。「汚職云々は事実無根」としてネムツォフ氏を名誉毀損などで民事訴訟を起こした。市長側は調査報告書の中で事実と違う部分が6箇所あると反論している。その箇所は「モスクワでの汚職は市民生活のすべての分野に及んでいて、市職員の腐敗のモデルはルシコフ氏とその妻である」と書いてある部分など計6箇所で、ネムツォフ氏に対して250万ルーブル(約750万円)の賠償を要求している。

 この日の法廷には、ルシコフ市長は姿を現さず、主に双方の代理人同士で質疑などをやり取りした。その後、ネムツォフ氏が発言し「どの裁判所も、ルシコフ市長が泥棒であり、買収された政治家であるとの私の確信を覆すことはできない」と述べた。

 私はネムツォフ氏が刊行した調査報告書を9月にモスクワを訪れた際、入手した。27ページの小冊子だが、17年間の市長在職中に増加した財産や妻エレーナさんの蓄財ぶりを様々な資料を集めて告発している。とくに2人が結婚した91年にエレーナさんが立ち上げた日用品販売会社「インテコ」がその後、事業を拡大し莫大な利益を上げ、エレーナさんが億万長者の常連となる経過を詳しく書いている。結論として市長の早期辞任と妻の事業活動とそれに絡む市長の役割を究明するよう求めている。

 モスクワ市長の汚職問題は、すでに国民周知の事実になりつつある。汚職防止を最大のスローガンにしているメドベージェフ大統領が、首都のトップの腐敗を放置しておいてはだれも信用しない。共和国やモスクワ市長の解任権を持つ大統領が決断すべき時である。

 


 
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「北方領土で首脳会談を」という鳩山失言をロシア紙が皮肉る!

2009年11月19日 16時11分54秒 | Weblog
 「北方四島のどこかでメドベージェフ大統領との会談ができれば…」。鳩山首相が口を滑らせた一言が政界で波紋を呼んでいるが、ロシア紙もこの発言に飛びつき「露日関係で新たなスキャンダルが燃え上がっている」と伝えている。

 この話を取り上げたのは中立系の独立新聞。19日付けのネット版では「鳩山がメドベージェフを『北方領土』に招待した」という主見出しで報じている。それによると、鳩山首相は18日、北海道知事らと会い、ロシア大統領との次の会談について考慮している中で出てきた発言だとし、「モスクワ(ロシア政府)が日本への引渡しを拒否している南クリル諸島(北方四島)へ日本の首相が行けると思っている」と皮肉っている。

 続いて独立新聞は、ロシア政府が日本側に領土問題の協議を提案していて、その元になっているのは鳩山首相の祖父の一郎氏が日本代表として署名した日ソ共同宣言(1956年)であると指摘。ところが、首相は「(平和条約締結後の二島返還を約束した)日ソ共同宣言の枠内で解決すべきでない」と発言しており、結局は四島返還を目指していると決め付けている。

 これに対し、独立新聞はロシア政府の立場はあくまで日ソ共同宣言がベースだとし、「モスクワは共同宣言から外れることはできない」との専門家の意見を結論として引用している。

 独立新聞はロシア紙の中でもリベラルな新聞で、良識派とされている。それでも、今回の鳩山首相の「失言」を正面から取り上げており、鳩山首相の「軽さ」に失望しているフシがみられる。就任当時は、ロシアに好意的な鳩山首相への期待感が強かっただけに、その反動が心配だ。首相の言葉は想像以上に重いことを真摯に受け止めてほしい。
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北方領土交渉は今後2島プラスアルファが基軸に!

2009年11月16日 09時48分41秒 | Weblog
 鳩山由紀夫首相とメドベージェフ大統領との日露首脳会談が15日、シンガポールで行われた。北方領土問題で鳩山首相は「日本側は2島返還では国民の理解も得られない」と発言、ロシア側の2島返還での決着論を明確に否定する一方、日本側も四島返還に固執しない姿勢を示した。

 北方領土交渉は、日本側の四島返還要求に対し、ロシア側が2島返還での決着を示唆して対立する構図が基本的に続いている。だが、日本側はこのところ四島一括返還を主張したかと思えば、3・5島でもいいという発言をするなど基軸がぶれている印象を与えていた。今回の鳩山首相の発言は2島返還プラスアルファでの解決案を示唆したもので、今後はロシア側の言う「独創的なアプローチ」の具体案を詰め、アルファ部分をはっきりさせる交渉になっていくとみられる。

