飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン露大統領の核戦力増強発言の真意は?

2015年06月20日 15時18分41秒 | Weblog

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ロシアのプーチン大統領が年内に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を40基以上配備すると発言したことが大きな波紋を呼んでいる。西側のメディアは「新冷戦に現実味」とか、「米露間に緊張走る」などとセンセーショナルに報道しているが、発信元のロシアでは意外に冷静に受け止められている。プーチン発言の真意はなんなのだろうか。

この発言があったのは、モスクワ郊外で16日、ロシア国防省が初めて開いた大規模な国産兵器展示会である。いわば軍需産業や軍関係者の集まりでの発言で、大統領としては国内向けに威勢のいい発言をしたともいえる。もちろん、今進行中のウクライナ紛争の当事者や欧米諸国の反応も想定しているに違いない。

問題の新型ICBMを年内に40基以上配備するという計画は以前から決まっていたとの報道もある。だが、プーチン大統領は機会あるごとにロシアの核に言及し、クリミア半島編入問題では核兵器の準備をしたとまで発言、「ロシアが本格的に核使用を検討しているのでは」との懸念を呼んでいただけに、西側が大騒ぎするのも当然である。

一方、ロシアのメディアを見ていると、プーチン発言への反応は西側とは違い、冷静すぎる感じさえする。17日の英字紙モスコー・タイムズ(電子版)に掲載されたイワン・スホフ記者の解説によると、国民はプーチン政権の「サプライズ発言」にうんざりしているうえ、経済制裁が続き、マーケットの関心が薄れているからだという。

また、核兵器は古い世代の人間にとってはキューバ危機などで怖さが分かっているが、若い人たちにとっては「使えない兵器」であり、怖さの実感がないことも影響しているのでは、と分析している。

さらに、スホフ記者はロシアが核兵器のパワーについて言えば言うほど、逆に核の弱さがさらけ出されてくると指摘し、「ロシアが新型ミサイル40基以上を配備すれば、国際社会はますますロシアの顔をつぶさないようにしようとは思わなくなるだろう」と結論づけている。

スホフ記者はロシアと旧ソ連諸国の軍事問題を15年以上担当しているベテランだけに説得力がある。プーチン大統領の今回の発言の真意はまだはっきりしないが、ロシアも核兵器にばかり依存して平和への努力をおろそかにしていると北朝鮮同様、国際社会の信用を無くすだろう。(この項おわり)


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安倍政権、安保法制での“迷走”に政権末期の兆候!

2015年06月11日 22時39分50秒 | Weblog

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この世の春を謳歌していたかに見えた安倍政権が、突然つまずいた。安保法制を巡る4日の衆院憲法審査会で参考人の憲法学者3人がそろって「集団的自衛権の行使容認は憲法違反」と述べたことで、国民は“安倍魔術”から解放された。もうみんな騙されないだろう。

安倍首相は2期目の政権で憲法改正を公言し、なりふり構わず改憲に向けて突き進んできた。その根拠として「昨年暮れの衆院選で大勝し、国民に信任されたからだ」と言い張った。ところが、自民・公明党推薦の憲法学者を含め、3人全員が「憲法違反」を主張すると、「数(の問題)ではない」と言い出しだ。あきれた開き直りである。

菅官房長官はこれまで、安保法制を合憲と考える学者がたくさんいる、と豪語してきたのに、10日の衆院特別委で名前をあげたのは3人だけ。一方、集団的自衛権行使を違憲とみなす憲法学者は維新の会の議員によると、212人にのぼり、さらに増えているという。もう勝負はついたといっていいだろう。

先日、四ツ谷の大学前を歩いていると、「6・15 国会包囲」を呼びかけるビラを全学連の学生から手渡された。ビラには、1960年6月15日、日米安保条約改定を叫ぶ学生1万人が国会構内に突入、東大生の樺美智子さんが機動隊に虐殺されたと書かれ、その同じ日に国会へ向けてデモ行進し、「戦争法案粉砕、安倍打倒!」を勝ち取ろうと呼びかけていた。

この時、日米安保条約改定を推進していたのは安倍首相が心酔している祖父の岸信介首相だった。それから55年。今度は孫が国民の猛反対を押し切って「平和法案」ならぬ戦争法案を強行採決しようとしているのである。

私はこのころ、まだ中学生だったが、担任の先生が「東京へデモに行ってきた」と自慢そうに話しているのを聞いた記憶がある。当時はよくわからなかったが、10年後の70年安保では自分もデモ側にいて、当時紛争中だった東大などへ駆り出された。「安倍のために死んでたまるか 学生は立ち上がろう」と呼びかけるビラは、憲法改正で戦争に駆り出される可能性が高まるだけに、学生たちの悲鳴に聞こえた。

このところ、新聞各社の世論調査で集団的自衛権行使に絡む憲法改正には反対派が多くなっている。イスラム国(IS)の台頭や中国の膨張主義が著しく、我が国が戦争に巻き込まれる危険性が高まっているからだろう。今こそ真剣に憲法問題を考えないと、後世に禍根を残すことになりかねない。(この項終わり)
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