-----『ハリポタ』も早くも第4作目だね。
今回は原作が2巻に分かれたあの大長編。
冒険もスケールが大きくて映画化は難しそうな気がするけど。
「そうなんだよね。原作を読んでいるときから、
これは果たして映画になるんだろうかと…。
でもよくここまでやったと思う」
----監督がまた変わったよね。マイク・ニューウェルだっけ?
「そうなんだ。これがいい方に転がったね。
そもそも一作目を監督したのがクリス・コロンバス。
いかにもハリウッド的な監督で大丈夫かなと思ったのを覚えている。
結果、原作に忠実にまとめていたけど、
いま考えると、
『百味ビーンズ』に代表されるポップな世界になっていた」
----でも、まだ一年生だったんだし、それはそれでよかったんでは?
「うん、ぼくもそうだと思う。
映画としても世界中で爆発的ヒットを記録したしね。
ところがその後に
ファンタジーの本家『ロード・オブ・ザ・リング』が出てきたあたりから
『ハリポタ』の旗色は悪くなってきた。
ターゲットを大人に絞った『L・O・T・R』に比べると、
こちらは少々お子さまランチ的。
特に男性からの評判が悪かった。
しかし彼の出生にまつわる秘密が明かされ始めた前作『アズカバンの囚人』、
そしてヴォルデモート卿がついに復活を遂げるこの『炎のゴブレット』と、
物語はダークかつヘビーなモノになってくる。
やはりこれはクリス・コロンバスにはあわなかったのかも知れない。
もちろん公式的にはコロンバスが辞退したことになってるけどね。
『家族との時間を作りたい』と…」
----ニャるほど。で、今回の監督交代は正解だったと…。
「うん。これも意外なんだけど、
あれほどイギリスの俳優で固めていながら
これまでは監督はイギリス人ではなかった。
ところが今回のマイク・ニューウェルは生粋のイギリス人。
かつてアイルランドの伝説を現代に甦らせた
『白馬の伝説』という傑作を撮ったことがある彼だけど、
今回の映像はそのときのテイストと近い。
2時間37分、青みがかった暗い映像で統一されている」
----そう言えば、今回は音楽も変わってなかった?
「ジョン・ウィリアムズからパトリック・ドイルにね。
彼は王立スコットランド音楽アカデミー出身。
さらにダンス・パーティのシーンの曲は
バルブのジャービス・コッカーの手によるもの。
ラジオヘッドにも協力を求めたというから、
ブリティッシュ・ロック・ファンにはたまらないだろうね」
----そろそろ、中身の方も話してよ。
「ストーリーを長々と語っても仕方ないから、見どころをかいつまんで…。
この『炎のゴブレット』は他の巻のように、
マグル(人間)世界のハリーから始まるのではなく、
ワームテール、バーティ・クラウチJr.による
ヴォルデモート復活の謀議から始まる。
このシーンは、原作よりイメージがつかみやすくなっていた。
で、続いてクィディチ・ワールドカップという最初のヤマがくるわけだけど、
ここもヴィジュアルとしては及第点。
サポーター席なんて天にそびえるかのよう。
そのイメージに圧倒されてしまう。
ここだけでも美術のスチュアート・クレイグの名は映画史に記録されるべきだと思う。
ただ、そこに突如として現れる死喰い人にからむイメージは弱かった。
よりの映像で、その数も少ないため、
周囲との距離感が出ず<恐怖>が描ききれていなかった。
確か原作ではこの事件がきっかけで、
ハリーは周囲から疑いの目を向けられると記憶しているけど、
そこもあまり突っ込んで描かれていない」
-----ちょ、ちょっと。「かいつまんで」といいながら
結局ディテールに走って長くなっていない?
「あっ。そうかゴメンゴメン。
ま、その後はホグワーツ主催による三大魔法学校対抗試合、
その間に開かれるダンス・パーティ、
そしてこの対抗試合の果てにあるヴォルデモートとの対決と
全編クライマックスとでも呼びたくなるハイテンションで突き進んでいくわけだけど、
いずれも食い入るようにスクリーンを見つめてしまったね。
こんなに緊張が途切れなかった『ハリポタ』は初めてだ。
ドラゴンとの対決しかり、グリンデローに襲われる湖しかり、
邪念を持った迷路しかりだ」
-----分かった。分かった。興奮してまとまらないんだね。
新しく出た人たちはどうだった?