 交渉の基本線をめぐっては、日本外務省にも様々な考え方があり、過去のポツダム宣言やヤルタ協定などから「四島返還要求には国際法上、無理がある」との見解を持っている外交官も少なくない。それでも外務省ロシアスクールを中心に「四島返還要求を維持し、気長に国際情勢の変化を待つ」戦略を取り続けてきた経緯がある。

 だが、中露が面積等分原則によって中国東北部の領土問題を解決してから外務省内で北方四島の面積を2等分する解決案が検討されてきた。四島を2等分すると択捉島の真ん中に境界線が引かれることから「3・5島」解決案が浮上した。双方が妥協するウイン・ウイン方式で、ロシア側も乗れる可能性が高いからだ。この考え方は、谷内正太郎元外務次官が毎日新聞のインタビューで示唆したが、報道されると政府は否定した。

 今回の会談ではメドベージェフ大統領も「ロシア国内に厳しい見方や世論がある」と釈明しつつ、鳩山政権の任期中に交渉を進展させたいとの意欲を示した。双方ともようやく安定政権が誕生し、戦後残された重要問題解決の基盤が整いつつある。今こそ双方の首脳が真剣に交渉し、懸案を解決する好機である。この千載一遇のチャンスを逃してはならない。
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メドベージェフ露大統領の2年目の年次教書は期待はずれ!?

2009年11月13日 10時37分37秒 | Weblog
 メドベージェフ露大統領は12日、クレムリンで大統領になって2回目の年次教書演説を行った。これまでに論文などで発表した経済改革が演説の大半を占め、注目された政治改革では地方での改革を提案するにとどまった。

 メドベージェフ大統領の演説は1時間40分という長いもので、新生ロシアになって以来、18年の歴史の中で一番長い教書演説となった。その大半は経済などの「現代化」にあてられ、有力紙コメルサントはオバマ米国大統領の就任後の演説に似通った部分があったと指摘していた。同じく就任後間もない米大統領を意識したのだろうか。
  
 ロシアの主な新聞の主要見出し(ネット版)を見ると、中立系の独立新聞は「すべての階層のエリートにあてた大統領の指令」、経済紙のコメルサント紙は「メドベージェフ大統領は将来に責任を持つ」、英字紙のモスコー・タイムズは「メドベージェフ大統領は地方への民主主義導入を約束」だった。見出しが新聞によってばらばらだったのも、総花的でいまひとつ具体性がなかったからだろう。

 独自色が出たとされる政治改革でも、地方の改革に限定されていて、少数政党でも政治に参加できるよう、選挙での立候補に必要な署名集めを緩和することなどを提案していた。この政治改革は教書の最後のほうで触れていることからも明らかなように、おずおずと出してきた印象が強い。しかも、今焦点になっているモスクワ市議選の不正問題に触れておらず、改革派やリベラル派から「実効性に欠ける」との批判が出ている。

 また、外交政策の面でも、「微笑外交」を呼びかけながらも、国益を重視した現実外交を強調し、基本的には前任のプーチン路線を踏襲している。全体として新味は少なく、リベラル派として期待された大統領の2年目の教書演説としては文字通り期待はずれに終わったと言わざるを得ない。

 この背景には、メドベージェフ大統領が就任から1年半たったものの、依然として実権を握るプーチン首相を超えられない「弱さ」があるように思われる。12年の次期大統領選を控え、水面下で大統領派と首相派の確執が始まっているが、このままだと大統領は「お飾り」のまま終わってしまうかもしれない。
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モスクワ市議選結果を「信用せず」が44%にのぼる!!

