ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『キスキス,バンバン』

2006-03-10 23:40:29 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも


----ロバート・ダウニーJr.にヴァル・キルマーか。
これまたシブい組み合わせだね。
どんな映画なの?
「うん。これが初監督となるシェーン・ブラックによると、
『バディ・ムービーとフィルム・ノワールに、
これまでにないロマンティックで独創的なテイストを加えたい』のだとか」

----シェーン・ブラックって脚本家じゃなかったっけ?
「そう、それも“一本400万ドル”とも言われるハリウッドの最高クラス。
『リーサル・ウェポン』で温厚なベテラン刑事と
自殺願望の強い若手刑事というコンビを生み出した彼は、
ここでは
ひょんなことからオーディションに合格した
ケチな泥棒ハリー(ロバート・ダウニーJr.)と
役作りのために彼がつくことになった
ゲイの探偵(ヴァル・キルマー)という
だれも考えなかった探偵コンビが、
ある事件に巻き込まれていくさまを描いてゆく。
そしてもうひとりヒロインとして加わるのが
ハリーの幼馴染みで女優のハーモニー。
この役を演じるミシェル・モナハンは
なんとバストトップまで見せているけど、
実は『M:Iー3』のヒロインを務めている。
以後、こういう大胆なことはやらないかもね」

----すでに名をなした脚本家が初めて監督をやるんだから、
のびのび演出しているのでは…って気がするけど。
「うん。
タイトルバックが線画タッチを生かしたアニメーション。
60~70年代の映画にこれは多かったね。
また、全体をハリーのナレーションで
しかも観客に語りかける形で進めてゆく。
それによってフィルムもストップしたり巻き戻されたり。
エキストラもナレーションに従って
その立ち位置を移動したりなんかもする」

----へぇ~っ、なかなかオモシロそうじゃニャい。
「ただ、これも当時はやったやり方。
最近では『アルフィー』でも形を変えて使われていたけど、
他の人のブログを読んだら
その手法を古めかしく感じている人が多かった。
そのあたりが、今回はどう取られるかだろうね」

----ふうん。謎解きの方はどうニャの?
「この手の映画では
ハリウッドの裏にいるボスの性癖から
陰謀的な事件が引き起こされることが多い。
そういう意味では目新しくもなく
落ちつくべきところに落ちついた気がする。
ただ、言葉でその<謎>を解き明かしていくから
よく観ていないと分かりにくいかも」

----アクションの方はどう?
「今までそんなに強くもなかったハリーが
クライマックスでは超人的プレイを見せる。
落ちかかった車の死体の手を片手で掴み、
上から落ちてきた銃をもう片手で受け取り、
敵を皆殺しにする。
ここも今の観客にとってはツッコミたくなるところかも。
この事件が起こるまで
ハリーは人を殺したことはなかったわけだしね。
でも、あの頃はこんな<突然ヒーロー>映画が多かったような気がする。
ヒロインとのベッドインのチャンスがたくさん転がっているにも関わらず、
いつも失敗するハリーのキャラとあわせて、
これはこれでよかったという気もするな」

          (byえいwithフォーン)

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『嫌われ松子の一生』

2006-03-09 20:45:56 | 新作映画
----『下妻物語』の中島哲也監督の新作。
前作が大絶賛されただけに注目度も高いよね。
「う~ん。これはある意味、スゴい問題作だね。
どう評価していいのか、
一言で言えばこんな映画観たことがない。
これまで彼が豊川悦司&山崎努の卓球対決(『サッポロ黒ビール』)など、
CMで培ってきたいろんな手法がすべて織り込まれている。
最初のうちはそれらCGを駆使したポップな映像、
それでいながら登場人物の感情、
ストーリーもきちんと押さえている独特の語り口に、
『おっ、さすが中島哲也。やるじゃない!』と思っていたんだけど……」

----ん?歯切れよくないニャあ。
「本筋に入る前に
観ている時のぼくの感情の変化を話すと……
『さすが中島哲也。この調子でどんどん作ってくれ→
中島哲也どこまで行くんだろう?→
ちょっとやりすぎでは?→
ふう~、疲れた……。』
という感じだね」

