飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ニュージャーナリズム「メディアウオッチ100人会」創刊のお知らせ!

2011年02月26日 16時17分15秒 | Weblog
 新聞記者OBを中心にジャーナリズムの信頼回復を図ろうと報道・執筆のプロ約100人が集まって「メディアウオッチ100人会」を25日、立ち上げました。あらゆるメディアをチェックするとともに、国内・国際情勢を定点観測するコラムをメルマガで配信する計画で、筆者も同人に参加しました。

 代表を務めるのは朝日新聞OBの今西光男さん。定年退職後、「既存のジャーナリズムへの信頼が地に落ちようとしている。今こそ民主主義に不可欠なジャーナリズムの底力を発揮させ、信頼回復を図る必要がある」と一念発起、自らのネットワークを駆使して同人を結集しました。

 筆者も今西さんの熱意に打たれ、同人になった1人です。今西さんは政治部出身、筆者は社会部、外信部が長く、現役時代は接点がなかったのですが昨年9月、日露学術報道専門家会議でモスクワに出かけた際、1週間ご一緒して彼の人柄に心服し、新しいジャーナリズムの同行者となることを決めました。

 100人会は、新聞記者OBだけでなく、元官僚、学者、フリージャーナリスト、政治家など多士済々で、どんなテーマでも縦横無尽に評論・批判できる方々ばかりです。しかも、記事はすべて署名入りで、反論ももちろん受け付けます。3月1ヵ月間予行練習して4月1日から正式に発足します。正式にスタートすれば、月曜から金曜までの週5回発信します。購読料は1ヵ月1,500円、法人契約は月額3,000円です。

 記事は当面、その日の新聞、テレビ、雑誌などから注目されるニュースを選んで切り口や書き方をチェックする「ニュースチェック」と、専門分野や社説を定点観測し、その紹介や評価をレポートする「ニュースウオッチ」の2本立てです。軌道に乗れば著名な識者へのインタビュー記事や大事件の追跡取材なども収録する予定です。

 筆者は主に「ニュースウオッチ」でロシアを中心に国際情勢のウオッチをしたいと考えています。もちろん、このブログはこのまま続けますが、新しいメディアと連動してさらにバージョンアップできればと考えています。このブログともどもご期待ください。

 ニュージャーナリズムを購読したい方、あるいは同人になりたい方は「メディア評価研究会(株)」の以下のメアドにお問合せください。また、試読もできますので「飯島一孝ブログ」で読んだと伝えてご相談ください。     
     <mediawatch100-kaiin@nifty.com>

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ゴルバチョフ元ソ連大統領、ロシアの「見せ掛けの民主主義」を批判!

2011年02月23日 10時25分19秒 | Weblog
 3月2日に80歳の誕生日を迎えるゴルバチョフ元ソ連大統領は21日の記者会見で、ロシアの民主主義を「見せ掛けの民主主義」と表現し、メドベージェフ大統領とプーチン首相を「有権者を愚弄している」と厳しく批判した。

 ゴルバチョフ氏はこれまで、エリツィン初代大統領の後任のプーチン氏を「ロシアの混乱を立て直した功労者」として評価、直接の批判を避けてきた。だが、次期大統領選にプーチン氏が再立候補するとの見方が強まっていることから事態を憂慮し、公然と批判に回ったとみられる。

 ゴルバチョフ氏は来年春の大統領選に関し、プーチン首相と後輩のメドベージェフ大統領が話し合いでどちらが立候補するか決めると述べていることを取り上げ「それはプーチンの仕事ではない。選挙で国民が決めることだ。他の人達も立候補できないのか」と発言、「傲慢で有権者を軽視するもの」と2人を手厳しく批判した。

 さらにゴルバチョフ氏は、元石油王ホドルコフスキー被告の懲役刑延期判決で裁判長補佐が上級裁判所の圧力で判決がゆがめられたと内部告発した問題(2月15日の私のブログを参照)について「私は彼女(裁判長補佐)を完全に支持する。この事件には政治的ルーツがある。政治家は裁判に干渉すべきではない」と語り、判決の背後で暗躍しているプーチン首相を批判した。

 また、ゴルバチョフ氏は中東のチュニジアやエジプトで長期独裁政権が次々に倒され、周辺のアラブ諸国に飛び火している状況について「多くの事実が(旧ソ連・東欧などの)共産主義崩壊の時と共通している」と指摘した。続けて「人々はより良い生活を渇望している。彼らは失うものは何もない」と論評し、こうした動きがさらに拡大するとの見通しを示した。

 ゴルバチョフ氏は西側では冷戦を終了させた立役者と評価されているが、ロシアでは「ソ連を崩壊させた人物」とみられ、人気がない。だが、政治の節目節目に発言し、国民に警告を発する役割を果たしている。今回の発言から、ロシアの選挙や裁判の制度は整ったものの、依然として中身がしっかりしていない「見せ掛けの民主主義」に過ぎないとの苦い思いが痛切に感じられる。この思いをロシアの指導部がきちんと受け止めないと、中東の二の舞にならないという保証はない。

 
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解任されたモスクワ市長の夫人が約350億円を不正蓄財!!