2009年11月09日 12時04分23秒 | Weblog
 10月11日に行われたモスクワ市議選(日本の都議選に相当)の選挙結果について、選挙が正しく行われたとみていない市民が44%にのぼることが世論調査機関「全ロシア世論調査センター」の調べで明らかになった。選挙期間中から野党側は「モスクワ市長派による不正選挙が行われている」と指摘していたが、それを裏付けるような結果が出た。

 9日付けの有力紙コメルサントによると、市議選の結果を「正しいと認める」と答えた人は44%(このうち完全に是認が21%、どちらかというと是認が23%)だった。これに対し、「正しいと認めない」人も同じく44%(うち完全に是認せずと、どちらかというと是認せずが同率の22%)いた。残る12%は無回答だった。

 支持政党別にみると、選挙結果を最も信用しないと答えたのは改革派「ヤブロコ」の支持者で、全支持者の半数が「完全に是認しない」と答え、「どちらかというと信用しない」も23%いた。共産党支持者でも58%の人が信用しない、あるいは疑問ありと答えていた。結論として、選挙が成立したと答えた人は51%で、再選挙を求める人は10%、選挙の調査特別委員会設置を要求する人は9%だった。 

 今回の市議選(定数35)は政党比例代表制で行われ、政党の得票率が7%以上ないと議席を獲得できない仕組み。市選管が発表した選挙結果によると、7%以上の得票を得た政党は与党「統一ロシア」と共産党の2党だけで、与党が32議席を獲得して圧勝、共産党は3議席だった。改選前、2議席持っていたヤブロコは得票率が7%に達せず、議席を失った。

 今回の選挙では、改革派やリベラル派の野党がルシコフ・モスクワ市長の汚職問題を取り上げて闘った。これに対し与党・市長派が野党の立候補を抑えようと候補者登録を拒否するなど、不正な動きが指摘されていた。野党のなかでもヤブロコは「与党が大量の不正投票を行った」と激しく非難していた。

 それにしても選挙結果を認めない市民が半数近くにのぼるというのは極めて異例なことだ。民主主義の制度ができていても、市民の信頼がなければ民主主義は機能しない。今回の市議選は、ロシア民主主義の限界を図らずもさらけだしたといえよう。

 
 
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ロシアがベルリンの壁崩壊20周年を喜べないわけは?

2009年11月06日 11時00分19秒 | Weblog
 東西冷戦終結の象徴となった「ベルリンの壁」崩壊から満20年を迎え、欧州諸国では様々な記念行事が行われている。だが、冷戦の相手だったロシアでは、そうした行事はほとんどない。なぜなのだろうか?その疑問に答える論文が6日付けのロシアの英字紙モスコー・タイムズに掲載された。

 筆者は、リベラル派のルイシコフ元下院議員(43)。下院副議長を務めたこともある野党の有力政治家だ。論文の要旨は以下の通り。

 冷戦を終結させたゴルバチョフ旧ソ連大統領は、ソ連を崩壊させ、東欧諸国を西側に「引き渡した」責任を追及し続ける人々にこう答えている。「私が何を引き渡したって?ポーランドをポーランド人に、チェコスロバキアをチェコ人とスロバキア人にあげたのだ」。そして同様にロシアがロシア人の手にに戻ったというわけだ。

 ベルリンの壁崩壊から20年の間に、欧州とアジアが大きく発展したのに対し、ロシアはずっと立ち遅れ続けている。つまり、ポスト冷戦時代の最大の敗者というわけだ。具体的にはロシアは三つの失敗を経験している。第一に経済の近代化に失敗したこと、二つめは独裁体制に代わる効果的な政治システムを構築できなかったこと、そして国際的評価とスーパーパワーの地位を失ったことだ。

 さらに、旧ソ連諸国はモスクワからできるだけ距離を置き、西側の制度を発展のモデルと考えている。つまり、モスクワは国際社会からますます孤立しつつある。ロシア以外の国はベルリンの壁崩壊20年を祝っているのに、ロシアだけ取り残されているのだ。

 以上のような考えは、ロシアのリベラル派がみな思い描いていることだろう。プーチン首相ら保守派もソ連崩壊後の90年代を「屈辱の時代」と呼び、ロシアの伝統的価値観に戻って西側に雪辱戦を挑んでいるように見える。今は西側といたずらに対立するのではなく、この20年間を冷静に振り返り、失敗をきちんと総括すべき時なのではないだろうか。

<追伸>ロシアの金融危機の影響をまとめた私の記事が週刊エコノミスト誌最新号(11月10日号)に「ロシア経済底入れ?『停滞の時代』再来懸念も」の見出しで掲載されています。
 
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