----あらら。それはなぜ?
「とにかく、物語が悲惨すぎる。
それでも最初のうちはミュージカル風の語り口や
精緻を極めた丁寧な画作りに
『そうだよ。これだよ』と頷いていたんだけどね。
でも途中から、
あまりにも壮絶な松子の人生が
話法を超えてスクリーンを支配する」

----どういうお話なのか、簡単に教えてよ。
「主人公は川尻松子(中谷美紀)。
歌が上手な中学教師として生徒にも人気のあった彼女は
ある事件がきっかけで20代で教師をクビになり、エリートから転落。
家を飛び出しトルコ嬢(今で言うソープ嬢)に。
やがてヒモを殺害して刑務所に入り、
最後には何者かに殺されてしまう。
物語はその松子の華麗な(?)男性遍歴と生きざまを
甥である川尻笙(瑛太)がたどる形で描いてゆく。
しかも、それは時おり松子本人の言葉で語られるんだ」

----えっ、松子は死んでいるんでしょ。どういうこと?
「実は彼女は、ある形で自分の人生を語っているモノを残していた。
原作にもあるのかもしれないけど、
ここの持って行き方は巧かったね。
脚本的には申し分なし。
映像の方も、あらゆる映画の記憶を
その映像や手法を含めて映画に織り込んでいる。
タイトルからして
60年代のシネラマで観たような叙事詩映画の書体だしね。
彼女の子供時代はディズニー映画のように
その周りをアニメの小鳥たちがさえずり、花が咲き乱れる。
かと思えば、刑務所のシーンでは『シカゴ』風のミュージカルになる」

----それは観てみたいな。
「でしょ?しかもこれらはすべて緻密に計算されている。
※(以下、プレスからの引用が中心となります。)
今回のCGは客観ではなく松子の主観で作られている。
さっきも話したように
映画ではいつも彼女の周囲には花が散りばめられているんだけど、
これは
(現実では、それとはまったくかけ離れた生活を送っていながら)
『いつか王子様のような男性が現れる』ことを夢見続ける彼女の人生全体を
よりファンタジーの世界にするための小道具となっている。
しかもその花は
彼女と関わる男たちそれぞれの<色>を設定した上で、
その色に最も映える色調を基準に、
松子の生きた時代や場面に合う花言葉を持つ花が選ばれているんだ」

----それはまた凝っているね。他にも何か特徴ってある?
「うん。
原作を単純に映画化すると、
救いようなく落ちていく女の話になってしまう。
さらには、その濃密なエピソードは省略したくない----。
このふたつの問題を解決するためにこの映画では
(1)ドラマだけの映像化では悲惨な印象が残るシーン
【音楽のリズムに合わせた撮影&編集によって】
⇒軽快なミュージッククリップ風シーンへの変換。
(2)ドラマだけでの映像化では長時間を要するシーン
【歌詞でシーンの説明をすることによって】
⇒テンポよく短い時間で一気に見せるシーンへの変換。
という2つの変換作業が行われている。
しかも撮影現場には音楽のリズムに合わせて撮影できるように
ビデオコンテが導入され、
撮影されたカットは即座にパソコンに取り込まれ、
その両者が差し替えられていたと言うんだ。
そして映像と音楽のシンクロ度を
ワンカットずつチェックしたと言う。
まさに前代未聞だ」

