飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアとウクライナの関税同盟を巡る交渉が決裂!

2013年08月28日 15時47分32秒 | Weblog
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  欧州との経済統合を強めているウクライナに対し、ロシアは関税同盟に加盟するよう要請、政府間交渉を続けてきたが、ついに決裂した。これにより、ウクライナは11月にも欧州連合(EU)と自由貿易協定を含む連合協定に署名する可能性が出てきた。

  ウクライナはソ連崩壊後、欧州への接近を強め、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する方針を打ち出す一方、EUに参加する方向で準備を進めてきた。これに対し、ロシアは旧ソ連諸国との間で関税同盟を結び、ウクライナにも加盟するよう要請、欧州への統合を阻んできた。

  ウクライナで10年1月、親露派のヤヌコビッチ大統領が誕生すると、NATO加盟方針を撤回するなど、ロシア寄りの外交に転じた。だが、地勢的に欧州に近く、エネルギー資源が少ないウクライナにとって、ロシアより欧州の方が経済的なメリットが大きいとの判断が強まっていた。

  こうした状況下で、ウクライナが今秋にもEUと連合協定を結ぶとの話が浮上したところ、ロシア側がウクライナ製チョコレートについて「品質に問題がある」などと指摘、対露輸出を停止する措置を取った。さらにウクライナ産石炭などの輸入関税引き上げを検討し始めた。

  通商摩擦が相次いだため、ロシア政府は26日、ウクライナのアザロフ首相らをモスクワに呼んで交渉を行った。メドベージェフ首相も話し合いに加わったが、解決の糸口がつかめず、シュワロフ・ロシア第一副首相は27日、交渉決裂を宣言した。

  コメルサント紙(電子版)によると、シュワロフ副首相は「ウクライナは(ロシア側の)関税同盟とEUの自由貿易協定に同時に加盟したいと述べたが、両立は不可能だ。妥協の余地はなく、これ以上話し合っても無意味だ」と述べた。

 旧ソ連諸国で結成する関税同盟には現在、ロシアの他、ベラルーシ、カザフスタンが加盟し、同じ関税率で貿易を行っている。ロシアなどは再三、ウクライナに加盟を要請しているが、ウクライナは加盟を躊躇。今回のロシアとの交渉では、EUとの自由貿易協定と同時に関税同盟に加盟する提案を行っていたとされる。

  今後、ウクライナはEUと自由貿易協定を結ぶ方向に進むとみられるが、ウクライナの産品が直ちにEU市場で受け入れられる可能性は少ない。市場でなんらかの補償措置を受けるとともに、抜本的な構造改革が求められよう。ウクライナがこれに耐えられるかどうか、これからが正念場だ。(この項おわり)


モスクワ市長選、反政権派のナバリヌイ弁護士が現市長に迫る!

2013年08月23日 08時22分48秒 | Weblog
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  モスクワ市長選は9月8日の投票日まであと約3週間。プーチン政権の支持を受けたソビャーニン市長(55)を反プーチン運動の指導者ナバリヌイ弁護士(37)が追う展開で、このところナバリヌイ氏がユニークな選挙運動で支持を広げている。ナバリヌイ陣営は決選投票に持ち込む作戦で、今後の進展によっては波乱が起きる可能性もある。

  ナバリヌイ候補の選挙運動は、人々が多く集まる駅などの街頭に立ち、有権者と直接対話する手法だ。日本で「辻説法」と呼ばれるやり方に似ていて、英字紙モスコー・タイムズによると、この対話集会は次のように展開する。

  ナバリヌイ候補が「私について何を知っていますか」と聞くと、誰かが「汚職」と答える。そこで候補は「汚職って何ですか。私が森林を丸ごと盗んだと言う件ですか」と議論を畳み掛けていく。

  同候補が森林売却に絡む横領罪で起訴され、今年7月、禁錮5年の実刑判決を受けたことを逆手にとり、無実を主張するやり方だ。候補の率直な対応に拍手する人も少なくない。こうして人々を対話に引っ張り込み、自説を展開する。1日3カ所でこうした対話集会を開いていて、投票日までに100回以上開く予定だ。

  選挙参謀のボルコフ氏は「資金カンパ、ボランティアの多さなど、選挙運動は新しいことばかりですが、とくに対話集会は革新的です。選挙運動の主目的は、誰に投票するか決めかねている有権者に決めさせることですから」と語る。

