ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ゾディアック』

2007-04-04 23:00:16 | 新作映画
(原題:ZODIAC)

----これってデビッド・フィンチャー監督作品だよね。
連続殺人事件を描いたと言うと
出世作の『セブン』を思い出すけど…。
「うん。でもこの映画があれと大きく異なるのは、
ここで描かれているのが実際に起こった事件であり、
いまだ未解決と言うこと。
それと惨殺死体だけを見せた『セブン』に対して、
こちらは犯行そのものを写してゆく。
しかもこのときのカメラが容赦ない。
ナイフでのメッタ刺しシーンなど、
まともに目を開けていられなかったね」

----お話はどういうものなの?
「『俺は人を殺すのが好きだ』と、
謎めいた暗号とメッセージで世界を挑発した
全米史上初の劇場型連続殺人鬼ゾディアック。
この挑発に警察もマスコミもハマってゆく。
ところが絶対に犯人だと思われる男を
あと一歩のところで立証、逮捕することができず、
真実は深い闇の中に消えていく----」

----それって『殺人の追憶』だ!
「そうなんだよね。
ただ、刑事ふたりが事件を追った『殺人の追憶』に対して
こちらは主に4人の男が関わっている。
新聞社でトップを走る花形記者ポール・エイブリー、
暗号の解読に取り憑かれた風刺漫画家ロバート・グレイスミス、
ゾディアック事件の最前線に立つ
サンフランシスコ市警の敏腕刑事デイブ・トースキーとビル・アームストロング。
彼らはその事件を追うことに熱中するあまり、
それぞれ健康やキャリア、そして平穏な家庭までも奪われてゆく」

----ニャるほどね。
でもこれまでのデビッド・フィンチャーの
フィルモグラフィからすると、
そのシノプシスって意外と普通のような気も…。
「まあ、それは実際に起こった事件が元になっているからね。
でもそうは言っても
2時間37分、一気に見せきるだけの力がある。
USウィークリー誌は『24 Twenty-four』を引き合いに出していたけど、
ぼくは同じTVシリーズでも『Xーファイル』の方が頭に浮かんだね。
次々と有力情報がもたらされるものの、
どれも実ることはなく結局は空振りに終わってしまう…。
この描き方がドキュメンタリーとまでは言わないにしても
少し引いた目線で描かれる。
ところがそれがある瞬間、一気に身も凍るスリラーへと変わる。
この話法の転換は見事だったね」

----えっ、それってどこ?
「観てみると分かるよ。
このシーンは本当に怖いから。
ただヒントとして
グレイスミスに関わるシーンとだけは言っておこう」

----そのグレイスミスは誰がやっているの?
「ジェイク・ギレンホール。
プレスにも書いてあったけど、
彼とポール役のロバート・ダウニー・Jr.がオフィスで
事件について激論しているシーンは
『大統領の陰謀』を思い出したね」

----あれっ、このビル役のアンソニー・エドワーズって
『ER/緊急究明室』のグリーン先生だよね。
「うん。
でもぼくがここで押したいのは
デイブ役のマーク・ラファロ。
一度聞いたら絶対に忘れることのできない、
高めのハスキー・ボイス。
ぼくはこの映画の成功の要因の一つは
彼のこの<声>にあると思っているくらい。
そうそう、スティーブ・マックィーンも
実在のデイブ・トースキーをマネしたと映画の中で言っていたけど、
これって『ブリット』だったのかな。
コートの色とかそっくりだったし…。
あっ、映画と言えば劇中『ダーティハリー』が使われていたね」

----えっ、なぜ?
「あの第一作の<サソリ>は
この事件の犯人がモデルとなっているらしいんだ。
もっともあちらは捕まっているけどね」

----でも、この犯人が殺した人の数って
全米の犯罪史上では、
そんなに多い方ではないよね。
ニャんでそんなに騒がれるの?
「そこなんだ。
犯人の挑発、自己顕示欲。
それにマスコミが乗ったことで、
モンスターのようにその像をふくらませていった。
そしてそのことがまた
真実を知りたいと言う男たちの執念をさらに増幅させる。
しかしもがけばもがくほど一様に深みにハマっていく。
まさに底なし沼。
フィンチャーは、
そんな彼ら、事件に魅入られた男たちをひとりに絞ることなく複数描くことで、
この事件が生み出した不条理そのものをあぶり出しているようにも見える。
論理では決して割り切れない人間の不可解な心理と行動----。
そういう意味でもぼくにとっては見応え十分だったね」



       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「怖いけど観たいニャあ」複雑だニャ


※フィンチャー、一皮剥けた度
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