飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

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プーチン大統領、北方領土問題で最大の懸念に言及

2017年06月02日 11時28分01秒 | Weblog
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プーチン露大統領は6月1日、世界の主要通信社代表との会見で、北方領土について「日本の主権下にはいれば、これらの島に米軍の基地が置かれる可能性がある」と発言した。大統領が北方領土問題で米軍の配備に関し、公式に懸念を示したのは初めて。日米安保条約が存在する限り、北方領土の返還は困難との見方を示したもので、安倍政権の北方領土返還戦略は大きな壁にぶち当たったと言える。

プーチン大統領の発言は、サンクトペテルブルグで開催中の経済フォーラムの会見で出た。北方領土の非武装化についての質問に答えたもので、北方四島でのロシアの軍備増強方針について「米軍への必要な対抗措置だ」と述べた。さらに、大統領は「米国のミサイル防衛システムが配備されるかもしれない。ロシアとしては受け入れられない」と断固反対する姿勢を示した。

ロシアは、極東のオホーツク海に核弾頭搭載の原潜を配備し、米国を睨んだ安保戦略の生命線にしている。北方四島はそのオホーツク海を囲む防衛拠点であり、北方領土問題と安保問題は切り離せない関係にある。大統領は昨年12月に日本で行われた首脳会談後の記者会見でも、日米安保条約に関して「日本の友人たちがこの問題(日米同盟)に関するロシア側の懸念を考慮するよう望む」と述べ、間接的な表現ながら安保問題を重視する姿勢を示していた。

今回、大統領が米軍基地が北方四島に配備される可能性に言及したのは、トランプ米大統領の北朝鮮などへの強硬姿勢を受けたものとみられる。プーチン大統領は現在のような厳しい米露関係が続く限り、北方領土の返還はないとの考えを内外に示したとも言えそうだ。

安倍政権も、こうしたロシア側の考えを十分知っていて、領土返還を要求する交渉から、北方領土での共同経済活動に方針転換した可能性がある。だが、ここでも北方領土の主権問題が存在する限り、ロシア側にメリットがあっても、日本側からすれば「やらずぶったくり」に終わる恐れが強い。政権側が元北方四島島民にプーチン大統領への手紙を書いたことにした「手紙ヤラセ事件」のような、姑息な手を使わず、問題の難しさを率直に国民に明らかにすべきだろう。

元々安倍首相は、北方領土問題を自らの政権浮揚に役立てようと取り組み始めたのではないか。真摯にこの問題を解決しようとするなら、政府、民間がこぞって返還運動を盛り上げるような方策を取らなければならない。今のように、政府内でも経産省ばかりが熱心で、外務省などがそっぽを向くようなやり方では成功するはずがない。今こそ、安倍政権は北方領土問題を一から洗い直し、出直すべきだ。今のままでは国民を欺くだけに終わってしまうのは火を見るよりも明らかだ。(この項終わり)
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