----確かに聞いたことない話だね。
でも、ちょっとプレスに基づいた説明が多すぎない?
聞いてて頭がこんがらがってきた。
「ごめんごめん。
ひとつひとつの映像の特徴を語るには、
ぼくの言葉では追いつかないほどに画期的だったものだから…。
ただ、感心したのは、
それらの手法がこれ見よがしに使われるのでなく、
ある種の抑制と計算に基づいて選び抜かれていること。
これぞCGの正しい使い方というのを教えてくれた気がする。
そして何よりも素晴らしいのは、中谷美紀の演技。
つい何ヶ月か前に『力道山』を彼女のベストアクトと喋ったけど、
早くも前言撤回しなくてはならない。
この映画の中谷美紀は神懸かりだ。
60年代映画女優のような顔立ちを生かした教師時代から
不健康に太り汚れに汚れたホームレス時代まで、
さまざまな<女・松子>を見せてくれる。
中谷美紀本人も『私は松子を演じるために、
女優という仕事を続けてきたのかもしれません』と言っているけれど、
彼女は本作で
ありとあらゆる演技の引き出しを出し切った気がする。
しかもその演技は、各シーンの演出プランに合わせて変えている。
まさに奇跡と言うか『グレート!』としか言いようがない。
早いかもしれないけど、今年の女優賞確実!と言っても過言ではない。
他の俳優たちもみんな素晴らしいんだけど
それは中谷美紀の演技に引きずられて生まれたような気もするね」

----ニャんだ。最初話し始めたころと違ってベタ褒めじゃない?
「さっき、気になって原作をパラパラやってみたんだけど、
犯人も少し変えてあり、
<いまの時代>が取り入れられている。
ここのロングに引いた写し方も素晴らしかったな」

----う~ん。結局、好きなの嫌いなの?
「実を言うと、映画を観ながら後半ぼくは涙が止まらなかった。
でも、それはもちろん映画そのものの素晴らしさもあるけど、
物語の悲惨さにも起因しているのかも。
そう言う意味でもこの映画は、
観る人によって好き嫌いが激しく分かれると思うよ。
監督は《ディズニー映画のヒロインがたまたま別の扉を開いたら、
松子のような人生もあるのでは》と言っているけどね。
ぼくはというと、まだ気持ちの整理がつかないところがある。
でもずっと後を引いているのは確かだね」

         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ニャンとも複雑だニャ」複雑だニャ

夏時間の大人たち HAPPY-GO-LUCKY ASBY-3365夏時間の大人たち HAPPY-GO-LUCKY ASBY-3365
※これもオモシロかった。中島哲也監督の劇場長編デビュー作。

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猫ニュー

『ピンクパンサー』

2006-03-08 19:55:17 | 新作映画
----ありゃりゃ、この映画もリメイクされたんだ。
「うん。ただこれはずっとシリーズ化されていたし、
主役を変えて新作を作ったと考えた方がいいかもしれない。
もちろんブレイク・エドワーズは監督していないし、
デヴィッド・ニーヴンも出ていないけどね」

----あれ?主演ってピーター・セラーズだったんじゃニャいの?
「そこがややこしいんだけど。
第1作では怪盗ファントムに扮したデヴィッド・ニーヴンが主演。
しかし、その中で人気が出たのが
ピーター・セラーズ扮するクルーゾー警部。
そのため第2作『暗闇でドッキリ』からは
このクルーゾーを主人公として映画が作られたいったわけだ」

----ふうん。第2作が『ピンク・パンサー2』かと思っていた。
「あれは、その『暗闇でドッキリ』から12年後に作られている。
そのため原題も『THE RETURN OF PINK PANTHER』。
あっ、あとアラン・アーキン主演の
『クルーゾー警部』というのもあるけど、
これはシリーズに数えられていない。
音楽担当もヘンリー・マンシーニじゃないしね」

----えっ?ということは今度のは
『ピンクパンサーのテーマ』が使われているんだ。
ということはオープニングのアニメも?
「そうだよ。
しかもMGMの有名なライオン・マークを
乗っ取ってしまう悪のりぶり。
テーマに乗って物語は快調に進んでゆくしね」

----どういうお話ニャの?
「サッカーのフランス代表チームの監督が
中国チームとの親善試合中、
大観衆の前で殺害され、
彼が所有していた豪華なダイアモンド
“ピンクパンサー”が一緒に消えてしまう。
事件を任されたドレイフェス警視(ケヴィン・クライン)は
ドジなクルーゾー警部(スティーブ・マーチン)を抜擢。
世間の目をクルーゾーに引きつけ、
その間に、自分がのびのびと捜査をしようと言うわけだ。
ところが当て馬のクルーゾーが思わぬ活躍をしてしまう……。
ま、ふざけた話だけど、そこがこの映画のいいところ」