「ブレンダン・グリーソンのマッド・アイ・ムーディがなかなかオモシロい。
あんまりずっとは見たくないけどね(笑)。
個人的にはミランダ・リチャードソンのリータ・スキーターが受けたね。
なるほどこうくるかというメイクと衣装。
あっ、レイフ・ファインズのヴォルデモートもよく考えてあるよ」
----ふうん。でも今日のお話はまとまらないなあ。
「うん。この映画、喋ることが多すぎるからね。
ただ言えるのは、今回映画化された作品を観て
シリーズの中でこの巻が占める意味が初めて分かった気がする。
原作を読んでいない人にはネタバレになってしまうけど、
この三大魔法学校対抗試合であるひとりが、
生徒や先生たちみんなの前で死んでしまう。
<死>を目前にした彼ら生徒は、もう昨日と同じではいられない。
ラスト、ハーマイオニーはハリーやロンに向かって言う。
『わたしたち、みんな変わってゆくのね』。
そう、彼らの子供の時間は終わった。
そこに流れる静かな悲しみ。
この映画のダークなトーンはそれを強調するための
監督やスタッフの選択だったということなんだろうね」
(byえいwithフォーン)
※『稲妻の傷」が痛む度
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※画像はイギリスのオフィシャル・サイトの壁紙です。
今回は原作が2巻に分かれたあの大長編。
冒険もスケールが大きくて映画化は難しそうな気がするけど。
「そうなんだよね。原作を読んでいるときから、
これは果たして映画になるんだろうかと…。
でもよくここまでやったと思う」
----監督がまた変わったよね。マイク・ニューウェルだっけ?
「そうなんだ。これがいい方に転がったね。
そもそも一作目を監督したのがクリス・コロンバス。
いかにもハリウッド的な監督で大丈夫かなと思ったのを覚えている。
結果、原作に忠実にまとめていたけど、
いま考えると、
『百味ビーンズ』に代表されるポップな世界になっていた」
----でも、まだ一年生だったんだし、それはそれでよかったんでは?
「うん、ぼくもそうだと思う。
映画としても世界中で爆発的ヒットを記録したしね。
ところがその後に
ファンタジーの本家『ロード・オブ・ザ・リング』が出てきたあたりから
『ハリポタ』の旗色は悪くなってきた。
ターゲットを大人に絞った『L・O・T・R』に比べると、
こちらは少々お子さまランチ的。
特に男性からの評判が悪かった。
しかし彼の出生にまつわる秘密が明かされ始めた前作『アズカバンの囚人』、
そしてヴォルデモート卿がついに復活を遂げるこの『炎のゴブレット』と、
物語はダークかつヘビーなモノになってくる。
やはりこれはクリス・コロンバスにはあわなかったのかも知れない。
もちろん公式的にはコロンバスが辞退したことになってるけどね。
『家族との時間を作りたい』と…」
----ニャるほど。で、今回の監督交代は正解だったと…。
「うん。これも意外なんだけど、
あれほどイギリスの俳優で固めていながら
これまでは監督はイギリス人ではなかった。
ところが今回のマイク・ニューウェルは生粋のイギリス人。
かつてアイルランドの伝説を現代に甦らせた
『白馬の伝説』という傑作を撮ったことがある彼だけど、
今回の映像はそのときのテイストと近い。
2時間37分、青みがかった暗い映像で統一されている」
----そう言えば、今回は音楽も変わってなかった?
「ジョン・ウィリアムズからパトリック・ドイルにね。
彼は王立スコットランド音楽アカデミー出身。
さらにダンス・パーティのシーンの曲は
バルブのジャービス・コッカーの手によるもの。
ラジオヘッドにも協力を求めたというから、
ブリティッシュ・ロック・ファンにはたまらないだろうね」
----そろそろ、中身の方も話してよ。
「ストーリーを長々と語っても仕方ないから、見どころをかいつまんで…。
この『炎のゴブレット』は他の巻のように、
マグル(人間)世界のハリーから始まるのではなく、
ワームテール、バーティ・クラウチJr.による
ヴォルデモート復活の謀議から始まる。
このシーンは、原作よりイメージがつかみやすくなっていた。
で、続いてクィディチ・ワールドカップという最初のヤマがくるわけだけど、
ここもヴィジュアルとしては及第点。
サポーター席なんて天にそびえるかのよう。
そのイメージに圧倒されてしまう。
ここだけでも美術のスチュアート・クレイグの名は映画史に記録されるべきだと思う。
ただ、そこに突如として現れる死喰い人にからむイメージは弱かった。
よりの映像で、その数も少ないため、
周囲との距離感が出ず<恐怖>が描ききれていなかった。
確か原作ではこの事件がきっかけで、
ハリーは周囲から疑いの目を向けられると記憶しているけど、
そこもあまり突っ込んで描かれていない」
-----ちょ、ちょっと。「かいつまんで」といいながら
結局ディテールに走って長くなっていない?
