飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

東北の被災地の子どもたちが、ロシアで1週間の夏休みを過ごす!!

2011年07月29日 11時07分38秒 | Weblog
 ロシア政府が東日本大震災の救援事業として進めていた、被災地の子どもたちの夏休み招待に応じて約70人が8月中旬、ロシアに向かうことになった。岩手県と宮城県の中高生が中心で、キャンプ場などに約1週間滞在して広い大地の下で夏休みを過ごす。

 この招待は、メドベージェフ大統領のスベトラーナ夫人から申し出があったもので、日本側は外務省が窓口になり、日露青年交流センターが実施団体となって実現にこぎつけた。ロシア側は800人規模の招待を予定していたが、被災地の復興が遅れるなどの悪条件が重なって100人以下になった。

 現地に向かうのは、極東のウラジオストク組と、シベリアのクラスノヤルスク組の2グループ。ウラジオストク組は、岩手県の中高生31人と宮城県の中学生2人、それに付き添いの教師6人の計39人。8月18日に出発し、毎年サマースクールが開かれているウラジオストクの青少年子供センターに宿泊し、25日に帰国する。

 もう1組は、剣道を習っている岩手県の中学生ら28人(付き添いを含む)で、クラスノヤルスク州のキャンプ地で8月16日から1週間過ごす予定だ。いずれもロシア政府が現地の滞在費を負担、日本政府が渡航費を負担する。

 日本側は、ロシアの大統領夫人の提案であり、なんとか善意に応えようと被災地を回ったが、どこも復興が遅れており、「海外で夏休みを過ごす余裕がない」と乗り気薄だった。それでもようやく70人規模になり、ホッと胸をなでおろしている。

 被災地の人々が積極的になれなかった理由のひとつには、極東・シベリアという地域のイメージが戦後の抑留のイメージと重なるからだろう。一方ではロシア政府は、シベリア開発のため海外からの移民を招こうとしており、「そんなところへ子どもをやれない」という親の気持ちもわからないではない。

 だが、放射線量を気にしながら室内でしか遊べない子供たちにとって、広大なロシアの大地で思いっきり飛び回れるのは大きな魅力だ。それに子ども時代に海外を経験することは、今後の人生に大きなプラスになるに違いない。大いに楽しんできてほしい。
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ゴルバチョフ元ソ連大統領、メドベージェフ大統領の再選を予測!?

2011年07月26日 12時06分50秒 | Weblog
 来春のロシア大統領選でメドベージェフ大統領が再選され、プーチン首相は憲法裁判所長官になる!? ソ連最後の大統領を務めたゴルバチョフ氏は先週末、モスクワの中立系ラジオ局「エフォ・モスクブイ」(モスクワのこだま)のトーク番組に出演し、そう予測してみせた。果たしてこの見通しが当たるかどうか。

 ゴルバチョフ氏は現在80歳だが、今なお元気で政界の御意見番を務めている。年末の下院選挙、来春の大統領選を控え、ロシア政界の今後の展開を予測してもらおうというラジオ局の意向を受け、ベネジクトフ編集局長と対談した。

 ソ連崩壊後、度々大統領選に出馬しているゴルバチョフ氏だが、次回の大統領選には立候補しないと明言した。外国、とくに欧米では今だに人気があるが、国内では「ソ連を崩壊させた人物」と見られて人気に欠け、当選ラインをはるかに下回っている。

 話題は下院選の話になり、プーチン首相が党首を務める与党「統一ロシア」を支持するかと編集局長が尋ねた。ゴルバチョフ氏は「与党は我々を後ろに引っ張っており、少なくとも(社会の変化に)ブレーキをかけている」と述べ、支持しないと言い切った。

 さらに、同氏はプーチン氏が大統領に初当選した頃は支持したが、その後、プーチン大統領が州知事の公選制を廃止、大統領の任命制に変更したことを厳しく批判した。現在の大統領と首相との二人体制についても「当初は成果を期待したが、その持ち味は生かされていない。もはや二人体制は必要ない」と決めつけた。

 続けてメドベージェフ大統領について「才能があり、博学で、立派な法律家である」と持ち上げ、プーチン首相との二人体制で実力を伸ばしてきたと評価した。そして、来春の大統領選で再選される可能性をほのめかした。一方、プーチン氏に関しては憲法裁判所長官がふさわしいと述べ、大統領復帰説を間接的に否定した。

 与党「統一ロシア」最高幹部会のネベロフ責任書記は25日、ゴルバチョフ元大統領のラジオでの発言を厳しく批判した。専門家は与党が保守化したとのゴルバチョフ発言が有権者に与える影響を心配している、と分析している。

 ロシア政界でのゴルバチョフ氏の影響力は大きくないが、選挙の季節が本格化する直前の微妙な時期だけに、欧米メディアがこの発言を取り上げ、それが国内に影響を与えることを政権側は恐れているようだ。それはともかく、私としてはゴルバチョフ氏の予想が当たるかどうかに注目したい。
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プーチン首相へのカドリガ賞受賞撤回、メドベージェフ大統領有利に!?