----どういうこと?
「すべてがジョークで作られていて、
しかもそれがソフィスティケイティッドされている。
たとえ下ネタが出てきても下品には見えない。
これってけっこう難しいと思うんだ。
いまの時代って映画が生々しくなっているからね。
この映画ではたとえばセーヌやノートルダム寺院といった
美しいパリの景観が絵ハガキのイメージのままに出てくる。
しかもその中をキュートなスマート・カーが走る。
乗っているのが主演のスティーブ・マーチンに加えて、
彼の相棒となるジャン・レノ。
大男が車から降りてくる姿はそれだけで微笑ましい」

----スティーブ・マーチンはどうだったの?
「最初は違和感あったよ。
だって彼はコメディアンのイメージが強すぎる。
ピーター・セラーズのように、
内からにじみ出るおかしさというのとは違う。
少なくともあの白髪を染めるくらいの思い切ったことはしてほしかった。
とは言いながらも最後の方では
この役を自分のものにしていたと思う。
でも、無性にオリジナルが観たくなったなあ」

    (byえいwithフォーン)


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『家の鍵』

2006-03-07 18:54:40 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
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----このジャンニ・アメリオって監督、
あまり聞かない名前だけど、
イタリアの名匠なんだって?
「うん。これまでにもカンヌやヴェネチアで最優秀賞を受賞している。
この映画もヴェネチア国際映画祭で3部門を受賞したらしい」

----どういうお話なの?
「若き日、出産で恋人を失ったジャンニ。
彼はショックから障害を抱えて生まれてきた息子パオロを手放してしまう。
パオロの伯父アルベルトは
『父親に会えば奇跡が起こるかもしれない』と、
ジャンニにパオロを15年ぶりに会わせる。
現在、妻と8ヶ月になる息子がいるジャンニは、
パオロを連れてベルリンにあるリハビリ施設へ向かう…」

----つまり15年の空白を経て会った
父親と障害を持つ息子の物語というわけだね。
「そうなんだ。
その障害が何であるかは明言されていないけど、
CP、脳性マヒに似ていた」

----韓国映画の『オアシス』もそうだったよね。
「パオロは、あの映画のヒロインほど重症ではなかったね。
でも病院で彼らが知り合う女の子はもっと重症。
シャーロット・ランプリング演じるその母親ニコールが
この映画ではキーマンに。
彼女は、思いもよらず障害児の父親となったジャンニに対して
重みのある言葉を次々と投げかける」

----たとえば?
「記憶からたぐり寄せるから、
正確ではないかもしれないけど……
『父親がついてくるなんて珍しい。
こういうのは女の汚れ仕事でしょ』
『表面的なことばかり考えた方がいい』
『他の人に迷惑をかけないかという目をしている』。
そのとおり。ジャンニを演じるキム・ロッシ・スチュアートの
この目の演技は素晴らしかったな」

----あれっ、そう言えば監督の名前もジャンニだ。
「ジャンニ・アメリオ監督は、
2歳の誕生日を迎える前に、
当時20歳だった父が家族を残して出奔。
この映画にはそんな彼の父に対する思いも込められているようだ。
映画は、ジャンニが息子に近づけたと思ったら、
また遠くなってしまう。
その距離の振幅を心の旅路として描くわけだけど、
それ自体は予想の範囲という感じ。
息子が障害児でなくとも、
映画はそのような葛藤がないと成り立たないからね」

----また、冷めたこと言うなあ。
「うん。でもね、
この映画も息子パオロの障害が軽度だから成り立っている気もするんだ。
このラストシーンは、それこそある<奇跡>が立ち上がる。
それは、容易ならぬ未来に思いをめぐらし涙を流す父ジャンニに
パオロがある言葉を投げかけることで生まれる。
本当に美しいシーンだ。
でも、そのときやはり思っちゃうんだよな。
シャーロット・ランプリング演じたニコールのことをね」

----その言葉って何?
「それは言っちゃいけないでしょ」

※ただ、この言葉はあまりにも素晴らしいので
反転モードで残しておきます。
そんなのナシだよ
      (byえいwithフォーン)