  ナバリヌイ候補は対話の中で、17年間モスクワに住んでいることや家族のことを話し、年金や移民問題など有権者が知りたい身近な問題を積極的に取り上げている。このため有権者の関心も高く、確実に支持者を増やしていると陣営ではみている。

  最新の世論調査では、ソビャーニン市長が過半数の得票率で当選するというものが多いが、ナバリヌイ候補の得票率も確実に増えており、20%を超えるとの見方も出ている。ナバリヌイ陣営では、市長が1回目の投票で過半数を取るのを抑え、決選投票に持ち込めば勝機があるとみている。

  政権側は、ナバリヌイ候補が実刑判決時に市長選への立候補を表明していたことから、条件付きで釈放する異例の措置をとった。このため落選後は再び収監するものとみられるが、得票率が高いと収監しにくくなるのは明らかだ。これまで政権側は「危険人物は収監する」との方針でやってきたが、今回はどうするのか。得票率によっては難しい対応を迫られそうだ。(この項おわり)


世界陸上モスクワ大会;ロシアが金メダル数で米国を上回る!

2013年08月18日 14時32分00秒 | Weblog
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  猛暑のモスクワで行われた世界陸上選手権大会は、地元ロシアが陸上大国・米国を上回る金メダルを獲得するという予想外の結果を残し、18日閉幕した。ロシアが得た金メダルは合計7個で、米国の6個を抜いたのだ。ボルトのいるジャマイカも、金メダル数では米国と並んだ。

  17日の競技が始まった段階では、金メダル数はロシア、米国とも5個ずつだった。そもそも日程を2日残した段階で、金メダル1位の国が決まらないという事態こそ米国にとって悪夢だった。しかも、この日はなぜか、女子の決勝種目で走り高跳びと、1600メートルリレーが設定されていた。

  そして、この2種目で“異変”が起きた。女子1600メートルリレーといえば、米国が3連覇中で、4連覇が確実と見られていた。ところが開けてみると、ロシアが米国の4連覇を阻んで優勝。さらに、ロシアのスベトラーナ・シコリナ選手が走り高跳びで優勝したのだ。

  この日、米国の金メダルは1個に止どまり、最終日の18日も最後の400メートルリレーで男女ともジャマイカに金メダルをさらわれたのだ。ロシアも最終日、女子やり投げなどで金メダルを逃した。もちろん、金銀銅合わせたメダル数全体では米国は25個を獲得し、ロシアの17個を上回った。

  ソ連崩壊後、ロシアは米国にスポーツでも引き離され、毎回敗北感を味あわされていただけに、米国を上回る成果に大喜び。ロシア陸上連盟のバラフニチェフ会長は「ロシア代表はコーチたちが課した課題をすべて達成した」と称賛。ロシア・スポーツマスターのボゴスロフスカヤさんも「予想以上の成績で有頂天の気分だ」と感激していた。

  ロシアは来年2月、ソチ冬季五輪開催を控えていて、世界陸上選手権大会の好成績をソチ五輪での成功につなげたいところだ。しかし、ソチは「人種のるつぼ」と言われるカフカス地方に接しているうえ、プーチン政権の強権政策への批判が強まっていることから、何が起きるかわからないという不安は消えそうもない。(この項おわり)


プーチン大統領、柔道の恩師の死を悼む!

2013年08月13日 14時28分01秒 | Weblog
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  プーチン大統領に少年時から15年間にわたって柔道を教えたコーチが亡くなり、大統領の郷里、サンクトペテルブルクで9日告別式が行われた。式に参列したプーチン氏は恩師の柩のそばでじっとたたずみ、死を悼んでいた。

  この恩師はアナトーリ・ラフリン氏で享年75歳だった。サンクトペテルブルクで柔道のコーチを務めていて、13歳のプーチン少年を入門させ、以後15年間にわたり柔道を指導した。鉄道車両工場の工員の家庭に生まれたプーチン少年は、アパートでネズミと遊ぶのが好きという一風変わった少年だった。ソ連時代、少年少女はピオネール(共産少年団)に入るのが普通だったが、不良や問題児は入れず、プーチン少年も最初は入れなかった。

  ところが、6年生になると入ることができた。そのころスポーツをやるようになり、最初ボクシングを始めたが、鼻を折ってやめ、柔道に変わった。そこでラフリン・コーチと巡りあったのだ。プーチン氏は「柔道を始め、そこでの社会的地位を守るために学校でも優等生にならざるを得なかった」と振り返っている。