2011年07月20日 11時19分06秒 | Weblog
 民主化に貢献した政治家などに授与するドイツのカドリガ賞選考委員会が、プーチン露首相への受賞を一旦決めながら、抗議を受けて撤回した問題が話題になっている。来春のロシア大統領選を控えた微妙な時期だけに、メドベージェフ大統領とプーチン首相のどちらに有利に働くのか、考えてみた。

 プーチン首相への受賞理由は「安定した独露関係に貢献した功績」とされるが、この決定を聞いた民主グループから次々に異論が上がった。ドイツの緑の党のエズデミル代表は「プーチン首相は人権を軽視している」として選考委員を辞任。さらにチェコのハベル元大統領は「プーチン氏に賞を与えるなら自分の過去の賞を返上する」と表明、ついに選考委員会は受賞撤回に追い込まれた。

 この騒ぎは17日から独ハノーバーで開催される独露フォーラムの直前に起きただけに、出席していた両国首脳らに衝撃が広がった。メドベージェフ大統領は19日の記者会見で、選考委の撤回決定について「臆病で一貫性のなさの表れ。カドリガ賞の権威を事実上ダメにしてしまった」と決めつけた。

 一方、メルケル独首相はこの問題に慎重に対処し、コメントはしなかった。だが、グリニン・ロシア駐独大使の「(この決定は)非常に残念だが、両国関係に害を与えるとは思わない」との発言を支持したと伝えられている。

 プーチン首相サイドでは、ペスコフ・スポークスマンの「選考委を悩ます混乱を反映したもの」とのコメントを出しているが、内心はカンカンに怒っているに違いない。首相の人権無視のイメージが、この大事な時期に改めて浮上し、受賞をぶち壊したのだから当然とも言える。

 大統領選の事実上のライバルとされるメドベージェフ大統領は記者団に「これはドイツの頭痛の種になるが、我々の問題ではない」と言って会場を後にしたという。プーチン首相のマイナス面が問題にされ、かえって大統領のリベラルな面が浮き彫りにされることになり、大統領にとってはプラスと考えているのではないだろうか。

 メドベージェフ大統領は、ソフトな物腰と民主主義擁護の姿勢から欧米諸国に一定の支持を得ている。とくにメルケル首相との関係は親密で、今回の会談でも、ともに次期選挙を頑張ろうとエールを交換したとされる。こうした状況を見ても、今回の受賞撤回騒動は、メドベージェフ大統領の得点につながることは間違いない。

 
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プーチン露首相は超大物スパイ?007ばりのポスターがモスクワに出現!

2011年07月16日 10時31分33秒 | Weblog
 英国の超大物スパイ・ジェームス・ボンドばりの粋な格好をしたプーチン首相が拳銃を手に持って歩いている。そのポスターの見出しは「彼が援護するぜ」―こんな物騒なポスターが首都モスクワに出現、市民をびっくりさせた。

 新手の選挙ポスターかと思いきや、それらしいキャッチコピーはなく、誰がこのポスターを作ったのかはっきりしない。だが、首相府はカンカンで、広報責任者は「我々はモスクワ市当局に、どうしてこのようなものが出現したのか説明を求める。いずれにしろ広告委員会は注意を呼びかけなければいけないが、未だに行われていない」と毒づいている。

 4年に一度の下院選挙は5ヵ月後に迫り、夏の猛暑到来と共に、政治のボルテージが上がりつつある。選挙戦開始を控えた微妙な時期だけに、誰がなんのためにやったのか、様々な憶測が流れている。

 親プーチン派が秩序維持の権化としてプーチン首相をアピールしようとしたのか、それとも反プーチン派が元KGBのスパイだったことを市民に改めて思い起こさせようとしたのか―。嵐の前の静けさを裂くように降って湧いたポスター騒動は、退屈気味のモスクワっ子に絶好な話題を提供している。
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欧州会議、ロシア政府のリベラル派政党登録拒否を非難する決議採択!