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※画像はスペインのポスターより


『ナイロビの蜂』

2006-03-05 23:25:51 | 新作映画
----タイトルだけ聞いたんじゃ
映画の中身が分かんないね?
「そうだよね。
レイフ・ファインズが出ていて
舞台がアフリカと言うことからか、
日本でのビジュアルは『イングリッシュ・ペイント』を
思わせる上がりになっている。
でもこの映画の原作は『寒い国から帰ってきたスパイ』などの
傑作サスペンスをいくつも手がけているジョン・ル・カレ。
この映画もサスペンスたっぷりの作品になっている」

----ふうん。でもチラシとか見ると
「世界が絶賛した愛の奇跡」となってる…。
「確かにそれも間違いではないんだけどね。
て言うか、その二面性にこそこの映画の魅力はあるんだ。
物語を要約するとこうなる。
外交官ジャスティンの妻テッサは、
アフリカでの救援活動に熱心なあまり何者かに命を狙われ、
志半ばで命を失ってしまう。
それまで妻の仕事の内容に深く踏み入らなかったジャスティンは、
妻の死に隠された陰謀、
すなわちアフリカで横行する薬物実験、
官僚と大手製薬会社の癒着へとたどり着き、
やがて彼に対する妻の大きな愛を知る…と、こういう話だ」

----ニャるほど、それはオモシロそうだ。
「映画はフラッシュバックで描かれるわけだけど、
アカデミー助演女優賞にノミネートされている
レイチェル・ワイズが文句なしにすばらしい。
美しさをかなぐり捨てるかのように、
社会問題に立ち向かっていく姿は、
まるで役に乗り移ったかのようだ。
そして『シティ・オブ・ゴッド』で認められた
フェルナンド・メイレレスの語り口。
CM、プロモーションビデオ出身の監督の作品と言うと、
映像に凝るあまり
ストーリー・テリングがおろそかになることが多いんだけど、
これだけアップが多く、しかも手持ちキャメラで不安定な映像なのに、
決して視神経が疲れることがない。
その先が見たいと言う観客の気持ちを巧みにリードしていく。
ここまで手に汗握る映画は
アクション以外では久しぶりだったね。
周囲も食い入るようにスクリーンを見つめていたよ」

----おおっ。久しぶりの絶賛だね?
「うん。
妻の死の陰に隠された謎を追うミステリー仕立ての物語を
サスペンスを軸に紡ぎながら
最後は愛の物語に昇華する。
とにかく『映画を観た~』という充実感が味わえることは間違いない」

----ふうむ。
でも、こういう陰謀って世界中で起こっているのかもね。
「そうなんだ。
この映画を観ると、
最近日本で起こったあの事件も
巷間言われているように
単純に自殺と片付けてしまうのは
早すぎるんじゃないかと言う気になってくるね」


          (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「この映画には驚いたニャ」身を乗り出す

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※うわあ、レイチェル・ワイズやりましたね。

『南極物語』

2006-03-04 13:06:24 | 新作映画
----この映画って日本にもなかった?
「うん。高倉健も主演して大ヒットした
83年の映画のリメイク。
なんと20年以上も経って
ディズニーがリメイクしたってわけ」

----ふうん。確か取り残された犬たちが
寒い中、生き延びたお話だよね?
「そう。
なぜそんな事態になったかは
映画を観てもらうことにして、
ここでは犬たちのサバイバルと同時に、
犬を現地に残してしまうことになった
南極ガイドのジェリー(ポール・ウォーカー)の自責が描かれていく」

----ポール・ウォーカー、
この前、あたたかい南の海と思ったら、
こんどはもっと南の氷の世界だ(笑)。
「でも今回は南極ロケでなく
カナダのバンクーバーにオープンセットを建設。
……なんてこと、知ってしまうと逆に興ざめかな。
映画を観ている限りでは、
よくこんなところで撮影を…とか、
犬たちもよく寒いのをガマンしたな…とか思ってしまう。
でもそれでもマイナス10度からマイナス30度にもなったというから
やはり大変な撮影だったことは間違いないけどね。
でも基本的に悲壮感がない。
音楽からして、
いかにもディズニーのアドベンチャーものって感じ。
これはこれでぼくは好きだけどね」

