陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

11月の読書 YUMING TRIBUTE STORIES

2022年11月29日 | slow culture

題名は直訳するとユーミンに捧げる物語である。
本書はユーミンのデビュー五十周年を記念して
ユーミンを愛する六人の女流作家が
自身の選んだユーミンの楽曲に、それぞれ
思いを寄せて書き下ろした短編集である。

私とユーミンとの出逢いは高校時代に遡る。
大学受験勉強に明け暮れていたとある夜。
当時は机上にラジオを置いて勉強をしていたのだが
ふとそのラジオから心を奪われるような楽曲が
流れてきたのである。
その曲は「ベルベット・イースター」であった。
今まで聴いたこともないような旋律と歌詞に
がつんと衝撃を受けた。後にも先にもそんな衝撃が
走る楽曲というのは滅多に経験するものではない。
勉強の頭は一瞬にして吹き飛んだのを覚えている。
開いていたノートにその曲名と歌手の名を走り書きで
忘れぬうちに書き写した。後日、レコード店に走り
ユーミンのアルバム「ひこうき雲」を買った。
ちなみにそのアルバムは今でも押入れの奥に
他のアルバムと共にしっかりとある。いつか
レコードプレーヤーを買ったらまた聴くつもりだ。

あれは確か1974年(昭和49年)のことだった。
アルバム「ひこうき雲」は全楽曲どれも素晴らしかった。
アルバムというものは、概ね時には退屈する曲などが
あるものだがユーミンのアルバムには一切なかった。
いつも完成度やクオリティの高いアルバムであるのは
論を待たないであろう。

私は特に熱心なユーミンファンという訳では
なかったが、今でも週に何回かはYouTubeで
彼女の楽曲を聴くことが多い。当時は
四畳半フォークや社会派、反戦フォーク等が
そろそろ聴き飽きられてきていたのかもしれない。
そして時代の転換点だったのかもしれない。

私はどちらかというと神田川などのフォークや
岡林などの社会派フォーク派であった。
当時はグループを作ってギターを弾いていたが
演奏する曲はそんなフォーク系だった。
あの当時は反プチブル派が多かったように思う。

さて本題に戻ろう。この短編集は以下の章立てだ。

・あの日にかえりたい 小池真理子
・DESTINY      桐野夏生
・夕涼み       江國香織
・青春のリグレット  綿矢りさ
・冬の終り      柚木麻子
・春よ、来い     川上弘美

それぞれ読み応えのある深い物語である。
そこはさすが一流作家だ。
どれもイメージ先行の浅薄な物語ではない。
それぞれ味わいがあるが、私は川上弘美さんの
ストーリ―にぐんぐんと惹き込まれてしまった。
さすがである。
楽曲のタイトルだけでこうも物語を紡げるなんて
やはり小説家というのは素晴らしい才能である。

■YUMING TRIBUTE STORIES
新潮文庫 2022年7月
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