2011年07月10日 09時21分47秒 | Weblog
 ヨーロッパの47ヵ国が加盟する欧州会議(本部・仏ストラスブール)はこのほど、ロシア政府がリベラル派政党を年末の下院選挙から締め出す決定を行なったことに対し、これを非難する決議を採択した。これを受けて政党側は登録を要求して裁判を起こす方針で、メドベージェフ政権の真価が問われている。

 この政党は、ネムツォフ元第一副首相やカシヤノフ元首相が民主派の結集を目指して昨年立ち上げた国民自由党である。ネムツォフ氏らはプーチン政権当時から強権主義を批判し、各地で抗議デモを繰り広げてきたが、その都度ロシア当局から厳しい弾圧を受け、目の敵にされている。

 同党は6月22日、ロシア法務省から政党としての登録を拒否された。その理由として法務省は①党員の中に「死せる魂」つまり、ユーレイ党員が含まれている②指導者の交代に関する規約がない、などと説明していた。

 この問題を重視した欧州議会は討議の末、「国民自由党の登録拒否はロシアでの政治的競争を事実上制限し、政治的複数主義の発展を阻害する」と決めつけ、ロシア政府に対し、欧州の基準に合致した自由で公正な選挙を実施するよう求めている。

 この決議を受け、カシヤノフ国民自由党共同代表は「我々の主張が正しいことが認められた。今後は裁判を通して政党として登録されるよう要求していく」と語った。同党は裁判制度に則り、法廷闘争を続けていく方針だ。

 同党の登録拒否についてレバダ・センターが世論調査を行なったところ、37%の人が「登録が必要だ」と支持したが、29%はこれに反対を表明、34%は回答を留保している。また、登録拒否の理由について「独立した政党は政権与党に対し、真の競争を組織できるから」とみる人たちが25%、「権力が管理できない政治勢力を排除する政策が実施されている」とみなす人が16%いて、政府側の政治的意図を指摘していた。

 同党はインテリの間では支持者が多いが、国民全体の政党支持率は3%にとどまっている。同党には急激な市場経済化を推進したエリツィン政権時代の幹部が多く、これに翻弄された庶民の反発が根強いためとみられている。

 メドベージェフ大統領は公平な選挙を主張し、議会に参加できる政党を増やす意向を示しているが、プーチン首相ら保守派の抵抗でなかなか実現していない。この政党登録問題でもなんらかの打開策を打ち出さないと、リベラル派の看板が泣く。来春の大統領選を前に、大統領が思い切った策を打ち出せるかどうか、注目したい。
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年末のロシア下院選、やはり与党「統一ロシア」が大勝するのか?

2011年07月01日 09時23分56秒 | Weblog
 来年春の大統領選の行方を左右する年末の下院選挙は5ヵ月後に迫ってきた。その時、有権者はどういう選択をするのか。このほどレバダ・センターが全国的な世論調査を行なったところ、与党「統一ロシア」が6割の議席を獲得、大勝するとの結果がでた。

 ロシアの有力紙コメルサントが30日、電子版に掲載した調査結果によると、「きょう下院選挙が行われたら、どの政党に投票しますか」との質問に53%の人が「統一ロシア」と回答した。下院選挙は、定数450のすべてが比例代表制で選出される。このうち得票率7%以上の政党が議席を獲得できるため「統一ロシア」は6割以上の議席獲得が見込まれることになる。

 次いで、17%が野党の共産党に、13%は与党に近い自由民主党に投票すると回答している。以上の3党だけが7%の得票率を上回り、議席を獲得できる。そのほかに、公正ロシアが5%、国民自由党が3%、正義党が2%、ロシアの愛国者とヤブロコ(りんごの意味)がそれぞれ1%となっている。

 前回07年12月の下院選では、統一ロシアが64・3%の得票率で315議席を獲得した。これは全議席の3分の2以上に当たり、文字通り圧勝した。単独で憲法改正ができる議席数でもある。そのほか、自由民主党が8・14%で40議席、第2与党の公正ロシアが7.74%で38議席を獲得した。結局与党系が約9割の議席を獲得、議会はプーチン政権の大政翼賛会のような様相になった。

 一方、野党では共産党だけが11.57%で38議席を獲得したが、リベラル系の野党は、ヤブロコが1・59%、右派連合が0・96%と、いずれも得票率7%のハードルを超えられず、議席を獲得できなかった。まさに民主派の惨敗だった。

 今回も、今のままでは与党系の大勝になりかねない。ただ、統一ロシアは春の地方選以来、支持率が低下傾向で、今回の調査でも先月の時より4%下がっている。それに対し、公正ロシア、国民自由党、正義党がそれぞれ1%だが、先月より上がっている。

 このため野党勢力は「選挙は投票率いかんで変わってくる。まだまだ結果はわからない」と今後の選挙運動に期待をかけている。専門家の中でも、有権者の政治への不満が高まっており、投票率は高くなるとの見方が広まりつつある。政治評論家のクイネフ氏は「有権者には変化への欲求があり、新しいサイクルが始まりつつある」と分析している。

 下院選挙の結果を見て、各陣営とも大統領選の候補者を最終決定する。大統領選のカギを握るプーチン首相が自ら立候補するのか、後継者のメドベージェフ大統領に託すのか、それとも第3の候補を指名するのか。すべてはこれからの5ヵ月で決まる。
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