飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

久々の日露外相会談で両国関係を仕切り直し!

2015年09月22日 14時52分31秒 | Weblog
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ロシアを訪問中の岸田外相は21日夕、モスクワでラブロフ外相と会談した。日本とロシアの報道をダブルチェックすると、両国は1年7カ月振りの外相会談で、この間の双方のあつれきを乗り越え、仕切り直しをしたといえそうだ。

タス通信などによると、会談冒頭にラブロフ外相は日露外相会談が1年半以上も開かれなかったことを取り上げ、「これはアジア太平洋地域の隣国で重要なパートナーである両国にとって、許しがたいほどの空白期間だ」と述べ、暗に日本側を非難した。ウクライナ紛争に対する西側の外交の停滞を指した発言とも受け取れる。

その一方で、ラブロフ外相は「会談の再開により、難しい問題でも修正し直すことができるとの期待を持たせてくれる」と語っており、日本への非難は期待の裏返しとも言える。

これに対し、岸田外相も「日露間には多くの問題があり、二国間の対話を続けることは非常に重要だ」と応じ、平和条約締結問題を含め、建設的な対話を行うよう求めた。

こうしたやり取りの後、具体的な会談に入ったと見られるが、メドベージェフ首相ら閣僚の相次ぐ北方領土訪問に対し、岸田外相が「極めて遺憾」と抗議するなど、いつもより厳しいやり取りの会談となったとみられる。

会談後の共同記者会見では、ラブロフ外相が北方領土問題に関し「ロシア政府は日露間の平和条約締結問題で結論を探す用意がある」と述べ、両国の立場の相違は依然として大きいが、両国国民に受け入れられ、支持される結論を探すことを確認したと明らかにした。これは事実上、両国政府で領土問題の交渉を継続することで合意したことを示している。

ラブロフ外相は両国の合意を踏まえて、10月8日にモスクワで両国外務省の次官級協議を開くと公表した。北方領土問題解決のカギを握るプーチン大統領の訪日時期については具体的な合意はなかったが、次官級協議の日程が決まったことで、事務レベルの協議が再開され、今後の首脳会談に向けての準備が進むことになろう。日露間の対話がウクライナ紛争の絡みで長い間中断していただけに、今の状況では精一杯の成果とも言える。

ただ、インタファクス通信が記事の最後の部分で<ラブロフ外相は日本側と北方領土については協議しなかったと断言し、「領土問題は我々の協議の対象ではない」としている>と断り書きを入れているのは気にかかるところではある。だが、これはロシア側が日本側の「領土交渉」という表現を受け入れず、「未確定の領土の線引き」と主張しているからで、いちいち目くじらを立てるほどではないだろう。(この項おわり)
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ロシアのプーチン政権は対日政策を変えたのか?

