飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアとウクライナの国民感情は悪化する一方だが…

2014年05月30日 13時20分57秒 | Weblog
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   ウクライナで新大統領が決まり、ロシアとの紛争は新しい局面に移りつつあるが、ロシアとウクライナの国民感情は悪化する一方であることが最新の世論調査で明らかになった。とりわけロシア国民の方が、ウクライナ国民よりも相手国への不信感が強く、両国民が和解するまでには長い時間がかかりそうだ。

   30日付けのロシア紙ベドモスチ(電子版)によると、今回の世論調査は中立系レバダ・センターがウクライナ大統領選(25日)の前後にロシア国民1800人を対象に行われた。その結果、ウクライナとの関係について「非常に悪い」あるいは「概ね悪い」と答えた人は計49%で、今年1月より23ポイントも増えている。「概ね良い」または「非常に良い」との回答は計35%で、4カ月前より31ポイント減っている。

   一方、キエフ国際世論研究所が今年4月にウクライナで実施した調査結果では、ロシアとの関係が「非常に悪い」「概ね悪い」と答えた人は38%で、今年2月の調査時より25ポイント増加。また、「非常に良い」「概ね良い」との回答は52%で前回より27ポイント減っている。両国の調査を比較すると、ロシア国民の方が相手国との関係が悪化したと見ている人の割合が多いことがわかる。

   また、ウクライナ政権の紛争への対応をロシア国民に聞いたところ、80%が「悪い」と答え、「良い」との回答は12%にとどまった。逆に、プーチン政権の対応についてウクライナ国民に聞いた調査では、「悪い」との回答は71%で、「良い」は19%だった。ロシア国民、ウクライナ国民とも相手政権を厳しく批判しているものの、ウクライナの暫定政権の方がプーチン政権より相対的に悪いという結果が出ている。

   ウクライナ新大統領に選出された富豪、ポロシェンコ最高会議議員(48)への期待度を聞いたところ、「ウクライナ情勢が安定に向かう」と評価するロシア国民は17%足らずで、「内戦につながる」と見る人が最も多く40%に上っている。

   この調査結果についてレバダ・センターのグラジダンキン副所長は「ポロシェンコ新大統領への対応には依然懐疑的なロシア国民が多いが、選挙による正当化が済んだので、これまでのウクライナ政権よりは評価が良いだろう。プーチン大統領が選挙結果を肯定的に見ていることも影響している。新政権が情勢をコントロールできるようになれば両国関係は良くなるだろう」と分析している。

   ウクライナ人はロシア人と同じスラブ民族だが、昔から「ロシア人とは違うのだ」と教えられ、常にロシア人を目標に行動してきたという。隣国で親しいがゆえに対抗意識も強いのだろう。だが、現在の苦境を脱出するには、ロシアの協力が欠かせない。両国民とも冷静になれば、きっと解決の道筋が見つかるだろう。(この項おわり)
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ポロシェンコ・ウクライナ新大統領は「英雄」になれるか?

2014年05月27日 11時12分44秒 | Weblog
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   ウクライナ大統領選は25日の投開票の結果、「チョコレート王」の称号を持つ富豪、ポロシェンコ最高会議議員(48)が当選した。1回目の投票で54%の得票率を獲得、2位のティモシェンコ元首相(13%)らを大差で破った。だが、東部ドネツクの空港で親露派武装集団とウクライナ軍の戦闘が始まるなど、紛争収拾どころか、さらに悪化しかねない情勢となっている。和平派とされる新大統領の政治手腕が早くも問われている。

   ポロシェンコ氏の勝因について、ウクライナの社会学者で「民主的イニシアチブ」基金代表のイリーナ・ベケシキナさんは「今回の候補者は平和派と戦争派に分かれるが、ポロシェンコ氏は平和派の中でも最も明確で、強力な代表である。国民は“革命と戦争”に疲れ、平和な生活に戻りたいとの思いでポロシェンコ氏に投票した」と分析している。

   また、ロシアの保守的政治評論家、セルゲイ・マルコフ氏は「国民は武器によってではなく、投票によって指導者を決める道を選択した。ポロシェンコ氏は新興財閥として狡猾さと如才なさを示し、ロシアと戦わずに交渉し、妥協できると国民は期待している」とみる。

   ポロシェンコ氏は6月中旬に新大統領に就任する予定だが、その前の6月3、4日にワルシャワで開催される東欧初の自由選挙25周年の集いに出席、オバマ米大統領ら欧米諸国の首脳と初めて会談する。さらに、就任式後速やかにモスクワを訪問、プーチン露大統領と会談する計画だが、ロシアとの交渉は一筋縄ではいかないだろう。

