ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『サルバドールの朝』

2007-06-11 15:31:14 | 新作映画
(原題:Salvador (Puig Antich))

----ダニエル・ブリュールって久しぶりって気がするよね?
「うん。一昨年とかはたくさん出ていたのに、
日本に来るのは『戦場のアリア』以来じゃないかな」

----彼ってドイツ映画が多いと言うイメージがあるけど
この作品はスペインが舞台なんだよね。
「そうなんだ。
ダニエルの生まれはバルセロナ。
父親がドイツ人、母親がカタルーニャ人。
本人はドイツ語とスペイン語の両方を話せる。
他にも英語、フランス語に秀でていて、
この映画ではスペイン語とカタルーニャごを話している」

----それはこれからの活躍が望めそうだニャ。
「そうだね。
現在ハリウッドで『ボーン・アイデンティティー』の続編、
『The Bourne Ultimatum』を撮影中らしい。
彼のキャリアからすると、少し遅いくらいだね」

----ふうん。そうだったんだ。
この映画ってスペインのアナーキスト青年の話ニャんでしょ。
彼って『グッバイ、レーニン!』とか『ベルリン、僕らの革命』とか
政治がらみの映画への出演が多いよね。
「そうだね。その甘いマスクが政治色をうまい具合に中和させるのかもね。
とは言え、今回はアナーキスト。
これまでよりかなり過激だね。
銃は打つし、銀行強盗は犯すし……」

----えっ、イメージしていたものとだいぶ違う。
学生運動の話じゃなかったの?
「うん。1970年代初頭。
フランコ独裁政権に、自由を求める多くの人々が反対の声を上げる。
その中で、青年サルバドール(ダニエル・ブリュール)は
活動資金を得るため銀行強盗に手を染めていく。
ここの描き方が『明日に向かって撃て!』か『デリンジャー』かって感じ。
西部劇やギャング映画を連想させるくらいだから、
もっとロマンやリリシズムが浮き彫りになってもいいんだけど、
なぜかそうはならない。
彼の行動が
普通の生活を送っている人たちに迷惑をかけているようにしか見えないんだ。
70年代と言う、まだ過去と言い切ることができない新しい時代だからか、
そのような行為がファンタジーとしては見ることができないんだね」

----あ~あ。ニャるほど。
日本で言えば赤軍派みたいなものか。
その過激な闘争が時代から遊離しているってワケだ。
「いやいや、そう言いきる自信はないね。
地球の裏側にある、よく知らない世界のことだし…。
ただ、個人的には彼の行動にあまりノレず、
そのため映画が転調する後半もサルバドールに同化できなかった」

----どういうこと?
「この映画では後半、
サルバドールの死刑判決をめぐって
それを阻止しようとする人々や
彼の家族、さらには看守とのふれあいが中心となってくる。
『デッドマン・ウォーキング』と同じ、
いわば死刑囚の最後を見つめた映画と考えていい。
ところがさっきからぼくが言っている前半のサルバドールの過激な行動が、
彼への感情移入を妨げてしまう。
サルバドールの容疑は
逮捕時に彼が暴れて乱射した銃弾による警官射殺。
サルバドールの拘束中に別グループのブランコ首相暗殺事件が重なり、
権力側は彼に死刑宣告するわけだけど、
実はこの警官の死体からは
サルバドールが撃った以外の銃弾も発見されたことが明らかとなる」

----ニャるほど。じゃあ彼の銃弾が直接の原因かどうかは分からないわけだ。
「そういうこと。
映画はここも意外とさらりと描いていくため、
冤罪と言う方向への掘り下げからもそれてしまう。
いま、思うにこの映画は
そういうすべてのことを抜きにして
一つの命を権力が残酷な手段で消すということの是非を問いたかったんだろうな」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「鉄環絞首刑って怖いニャ」もう寝る

※う~ん。重い。どんより度
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画像はスペイン・オフィシャルより。