  プーチン氏はウェブサイトに載せたラフリン氏への追悼電報の中で「コーチの死は本当に悲しい。スポーツにおいても、人生においても、気配りが行き届いた真の教師だった。彼の死は、我々弟子たちにとって大きな損失である」と書いている。

  告別式に参列した大統領は、ラフリン氏の柩に献花し、しばらく頭を下げて立ち尽くしていた。そのあと、ラフリン氏の未亡人や昔の道場仲間と語り合った。プーチン氏とラフリン氏の絆は強く、大統領に就任した00年以降、クレムリンにラフリン氏を招き、一緒に昼食を取っていたという。

  ラフリン氏は50年間、柔道のコーチを務め、プーチン氏以外にも億万長者のロテンバーグ氏、シェスタコフ下院議員ら多数のエリートを育てた。晩年は、サンクトペテルブルグで青年スポーツ・アカデミーを主宰していた。こうした功績をたたえ、大統領は昨年の誕生日に「名誉勲章」を授与していた。

  柔道を習い始めて人間的にも成長したプーチン氏にとって、その手ほどきをしてくれたラフリン氏の存在は、想像以上に大きかったに違いない。還暦を過ぎ、肉体的パフォーマンスも限界に来つつある時だけに、恩師の死は生き方を見つめ直す良い機会になるかもしれない。(この項終わり)


9月の米露首脳会談が延期された本当の理由は?

2013年08月09日 15時46分34秒 | Weblog
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米ホワイトハウスは9月にモスクワで開く予定だった米露首脳会談を見送ると発表した。CIA元職員、スノーデン容疑者の一時亡命をロシア側が認めたことへの対抗措置と見られているが、本当にそうなのだろうか。

  ホワイトハウスは、CIA元職員の身柄引き渡しにロシア側が応じなかったことが理由だと明言する一方、「首脳会談は意味をなさなくなった」とも述べている。こうした中、米露間の懸案事項は多いが、いずれも前進が期待できないため、プーチン大統領が首脳会談延期に手を貸したという見方が浮上している。

  ロシアの英字紙モスコータイムズによると、プーチン大統領がスノーデン容疑者の一時亡命を認める決断をして、オバマ大統領に首脳会談延期を容易にするようお膳立てしたという。ロシア当局の一時亡命受け入れが意外に早かったことから、プーチン大統領の関与を有力視している。

  同紙はロシアが一時亡命受け入れを決めた第一の理由として、首脳会談で最大の課題とされる欧州でのミサイル防衛システム配備問題が暗礁に乗り上げ、当面解決するメドが立っていないことを上げている。このため米側がこの問題に辟易していて、現段階では合意に達する可能性がないとみているからだ。

  第二に、メドベージェフ大統領期には、オバマ大統領と親密な関係ができ、新戦略兵器削減条約に調印するなど前進したが、第2期プーチン大統領期に入ると、オバマ大統領は対中国問題に専念し、米外交におけるロシアの地位が低下したと指摘している。さらに、米国がロシアで「オレンジ革命」(第二の民主化闘争)扇動作戦を行っているとして警戒を強めていることも理由に挙げている。

  以上の理由から、同紙はプーチン大統領が米露首脳会談前に一時亡命を受け入れ、オバマ大統領の首脳会談見送りを事実上促したとみなし、「プーチン大統領最高の挑発」と決め付けている。また、二人の過去の首脳会談から「プーチン大統領がオバマ大統領に関心を持っていないことは明らかだ」と、そりが合わないことも明言している。

  プーチン大統領は当初、CIA元職員の亡命受け入れにあまり関心を示さず、「国家間の関係ははるかに重要だ」と述べていたが、一時受け入れに傾いたのは国内世論の高まりと、首脳会談延期でオバマ大統領に恩を売れると踏んだのかもしれない。国家主義者であり、プラグマチストでもある大統領の面目躍如といえそうだ。(この項終わり)

プーチン大統領、若者相手に恋愛観を大いに語る!