   ポロシェンコ氏の当面の課題は、ウクライナ東部で続く親露派勢力との戦闘をどう収拾するかである。ロシア国内で圧倒的な支持を得ているプーチン氏でも、東部の親露派勢力を統制できないのが現実である。ポロシェンコ氏は政治家の経験は乏しいが、清廉な実業家のイメージと現実主義者の眼力で国政運営に当たれば、国家再生の道が開けるかも知れない。

   今回の紛争は、ウクライナを操ろうとする米国と、これを阻もうとするロシアとの代理戦争と言っても過言ではない。そろそろ双方ともホコを収めなければ、取り返しのつかない事態になりかねない。双方の指導者が事態収拾に真剣に取り組むよう求めたい。(この項おわり)
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ウクライナ大統領選は情勢安定化のきっかけになるか?

2014年05月23日 10時46分42秒 | Weblog
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   ウクライナ紛争で繰り上げ実施が決まった大統領選は25日、投票が行われる。ロシア系住民が多い東部や南部で選挙が実施できるかどうか、投票率はどの程度になるか、1回目の投票で当選者が決まるのか、など不確定要素が多いが、この選挙が今後のウクライナを占う重要な選挙であることは疑いない。

   23日付けのロシアの中立系新聞「独立新聞」(電子版)によると、大統領選は全国の投票所の90%で実施できるとみられている。騒乱が伝えられる東部のドネツク州とルガンスク州でも、ロシア系住民が行政庁舎を占拠している地域などを除けば投票が行われる見通しという。

   最新の世論調査では、有権者の60%は必ず投票に行くと答えており、20%は行くつもりと答えている。この結果から、ウクライナ中央選管では投票率はなんとか70%に達すると期待している。また、選挙が公正に行われると答えた人は55%で、選挙で不正が起きると答えた人も11%いた。

   大統領選では、得票率が過半数を超えた候補が当選者となるが、いない場合は上位2人による決選投票となる。親欧米派の富豪、ポロシェンコ最高会議議員(48)が世論調査などで他の候補を大きく引き離していて、最有力候補とみられている。だが、独立新聞が多数の専門家に聞いたところ、1回目で過半数を超す候補はいないとみる人が多かった。最後の瞬間まで投票する候補を決められないという有権者が多いからだという。

    決選投票は6月15日に実施される予定で、7月には新大統領の宣誓式が行われる段取りだ。だが、新大統領の権限がどうなるかは最高会議(国会、一院制)での新憲法草案の審議次第である。新憲法は10月に制定される予定だが、これまでにまとまった新憲法案によると、大統領の権限は大幅に縮小され、重要事項の決定権は最高会議に移ることになる。つまり、大統領は国家の象徴的な存在になるという。

   最高会議選は新憲法制定後に行われる見通しで、この選挙が事実上ウクライナ政治の方向を決めることになる。その意味では、今回の大統領選は最高会議選の前哨戦ともいえる。とはいえ、大統領選が成功裏に行われなければ、ウクライナの将来はお先真っ暗となってしまう。国民一人一人の良識が問われる選挙になろう。(この項おわり)
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日本の対露制裁対象者に日露、エネルギー関係者含まれず!

2014年05月16日 15時00分21秒 | Weblog

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   ウクライナ東部の緊張緩和措置として日本政府は4月下旬、ロシア政府関係者ら23人へのビザ(査証)発給を当面停止する追加制裁を決めたが、この中に日露関係者、エネルギー関係者ともに含まれていないことが分かった。プーチン大統領の今秋の訪日を控え、対露関係の悪化を防ごうと、ロシアに最大限の配慮をしたとみられる。

   日本政府は23人の名簿を発表していないが、日露外交関係者によると、制裁対象者23人の中には「ロシア文化フェスティバル」のロシア側組織委員長であるナルイシキン下院議長や石油大手のセチン・ロスネフチ社長らは含まれていない。この2人はプーチン大統領の信頼が厚い最側近の人物で、米国やEUによる渡航禁止対象者に入っている。

   その半面、ウクライナ紛争の過程で国会の解任決議を受け、ロシアに亡命したヤヌコビッチ元ウクライナ大統領が含まれていることが判明した。ロシア側も「なぜこの人物が含まれているのかわからない」と首をひねっている。日露関係者やエネルギー関係者をすべて除外したことから、員数合わせのため名簿に滑り込ませた可能性もある。