----ということは泣けない?
「いやいや、
分かっていても目頭が熱くなる。
もちろん犬を思うジェリーの気持ちもそうだけど、
犬たちが心を通い合わせ、生き抜いていく姿や、
わんぱくだった犬の成長など、
犬たちのドラマがすばらしいからだろうね」

----犬、犬、犬ってあまり言わないでよ(笑)。
そんなに演技しているの?
「うん。
これはよく観ていないと気づかないことだけど、
画面の隅にちょっと映っているだけでも、
ちゃんと演技しているんだ。
特に感心したのがマヤと言うリーダー格の犬。
みんながシャチの死骸を食べている時、
マヤはヒョウアザラシに襲われ足を噛まれてしまう。
それに対して他の犬たちが立ち向かい追い払う。
画面の右下で倒れているマヤは
みんなの方をちらっと振り向き
『もう行った?』って心配そうに顔を持ち上げる。
で、安心してまた顔を元に戻す。
いやあ、感心したな。
これはフォーンにはできない。
というか、あんな寒いところ行けないよね」

----それは、えいも同じでしょ(笑)。
          (byえいwithフォーン)

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『ぼくを葬る』

2006-03-02 18:21:05 | 新作映画
----これまたスゴいタイトルだね。
文字づらからしてショッキングだ。
いったいどういう意味なの?
「主人公は31歳、パリ在住の売れっ子フォトグラファー。
刺激的で充実した日々を暮らしている。
ところがある日突然、彼は末期癌の宣告を受けてしまう。
怒りや悲しみ、絶望といったさまざまな感情が襲う中で
彼は死と向かい合わなくてはならない……。
つまりどうやって、男は自分の最期を迎えたかと言うお話だ」

----うわあヘビーだね。
治癒の見込みはないの?
「うん。彼は化学治療を拒否。
しかも軋轢の多い姉や両親には秘密にする。
でも、ただ一人、祖母にだけは打ち明けるんだ。
その理由が『あなたももうすぐ死ぬから…』」

----あらあ…………。
確か祖母にはジャンヌ・モローだよね。
「いやあ、これは感慨深かったね。
もう80歳近い彼女がまだ現役と言うのは……。
そして見どころは主演のメルヴィル・プポーの演技。
まるで彼自身が不治の病じゃないかと思ったくらいに
目でその内面を完璧に表現していた。
あっ、主人公はゲイと言う設定。
そのベッドシーンもなかなかハード。
心して観ないとキツいかもね」

----そうか、そういう設定だと、
周囲との関係も他の映画と違うだろうね。
「うん。
彼はセックスの後、恋人(男)に理由も言わず別れを告げる。
このあたりも生々しかったね。
あと興味深かったのは映画用に作られたプレス。
いわゆる主人公の一連の行動を
一人の筆者は『死を<受容>するに至るまでを淡々と見つめる』と書き、
もう一人は『彼は決して死と「和解」しようとしない』と書いていた」

----つまり、同じ映画を観ても
人によって受け止め方がまったく違うと言うことだね。
チラシか何かで見たんだけど
主人公が裸の子供と寝ているよね。
あれは誰なの?
「それは映画の根幹に関わるから言えないな。
ヒントを少し言えば、
なぜゲイの彼に赤ちゃんが……?になるかな。
あと、ラストだね。
これも観たときの新鮮な驚きを大切にするため伏せるけど、
またもやある場所のある時刻で締めくくられる。
そのシーンは暖かい日差しでありながら
ぞっと背筋が凍ってしまう。
そして観た後に
心の中を孤独以上に寂しい風が吹き抜ける。
これがスゴい映画と言うことは認めるけど、
ぼくの苦手な部類だな」

          (byえいwithフォーン)

