恋人たちは誰にも邪魔されずに
独占できる居場所を見つけるのがうまい。
場所を独占し、海を独占し、そして
相手を独占し…。
なおそれだけでは飽き足らず
周りの時間まで独占している。
嗚呼、しかし…
こういう風景だけは昔と変わらない。
今の若い子たちがずいぶんと
昔ものと比して変貌しているとしても
こういう風景だけは
昔となにも変わってはいない。
「そんなに人間は変われないんだよ。
紀元前からね。それが遺伝子さ。」
したり顔のもうひとりの自分が囁く。
そして言わなくてもいいことを
こうも囁いた。
「あの風景はもう過去の残像だろう？」