   今回の制裁措置についてロシア側関係者は「露日関係者は制裁の対象になっていないので、具体的な影響はない。ただ、今回の制裁は露日関係全体の雰囲気に影響を与えていることは間違いない」と述べ、日本側の措置を「非常に残念だ」と受け止めている。

   また、ウクライナ紛争が日露間の平和条約交渉に影響するかどうかについてロシア側関係者は「歴史的に見てもクリミア半島と北方四島は違うので、平和条約交渉には関係しないと思う。もちろん、クリミア半島のロシア編入で愛国主義が強まり交渉が難しくなるという人もいるが、そんなに関係はないと思う」と語っている。

   今回の日本政府による対露制裁は、米国やEUに歩調を合わせて形だけの制裁を行ったという印象が強い。ロシア側にも足元を見られており、ほとんど効果がないといっても言い過ぎではない。むしろ、米国やEUとの違いが目立ち、逆効果になる恐れもある。

   その裏で、安倍政権は谷内正太郎国家安全保障局長を密かにモスクワに派遣し、プーチン政権との協議を続けている。たとえロシアがウクライナ紛争で孤立しても、対話は続けるべきだ。いくら日米同盟が重要だからといって、米国の言いなりになってはいけない。(この項おわり)

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プーチン大統領の「3日ルール」が事態打開のカギ!

2014年05月14日 11時25分50秒 | Weblog
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   ウクライナで続いている紛争は、東部の親ロシア系住民による住民投票実施で再び国家分断の危機を迎えたが、プーチン大統領はクリミア半島の場合とは違って冷静な対応を示した。この裏には、大統領が重大な決断を迫られた時にみせる「3日ルール」の効果があるという。そのルールとは一体何だろうか。

   この「3日ルール」を解き明かしてくれたのは、12日付けのロシア紙モスコー・タイムズ電子版である。それによると、このルールはジャーナリストがよく話しているもので、大統領は重大な事態が起きると、3日間待ってから重要な決定をする傾向があるというのだ。

   たとえば、クリミア半島を巡って親ロシア系住民とウクライナ新政権との対立が深まった3月1日、プーチン大統領は上院にウクライナへの軍部隊派遣を提案し、承認を得た。だが、大統領はすぐには軍隊を派遣せず、3日間かけて米国やドイツ首脳らと電話会談を行い、最悪の事態を防いだという。

   今回も、東部ウクライナの独立を求める親ロシア系住民に対し、大統領は最初住民投票を延期するよう要請した。11日に投票が実施されると、大統領府は住民投票の結果を「尊重する」としながら、独立支持をすぐには承認しない声明を出した。その中で、ウクライナ新政権と親ロシア系住民代表との対話による事態打開を求めたのである。

   相手を待たせて不意を突くという政治手法は、プーチン大統領がロシアの指導者になってからすでに10年以上続けているものだという。この手口は柔道の達人としての大統領の評判と合致するものだと記者は書いている。

   モスクワ・カーネギー・センターのトレーニン所長は「プーチン大統領の行動はしばしば西側のメディアや指導者に誤解されている。広く行われている国際報道と違って、大統領はウクライナを侵略し、分断する意図はない。クレムリンはウクライナ東部にロシアのアイデンティティーを代表する勢力を作り、親欧米代表とのバランスをとりたいのだ」と同紙に語っている。

   ウクライナ紛争でのプーチン大統領の対応は、このところ目に見えて変わりつつある。西側の強硬姿勢とロシア世論の沈静化を踏まえて、潮目が変わってきたとみているに違いない。大統領をしばしば批判する同紙も「賢い指導者になってきた」と評価している。大統領の指導力を発揮して紛争を早く収拾して欲しいものである。(この項おわり)


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ウクライナで軍事衝突の危険性高まるとの世論調査結果!