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『ブロークン・フラワーズ』

2006-03-01 19:27:48 | 新作映画
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----ジム・ジャームッシュ、久しぶりの長編だね。
確かこの監督とはあまり相性がよくなかったのでは?
「うん。いわゆるオフビートな映画と言うのがぼくは苦手でね。
彼が出てきたあたりから“抑制された演出”なんて言葉が
幅を利かせてきた気がする。
でも相変わらず彼の人気は凄まじく、あっという間に満席。
実は2度目のチャレンジでやっと観られたんだ」

----ふうん。そうニャんだ。
今回もいままでの延長なの?
「延長と言えるかどうかは分からないけど、
一種のロードムービーにはなっていたね。
それととにかく女性スターがたくさん出演。
あらら、まるでウディ・アレンと思ったくらい」

----それだけ俳優たちに信頼されていると言うことだよね。
で、そろそろ中身を話してよ。
「うん。主人公はコンピュータでひと財産を築いた
ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)。
かつては女ったらしだった彼も盛りを過ぎ、
一緒に暮らしていたシェリー(ジュリー・デルピー)にも
愛想をつかされてしまう。
彼女が家を飛び出してすぐ、その事件は発生。
差出人不明のピンク色の手紙が彼の元に。
そこには『あなたの子供がもうすぐ19歳になる』と書かれていた」

----ほほ~う。で、彼はどうするわけ。
「隣人にお膳立てされた彼は
自分が当時つきあっていた女性を
一人ひとり、ピンクの花束を手に訪ね歩く」

----そうか、その女性たちが大物スターと言うわけだ。
「そういうこと。
ティーンの娘ロリータと暮らしているのがシャローン・ストーン。
さらにはフランセス・コンロイ、ジェシカ・ラング、
そしてティルダ・スウィントンと続く」

----それは、さぞいい思いをしたんじゃないの?
「そこがこの映画のオモシロさ。
旅立ちからして彼は新しいことへの予感を抱いている。
たとえば空港のロビーには足を組んだ女性、
バスでは若くピチピチした女の子たち。
観ている方もこれは何か起こるな……とよからぬ期待を抱き、
ドンの心のざわめきと共鳴する。
しかし、ここで巧いなと思うのは
ビル・マーレイに
チラッと目線の演技だけをさせること。
女性にがっついてはいないけど、気にはなる……。
映画全体もこのトーンで進んでゆく」

----でも何も起こらないんじゃ、
それこそつまらないよね?
「それはもちろんそう。
いろいろ起こるから心配なく(笑)。
なんと最初に訪れた家では
娘のロリータが一糸まとわぬ姿で応対。
ここはもうあきれて爆笑するしかない。
で、シャローン・ストーンともベッドイン。
ところが彼の旅でよかったのはこのときだけ。
後は下る一方だ。
その一つひとつを言うとネタバレになるからやめるけどね」

----なんだか、このお話聞いたことあるような?
「うん。この“訪ね歩き”の原点は
フランス映画の巨匠ジュリアン・デュビビエの
『舞踏会の手帖』だね。
未亡人クリスチーネが社交界にデビューした頃の
『舞踏会の手帖』を見つけ、
かつてのダンス・パートナーを訪ね歩く。
この映画も相当にペシミスティックだった。
それから考えると、
ドンの旅も悲劇的な末路になるのは読めたはずだけど、
そこがジャームッシュの演出、
ビル・マーレイの演技の見事さなんだろうね。
とぼけたような笑いが全編を包んでいるため、
先がまったく読めなかったよ」

----ニャるほど。ところで子供はどうなったの?
「それに対しても明確な答は出さない。
そもそも手紙を出したのも誰か分からないまま。
ラストのビル・マーレイの表情も見モノ。
一時期、彼はジャック・レモンみたいな俳優になるのかなと思ったけど、
ユーモアに裏打ちされたペーソスが特徴だったレモンに比べて
マーレイの憂愁はもっとダイレクト。
これからも独自の境地を歩んでいく気がするな」

          (byえいwithフォーン)

舞踏会の手帖<トールサイズ仕様> IVCF-2027舞踏会の手帖<トールサイズ仕様> IVCF-2027
※元ネタはこれだと思うけど……。

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