飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

米国、ロシアの要求を拒否、軍事侵攻は避けられるのか?

2022年01月27日 10時49分42秒 | Weblog
ロシアがウクライナへ侵攻するかどうかが世界的な関心の的になっている中、米国は1月26日、ロシア側が求める「NATO(北大西洋条約機構)を拡大しない」との確約要請を正式に拒否した。ブリンケン米国務長官が会見で明らかにしたもので、これにより、米露の対立が抜き差しならない状態になりつつある。

ロシア側はウクライナ国境周辺に10万人規模の軍隊を派遣して米国や欧州諸国に対し、NATOへの新規加盟を認めないよう確約を迫っている。だが、米国が正式に拒否を回答し、他の加盟諸国もこれに同調するものと見られ、ロシア側が昨年来、続けて来た軍事的圧力も効果ないことになる。

さらに、バイデン米大統領は25日、記者団に対し、ウクライナ侵攻が実際に起きた場合、プーチン大統領個人への制裁も辞さない考えを示している。こうなると、プーチン大統領も簡単には引き下がれない状況に追い込まれている。ブリンケン国務長官は近く、ラブロフ露外相と会談する予定で、その際、ロシア側がどういう対応をするかが注目される。

ロシアが昨年からウクライナ国境に大量の軍隊を派遣してウクライナ側に圧力をかけている真の狙いは、NATO加盟阻止というより、旧ソ連の「勢力圏」に配備している米軍基地の撤収、ウクライナへの軍事援助停止など、ロシアに向けた西側の軍事力削減要求との見方が強い。ロシア自身、ウクライナへの軍事侵攻が簡単にできるとは思っていないに違いない。それどころか、プーチン大統領はコロナ対策や経済の悪化で支持率低下に悩んでおり、自国民の目を外に向けさせる狙いがあるとの見方も出ている。

一方、米国などNATO諸国もウクライナの加盟がすぐできるとは思っておらず、むしろウクライナはロシアと西側のバッファゾーン(緩衝地帯)にすべきとの考え方も出ている。今後、ロシアと西側諸国の双方が本音で話し合い、知恵を出し合って、なんとか平和的に解決する方法を模索し続けて欲しい。メディアの中には、今にもロシア軍が侵攻するかのように前がかりになっているところがあるが、もっと冷静に考えるべきではないだろうか。(この項終わり)
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今年は一触即発の危険性が増す世界になる?

2022年01月02日 17時41分44秒 | Weblog
2022年の新年が明けました。いつもなら、お目出度いムードが漂う時期ですが、今年は新年を祝うというより、祝えない雰囲気が広がっている状況です。世界は今、「米中対立」だけでなく、「欧米対中露」という対立軸が加わり、いつ一触即発の危険な事態になるか、わかりません。軍事兵器がますます高度化、多様化しているだけに、危険な事態がいつ、どこで爆発するか、予断を許さない状態です。

世界で今、最も不安定な地域は「ソ連崩壊30年」を迎えたロシアとウクライナなど、旧ソ連諸国周辺です。旧ソ連の宗主国だったロシアがソ連解体で失った「領土」を再結集し、西側諸国に対抗しようとしているからです。中央アジアの大国・カザフスタンで起きている、前大統領に向けた暴動も不安定要因です。こうした事態に対し、ウクライナは親欧米派のぜレンスキー大統領を先頭に、ロシア軍をウクライナ周辺から追い出してNATO(北大西洋条約機構)に加盟しようとしています。この動きを支援しているのが米国、カナダなど親ウクライナの国々です。

もう一つの不安定地域は、中国の習近平政権が軍事力を行使してでも取り戻そうとしている台湾の周辺です。毛沢東と並ぶ歴史的地位を確立するため、習近平国家主席はアジアだけでなく、欧米諸国にも同盟国を増やそうとしています。中国国内で軍事力の著しい強化が進んでいて、大規模艦隊が太平洋からインド洋周辺を回遊し、存在感をアピールしているのもそのためです。

こうした情勢を受けて、バイデン大統領率いる米国はロシア、中国に対し、「専制主義国家」と位置づけ、同盟国や友好国を巻き込みながら圧力を強めています。だが、バイデン大統領が高齢であることも加わって国内での人気が高まらず、年内に行われる中間選挙で共和党に敗北するとの見方も出ています。

一方、中露は北京冬季五輪などを通じて友好関係をアピールしていて、プーチン大統領は早々と北京五輪の開会式に出席、習近平主席と対面で会談する意向を表明しています。今後、中露の軍事同盟化が進めば、NATO諸国との間で小競り合いが起きないとも限りません。

こうした混沌とした情勢にも関わらず、日本の岸田政権は沈黙を決め込んでいる感じがします。台湾問題でも、中国に対して、はっきりしたメッセージを送っていないのが実情です。これまでの安倍、菅政権とは違う姿勢を明確にし、平和を守る姿勢を強調しなければ、日本の存在感はますます低下してゆくばかりです。今年は色々な意味で転換期を迎える可能性が高く、我々も事態を十分注視してゆく必要がありそうです。(この項終わり)









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