陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

雨の墓参り

2006年03月19日 | slow life

止みそうかなと思っていたが
意外とずっと振り続け本降りになった。
菜種梅雨には早いが春告げ雨なのだろう。

その雨の中、老いた母を乗せて鵯墓園に行く。
山あいなので雨足はまた酷くなったようである。
鉄塔と送電線が雨に煙っていた。

この雨で墓園は空いていた。
車を近くまで乗り入れて、桶に水をくべる。
まずいつものように雑草むしりから始める。
苦手なナメクジが石の隙間にへばりついていた。
慎重に枯れ枝に乗せて背後の茂みへ投げ捨てる。
素手で作業していたら植え込みの枝でだろうか
気づかないうちに手を傷つけてしまっていた。
血が滲んできた。「ああ、難儀やなぁ。」…。

しかし例年なら可愛い土筆が
数本にょっきりと顔を出しているのだが
今年は遅いのか全然見当たらなかった。
梅といい土筆といい今年は全てが遅いようだ。
だとすると、「桜もそうなのだろうか?」
なんて考えながらの雑草取りは
傘をさしての作業だから思うように捗らない。
やっと終えて今度は墓石の掃除に移る。
すでに雨に濡れているというのに
墓石の頭から水をかけてはブラシでゴシゴシ。
彫ってあるところも、水受けも丁寧に擦る。

いつもより長く小一時間は費やしただろうか。
掃除を終え、寒いので車の中で待機させていた
母を墓前に連れ来て、紙パックのお酒を供え
蜀台にろうそくを灯し線香を立てる。
雨脚で消えそうな線香に少し気を取られながら合掌。

墓前に報告することよりお願いごとの方が多い。
神様ではないというのに亡父故についそうしてしまう。

母は何を亡夫に語りかけているのだろうか?
永年住んでいた弟の下を故あって去り
この歳になってまたひとり暮らしを始めた母…。

「玉砂利が結構下にこぼれているね。」と言いながら
母は白い石を摘んでは墓前に戻していた。



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