ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ベクシル 2077 日本鎖国』

2007-06-02 12:41:28 | 新作映画
「いやあ。前評判がいいのは知っていたけど、
ここまでとは思わなかった。
これはちょっとした事件だね。
これまでのアニメ・イメージを大きく覆すと言うか、
確実にアニメを次の段階へと進めた映画だね」

----ふうん。でもいままでにも
そういうこと言われた映画は
たくさんあったような気がするけど…?
「うん。数年前はそれこそ
『アップルシード』だの『イノセンス』だの
近未来的イメージのアニメがたくさん輩出された。
でも、この映画はそれらの作品で置いてきぼりを食らった人も
目を凝らして見入ってしまうこと間違いないと思うね」

----そんなこと断言しちゃっていいのかニャ?
あとでクレーム来ても知らないから(笑)。
でも、どういうところがそれらのアニメとは違うの?
「うん。たとえばさっき例に挙げた2本は、
それぞれ作家性が強く出すぎていて、
その世界観をよく理解していないと入り込むのが難しく、
途中で拒絶反応が起きてしまう恨みがある。
ところがこの『べクシル』の場合、
観客に“見せる”ことに一番の重きが置かれているんだ」

----ふうん。でもそうは言っても
この映画は近未来のSFニャんでしょ。
最初から作り上げられた
一つの世界観があるんじゃニャいの?
「もちろん。
でもアニメに関わらず、
これまでに作られた多くの映画は、
冒頭のナレーションやテロップ自体、
量も膨大でその内容を理解するのが難しく、
その時点で早々と脱落と言うケースもあった。
しかし、この『ベクシル』の場合は簡単。
そのサブタイトルでもある
『2077 日本鎖国』ということが語られるだけなんだ。
近未来、日本はハイテク技術を駆使した完全なる鎖国をスタートする。
その後、日本の情勢は秘密のベールに包まれたまま、10年が経過。
そして2077年。米軍特殊部隊“SWORD”所属の女性兵士ベクセルが
日本への潜入作戦を実行。
しかし、そこでベクシルが目にしたものは?」

----えっ、えっ。ニャんだったの?
「ほら、興味が出てきたでしょ?
この設定が実に巧い。
これから観る人のために、そこに何が?……というのは伏せておくけれど、
『日本沈没』なんて目じゃないほどの大胆な設定だ。
しかもビジュアル的には、戦後の闇市風のノスタルジックな世界あり、
『砂の惑星』のサンドウォームを思わせる巨大モンスターあり。
さらには『マッドマックス2』のサンドバギーや
『スター・ウォーズ』のダークスター突入を思わせるシーンまである」

----でもビジュアルとか観ると『ガンダム』っぽいけど?
「確かにベクセルら“SWORD”は
バトルスーツを着て任務に就くけど、
それはあまりメインじゃないね。
ぼくも最初、このスーツを見たときには少し引いたけど、
チラシなどのビジュアルからイメージされるほどメカニックな映画ではない。
むしろ、
映画には昔の愛を忘れられない男女など、
情緒的な部分もかなりあって、
それがドラマを揺り動かしていくとも言える」

----監督は『ピンポン』で一躍脚光を浴びた曽利文彦だよね。
「そう。彼はジェームズ・キャメロンの創設したデジタルドメインで、
『タイタニック』のCGアニメーターとして参加。
邦画でもVFXスーパーバイザーとして活躍。
ところが自らの監督第一作が実写の『ピンポン』という
オモシロい経歴を踏んでいる。
その彼は言う。
『「ピンポン」では球筋に感情がのっていたからいた映画になりえた。
「ベクシル」のアクションでも、
感情のラインが見えるように気持ちがのっかるようにと作っている』」

----それって、えいがよく言っている「アクションの中にドラマが必要」に似ているね。
「そういうこと。
だからこそ、この映画のアクションは一瞬たりとも飽きることがない。
アクションのためのアクションではなく、
そこには<意味>が生まれ、ドラマを牽引していくんだ。
CGの技術にしても詳しいことは分からないけど、
いままで見たアニメの質感とはまったく違う。
アニメには間違いないのに、
ほんとうに血が通って生きているかのよう。
あまり内容には触れなかったけど、
このテーマにしても痛烈。
つくづく、メインビジュアルの作りが悔やまれるな。
それとタイトルの『ベクシル』。
これじゃ、なんのことかまったく分からない」

----でも、サブタイトルがあるからいいんじゃニャいの?
「あっ!」


    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「こ、これはスゴそうだニャ」ぱっちり

※曽利文彦、やってくれた度
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