飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

日露平和条約締結問題、6月決着遠のく!

2019年02月17日 09時06分48秒 | Weblog
河野太郎外相とラブロフ露外相との会談は2月16日(日本時間17日)、ドイツ・ミュンヘンで行われたが、北方領土をめぐる日露平和条約締結問題で平行線をたどり、進展はなかった。このため、日本政府が目指す6月決着は遠のいた。

日本とロシアのメディアによると、会談後の会見でラブロフ外相はこれまで通り、「北方領土がロシアの主権下にあると認めることが平和条約締結の絶対条件だ」と繰り返した。さらに、平和条約締結の見通しについて「ロシアは交渉に一切の期限を設けていない」と述べ、日本側が考えている6月の日露首脳会談での決着説を否定した。

一方、河野外相は会見で「協議の着実な前進」を強調したが、主権をめぐる交渉は平行線で、隔たりが埋まらなかったことを認めた。タス通信によると、河野外相は「平和条約締結問題はすぐには解決しない」と発言、6月決着が難しいことを暗に認めたという。

ただ、平和条約問題に関する日露の外務次官協議や外相会談はこれまでの予定通り行われるとし、次回の外相会談は日本で今春開かれる見通しだ。とはいえ、米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約が停止され、両国の間で緊張が高まりつつあり、6月までに国際情勢が好転するとは考えにくい。

さらに、日本政府が北方領土問題でロシアに対する矛先を緩めようと、北方領土返還要求全国大会で「不法占拠された」という表現を使わないなどの小細工を弄しても、ロシア側の厳しい姿勢は変わっていない。こういう情勢では6月の日露首脳会談で急遽双方が合意することは考えられない。

日本政府も解決を急がず、これまでの交渉を見直し、国家百年の計という観点から交渉方針を改めるべきではないだろうか。少なくとも安倍首相の任期内に解決しよう、などという姑息な考えは改めるべきだ。状況を先取りして臨機応変に対応する手腕が、今こそ求められている。(この項終わり)



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北方領土返還要求大会で「不法占拠」使わず?!

2019年02月07日 18時03分34秒 | Weblog
「北方領土の日」の2月7日、東京都内で北方領土返還要求全国大会が開かれたが、主催者側の用意した大会アピールで「四島が不法占拠されている」との従来の表現を使わず、ロシア側の主張を受け入れた形の返還要求となった。

この大会には毎回、首相が出席・演説しているが、安倍首相も日露平和条約締結交渉に意欲を示したものの、毎年言及していた「四島の帰属問題の解決」という表現を使わなかった。官民そろっってロシア側に配慮した表現となり、強硬な主張を繰り返すロシア側の言いなりになっているとの印象を内外に示す大会となった。

一方、ロシア側の交渉担当者、ラブロフ外相は2月5日、タジキスタンでの記者会見で「(交渉の最初の)一歩は日本が踏み出す必要がある」と述べ、日本に譲歩を求める姿勢を強めた。同外相はこれまでも「日本側が第二次大戦の結果を受け入れるべきだ」と、日本に対し強硬な発言を繰り返している。だが、ロシア(当時はソ連)は終戦後の対日講和サンフランシスコ会議に出席したものの、日本が放棄した島々をソ連に引き渡すという条項が入っていないことに抗議、同条約に調印しなかった。これは今でもロシア側の致命的失敗と言われている。

ロシア側の強気な姿勢からは、自らの失敗を糊塗しようという狙いさえ 透けて見える。日本側はこういう応酬に沈黙していて、対外的にはロシア側の言いなりになっている印象を与えている。安倍政権は、そこまでして、なぜ平和条約の締結にこだわるのか、理解しがたい。

いま、政界でささやかれているのは、安倍首相が自分の任期中に何としても交渉をまとめたという形をつけようと焦っているという。これでは、プーチン大統領が昨年末に言明した「平和条約を結んでから領土問題を解決しよう」という“くせ球”に完全に乗っかっているとしか思えない。これを認めたら北方領土は永久に返ってこないだろう。日本はロシア側の敷いたレールに乗って、このまま6月の日露首脳会談に突っ込んでいいのだろうか。(この項終わり)
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