飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

安倍首相はプーチン大統領との会談で何を狙うのか?

2016年04月29日 22時21分49秒 | Weblog

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安倍首相は5月6日、プーチン・ロシア大統領とロシア南部のソチで首脳会談を行うことになった。ウクライナ問題でプーチン大統領の訪日が延期となり、逆に安倍首相が訪露してようやく半年ぶりに会談することになる。それだけ「前のめり」の会談となるが、その会談で安倍首相は何を狙うつもりなのだろうか。

安倍首相の胸の内を知るカギとなるのは、4月28日に鈴木宗男・元衆院議員と国会内で会談したことである。プーチン大統領との関係で太いパイプをもつ鈴木氏だが、安倍首相からすれば、自民党を飛び出して新党を設立、旧民主党と連携した鈴木氏である。その鈴木氏をわざわざ招いて会談するというのは余程のことである。

安倍首相は当然ながら、プーチン氏の性格や思考傾向を深く聞こうとしただろうが、それだけではないだろう。何らかの具体的な提案を鈴木氏に明かして、プーチン氏がどういう反応を示すか、尋ねたのではないだろうか。安倍首相とすれば、今回はプーチン氏を北方領土問題の解決に向け、本気にさせる最大のチャンスと思っているに違いない。

プーチン氏は4月14日にテレビを通じて国民と直接対話を行った後、北方領土問題に関し記者団に「妥協はいつか見いだされると思う」と述べ、解決に前向きの姿勢を見せた。さらに、安倍首相との会談で「当然すべての問題を協議する」と明言し、どんな問題にも対応する構えを示した。この発言から、安倍首相はプーチン氏の本気度を確信したのではないだろうか。

裏を返せば、ロシアはウクライナ問題を巡る西側諸国の経済制裁でかなりダメージをうけていて、G7の議長国である日本に制裁解除あるいは緩和措置を期待したい状況にある。そのうえ、外貨の獲得源の約6割を占める原油の価格が大幅ダウンし、国民の間で政府への不満の声が強まっているからだ。こうした状況から、安倍首相はここで思い切った手を打ち、プーチン氏の気持ちを日本に向けさせる作戦を実行しようとしているのかも知れない。

だが、ロシアの世論もウクライナ問題で愛国主義的傾向を強めており、北方領土を日本に返還する提案を受け入れる状況ではない。そうなると、日本側から事態を動かすような新提案がなければ会談は進展が望めない。だが、北方領土に絡む提案は出尽くした感がある。そうなると、大規模な経済協力の提案か、日露間に海底トンネルを掘るなどの提案でもないと事態の打開は難しいかもしれない。

安倍首相が何を考えているかわからないが、現在の八方塞がりの状況を打開する名案があるなら、その成果に大いに期待したい。ロシアのみならず、日本にとっても有益な提案なら大いに結構である。果たしてそんな名案があるかどうか。
      (この項おわり)







プーチン大統領、治安強化に向け「国家親衛隊」創設を決定!

2016年04月09日 14時23分21秒 | Weblog

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プーチン大統領が大統領直属の治安機関「国家親衛隊」をつくるとの報道は以前からあったが、4月に入ってついに創設に踏み切った。ロシア経済の悪化が進んでいることから、2018年の次期大統領選挙に向け、治安対策に本腰を入れる構えといえる。

ロシアからの報道によると、国家親衛隊は内務省軍や特殊治安部隊を一体化させたもので、40万人規模の組織にする方針だ。ロシアには、国防省が統括する軍隊とは別に、内務省が統括する準軍隊がいくつかあるが、それらを統合し、大統領の指揮下に入れるとされる。そういう意味では、独裁政権によくみられる治安部隊の「私兵化」ともいえよう。

もう少し詳しく見ていくと、国家親衛隊には容疑者の拘束、家宅捜索、広場封鎖、私有車の接収など、幅広い権限が与えられる。いざとなれば、武装組織に対する発砲も許される。この法案をみるかぎりでは、テロリストだけでなく、反体制派運動の指導者への予防拘束も可能になるだろう。

この親衛隊の長官には、元大統領保安局長のゾロトフ氏が指名された。このポストは、文字通り大統領のボディーガードであり、新組織の狙いが透けてみえる。それだけ、プーチン大統領が今後の情勢変化に危機感を感じているのだろう。

18年の次期大統領選挙には、反プーチン派のカシヤノフ元首相や、民主派のヤブリンスキー氏が立候補するとみられているが、プーチン氏をしのぐほどの候補者は現れていない。だが、前回の2011年の下院選挙、2012年の大統領選挙前に見られたような大規模な反プーチン派デモが起き、プーチン政権が揺さぶられる可能性は大いにある。

プーチン大統領はこれまでも反体制派を抑え込む法律や政策を進めており、民主派などから「強権国家」の批判が強まっている。さらに、今回の国家親衛隊の創設で独裁的政治が一層強化される恐れがある。(この項おわり)