2011年02月18日 11時47分51秒 | Weblog
 昨年9月、メドベージェフ大統領に解任されたルシコフ・モスクワ市長(74)の妻エレーナさん(47)が約350億円を不正に得ていたことが内務省調査委員会の調べて分かった。エレーナさんは建設会社を経営しており、夫の市長時代の職権乱用の疑いが浮上した。

 ロシアのメディアは18日、前市長夫人の不正蓄財問題を一斉に報道した。それによると、内務省調査委員会が17日、夫人の建設会社インテコや夫人の口座があるモスクワ銀行の幹部事務所などを捜索し、証拠書類を押収した。その結果、約350億円を不正に得ていたことが確認されたという。

 この金は、モスクワ市内の土地58ヘクタールをモスクワ銀行と提携している会社に売却した代金とみられている。しかも、この土地売買が出来たのはモスクワ市政府が同銀行への譲渡を許可したためとされ、モスクワ市の予算が使われた疑いも出ている。

 ルシコフ夫妻は現在オーストリアに滞在しているが、この報道についてエレーナ夫人は不正蓄財を否定し「夫に圧力をかけようとしている」と述べたという。ルシコフ氏はコメントを出していないが、これまでのインタビューで市の予算使用を否定していた。

 今週発売の経済誌によると、エレーナ夫人の総資産は約930億円にのぼるとされる。この資産は、ルシコフ氏が市長時代、建設会社に巨額の利益供与をした結果とみられている。このため改革派のネムツォフ元第一副首相らがルシコフ氏の不正を告発していた。

 今回の捜査はルシコフ氏の市長時代の不正を暴くための捜査との見方が強いが、モスコー・タイムズ紙によると、政権側はエレーナ夫人に建設会社を手放すよう圧力をかけているのだという。取引に応じない場合、夫人は逮捕されると同紙は見ている。

 ルシコフ氏はもともとプーチン首相と親しく、その関係もあってソ連崩壊直後の1992年から18年間もモスクワ市政を牛耳ってきた。だが、メドベージェフ大統領が地方自治体に長期間君臨している政治家の弊害を指摘し、辞任に応じなかったルシコフ氏を解任した経緯がある。

 その一方、プーチン首相は自分の側近を後任の市長に充てており、大統領と首相双方の顔を立てた人事だったとみられる。こうした事情から首都の権益を巡って大統領と首相の暗闘が続いている可能性が高い。この捜査が進展するかどうかは、ひとえに大統領と首相の力関係にかかっているとみるべきだろう。
 
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ロシア元石油王への刑期延長判決は上級裁判所の圧力だった!?

2011年02月15日 10時38分27秒 | Weblog
 ロシア社会に14日、センセーショナルなニュースが飛び込んできた。元石油王のホドルコフスキー被告に昨年暮れ、脱税以外の罪と合わせて17年までの懲役刑延長を言い渡した判決は、上級裁判所の圧力によるものだったと裁判長のアシスタントが暴露したのだ。

 15日付けのモスコー・タイムス紙(電子版)などによると、暴露したのはモスクワ地区裁判所の裁判長アシスタントで報道担当のナタリア・ワシリエワさんで、14日リリースされたネット新聞「ガゼータ・ルー」のインタビューに答えたものだ。

 ワシリエワさんによると、言い渡された判決文はビクトル・ダニルキン裁判長が書いたものではなく、上級裁判所のモスクワ市裁判所から渡されたもので、裁判長は判決文を書いてもいなかった。実際に判決文を書いた裁判官の名前も知っているという。

 さらに、驚くべきことは、政治的裁判の判決はたいてい事前に決定され、その通りの判決を言い渡さないと解任されるとワシリエワさんは語っていることだ。こうした重要な裁判に関しては、担当の裁判官ではなく上級裁判所の裁判官が決めることが常態化しているという内部告発である。

