ロシア大統領選を巡る報道で、プーチン首相ににらまれていたリベラル系ラジオ局「モスクワのこだま」の編集長らが臨時株主総会で役員を解任された。プーチン新政権発足を前にメディア規制を強める狙いとみられ、反プーチン派の出方が注目される。
29日のインタファクス通信によると、解任されたのは、21年前の保守派クーデター未遂事件当時からラジオ局の編集長を務めていたベネジクトフ氏=写真=と、副編集長のバルフォロメーエフ氏。これにより、ラジオ局のジャーナリストの役員はいなくなった。このほか、ヤーシン高級経済学校長ら社外役員2人も解任された。後任の役員にはフェドチーノフ会長、セミョーノフ・スビャジインベスト社長らが選任された。
ベネジクトフ氏はフアフアの白髪と早口の喋りで知られる超有名人。ラジオ局がソ連末期の90年に設立されて以来、一貫してリベラルな主張を展開し、モスクワのインテリから絶大な信頼を得てきた。91年にKGB議長らがクーデターを起した際、民主派が立てこもったホワイトハウス(旧ロシア最高会議)内で秘密裏に実況放送を続け、市民の貴重な情報源となったことは余りにも有名だ。
今回の解任劇について副編集長のバルフォロメーエフ氏はツイッターで「これは政治的な解任だ。国家指導者がラジオ局の放送に不満を抱き、政権が統制している筆頭株主企業に『首輪を締めるよう』圧力をかけたのだ」と述べている。
このラジオ局は現政権に批判的で、今回の大統領選でも野党指導者に自由に発言させ、プーチン首相に「朝から晩まで私に汚い言葉を浴びせている」と言わしめたほどだ。ラジオ局の筆頭株主は、政権の統制下にある天然ガス独占企業「ガスプロム」の系列会社ガスプロム・メディアで、今年1月からベネジクトフ氏らに早期退任を迫っていた。
プーチン首相の広報官は今回の解任劇について「役員の交代は、ラジオ局ジャーナリストによる首相への批判とはまったく関係はない」と述べ、首相側の関与を否定している。だが、筆頭株主が政府の意向を考慮して解任に動いたことは明らかだ。
筆者らモスクワ特派員経験者とロシア研究者は毎年秋、グループでモスクワを訪問し、識者にインタビューしているが、その中でも一番人気のあるのがベネジクトフ氏だ。ロシアの政界に詳しく、裏事情をわかりやすく説明してくれるからだ。昨年9月初めに我々がモスクワでインタビューした際、次期大統領選で誰が当選するかと聞くと「70%の確率でプーチンだ」と的確に予測していた。与党の党大会前でまだ候補者が誰になるかわからない時だった。その彼がメディア規制の犠牲者になるとは誠に残念だ。(この項おわり)
29日のインタファクス通信によると、解任されたのは、21年前の保守派クーデター未遂事件当時からラジオ局の編集長を務めていたベネジクトフ氏=写真=と、副編集長のバルフォロメーエフ氏。これにより、ラジオ局のジャーナリストの役員はいなくなった。このほか、ヤーシン高級経済学校長ら社外役員2人も解任された。後任の役員にはフェドチーノフ会長、セミョーノフ・スビャジインベスト社長らが選任された。
ベネジクトフ氏はフアフアの白髪と早口の喋りで知られる超有名人。ラジオ局がソ連末期の90年に設立されて以来、一貫してリベラルな主張を展開し、モスクワのインテリから絶大な信頼を得てきた。91年にKGB議長らがクーデターを起した際、民主派が立てこもったホワイトハウス(旧ロシア最高会議)内で秘密裏に実況放送を続け、市民の貴重な情報源となったことは余りにも有名だ。
今回の解任劇について副編集長のバルフォロメーエフ氏はツイッターで「これは政治的な解任だ。国家指導者がラジオ局の放送に不満を抱き、政権が統制している筆頭株主企業に『首輪を締めるよう』圧力をかけたのだ」と述べている。
このラジオ局は現政権に批判的で、今回の大統領選でも野党指導者に自由に発言させ、プーチン首相に「朝から晩まで私に汚い言葉を浴びせている」と言わしめたほどだ。ラジオ局の筆頭株主は、政権の統制下にある天然ガス独占企業「ガスプロム」の系列会社ガスプロム・メディアで、今年1月からベネジクトフ氏らに早期退任を迫っていた。
プーチン首相の広報官は今回の解任劇について「役員の交代は、ラジオ局ジャーナリストによる首相への批判とはまったく関係はない」と述べ、首相側の関与を否定している。だが、筆頭株主が政府の意向を考慮して解任に動いたことは明らかだ。
筆者らモスクワ特派員経験者とロシア研究者は毎年秋、グループでモスクワを訪問し、識者にインタビューしているが、その中でも一番人気のあるのがベネジクトフ氏だ。ロシアの政界に詳しく、裏事情をわかりやすく説明してくれるからだ。昨年9月初めに我々がモスクワでインタビューした際、次期大統領選で誰が当選するかと聞くと「70%の確率でプーチンだ」と的確に予測していた。与党の党大会前でまだ候補者が誰になるかわからない時だった。その彼がメディア規制の犠牲者になるとは誠に残念だ。(この項おわり)