陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

八月の読書 海峡に立つ

2020年08月21日 | slow culture

私にとって読書とはいつも鞄にしのばせておくもの
といった位置づけである。読むジャンルも決めていない。
新聞や雑誌の書評やふと思いついた名作などを
ランダムに読む。しっかり読書タイムを取る
ということはない。基本通勤の行き帰りの車内で
読むことが多い。ときどき引き込まれると
夜を徹して読んでしまうことはたまにあるが…。

読み始めてぐぐっと惹きこまれてゆく本もあれば
もう何とか辛抱して読み進めるものもある。
このときは正直苦行である。結構苦しい。
途中で投げ出したくなるが最後まで読む。
最近ではぐぐっと嵌まったのは西東三鬼の「神戸・続神戸」
苦行だったのは「離人小説集」これはランボーも
出ているので面白そうだと思って読み始めたのだが
結構、文章が私レベルでは難易度が高かった。
それでもなんとか読破した。しかしそういう場合は
あまり内容が頭に残らないことが少し悲しい。

で、次に読んだのが今回取り上げるこの本である。
これはもう時間を忘れて一気に読み了えてしまった。
あのイトマン事件などで世間に知られた許永中氏の
十章からなる言うなれば自叙伝である。もともと
あの一連の経済事件から著者には興味があった。
経済界の大物、政治家、検察に弁護士、そして
右翼ややくざまでどんどん実名が出て来る。
それ故、迫真性があって思わず惹きこまれてしまう。
そこらの経済小説より遥かに面白い。
正に事実は小説より奇なりである。

それにしても人の人生というのは、生い立ちや
自身の性格や気性、そして出会いや環境というものが
複雑に絡み合って、その人の道となってゆくのだなあと
自分自身のことも鑑みてしみじみと思ったのであった。

◆海峡に立つー泥と血の我が人生ー 許 永中
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