 そこで思い出されるのは、この裁判の判決直前にプーチン首相がテレビ・インタビューで述べた発言である。首相はホドルコフスキー被告について「泥棒は刑務所にとどまるべきだ」と発言、大きな波紋を呼んだ。メドベージェフ大統領もこの発言について「大統領も他の公職者も判決前に意見を述べるべきではない」と釘を刺していた。

 今回の内部告発を踏まえて考えると、首相発言は裁判所当局に間接的に刑期を延長するよう圧力を加えていたことになる。それを受けた形で上級裁判所が判決内容をきめていたことになり、人権擁護団体が憂慮している「事実上司法の独立がない」実態が明るみに出たといえる。

 告発したワシリエワさんはインタビューの中で「私は裁判官になりたかったが、裁判官は法律にだけ従っているのではないことが分かった。裁判官は上層部の権威に従っているのだ」と失望感を吐露している。

 もちろん、裁判所高官はこの事実を否定し、ダニルキン裁判長も告発を偽りだと否認している。裁判所内部では「陰謀」との見方も出ている。だが、人権擁護団体などはこの告発を重視し、メドベージェフ大統領に対し調査を命じるよう求めている。

 この事件はプーチン氏が大統領だった03年に立件された事件で、新興財閥つぶしの一環と見られていた。とくにホドルコフスキー被告は野党勢力と組んでプーチン政権を倒そうとしていたとされ、裁判は「プーチンの復讐」との見方が強かった。

 大統領は就任直後から司法の独立と権威向上を目指して法案整備などを進めており、今回の事案を由々しき事態と受け止めているはずだ。だが、公然と調査命令などを出すとプーチン首相と真っ向から対立することになる。大統領は来年の大統領選への出馬を目指して主体的に動いており、この問題にどういう態度を取るのか大いに注目したい。
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前原外相の北方領土交渉は予想通り平行線で終わった!

2011年02月12日 11時23分39秒 | Weblog
 前原誠司外相とラブロフ露外相との会談は11日、モスクワで行われたが、予想通り双方の主張のぶつけ合いに終わり、解決の糸口は依然つかめなかった。この結果、日露関係は当分の間経済協力だけの、いびつな関係が続く見通しになった。

 ロシアのメディアは日露外相会談を大きく取り上げたが、「モスクワ・東京:平行線に」(インタファクス通信)、「東京との関係は極限まで悪化」(コメルサント紙)などの見出しで伝え、北方領土交渉で両国が激しく対立したことを浮き彫りにした。

 今回は会談直前の「北方領土の日」(7日)に、菅直人首相の「許しがたい暴挙」発言や、ロシア大使館前でのロシア国旗「侮辱」事件があったため、外相会談はとげとげしい雰囲気の中で行われた。モスクワの日本大使館前では、親クレムリン派の青年組織「若いロシア」や「『統一ロシア』の若き親衛隊」の活動家が集まり、「クリル(北方領土)は我々の領土だ!」「クリルは渡さないぞ!」などと書いたプラカードを振り上げた。

 会談でも冒頭にラブロフ外相が「率直に言うと、きょうは良好な政治的雰囲気の中であなたを迎えたかったが、『北方領土の日』を巡る様々な問題でそうは行かなかった」と苦言を呈した。この後、前原外相は持論の「四島固有の領土論」を展開、ロシア側の主張とかみ合わなかった。外相の対露外交の強硬さが前面に出され、日本側の主張が小泉内閣当時に逆戻りした印象が強い。
 
 ただ、ロシア側が歴史専門家による領土に関する委員会の設置を提案したのは予想外だった。これまでも日露双方で領土に関する資料集を作成したことはあるが、交渉にはほとんど影響を与えることはなかった。今回の提案も「ロシア側の引き延ばし戦術」との見方が出ており、前原外相は消極的な姿勢を示したとされる。

 日本政府の戦略は、今回の外相会談を年内の首脳会談につなぐことだったが、会談では首脳会談の開催についての言及はなかったという。コメルサント紙はクレムリンの情報筋の話として、首脳会談がモスクワで開かれる可能性を示唆している。ただし、会談の時期については明言を避けたという。

 日露関係が「極限まで悪化した」といっても、経済協力関係は順調に進んでおり、経済界も不安感は抱いていない。だが、このまま“政冷経熱”状態が続けば、ロシア側の領土問題解決の機運がますますしぼんでしまう。それこそロシア側の思うつぼだ。

 日本政府も今後、対露戦略を再構築して交渉に臨む必要がある。時の首相や外相によって方針がぶれるのは作戦上良くない。前原外相は今回、四島返還の強硬論を主張したが、これで解決しないことは自明の理だ。菅政権に本当に解決する決意があるなら、きちんと方針を定めてから交渉すべきだ。
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「北方領土の日」を巡ってロシアのメディアが過熱報道!!