2015年09月11日 10時29分39秒 | Weblog

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ロシアのメドベージェフ首相が8月に北方領土を訪問した他、閣僚の「北方領土詣で」が相次いでいる。さらに、ロシア外務省高官が「(北方領土問題は)70年前に解決済み」と繰り返し発言していて「プーチン政権は対日政策を転換したのではないか」との見方まで出ている。そこでこの問題を検討してみたい。
もともとソ連時代は領土問題の存在自体を否定しており、積極的に返す気はないことは確かだ。この問題を受けて立つ姿勢を示しているプーチン大統領さえ、「慈善事業として検討する」という発言をしたこともある。
その背景には、ロシア側には第二次大戦で勝ち取った成果という意識があり、それを否定すれば国際秩序を覆すことになるからだ。特に最近の外務省側の発言には、こうした意識が強く反映されているのを感じる。
だが、プーチン大統領は法律家として国際条約を重視する立場にあり、1956年の日ソ共同宣言で二島返還を取り決めた事実を重く受け止めている。だからこそ、プーチン大統領は保守派を抑えても領土問題を解決しようという決意を固めていたはずだ。大統領が今回のロシア政府の動きをどう受け止めているかはっきりしないが、これまでの経緯からして、少なくても大統領主導で進められているとは思えない。
では、なぜロシア政府の閣僚は日本政府の強い反発を受けながら北方領土を相次いで訪問しているのだろうか。考えられるのは、プーチン大統領の訪日を延期あるいは中止に持ち込もうという動きか、またはメドベージェフ首相の存在感を高めようという動きなのかもしれない。
前者に関しては、ウクライナ紛争に絡んで日本政府が米英などと一緒に対露経済制裁を実施していることにロシア側が反発しており、それへの対抗措置と取れないこともない。経済制裁についてはプーチン大統領も何度か日本に対し不満を口にしているからだ。
一方、メドベージェフ首相は大統領時代の10年11月にも北方領土を訪問しているが、この時は12年の大統領選を控え、存在感をアピールする狙いがあったとみられる。今回も18年の次期大統領選を視野に、自分自身をPRしようという狙いがあるのではないだろうか。そのために閣僚を動員した可能性がある。
さらに勘ぐれば、日本国内に生まれている北方領土交渉への楽観論に水をさそうとしたとも考えられる。日本国民の期待値を下げれば交渉はやりやすくなるからだ。
いずれにしろ、ウクライナ紛争が実質的な解決に向かうという状況にないため、プーチン大統領の訪日どころか、その前提である岸田外相の訪露もめどが立っていない。当面は日露双方で、こうしたジャブの応酬が続きそうな雲行きである。(この項おわり)


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プーチン大統領を脅やかす物価高の危険度は?

2015年09月01日 23時22分24秒 | Weblog
ロシアのプーチン大統領は今や世界有数の長期政権と言っても過言ではない。初めて大統領になったのは2000年だったので、すでに15年も実質的な指導者として君臨しているからだ。
だが、このところプーチン政権の行く末に暗雲がかかりつつあるとの見方が出てきている。物価高が続いているためで、それがプーチン大統領の支持率にまで影響しているというのだ。
ここにロシアの新聞に掲載された2つの世論調査結果がある。いづれも8月に行なわれたもので、ひとつはレバダセンターが行ったもので、もうひとつは公共世論基金が実施したものである。
前者の調査結果によると、プーチン大統領の行動を支持するかどうかの設問に対し、「支持する」と答えた人は83%だった。日本の首相の支持率と比べるとダントツに高いが、5月の大統領の支持率と較べると6ポイント下がっている。ウクライナ紛争が起きて以来、大統領の支持率は90%近い支持率を誇ってきただけに、「大変だ!」ということになる。
さらに、後者の調査では、「8月に大統領選挙が行われたとすればプーチン大統領に投票するか」という質問に対し「イエス」と答えた人は72%で、5月の時の76%に比べ、4ポイント落ちているというのである。
この2つの結果について専門家は、支持率低下の理由は夏の間に値上がりした 物価高に国民が不満を抱いているからだと分析している。この夏に上がったのは主に交通機関などの公共料金で、7月の消費者物価指数の上昇率は15・6%だったという。年金生活者にとっては痛い出費に違いない。
だが、それだけではない。この裏には、ロシアが直面している経済情勢の悪化がある。一番痛いのは原油安とルーブル安に歯止めがかからない点だ。その一方で、西側による経済制裁に対抗し、ロシア政府は豚肉などの輸入禁止措置をとっている。そうなると、輸入食料品は高騰し、一般庶民には手がでなくなる。つまり、食卓の中身はどんどん劣化していくことになる。大統領人気が下がるのも当然である。
古来から我が国では「民のかまどが政治を左右する」と言われている。この舵取りを誤れば、宰相と国民に人気の大統領でも一気に人気が落ちる恐れがある。外にウクライナ紛争、内に生活苦をかかえたプーチン政権の前途は多難である。(この項おわり)

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