2014年05月06日 11時41分33秒 | Weblog

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   ウクライナで親ロシア派住民と暫定政権治安部隊との衝突が拡大しているため、ウクライナとロシアの軍事衝突に発展すると心配するロシア国民が増えていることが最新の世論調査で明らかになった。これに伴い、クリミア半島のようなロシア編入も控えるべきとの意見が増えつつある。クリミア独立の動きが始まってから2カ月が過ぎ、ようやく事態沈静化を求める世論が出てきたと言えそうだ。

   ロシアの独立世論調査機関レバダ・センターが4月下旬に行った世論調査結果が6日付のロシア紙ベドモスチ(電子版)に掲載された。それによると、クリミア半島のロシア編入を支持すると回答した人は76%で、3月下旬とほとんど変わらなかった。だが、クリミアのケースを他の地域に広げるべきだと答えた人は67%から9ポイント減っている。

   さらに、ロシアとウクライナの軍事衝突を心配する人が72%で、3月下旬に比べ、14ポイント増えた。また、ロシア軍がウクライナに軍事介入する可能性があると答えた人が58%に上っている。紛争地域がウクライナ東部から南部に広がっていることから、いずれ内戦に突入すると予想する人が半数近い47%もいることがわかった。

   この調査結果についてレバダ・センターのグラジダンキン副所長は「ウクライナ南東部の状況が依然として複雑で、マスメディアが紛争拡大の雰囲気を作っている。その一方、クリミア編入のケースは平和的に行われたので、国民から支持されている面がある」と分析している。

   また、政治学者のポジャロフ氏は「ウクライナ情勢の複雑さはロシア、EU、米国など当事者が多いことと関係している。ロシア国民はクリミアと違って東部ウクライナをロシア固有の領土とみなしていないので、ロシアへの編入を支持する割合はそれほど高くない。このことはロシア国民が侵略的でなく、帝国主義的野心がないことを示している」と語っている。

   ウクライナで内戦の恐れが高まったのは、南部のオデッサで2日、オデッサ州の分離独立を主張する親ロシア派住民とこれに反対する暫定政権支持派の住民同士が衝突、火災で46人もの死者が出たことが影響している。それも大半は親ロシア派住民で、プーチン政権は「暫定政権側の犯罪だ」と非難している。

   この事件以来、ロシア軍が軍事介入する可能性が高まったとの見方が出ており、紛争が泥沼化する恐れが現実味を帯びてきた。だが、ロシア国民はナショナリズムの高揚感から覚めつつあることが今回の世論調査で明らかになった。プーチン大統領は冷静に状況を判断し、事態収拾に全力を挙げるべきだ。(この項おわり)
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モスクワのメーデーにソ連崩壊後、最大の参加者!

2014年05月02日 17時31分28秒 | Weblog
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   モスクワの赤の広場で開催された1日のメーデーに約10万人が参加した。ソ連崩壊後、有名無実になっていた労働者の祭典が23年ぶりに蘇ったといえる。ウクライナ危機でクリミア半島が60年ぶりにロシアに編入され、愛国主義が高揚したためと見られている。

   ロシア紙の報道によると、この日、クレムリン脇の赤の広場で労働組合員らがロシア国旗や与党「統一ロシア」の旗を振りながら行進した。組合員が掲げるプラカードには「祖国を誇りに思う」「プーチン大統領は正しい」などと、クリミア半島のロシア編入を称えるものが目立った。

   ソ連時代には共産党指導者が赤の広場のレーニン廟に立ち、労働者の行進を見守るのが伝統だったが、プーチン大統領はこの日、赤の広場には顔を出さなかった。その代わり、クレムリン内で行われた「労働の英雄」のメダル授与式に出席、労働者5人にメダルを贈って栄誉をたたえた。

   一方、プーチン大統領の側近であるソビャーニン・モスクワ市長はテレビを通じ、赤の広場の参加者が10万人を超えたことを明らかにし、「これは偶然ではない。愛国主義の高揚で国内の気分が盛り上がっているからだ」と述べ、暗に大統領を持ち上げた。

   さらに、ロシアのテレビはクリミア自治共和国の首都シンフェロポリのメーデーの模様を伝えた。行進に参加した組合員らは「クリミアはロシアだ。お帰りなさい」などと書いたプラカードを掲げていた。

   米国や欧州諸国の経済制裁が相次ぎ、ロシアは経済の停滞を招いているが、プーチン大統領の支持率が82%に達するなど、対ウクライナ政策は大方の国民の支持を得ている。ただ、英字紙モスコー・タイムズは「きょうは特別な祝日ではない。天気がいいので人々がたくさん出ているだけだ」というクールなモスクワっ子の声も載せている。

   プーチン大統領は9日の対独戦勝記念日に、赤の広場で軍事パレードを行うソ連当時の伝統を復活させた。当分、モスクワでは愛国主義を高揚させる行事が続くが、これ以上、ウクライナとの紛争を激化させると、ウクライナばかりでなく、全世界の友人を失いかねない。プーチン大統領の冷静な対応が今こそ求められている。(この項おわり)

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