----この映画って昨年の映画賞のほとんどを受賞しながら
アカデミー賞を逃したと言う曰く付きの作品だね。
「うん。ゲイを扱ったことから
アカデミー会員には敬遠されたのではないかと言われている」
----実際に観てどうだった?
「その前に一言。
映画館の観客があまりにも少なかったのには驚いたな。
アカデミー賞を逃すとこういうものなのかな。
映画は確かにゲイのふたりが主人公なんだけど、
観る前に予想していた内容とはだいぶ異なっていたね」
----どう違ったの?
「ブロークバック・マウンテンで関係を持ったイニス(ヒース・レジャー)と
ジャック(ジェイク・ギレンホール)のふたりが山を下りた後、
それぞれに自分たちの結婚生活を営み、
数年経ってジャックが現れ、ふたりの関係が戻る……ここまでは予想通り。
ただ、最初思っていたのは
<ふたりは気づかないように密会を続ける。
しかし妻は次第に怪しみだし、町の人の噂にもなり、
その好奇と批判の目にさらされる>というもの。
ところが実際は
<イニスがジャックを熱く抱擁する現場を
イニスの妻アルマ(ミシェル・ウィリアムズ)はすぐに目撃>。
映画は思わぬ秘密を知ってしまった妻の苦悩にもスポットを当てる」
----夫の秘密を知った妻という映画、最近多くニャい?
「『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『隠された記憶』だね。
しかしそれらの映画に比べてこの映画はもっとエモーショナル。
言葉は少ないながらも、
どのショットからもそこにいる人の<想い>がにじみ出してくる。
もちろん映画はふたりの<想い>を軸に、
とりわけジャックのガラスのように傷つきやすく
また気高い<想い>が軸となるわけだけど、
この映画が魅力的なのは
登場人物すべての<想い>を映像化したところにあると思う」
----ふうん。と言うことは彼らに敵対する人たちにも切り込んでいるわけだ?
「切り込んでいると言えるかどうかまでは分からないけど、
この映画は登場人物それぞれの<反応>が印象に残る。
それも寡黙な中の饒舌な反応」
----よく分からニャいな?
「じゃあ、印象に残ったシーンをいくつか書いてみよう。
※アルマがイニスに「釣り箱」を忘れていると教え、
イニスが使いもしないその釣り箱を持ち去るときのアルマの表情。
※ジャックとラリーンの父がテレビのチャンネルのことで言い争い、
ジャックが「あなたはゲストだ」と彼を席に座らせたときの
義理の父の悄然とした姿、
そしてそれを見守る妻ラリーン(アン・ハサウェイ)の満足げな視線。
※ジャックの実家を訪れたイニスが
クローゼットから見つけたジャケットとシャツを持って階下に降りてきときの
寂しさの中にかすかに光が煌めくジャックの母親の目。
それは、つい先ほどまで「家の墓には息子の灰は入れない」と言っていた
老父の心をも溶かしてゆく。
他にもイニスの長女が父に寄せる親しみ、
ジャックが声をかけたロデオ道化師の冷たい拒否、
そしてジャックを誘う牧場主の隠れた媚態など、
それぞれに言葉は少ないながらも
主人公ふたりへの<沈黙の反応>、
その<想い>が映画を満たしていく」
----う~ん?でも今日、あんまりストーリーを語ってないね?
「ぼくは早めに映画を観た映画は、
お礼の意味もあって、
その映画の内容と見どころを少しでも詳しく伝えようと
少々くどいまでに書いているんだけど、
この映画は、もうすでにいろんなところで紹介されているし、
ぼくがあえてストーリーを書く意味はないと思うんだ。
これまでにも劇場で公開された後に観た映画は
そういうスタンスで喋っている。
あっ、ただ、その目が覚めるように美しいブロークバック・マウンテンが実は最初だけで、
それ以後、ふたりが訪れるときには
楽園としての輝きを失っていたことは喋っておきたいな」
----そう言えばプログラムも買ってなかった?
「うん。これが最高のでき。
なかでも米文学者・翻訳家の米原真治さんの文章(P40~41)は読み応え抜群。
ラストのイニスのセリフ、字幕の『ずっと一緒だよ』が
どうもナマすぎて引っかかってていたんだけど、
ここは原作では『僕は誓う』となっているらしい。
これを読んで納得したね」
----『ずっと一緒だよ』だったら『輪廻』だもんね(笑)。
(byえいwithフォーン)
※想いが満ちる度
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※画像はスペイン・オフィシャルの壁紙です。
アカデミー賞を逃したと言う曰く付きの作品だね。
「うん。ゲイを扱ったことから
アカデミー会員には敬遠されたのではないかと言われている」
----実際に観てどうだった?
