飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

北方領土交渉が「そう簡単ではない」のは安倍首相のせいではないか!

2016年11月21日 11時34分55秒 | Weblog

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安倍首相は19日、ペルーの首都リマでプーチン・ロシア大統領と首脳会談を行い、北方領土問題を中心に協議した。その後の記者会見で安倍首相は領土交渉について「(解決への道筋は見えてきているが)そう簡単ではない」と語った。その発言の意味を新聞各紙が色々分析しているが、筆者は安倍首相の言動が交渉を一層難しくしたように思う。

安倍発言の背景には、米大統領選で「米国ファースト」のトランプ氏が当選したことが挙げられる。選挙中からトランプ氏はプーチン大統領を持ち上げ、米露関係改善を訴えてきた。この事もあって、プーチン政権はトランプ陣営と選挙中から接触を続けてきたのだろう。トランプ氏当選後には電話会談を行い、プーチン大統領は対露政策がオバマ政権と大きく変化する確信をつかんだに違いない。

一方、安倍首相は外務省などの事前の情報と違い、トランプ氏が当選したため、出遅れ感もあってあわててトランプ陣営に頼んで会談を設定した。トランプタワーの豪邸で出迎えたトランプ氏は、当選後、初めてやって来た外国首脳を歓待したのはいうまでもない。舞い上がった安倍首相は各国ともトランプ氏の今後を分析している段階で「信頼できる人物だ」と、世界に先駆けてお墨付きを与えてしまったのである。

こうした状況を見ていたプーチン大統領は、これまでと同様、安倍政権の対米追随路線が続くと判断したに違いない。ロシアからすれば、ウクライナ紛争を契機に自国に編入したクリミア問題で西側諸国から経済制裁を受けたうえ、シリア情勢で米国と対立を募らせていることから、日本との関係強化に危機脱出への期待をかけていたのだろう。その当てが外れただけでなく、安倍首相の朝貢外交とも取れる”弱腰外交”を見て、「北方領土問題で日本に譲歩するメリットなし」と方向転換したのではないだろうか。

プーチン大統領との会談後の安倍首相の憔悴した姿が、全てを物語っているように思える。安倍政権がロシア側から領土問題の交渉相手として信頼を勝ち得るためには、米国にきちんとものを言う、独自外交ができることを証明しなければならない。そうした信頼を得ない限り、12月のプーチン大統領訪日は経済協力を求められるだけで、領土問題は進展なしという、いつもと同じ結果に終わりかねない。(おわり)
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プーチン大統領側近、トランプ陣営と何度も接触していたと明言!

2016年11月11日 23時49分22秒 | Weblog

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米国第一主義をかかげ、外交、安保問題で過激な発言を繰り返していたドナルド・トランプ氏が米国の新大統領に当選し、世界中にトランプ・ショックが広がっている。一方、オバマ政権との確執を強めていたロシアでは、トランプ氏当選に安堵する見方が広がっている。

そんな中、プーチン大統領のペスコフ報道官がAP通信とのインタビューで、ロシアの専門家が選挙期間中、米国のトランプ、クリントン両陣営の選対代表、とりわけトランプ陣営と何度か接触していたことを明らかにした。これに対し、トランプ陣営は接触はなかったと否定している。

ロシアのコメルサント紙によると、ペスコフ報道官は選挙期間中に候補者側とコンタクトを取るのは当然だと話している。彼の発言で注目されるのは、プーチン大統領とトランプ氏は外交政策で意見が合っていたと述べていることだ。その根拠としてプスコフ報道官は、最近行われたバルダイ会議でのプーチン大統領の発言の一部がトランプ氏の大統領当選後の発言と似ていることを指摘している。

また、プスコフ報道官は、米露間の対話再開の可能性について楽観的な見方をしている。実際にトランプ氏は選挙期間中、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の一方的な編入を容認する姿勢を示していた。西側諸国はクリミア問題で一致してロシアに経済制裁を科しており、トランプ氏の発言はこうした西側の態度と相反している。それだけに、ロシア側はトランプ氏の大統領就任に大いに期待していることは明らかだ。

だが、プーチン大統領は9日のクレムリンでの演説で「(対米関係の改善は)容易ではない」とも語った。トランプ氏は政治家の経験がなく、どれだけ指導力を発揮できるかどうか不透明だからだろう。

過去の米国大統領の旧ソ連、ロシアとの関係を振り返ると、民主党よりも共和党の大統領との関係の方がうまくいっているのは明白だ。しかも、トランプ氏はプーチン大統領と同様、「強い大統領」になると見られるだけに、両者はウマが合うかもしれないからだ。

ロシアとともに米国との関係が好転するのでは、との見方が出ている中国も、トランプ氏の内向きな政治姿勢に期待感が強まっている。いずれにしろ、トランプ氏の登場で米国の一極支配が緩和され、多極化傾向が強まる可能性が高い。さらに、欧州で強まりつつある既成勢力への反発が今後一層激化することが予想される。世界はますます不安定化することは避けられないだろう。こうした情勢に日本はどう対応すべきなのか。安倍政権の動向を注視する必要がありそうだ。(この項終わり)
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