ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『それでも生きる子供たちへ』

2007-04-27 22:48:11 | 新作映画
(原題:All the Invisible Children)

----この映画もオムニバスだよね。
しかも日本でも人気の監督たちがずらり。
「うん。それぞれが描いているのは
“いまを生きる”子供たちの話。
少年兵士の物語もあれば、盗みを働く少年少女たち、
戦場の子供たちにストリートチルドレン、
さらにはHIV胎内感染した少女の物語もある」

----どれが印象に残ったのかニャ?
「やはり知っている監督の作品は入りやすかったね。
たとえばエミール・クストリッアは
いつもどおりのにぎやかなタッチ。
葬式と婚礼の行列から始まり、
少年院や窃盗団家族のけたたましい騒ぎが
映画を覆いつくす。
そのタッチは悪ふざけすれすれ。
予想がつくとは言えオチもブラックだ」

----リドリー・スコットは共同で
監督しているようだね。
「うん。ジョーダン・スコット。
彼女はリドリー・スコットのひとり娘。
この映画は少し気どっている。
主人公は中年にさしかかったフォトジャーナリスト。
戦場での悪夢から精神のバランスを崩し始めている。
そんな彼がある日、森の中を散策していると、
突然子供たちの声が聞こえてくる。
その声を追いかけていると、
なんと自分自身も少年の姿に戻ってしまう……」

----へぇ~っ。それはオモシロそうだね。
「あとスパイク・リーも見逃せないよ。
主人公は、両親がHIV感染者の上、麻薬常習者、
そして自分もHIVに感染している少女。
そのことを知った周囲は彼女をいじめるんだけど、これがまた残酷。
イジメの構造は日本だけでないことを思い知らされたね。
このエピソードのラストショットは
ある短いセリフで締めくくられる。
おそらく観た人誰もの目にいつまでも焼き付くこと
まず間違いないだろうね」

----ふうん。ニャんて言ったんだろう?
「それは内緒(笑)。
自分の目で確かめて。
でも実は、いちばん泣かされたのは
ラストを締めくくる中国のエピソード。
これは裕福だが、いがみ合う両親のもとで暮らす桑桑(ソンソン)と、
貧しい老人に拾われた孤児の小猫(シャオマオ)の話。
ふたりのエピソードが、
桑桑が捨てたフランス人形を軸に絡み合う
脚本の妙もさることながら、
このシャオマオを演じたチー・ルーイーの表情が実にいい。
彼女の愛くるしい顔に涙を誘われない人は、
まずいないんじゃないかな。
そして何よりも驚くのが、
この映画があのバイオレンスの巨匠ジョン・ウーの手によるものだと言うこと。
ぼくは、アクション映画以外の彼の作品を観たのは初めて!」

----確かにチェン・カイコーとか、
チャン・イーモウあたりが撮りそうな話だよね。
そう言えばジョン・ウーって
中国本土で撮ったの初めてじゃニャい?
「うん。それも見どころのひとつだね。
でもこのエピソード最大の特徴は、
子供によって大人が救われること。
少しジョン・ウーの言葉を引用しよう。
『我々は世界の子供たちを救う話をしているが、
本当は子供たちが我々を救っているのだ。
彼らの強さと愛が世界を変えていくだろう』。
まさに、この言葉どおりの映画だったね。
もともとは<世界中の子供たちの窮状を救うための映画>を作ろうと
いうことから始まった企画だけど、
ジョン・ウーはその企画に乗りながらも、
自分独自のスタンスを鮮明に打ち出している。
今後の彼の作る映画が、実に楽しみだ」


     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「“小猫”って猫じゃないのニャ」身を乗り出す


※ジョン・ウーで泣くとは自分でも驚いた度
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