「その前に一言。
映画館の観客があまりにも少なかったのには驚いたな。
アカデミー賞を逃すとこういうものなのかな。
映画は確かにゲイのふたりが主人公なんだけど、
観る前に予想していた内容とはだいぶ異なっていたね」
----どう違ったの?
「ブロークバック・マウンテンで関係を持ったイニス(ヒース・レジャー)と
ジャック(ジェイク・ギレンホール)のふたりが山を下りた後、
それぞれに自分たちの結婚生活を営み、
数年経ってジャックが現れ、ふたりの関係が戻る……ここまでは予想通り。
ただ、最初思っていたのは
<ふたりは気づかないように密会を続ける。
しかし妻は次第に怪しみだし、町の人の噂にもなり、
その好奇と批判の目にさらされる>というもの。
ところが実際は
<イニスがジャックを熱く抱擁する現場を
イニスの妻アルマ(ミシェル・ウィリアムズ)はすぐに目撃>。
映画は思わぬ秘密を知ってしまった妻の苦悩にもスポットを当てる」
----夫の秘密を知った妻という映画、最近多くニャい?
「『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『隠された記憶』だね。
しかしそれらの映画に比べてこの映画はもっとエモーショナル。
言葉は少ないながらも、
どのショットからもそこにいる人の<想い>がにじみ出してくる。
もちろん映画はふたりの<想い>を軸に、
とりわけジャックのガラスのように傷つきやすく
また気高い<想い>が軸となるわけだけど、
この映画が魅力的なのは
登場人物すべての<想い>を映像化したところにあると思う」
----ふうん。と言うことは彼らに敵対する人たちにも切り込んでいるわけだ?
「切り込んでいると言えるかどうかまでは分からないけど、
この映画は登場人物それぞれの<反応>が印象に残る。
それも寡黙な中の饒舌な反応」
----よく分からニャいな?
「じゃあ、印象に残ったシーンをいくつか書いてみよう。
※アルマがイニスに「釣り箱」を忘れていると教え、
イニスが使いもしないその釣り箱を持ち去るときのアルマの表情。
※ジャックとラリーンの父がテレビのチャンネルのことで言い争い、
ジャックが「あなたはゲストだ」と彼を席に座らせたときの
義理の父の悄然とした姿、
そしてそれを見守る妻ラリーン(アン・ハサウェイ)の満足げな視線。
※ジャックの実家を訪れたイニスが
クローゼットから見つけたジャケットとシャツを持って階下に降りてきときの
寂しさの中にかすかに光が煌めくジャックの母親の目。
それは、つい先ほどまで「家の墓には息子の灰は入れない」と言っていた
老父の心をも溶かしてゆく。
他にもイニスの長女が父に寄せる親しみ、
ジャックが声をかけたロデオ道化師の冷たい拒否、
そしてジャックを誘う牧場主の隠れた媚態など、
それぞれに言葉は少ないながらも
主人公ふたりへの<沈黙の反応>、
その<想い>が映画を満たしていく」
----う~ん?でも今日、あんまりストーリーを語ってないね?
「ぼくは早めに映画を観た映画は、
お礼の意味もあって、
その映画の内容と見どころを少しでも詳しく伝えようと
少々くどいまでに書いているんだけど、
この映画は、もうすでにいろんなところで紹介されているし、
ぼくがあえてストーリーを書く意味はないと思うんだ。
これまでにも劇場で公開された後に観た映画は
そういうスタンスで喋っている。
あっ、ただ、その目が覚めるように美しいブロークバック・マウンテンが実は最初だけで、
それ以後、ふたりが訪れるときには
楽園としての輝きを失っていたことは喋っておきたいな」
----そう言えばプログラムも買ってなかった?
「うん。これが最高のでき。
なかでも米文学者・翻訳家の米原真治さんの文章(P40~41)は読み応え抜群。
ラストのイニスのセリフ、字幕の『ずっと一緒だよ』が
どうもナマすぎて引っかかってていたんだけど、
ここは原作では『僕は誓う』となっているらしい。
これを読んで納得したね」
----『ずっと一緒だよ』だったら『輪廻』だもんね(笑)。
(byえいwithフォーン)
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※画像はスペイン・オフィシャルの壁紙です。