2013年08月04日 11時07分08秒 | Weblog

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  プーチン大統領は2日、モスクワ南方のトベリ州で行われた若者のサマーキャンプに参加、質問に答えて辞任後の生活や恋愛について大いに語った。長年連れ添った夫人との離婚を公表した後だけに、恋愛の話に熱がこもったようだ。

  このサマーキャンプは、プーチン大統領を支持する青年組織「ナーシ」(我々の意)が主催したもの。大統領も毎年出席しており、今年は4回目。セリゲル湖の周りにテントやパビリオンを立て、全国から集まった若者たちが政治討論会などを開いている。

  恒例の大統領への質問タイムが行われ、プーチン氏はすべての質問に答えた。2日付けのコメルサント紙(電子版)によると、政治家を辞めた後、どんな仕事をするのかと聞かれ、「政治家の仕事がまだ終わらないよう希望する」と言って笑わせた。そのあと「私には興味深い仕事や熱中することがたくさんある。私は社会的な活動に従事することを考えている」と語り、具体的な内容までは言及しなかった。

  続いて、反プーチン派の政治家ナバリヌイ弁護士が横領罪で禁錮5年の実刑判決を受けたことに質問が及んだ。大統領は「5年の実刑判決と聞いて驚いた。だが、判決は裁判が決めるものだ」と答え、関与を否定した。その半面、「若い政治家が最も厳しい汚職問題に取り組むのはいいが、自身も非難の余地のないようにしなければいけない」と語り、法律の範囲内で行動するよう釘を刺した。

  若者たちに最もウケたのは、プーチン大統領が帝政ロシアを築いたピョートル大帝の恋愛について語った時だ。大帝はスウェーデンと戦った北方戦争で、ロシア軍の捕虜になったリトアニア農家出身のエカテリーナ一世を見初めて結婚した。「大帝は強くて厳しい性格の人だったので、軍の戦利品を王妃にすることができた。まさにラブストーリーだ。彼女はとても面白くて魅力的な女性だったに違いない」と話すと、若者たちから拍手が巻き起こった。

  大統領は夏になってもロシア各地を駆け回り、皇帝のように振舞っている。とくに自分を支持する若者たちとの交流が楽しみなようだ。ピョートル大帝の恋愛話では、自分の結婚について思いが及んだに違いない。心中は定かでないが、今も大帝のようなドラマチックな出会いを夢想しているのかも。(この項終わり)




モスクワ青空市場の暴動で警察の不祥事が明るみに!

2013年08月01日 11時39分54秒 | Weblog

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  モスクワの青空市場で先週末、群衆が警官を襲う事件が起きたが、警官がこの事件を放置したとして31日、警官6人が解雇された。プーチン大統領は事態を重視し、緊急会議を招集して対策に大わらわだ。

  この事件は、7月27日、モスクワ市内のマトベーエフスキー市場で起きた。ルスロフ夫妻が少女のレイプ事件で逮捕されたイトコの拘置に抗議してクドリャショフ警官に襲いかかり、頭を何度も殴りつけた。市場にいた群衆がこれに呼応して建物を壊すなどの乱暴を働き、一時は騒然となった。

  その後の調べで、この暴動を放置したとして警察の責任者が職務怠慢の容疑で逮捕されるなど、計6人が解雇された。プーチン大統領は31日、ソビャーニン・モスクワ市長代行、コロコルツェフ内相らを緊急招集し、対応策を協議した。

  プーチン政権が事態を重視しているのは、解雇された警官が青空市場関係者から賄賂をもらって事件を傍観したとの噂が広まっているからだ。政権側は公務員の汚職撲滅に力を入れているが、今回の事件で綱紀粛正の効果が上がっていないことを裏付ける恐れがある。

  もうひとつの問題は、青空市場で働く労働者にチェチェンなどカフカス地方から不法に入国した移民が多いことだ。治安当局はこうした移民が治安悪化の温床になっているとして警戒を強めている。

  事件が起きた青空市場は市内に51ヶ所ある市場の一つだ。青空市場はカフカスの野菜や果物が安く販売されているとして観光客にも人気のスポット。だが、06年以降、何度も暴動が起きていることから市当局は15年までに閉鎖し、ショッピング・モールなどに改装する計画を進めている。

  マトベーエフスキー市場も15年まで閉鎖され、その間に近代的な建物に改装されるとみられている。だが、モスクワっ子の日々の胃袋を満たしてきた青空市場が閉鎖されて一番困るのは一般市民だ。当局が早く手を打たないと市民の不満が高まり、9月の市長選に思わぬ影響を与えかねない。(この項終わり)