「あっ。そうかゴメンゴメン。
ま、その後はホグワーツ主催による三大魔法学校対抗試合、
その間に開かれるダンス・パーティ、
そしてこの対抗試合の果てにあるヴォルデモートとの対決と
全編クライマックスとでも呼びたくなるハイテンションで突き進んでいくわけだけど、
いずれも食い入るようにスクリーンを見つめてしまったね。
こんなに緊張が途切れなかった『ハリポタ』は初めてだ。
ドラゴンとの対決しかり、グリンデローに襲われる湖しかり、
邪念を持った迷路しかりだ」
-----分かった。分かった。興奮してまとまらないんだね。
新しく出た人たちはどうだった?
「ブレンダン・グリーソンのマッド・アイ・ムーディがなかなかオモシロい。
あんまりずっとは見たくないけどね(笑)。
個人的にはミランダ・リチャードソンのリータ・スキーターが受けたね。
なるほどこうくるかというメイクと衣装。
あっ、レイフ・ファインズのヴォルデモートもよく考えてあるよ」
----ふうん。でも今日のお話はまとまらないなあ。
「うん。この映画、喋ることが多すぎるからね。
ただ言えるのは、今回映画化された作品を観て
シリーズの中でこの巻が占める意味が初めて分かった気がする。
原作を読んでいない人にはネタバレになってしまうけど、
この三大魔法学校対抗試合であるひとりが、
生徒や先生たちみんなの前で死んでしまう。
<死>を目前にした彼ら生徒は、もう昨日と同じではいられない。
ラスト、ハーマイオニーはハリーやロンに向かって言う。
『わたしたち、みんな変わってゆくのね』。
そう、彼らの子供の時間は終わった。
そこに流れる静かな悲しみ。
この映画のダークなトーンはそれを強調するための
監督やスタッフの選択だったということなんだろうね」
(byえいwithフォーン)
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問わず語り
呼応する
その手法で文を起こされている
参考になりました
招き猫
大入り間違いなしの
ハリポタに乾杯
楽しみです
お越しいただきありがとうございます。
ここは最初は猫の声をとおして
ぼくの日常を語るというつもりで始めたのですが、
いつしか映画のことばかりを語るようになり、
結果、このような手法の映画紹介ブログとなりました。
楽しんでいただけたようで嬉しいです。
またいらしてください。
前作『アズカバンの囚人』は
「時間」をどのように処理するのかと思ったのですが、
なかなか見せてくれましたね。
ただ、個人的には
この『炎のゴブレット』の方が、
原作のイメージを損なうことなく、
うまく映画化されていたという気がします。
今回は「ハリーポッターと学園天国」って
タイトルにしてもいいかと思うような
青春学園モノの雰囲気があって自分は楽しめました。
多分、男子には人気あるはずのハマイオニーには
幼なじみ的なコミュニケーションしか出来なくなってて、女の子にはイマイチオクテの二人が楽しかったです。
今回は強く「イギリスの映画」って感じがしました
けど監督によるものが大きいんでしょうかね^^
とても良かったと思います。
監督がかわると雰囲気がまったく違うものになりますね、
でも今回はそれが良い方に出ていて、良かったと思います♪
原作でイメージしていた映像は実際スクリーンで見るとダークで驚きました。
怖がる子供もいるかもしれませんね~。
そうですね。とりわけオープニング・エピソードと
クライマックスのヴォルデモートの対決。
『ハリポタ』に偏見を持っている人にも
今回だけは観ていただきたい気がします。
■nicocoさん
ワールドカップの映像は確かにスゴかったのですが、
あそこで起こった事件があっという間に終わっちゃうのが
原作ファンとしては少し残念。
この映画だけは原作を引き合いに出してしまう
自分がいます。
(映画は映画と割り切らなくてはいけないのですが…)。
そうそう、今回は青春映画の趣きがありました。
ラストも甘酸っぱく切ない。
そうか、こう言う部分も自分の好みとフィットしたんだ。
■ぐ~さん
ぼくも原作の中ではこれが一番好きです。
イメージが奔放な広がりを見せ、
これぞファンタジーの王道と言う感じがするからです。
原作を読んだとき、
J・K・ローリングが映画化での難しさなど考えずに
ほんとうに書きたいものを書いていると言うのが伝わり、
それがとても嬉しかった記憶があります。