2011年02月08日 13時29分36秒 | Weblog
 7日の「北方領土の日」を巡り、ロシアのメディアは菅直人首相の「暴挙」発言やロシア国旗への「愚行」を取り上げ、過熱報道を展開している。10日からの前原誠司外相の訪露を控え、両国関係の一層の悪化が懸念されている。

 8日のロシア各紙(電子版)は、日本の「北方領土の日」を大きく取り上げ、批判的な論調を繰り広げている。有力経済紙コメルサントは「領土論争は個人攻撃に移った」との見出しを掲げ、菅首相が北方領土返還要求全国大会でメドベージェフ大統領の国後島訪問を「許しがたい暴挙」と発言したことを「日本の首相はこれまでも何度かロシア指導者を攻撃しているが、今回のような表現を聞いたのは初めて」(ゴロブニン国営タス通信東京支局長)と、こき下ろしている。

 また、中立系の独立新聞も「日本の首相は外交的エチケットを無視した」との小見出しで菅発言を批判し、「ロシア政府はより建設的な政治家が日本の政権を握ることを期待している」とまで書き、暗に首相交代を望んでいる口ぶりだ。

 さらに、大衆紙のコムソモリスカヤ・プラウダ紙は「日本人はロシア国旗を路上で引きずった」との見出しで、7日朝、東京のロシア大使館前で極右団体の代表がロシア国旗を侮辱したと書いている。その上、同紙は大使館前で警備していた日本の警察当局がこうした行為を止めさせなかったと批判している。ロシア大使館はこの件で日本外務省に抗議したという。

 今回の菅発言に対して、ラブロフ外相がいち早く反応し、「外交的な発言ではない」と批判したが、これを伝えたインタファクス通信によると、菅首相の発言は「(大統領の国後島訪問は)許しがたい侮辱」と、かなりきつい表現に翻訳されている。ところが、コメルサント紙や独立新聞は「容認しがたい愚行」とやや穏やかな表現になっている。ちなみに、インタファクス通信の記事の見出しは「『許しがたく侮辱された』日本」となっていた。

 また、独立新聞によると、ラブロフ外相はメドベージェフ大統領が昨年11月のAPEC首脳会議で菅首相と会談した際、首相は大統領の国後島訪問に対し「遺憾である」と述べただけで、厳しい抗議はしなかったとしている。ところが、7日の大会での発言が極めて厳しい表現だったことから「外交的発言ではない」と激しく反応したのだろう。首相とすれば、いわば決起集会のようなものだったのでオーバーな表現をしたのかもしれないが、首相の公式の場での発言としてはいい過ぎだったといえる。

 いずれにしろ、菅首相の発言が大きな波紋を呼び、領土交渉の相手であるロシア側をさらに追い込んだことは間違いない。この結果、前原外相訪露は一層厳しい環境の中で行われることになった。日本政府は、よほど知恵を絞らないとロシア側の領土問題で硬いガードは破れそうもない。まさに日本の外交力が問われている。
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北方領土:前原外相訪露はロシア側の強い不信感払拭が課題!

2011年02月07日 09時47分24秒 | Weblog
 今日は30回目の「北方領土の日」である。この日が昭和56年に制定されてから30年、北方領土が発生してからは66年も経過したことになる。この年月の重みを実感しながら、改めて領土問題の早期解決を祈念したい。

 今年の日露交渉は、10日の前原誠司外相のロシア訪問から始まる。昨年11月、メドベージェフ大統領が元首として初めて北方領土を訪問するという“禁じ手”を繰り出し、領土を取り巻く状況が大きく変わった。それ以来、日本政府の責任者が訪露するのは初めてで、日本側がどう出るか、対するロシア側はどう応えるかが当面最大の注目点である。

 もともと現在の混迷状況を作った日本側の張本人は、前原外相その人であるといっても言い過ぎではない。鳩山民主党内閣の沖縄・北方担当相に就任した前原氏は09年10月、根室を視察した際、「ロシアが北方四島を不法占拠している」と発言、ロシア指導部の間で高まりつつあった交渉機運を打ち砕いたからである。

 もちろん、この発言だけが問題なのではなく、北方領土を「わが国固有の領土」と明記した改正北方領土特措法の成立(09年7月)も重なって、日本側に真剣に交渉する気がないというメッセージを送る形になったことは疑いない。このため、日本側の真意を確かめるため、これまでソ連首脳も足を踏み入れなかった北方領土を訪問(ロシア側に言わせると上陸である)するという“ショック療法”をとったのだろう。

