ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『デイジー』

2006-03-22 19:00:48 | 新作映画
----この映画、監督が香港のアンドリュー・ラウ。
なのに主演は『私の頭の中の消しゴム』のチョン・ウソンに、
『猟奇的な彼女』「僕の彼女を紹介します」のチョン・ジヒョン。
しかも脚本はその『猟奇的な彼女』の監督クァク・ジョエン。
そして舞台はオランダで、音楽が梅林茂というんでしょ?
スゴく贅沢な映画だね。
「うん。これはとてもおいしい映画。
冒頭から夢のように美しいデイジー畑が出てきて、
それだけで引き込まれてしまう」

----お話はどういうものなの?
「主人公は画家のヘヨン(チョン・ジヒョン)。
彼女の元には毎週だれからか、デイジーの花が贈られてくる。
贈り主は名乗りを上げないんだけど、
あるとき、街角で彼女に似顔絵を頼んでくる男がいて
ヘヨンはジョンウ(イ・ソンジェ)というその男こそが
デイジーの贈り主に違いないと思い込む」

----ふうん。でもなぜデイジーなの?
「このデイジーというのは、
ヘヨンが絵のモチーフとしている花。
以前、ヘヨンが展覧会用にデイジーの絵を描くために、
山間の村に滞在していたとき、
丸太橋から足を滑らせて川に転落してしまったことがあって、
彼女はそれ以来、橋を渡るのが恐くなっていた。
ところがあるとき、そこには小さな橋が……。
彼女は呼びかけても返事をしないその恩人に感謝の気持ちを伝えるため、
自分の描いたデイジーの絵を橋の手摺りに残していく。
彼女の元にデイジーが届き始めたのはそれ以来なんだ」

----うわあっ。それはまた大掛かりな愛の表現だね。
「ジョンウの職業はインターポールの捜査官。
実は張り込みに便利という理由からヘヨンに近づいたわけだけど、
次第に任務を超えて彼女に惹かれていく。
しかし、それを狙撃銃のスコープで見張っている男がいた。
それこそが、彼女のために橋を作り、
また絵のお礼にデイジーを贈っていたパクウィ(チョン・ウソン)」

---それは想像つくけど、なぜ狙撃銃?
「彼は実はプロの暗殺者だった!」
----おおおお~っ。さすが“韓流”(笑)。
クァク・ジョエンらしい二重三重の凝った構成だ。
「そう。しかも裏社会の掟、そして激しい銃撃戦が絡むことで、
このせつないラブストーリーを重層的なものに変えてゆく」

---香港ノワールの名手アンドリュー・ラウにぴったりだね。
「うん。これ以上、詳しいストーリーを語るのは止めるけど、
途中で主要人物の一人が姿を消し、
彼は果たして生きているのか死んでいるのか、
と言った<ミステリー的>な要素が、
なんと2度までも立ち上ってくる」

----ニャるほどね。
デイジーの送り主が実はパクウィであると、
いつヘヨンが気づくか----こっちも興味深いよね。
「そうなんだ。
その真実を知ったときのヘヨンの気持ちの変化もね。
ヘヨンを演じるチョン・ジヒョンにとっては
久しぶりにコメディ的な要素の少ない映画だけど、
<真実を知らない中での恋><幻の相手への恋>と言う難しい役柄を
見事にこなしていた。
男優の方はイ・ソンジェに軍配が上がるね。
チョン・ウソンは、恋に臆病で名乗り出られないという設定だけど、
彼の奥手ぶりを見ていると『あんた、それはないだろうっ』て感じ。
恋に弱気な男にしてはカッコよすぎる(笑)」

----アンドリュ・ラウの演出はどうだった?
「甘いラブストーリーの舞台であるオランダの広場が
急に惨劇の場と変わるところは圧巻。
また、階段を使った銃撃戦でも
凝ったアングルと短いカッティングによって
スタイリッシュに仕上がっている。
フェイドイン、フェイドアウトも多用されていたけど、
最大の見どころは
パクウィ、ヘヨン、ジョンウの3人が初めて顔を合わせるシーンかな。
友達としてヘヨンの部屋を訪ねるパクウィ。
そこに、それまで姿を消していたジョンウが姿を現す。
ヘヨンの肩越しに目を合わせるパクウィ、ジョンウの男ふたり。
ジョンウの突然の出現にドアを閉めて表で泣き崩れるヘヨン。
と、画面は縦3分割になり、この3人3様の姿を映し出す。
部屋の中では、取り残されて気持ちのやり場がないパクウィが
どうしていいか分からずおろおろしている。
一方、部屋の外では、ヘヨンとジョンウの間に重い沈黙が流れる。
果たしてこの張りつめた空気はいつ破られるのか?
息詰まる愛の緊張だったよ」

----う~ん。それはぼくも観てみたいや。
         (byえいwithフォーン)

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※画像は韓国のオフィシャルより。