 この後、日本政府の強い抗議にもかかわらず、ロシア政府要人が相次いで北方領土を訪れ、インフラ整備などの具体化を急いでいる。大統領は先週末、こうした経緯を国家安全保障会議で報告し、「クリル諸島(北方領土)の発展に注意を払わなければならない」と関係閣僚に指示した。その中で大統領は、日露間の平和条約問題にも注意を喚起し、「両国の関係が戦略的協力の新たなレベルに進むよう」各閣僚に求めた。

 一連のロシア指導部の言動について日本側では「ロシア側は領土交渉を事実上棚上げした」との見方も出ているが、先週末の大統領発言は交渉の格上げを狙っているとも受け取れる。さらに、昨年12月に来日したナルイシキン大統領府長官も「(日露間で現在)信頼を示す対話が進んでいる」と語っている。

 だが、前原外相の訪露を待つロシア側には外相への不信感が強く、厳しい対応も予想される。まずはロシア側の不信感を払拭する姿勢を示し、領土交渉を軌道に乗せることが先決だろう。そのためには、ロシア側の発言の意図をきちんとつかみ、誤ったメッセージを出さないよう細心の注意を払う必要がある。
 
 今回の外相の最大の役割は、今年夏以降にも予想される菅直人首相の訪露につなげることである。モスクワでの首脳会談で本格的な交渉ができれば大きな成果が見込めるが、そのときまでに菅政権の基盤が確立しているかどうか。今年も残念ながら、不確定要素が多い日露関係となるのは避けられそうもない。





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ロシアでもエジプトやチュニジアのような事態が起きるのか?

2011年02月04日 10時23分13秒 | Weblog
 チュニジアやエジプトで長期独裁政権が民衆の反乱で大きく揺らぐ事態が起きているが、こうした動きがロシアにも波及するのかどうか…。この問題を巡って今、ロシアの新聞紙上で論争が起きている。

 議論が戦われているのは、英字紙モスコー・タイムズ(電子版)の紙上である。改革派のルシコフ前下院議員が「ロシアとアラブ諸国とは状況が違う」として波及の可能性を否定したのに対し、翌日の社説が「プーチン政権がさらに続けば、将来その可能性はある」と反論した。

 まず、ルシコフ氏の意見をまとめてみよう。アラブ諸国では人口が爆発的に増大し、若者の失業率が上昇、貧困家庭が拡大している。その一方、独裁者の長期政権が続き、一握りの金持ちが富を分け合っているため国民の不満がついに破裂した。ところが、ロシアでは人口の減少が続き、若者の就職はアラブほど厳しくはない。ロシア国民はおおむね今の生活水準に満足していて、政治への関心も低い、というものだ。

 これに対し、社説では独裁政権がいかにクーデターに弱いかを数字を挙げて説明。ロシアの場合も、強権主義路線のプーチン首相が来年の大統領選に再出馬して当選するか、あるいは首相にとどまってもさらに2期12年間(次期大統領から任期6年に延長)実権を握ることになり、これまでの大統領、首相在任の10年を合わせると22年も権力者の地位にとどまる計算になるとみる。

 さらに、社説は昨年暮れのモスクワ・マネージ広場でのサッカーファンの暴動や北カフカスでの警察官連続殺害事件をあげ、社会に対する怒りや不満が暴力や過激な行動に転化していると指摘。「今すぐに革命が起きる危険性はないものの、国民が生活水準の低さや汚職に永久に耐えていくとは考えられない」と警告を発している。

 こうした議論が紙上で展開できるのも、国民への影響力の少ない英字紙ならではの身軽さだろう。モスコー・タイムズ紙の社説が危惧しているのも、プーチン首相が来年の大統領選に出馬する可能性が高いからだ。出馬すれば当選は間違いない状況だけに、それだけは避けたいという思いが伝わってくる。

ロシアで真の民主化あるいは民主化の深化を目指した「革命」が起きるかどうかが議論されたのは、旧ソ連諸国で2003年から04年にかけて起きた「カラー革命」の頃である。ロシア民主主義の「異質さ」を巡って欧米などでも議論を呼んだが、当時のプーチン政権が国益を前面に押し出した「主権民主主義」という概念を打ち出してこうした議論を抑え込んだ経緯がある。
 
 このところメドベージェフ大統領の動きが活発になっている。本人や取り巻きが来年の大統領選を意識して国政の主導権を握ろうとしていることは間違いない。プーチン首相に首根っこを抑えられている状態から抜け出せるかどうか。もう少し状況を注視する必要がありそうだ。

 
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